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日本特集  未知の領域に踏み込む日本 ロンドンエコノミスト

2011-01-16 14:12:59 | ロンドンエコノミスト


『デフレの正体』で、日本の生産年齢の減少が日本の内需低迷を招いている→デフレの解決にはこの問題に対処しなければ,なんの解決にもならない,とかいうハナシがあったわけですが,実は,同じような問題意識で,エコノミスト誌が11月に日本特集を組んでいたんですな。

HSデントの新著が翻訳されたり,デフレの正体が出たり,エコノミスト誌が特集を組んだり,と去年は,人口問題に焦点があたった年だといえますが,この問題,今後ひどくなる一方なんで,人口問題の一般認知元年だったということになるかも知れませんね。

JBPRESSというサイトはEconomistの主だった記事の訳を載せてくれるんでお勧めなんですが,この特集も全記事訳されてて,無料で読めます←会員登録は必要のようですな。

未知の領域に踏み込む日本

Economist誌は,バランスが取れてて,必要な論点を適切に説明しているように見えますな。とってもスッキリとまとまってて,各論点が,良い具合に織り込まれています。こういうまとめは,他に探してもどこにも無いんで。読者コメントで,新鮮味が無い,などとケチを付けられていますが,問題は新味なのではなく,

論点を,漏れなく,的確に,適切に位置づけて,適当な分量で報じている

ということなんで。個別の新事実を掘り出すことも大事ですが,それってつまりどういうことなの,ということを,ちょっとした時間で読めるようになっている,ということは,並大抵の力量ではできません。この記事を読めば,日本の人口減少問題が,どの程度の深度と広がりを持っているのか,まったく予備知識のない,海外のエリートにもわかるようになっている。

日本の新聞,雑誌を,漏れなく読み込んだ日本人と,この記事を数十分かけて読んだ外人のエライさんと,どっちが,適切に日本の人口問題について理解したことになるだろうか,ってことですな。

ウォルフレン氏に,講演会で,日本のジャーナリストはもっともっと勉強しろ,とゲキをとばされていましたが,こういう記事を読むと,ジャーナリストの力量,というものが,どういうことなのか,ということが,何となく想像できるんですな。経済学や政治学の基礎知識から,専門分野を含む関連の文献の把握,キーパーソンのフォロー,など膨大なインプットを前提としなければ,こういうものは書けないでしょうな。


『デフレの正体』とこの記事を比べて見ても良いですな。デフレの正体で,人口減少社会がどういうものか,を理解したことになるか,といわれれば,かなり不足です。まあ、そもそも包括的に論じようとした本ではないんで,当然ですが,書きぶりや,論の進め方に,読んでて不安になりますね。

『デフレの正体』には,各地域のデータや,小売売り上げ分析があるんで,独自の価値がかなりあると思いますが、そういう点では,『新味がある』ことはあるんですね。

さて,その記事ですが,冒頭,生産年齢人口の減少と,発生している問題についてざっと説明したあと,こんな風に,序章を締めくくっています。

本誌(英エコノミスト)は今回の特集記事で、日本は真っ向からこの問題に立ち向かうべきだと主張する。日本には、人口高齢化に対処する壮大なプランが必要だ。

 日本ゼネラル・エレクトリック(GE)の社長兼CEO(最高経営者)を務める藤森義明氏は、「ビジネスの視点から見ると、(高齢化の)脅威は今、機会を圧倒している」と述べる。「大部分の人はそれに気づいているが、対処する方法が分かっていない」

 労働力減少の影響を打ち消すために生産性を高めることは、特に企業の世界では文化的な革命を必要とするだろう。アジアに広がる新市場に入り込むことは、150年間にわたるアジアの不信(それに見合うだけの日本の不信がある)を克服することを意味する。

 しかし、慎重な楽観論を抱く理由は2つある。1つは、多くの先進国と異なり、日本は産業の遺産を捨ててはいない。日本には団結した労働力があり、革新的な製品を今でも生み出せる。

 期待できるもう1つの理由は、政治にある。日本は昨年、実質的に1955年以来維持されてきた一党支配に終止符を打ち、斬新な考え方に大きく賭けた。2009年の選挙で勝利し、現在菅直人氏が率いる民主党は、政権の座に就いた最初の年にたくさんの失敗をしたが、民主党の勝利だけをもってしても、従来の政治に対する有権者の不満が膨れ上がっていたことをはっきりと示すものだ。

 今、民主党は成果を上げられることを示す必要がある。



最初に序章でどでかい課題を設定して,後半でいろいろな側面からこの問題を論じるわけですが,随分意欲的というかチャレンジングです。

普通ならこんなテーマ設定はしり込みしますわな。

ちょっと長いんで,中身をここで読んでいくことはやめますが,概要については,次で少しだけ見ていくことにします。