会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

ロンドンエコノミスト 小泉評

2006-09-17 18:39:16 | 英語情報
ロンドンエコノミスト9月14日に小泉政権総括の短い記事が出ています。

Japan's remarkable prime minister is about to stand down. Will his revolution last?

絶賛ですね。海外で評価が高いというイメージはありますが、ここまでとは意外です。これまで海外の小泉評をフォローしてませんから何とも言えませんが、昨年小泉氏が衆院選で圧勝して、株価が爆騰したのはこうした海外の見方が前提にあっ他のでしょう。

彼の貢献は3つありまして、一つは

First, he has changed the way politics is carried out in a country.

選挙民に直接訴える手法で国政選挙を勝ち続けたこと。従来は密主義と利益誘導で首相が決められてきたこと、国民への直接支持を訴えるやり方は前例がなかったことなどをあげています。

He went on to win four elections by appealing, in a way that no Japanese politician had ever even attempted, directly to the electorate.

選挙民に訴えることが今までなかった。そうですねえ。エコノミスト誌から見れば、日本は後進国の範疇に入るんでしょうか。

二つ目は構造改革です。党内の抵抗勢力に邪魔されて中途半端になったが、政官財のトライアングルの破壊への仕事の手始めにはなったとしています。
郵政民営化は骨抜きの典型だ、と手厳しいです。

most notoriously in the case of the privatisation of Japan's postal savings system, which has too often been a way for politicians to direct citizens' savings to favoured contractors.

郵便貯金は利益誘導の温床だったみたいに書かれてますね。

三つ目が外交でして

let Japan start to play the part it deserves in foreign affairs,

イラク自衛隊派遣や、防衛の米国依存度を下げる努力を評価しています。ただ、小泉氏は集団的自衛権を認めるなどの憲法改正を先にやりたかったはずだができなかった、とも指摘しています。イラクに行っても同胞を守れない、と。

He has attacked entrenched power: of the LDP's own party bosses, of the bureaucrats, and of the victors of 1945, who imposed pacifism on Japan.

小泉氏は自民党の古ボスや官僚や45年の勝者と戦った、と書かれています。勝者って米国のことですかね。ブッシュのポチと呼ばれていますが,米国からの防衛力の独立というさっきの部分をさしているんでしょうか。BSEで米国牛を一切入れなかった判断を指してるんでしょうか。

後継者の阿倍さんについても触れています。

Nor does he have much of Mr Koizumi's charisma. The danger therefore exists that he will be able neither to enthuse Japan's voters in the way Mr Koizumi did, nor use personal popularity to force his still-reluctant party further down the road of reform.

小泉氏のようなカリスマ性は無いし、自分の人気で構造改革を引っ張ってゆけるのかも懸念だとしています。阿倍氏はまだエコノミスト誌の信認は無いんですね。既にマーケットは阿倍首相を織り込んでいると思われますが、その後打ち出す政策によって今後どう動くか決まるということですね。

One area where Mr Abe's reforming zeal may exceed Mr Koizumi's is in international relations

阿倍氏は小泉氏より外交に情熱を持っているが、憲法改正にこだわると中国との関係が・・・とも書かれています。

さて、どうなりますか。

日本の電機産業再編へのシナリオ

2006-09-11 01:46:45 | 銘柄研究
佐藤文昭著 かんき出版

久方振りの更新です。忙しいやら、精神的にもきつい日々で更新する余裕がありませんでした。

この本、売れているようです。近くの本屋でビジネス書NO.1になってました。私が買ったのは別の本屋ですが何となく気になっていたことがずばっと題名になっていてつい手が出ます。でも買っているのは意外と大手電機産業で働く人たちなのかも知れません。

 この本一読して、以前ご紹介したソニーの内部告発モノを思い出しました。その本では出井さんの経営のまずさから、開発力が弱まり製品の魅力ががた落ちになってソニーの業績が落ちたという主張でしたが、この本はもっと大きく捉えています。日本の大手電機産業は欧米の先行する企業を駆逐してしまったのは良いが、互いに過当競争を繰り広げアジアの後発にしてやられている。もはや総合電機というビジネスモデルは世界で成立せず、事業特化したグローバルとっぷワンに再編すべしという主張です。

 その根拠として、利益率が低いこと、そのせいで十分な研究開発費を捻出できないこと、国内鎖国市場に頼りきる姿勢ではジリ貧なこと、国内事業者の数が多すぎて人材も資金も日本の中で分散してしまっていること等々(本文ではもっと整理して説明しています)。

 グローバルに戦うには各事業2社程度に再編すべしというのが結論です。

 この主張、日本経済悲観論の中に位置づけられるでしょうね。最近株価も上がって一段落しているが決して構造改革が進んでいるわけではない、というやつ。輸出が伸びただけ、とか、調子の良いのは一部の価格転嫁できた業種だけ、とか、やがて政府財政が破綻してえらいことになる、とか。 

 自動車業界の100万台クラブ論なんかにも通じますね。本書の主張も十分な設備投資、開発費が今の規模だと不可能、という論拠です。また、外資に買収されて技術も人も海外流出してしまうことを心配しています。政治的にあえて色分けするならばリアルな視点からの反小泉ということもできますかね。この本自体にそんな意図はないですがね。とは言え、国内産業を守るという意識が色濃く出ています。このあたりは私自身はどういう理論的背景かがよく理解できません。心情的には外資に買収されるのは大変だ,ということだと理解できますが、そうなったとして、何が困るかといえば、どうなんですかね。

 著者が言うように、日本企業の経営力が劣っているなら,外資が入って、良い経営者がとって代わるんなら、それはそれで良いような。日産にゴーンさんが入ってこず、トヨタに買収されてたら、その方が良かったですかね。建機部門は切り売りされましたが問題でしたか。

 とイロイロ気にはなるものの、最近一息ついたと思われている電機業界が、実は厳しい状況に置かれたままで、あまり将来展望も開けてはいない、ということが非常に良く分かります。単なるリストラや士気向上ではどうにもならず、大掛かりな対応をしなければ生き残って行けない、特に新会社法後の社会では低利益率のままだと資本の論理で買収されてしまいます。

 松下やシャープの快進撃、という感じで報道されていることに慣れている身には、ドキッとさせられる一書です。各事業別の解説もあってお勧めです。