会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方

2012-11-04 00:54:30 | 読書

また,しばらく更新がご無沙汰になってしまいました。
いよいよ大統領選挙です。

共和党ロムニーさんの追い上げがスゴイみたいですが,私ゃオバマさんが勝つと予想してますが,どうですかね。

選挙ネタの前に,ちょいと本のご紹介です。

これ,大学院で地域経済論をとってて,課題図書になった本ですが,かなり良い本です。てか,今年ベストかな。

昔々,出張でニューヨークに行った時,レストランや,どこでも,狭い階段でお先にどうぞをすると,にっこり笑って,サンキュウ。まるでお友達に対するようなリアクション。

無関係で初対面の人でも,結構,相手を認めて話もしっかり聞く習慣というか姿勢に,まあ,なんて過ごしやすそうな気持ちの良い場所なんかいな,と感じたことを覚えているんですな。日本だと,赤の他人は,存在しないのと同じ。目を合わせず,知らんぷりが普通です。

この感触,どういうことなんだろう,とずっと気にかかっていたんですが,本書ですっきりしました。

端的に言えば,日本は安心社会ではあるが,信頼社会ではないという主張です。

村の濃密な人間関係でがんじがらめになっていて,気心の知れた人達に囲まれてれば安心,一方で,外部の人間に対する信頼度はかなり低い。

そして,そんな,赤の他人に対する信頼感をもてない社会はチャンスを十分に生かすことができず,つまり気心の知れた人たちだけでまとまると,機会費用が高くついて発展しにくいんじゃないかという指摘なんですね。

そして,

集団に対する従属心が日本人はもともと強いというのは誤った先入観で,単にそういう環境にあるときにそうなっているだけ,ということを確認した心理実験も紹介されています。

つまり,環境を整備することで,安心社会から信頼社会にギヤチェンジしてゆくことができるし,それが必要だ,ということなんですね。

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)
クリエーター情報なし
中央公論新社


いろんな問題を考える上で,一つのコアになり得る議論だと思います。

なぜ日本では産業集積の中から新規事業が生まれにくいのか。

起業に不可欠である,人的ネットワークを持っている人が他国に見られるようにドシドシ生まれてこないのはなぜなのか。

読み物としても面白いし,お勧めです。

ラオスの米銀行

2011-08-11 01:55:42 | 読書

米銀行ってナニ?

ラオスにあるアメリカの銀行ってこと?

チャイまんがな、コメ銀行でんがな。
本書によれば、ラオスに米銀行なるものがあるらしいんですな。

ラオス 豊かさと「貧しさ」のあいだ―現場で考えた国際協力とNGOの意義
クリエーター情報なし
コモンズ


著者は女性で、JVCというNPOに所属し、20代でラオスに派遣されて農業支援にあたったとかですが、行く決意したというだけでもかなりすごいです。

JVCってどんな団体?

で、本書に、コメ銀行なる仕組みが紹介されてます。

まあ、仕組みは簡単で、銀行なんですが、お金を貸すのではなくて、コメを貸す。農家は、田植えの時期が一番忙しいが、その時期には、手持ちの米が底をついていて飢えてしまう。それで、ビンボーな農家は、他人の田植えを手つだって小銭を稼いで飢えをしのぐが、自分トコの田植えができない。で、ますます貧しくなってしまう。

という悪循環を断ち切るために、考案された仕組みで、皆で米を供出しあって、困った人に利子を付けて米を貸す。それで持ちこたえながら、田植えをする。

利子率は、村で話し合って決めて、

たまった利子は、道路を治したり、村の公共事業に充てる。


ポイントは、お金じゃなくて、お米を貸すという点ですな。
半分、自給自足経済みたいなところでは、お金を借りるより、コメを直接かりる方が現実的だ、というわけで。お金を借りても、それで米を買いにいくことになるんで、じゃあ、最初からコメにしとけよ、ということ。

こういう、貨幣経済以前の段階での金融(ってのも変ですかね)をみていると、個人向けの消費者金融が、本来どんな機能を持っているのか、ということがなんとなくわかるような気がするんですな。

これが、コメでなくて、お金でやっているのが、マイクロファイナンス、と言えるかもしれません。

マイクロファイナンスも、実際のところは、牛や鶏をあらたに仕入れて事業を始める、という事業資金よりも、次の収穫までのつなぎ資金として借りられることが多い、とかいう指摘を読んだことがありますが、

食いつなぐという目的なら、お金じゃなくて、コメでも良いわけですな。

貨幣があって、中央銀行を中心とする銀行システムがあって、金融市場があって、金利で市場が均衡して、みたいなのは、我々にとっては自明な存在ですが、

そうじゃない世界も存在する、と言うことで。

金融以前の金融。余計なものを全てそぎ落として、お金さえ無くしてみて、果して本質としてはナニが残るのか。

コメを貸す。

シンプルで良いですねえ。

こっちはユニセフ版の米銀行の説明ですが、
ユニセフ 米銀行ができて
ラオス北部にあるサンキン村は、米銀行ができる前は、村の71%が1年に5~7ヶ月も米不足に苦しみ、100%の高利で米を借りていました。2003年にユニセフの支援で5トンの米が支給され、村人は米不足の時は10%の利率で米銀行から米が借りられるようになりました。2003年4月に50世帯が米銀行から米を借り、収穫後の12月には利子も含めて全てが返済されました。米銀行の収益は、経済的に困難な状況にある20人の女の子の支援や、村の学校の改修、学校用の教材の購入などにあてられました。
米銀行ができたことで、村人の生活には余裕ができました。100%の利率で借りた米を返すために、隣の村の田んぼであくせく働く必要がなくなり、今は村の中の農場で働いています。空いた時間を幼い子どもたちの世話にあてることができるようになり、乳幼児の発育にとっても良い影響がありました。サンキン村の米銀行は効果的に運営されており、収益は引き続き女子教育の支援に使われる予定です。


NPOの関与には、ローンシャークから貧困層を守る、という意味もあるってことですね。マイクロクレジットと同じです。


さて、

ちなみに、本書によると、

どうも村人たちは、コメが不足しているはずなのに、なぜか飢えて死ぬ人が居ない。おかしいな、と調べてみたら、森や田からいろいろなモノが採れて、タケノコを採ったり、虫を採ってきて食べたり売ったりして結構豊かに暮らしている、というハナシなんですな。

虫で暮らすというのは、どういうことか。
よくイメージできませんでしたが、


これでよくわかりました。

LAOS: Edible Insects






著者のような人も居れば、こういう人達もいるってことで。まあ、かなり楽しそうですが。
Backpackers In Laos - Laos


クスリのやり過ぎで、死ぬ人もいるみたいですな。



岩本 沙弓 新マネー敗戦、マネーの動きで見抜く国際情勢

2010-09-13 23:08:02 | 読書
マネー敗戦というと、結構前に出た本で、日本は貿易戦争で米国に勝ったけど、マネーの世界で完全に負けちゃった、みたいな本だったと記憶してるんですが、

新マネー敗戦という本が、別の著者によって書かれてまして、著者は女性で、元ディーラー。
実際にマーケットで戦ってたわけで、戦場でどう戦ってどう負けた、とかいうハナシはよくマッチしてる感じです。

マーケットは、不特定多数がいろんな思惑で動いてて、予測も制御も不可能で、とかいうハナシを真っ向から否定して、マーケットの覇者、ライオンが居て、何も知らないシマウマを食いまくる、というマーケット観。

ある時、なぜか米ドルが売られて、スイスが買われるという動きがあった。
何の材料も無いのにもかかわらず、何だろう、と思っていると、

一か月後に911が発生。

まあ、はっきりと、インボー説に立っているわけじゃないんですが、よーく練られた国家戦略と、マーケットはどっかでつながってて、しっかり国益・私益を確保している、というハナシで、そういう図式を本書も踏襲しています。財政赤字を海外からファイナンスして、ドル安にしてチャラにしちぁう、とか。エコノミックヒットマンにも書かれてました。

とまあ、随分前に読んだんで、詳細は忘れてしまいましたが、基軸通貨の地位を確立するには、『使い勝手』が良くなくてはならず、そのために石油の決済をこれでやることにさせた、という説明が、とっても良かったのが印象的でした。ルービンが回想録で、先物市場の創設にかかわった時のはなしを書いてますが、そういう国際的な市場を育成して取引をドルで行う、ということが、ドルの地位を高めることにもつながるんですな。

日本の当局はそういう発想で動いていただいているんでしょうかね。

国際的な取引所、取引市場の創設、みたいなハナシ。

なんかやるにしても、国内の業者と外人でも言うことをよく聞くヤツに限定。規制でがんじがらめでコントロールしやすくして、よそもんは入ってくると文句が出てうるさいし、ゆうこと聞かないんでシャットアウト。リスク回避最優先の役人発想だったりして。

円の国際化を行うには、国際的に円の使い勝手をよくしなければならず、使い勝手をよくするには、国際的に使える場を提供しなければならず、国際的に使える場を提供するには、国際的なプレーヤーに来てもらって国際的なプレーヤーに思う存分使えるインフラと自由を与えねばならない、ってことなんだけど・・・。まあ、我が国は、円の国際化なんてやってどうすんのってとこなんかな。

新・マネー敗戦―ドル暴落後の日本 (文春新書)
岩本 沙弓
文藝春秋



さてと、内容覚えてないのに紹介するなって感じですが、実は、その続編とも言える本書を読んだとこでして、


マネーの動きで見抜く国際情勢 (PHPビジネス新書)
岩本 沙弓
PHP研究所


最近の米ドル vs 中国元の戦いについて、著者が深読みしています。

パートナーと中国を持ちあげておきながら、手を返したように中国製タイヤの輸入規制、台湾への武器輸出、ダライラマとの会談、と中国世論を逆なでするような姿勢に転換。関係を悪化させて、

じゃあ、ドル買うの止める、という動きを中国内で醸成 →  結果的に元高への素地を作ることになった、

とか。

それを先回りして、ユーロ圏ではギリシア問題を取り上げて、ユーロ安誘導、

と、各国が輸出振興、通貨切り下げに動くにあたり巧みに政治が絡んでいる、というのが著者の見方。

で、日本は・・・、あれってなわけでして。

最初に彼女の本を読むんなら新マネー敗戦なんでしょうな。本書も面白いですが、後半がイマイチ。

ゆうちょ問題では民営化反対の立場で、まあそれは良いとして、その理由が政府系ファンドとしての活躍を期待できる、とかいうもので。

実際に、ゆうちょは、株式の買いや、ドル買いに動いていて、極端な円高に行った時には頼りになりそうだ、と著者はみてるんですが、ドルを買って、米債を買わされるのは、そもそも米政府をファイナンスすることになってよくないみたいな言い方を別のとこでは主張しているわけで、ちょいと論理が一貫してないっつか、説明不足で荒っぽいんですな。

一貫した国家としての通貨戦略が、日本政府にあるというのが、政府系ファンド支持の前提になるはずですが、著者はそんなの信じてないでしょう。そもそも、ゆうちょがうまくやったのは、民営化のためにトップになった西川さんの指揮のもとにあった時期のことで、民営化ありきで初めて成立したディールなんじゃないんでしょうか。

最後の方で、これからの日本向けの政策提言になってるんですが、いかにもとってつけました風になってて、無い方がマシ。

余計なことには手を出さず、彼女の得意分野に絞り込んで深く掘り下げる方向で書いてもらって方が良いに違いないと思うんですがね。

とまあ、文句を言いまくってるみたいななってますが、基本的に良い著者、良い本なんで、オススメです。

オススメだと思っていながら上げ足をとってしまうのは、性格が悪いんかな。





クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス

2009-12-27 09:23:39 | 読書
著者はデータが好きで好きで。小さい頃は円周率の数値にパターンがないのかずっとながめていたんだそうです。

数値の分析をメシの種にするまでになってしまった。

クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス
ビル・タンサー
イースト・プレス

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本書はネットユーザーがどんな検索ワードで、どんなサイトにアクセスしているかを分析することで、いろんなことがリアルタイムにわかる、ということを具体的に事例で紹介しています。

マーケット調査なんかでデータを取るということは一般になされていますが、調査の手法によってバイアスがかかったりして、実は中立でなかったり・・・。

人が能動的にクリックしたものであれば間違いありませんな。

公式発表前の失業率予想、IBM買収後のレノボのブランド力分析、アダルトサイトへのアクセスが減りつつあるのはなぜか。ネットギャンブルがゼロサムの世界だった、などなど。

確かにネット人口が増えるにつれて、マスの動きはネットの動きに反映するようになってるんですな。どうやってメジャーになってゆくか。はじめは熱心で初物好きなユーザーがSNSでやり取りしてそのサイトに導かれいたのが、次第にグーグルのような検索サイトからのアクセスが増えてゆく。SNS→検索で、検索からのアクセスがSNSを超えたあたりを一つのティッピングポイントとして著者はとらえています。

来年、なにがブレークするのか、かなり正確に予測できる。

ネットマーケティングは今後重要な、ってかメジャーな手法になってゆくでしょうな。

野口悠紀雄教授 一喝

2008-09-30 07:27:32 | 読書
ダイヤモンドオンラインに野口教授の超辛口コラムが出ておりますな。
日本で何か起こっても、海外メディアの記事の方が整理されていて判りやすいんじゃないか、ということは時々感じることなんですが、

「食料自給率40%」の虚構さえ見抜けぬマスメディアの不勉強

いやあ、コメ価格の問題はかつて関連した記事をご紹介したことがありますが、なるほど納得なんですね。

つまり、現在の規制に利益を得ていて、その利益を守るために食糧危機をあおりたい人たちがいて、それに無批判に乗っかって報道するメディアがあって・・・。

日本のコメってどんだけ高いネン、というわけで、
おまけに事故米まで食わされて・・・・。

ってトコでしょうか。

海外のメディアはしっかり見てて、さっきのBBCの記事では、こいつらアホか目線なんですな。


再度引用しておきます。
『nstead of importing rice, Japan heavily subsidises its rice farmers, paying them as much as four times the market price and restricting imports.

日本では国際市価の4倍も米作農家に補助金を出している。そして輸入を制限。

Food security is seen as politically important and the country keeps a large stockpile of rice - even though it is probably wealthy enough to buy on the international market even if prices continue to rise.

食糧安保が重要な政策課題だとされているが、このまま値段が上がり続けても十分買うだけの力を日本は持っているのに・・・。

これBBCから持ってきた記事ですが、鳥インフルに引き続き、こいつらアホか目線なんですな 』

はははのは。


スティグリッツ教授の経済教室 ダーウィンの悪夢

2007-11-19 20:55:24 | 読書
 ダーウィンの悪夢というドキュメンタリー映画があって、少し前に話題になったのですが、タンザニアのビクトリア湖に外来魚のナイルパーチが放流されて、そのナイルパーチは繁殖力が強くて輸出すると金になる。水産業が発展し豊かになったのは間違いないが、その陰で悲惨な状況が産まれ・・・。

 どう悲惨か、というと、在来魚で生活していた漁民はナイルパーチ以外採れなくなって失業。もともと貧しく自給自足に近い生活をしていた地域にいきなりドル経済圏が生じて、ナイルパーチ全面依存経済となった。

ナイルパーチ経済にアクセスできたものは裕福になり、何でも買うことができる。何せドルには非常に大きな価値がある。しかし、そこに入れなかったもの(在来魚の漁民達のような)は超貧乏。なんせ、いきなりの貨幣経済で、売れるものといえばナイルパーチしかなく、ドルを得る手段のない農民や漁民は生活ができない。つまり、みんなドルのために働くようになるのでドルがないと何も買えないんですね。貧富の差が強烈で日雇いにでもありつければよいほう。売春婦になったり、子供は食べ物を奪い合って暴力の日々。

『スティグリッツ教授の経済教室』
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まあ、映画は解説抜きのインタビュー中心で、ドル云々、貨幣経済云々は私の解釈に過ぎません。この映画は生態系の破壊といった環境問題関連で取り上げられることが多いんですが、テーマはグローバル経済ですな。ネットで探してもそれをまともに論じている評論が見当たらないのですが、変ですな。地域通貨の論者など絶好のテーマだと思うんですがね。以前ご紹介した『使い方は皆さんが考えてください』とぶん投げたずっこけ教授はどうしてるんでしょうな。

本書を読むと実にすっきりします。自由貿易によって格差が拡がったとしてもやがて富めるものから貧しきものにおこぼれが行く、いわゆるトリクルダウン説をきっぱり否定します。確かに長期的にはそういうことがあるかも知れないが、長期的にはわれわれは皆死んでしまう、というケインズの言葉を引いて。

いわゆる市場原理主義者、米国流グローバリズムを徹底的に批判しています。IMF、ボロボロです。彼らの指導に従ったらとんでもないことになる(従った国は不況になり無視した国は栄えた)そうです。

グリーンスパンさえ批判の俎上に乗せられています。ブッシュの減税を支持したことをこき下ろしているんですね。最近グリーンスパンが著書を出していて、ブッシュ減税を批判しているのだとか、テレビ番組で紹介されていましたが、この辺の指摘を意識しているのかも知れませんね。今度翻訳が出るそうなので読んでみますかね。

スティグリッツは中央銀行がインフレに過度に警戒することを批判しています。金利を上げすぎて経済を失速させるんですな。少しインフレがあっても問題ないし、もしインフレが亢進しかけてもそれを抑えるコストなど、予防的に金利を上げて失業を増やすコストより高くはつかないそうです。

いずれアメリカの政権が変われば、こういう本書が指摘するような問題に対する取り組みが行われるんじゃあないでしょうか。単に自由にやっていれば繁栄する、という単純な保守主義は間違っていて、あるいはそういう主張は偽善に基づくもの(富者がもっと富むだけ。それをわかってて自分が得するので主張している)であって、しっかりとフェアな仕組みを作り上げなければいけない、という考え方ですな。

ブッシュの8年間は長かったし、問題も多かったと反動がくるかも。本書はその課題リストとして読めるような気がしますがね。


金融再生 危機の本質 

2007-11-12 11:44:18 | 読書
一週間ほど休暇をいただきました。

 神戸で一泊、博多で一泊、プサンで一泊、帰国して博多で一泊,神戸で一泊。こんなスケジュールで先週回ってきました。移動はバスです。昼行のですけどね。神戸から博多の間は往復とも2階建てで帰りは2階の一番前の席が取れてラッキー。車窓からは瀬戸内海がばっちり。

 飛行機でも安いものを選べば、それほど高くないのですがなぜバスか。本を読みたいのですな。旅先も着いてしまえば落ち着かず、あれやこれや。家に居てもごろごろしてしまう。午前中など何もしないのにあっという間ですな。

『金融再生 危機の本質』 日本経済新聞社 木村敬一 水上慎士

 こういう本は家で読む気になれませんよね。手にとっても眠くなる。そこでバスの中で読む。動きだしたら、何かしないといけない、という気に不思議になるんですな。

 さて、本書ですが、読書に投下する時間にふさわしいリターンは得られません。得られる人も居るでしょうが政策に直接間接にかかわっている人だけですな。中味の割りに分量が多い。学者さんがまじめに研究した成果を発表しているわけで、それなりの手続きがあって、それなりに説明が必要なのでしょう。一般人としては一々追いかけては居られないというのが正直なところです。本屋で平積みにされていますが、買って読み通す人がどのくらいいますかな。そうやって売り出すのならそれなりに中味にも通じゃない人向けの工夫がいるんじゃないですかね。

 内容ですが、さんざんっぱら付き合わされたあげく、○○の可能性がある、改善すべきかも知れない、こういう方向かも、的な示唆で終わっていて、なんじゃこら、なわけです。著者が政府にかかわっておられたこと,学者であって確定事実でないことはあくまで可能性だ,としか言えない、等、背景があるのでしょうが、やっぱりなんじゃこらですな。
 
後半にMSCBの発行に関する章があります。転換権付の社債なのですが転換価格が時価にあわせて変動して、社債の購入者は必ずもうかる(と言っていいくらいの)仕掛けになっていて、株価はあっというまに急落するというヤツですな。

 こってりとした説明の後で、既存株主の利益を損なっている可能性がある、株屋が儲けすぎているかもしれない、とかいう指摘だけなんですな。

 がくっ。あほな。あんたねー。ここまで調べておいてそれはないやろ。結論はどっちなんだ。要するに、調べるだけ調べて、結論が放り投げ状態。サラリーマン社会でこんなことやってたらどやされるんじゃないでしょうかね。それで、あんたどう思うんや。読者もそう思うでしょうな。っていうか儲けすぎでええやろ。

 学者は価値中立であるべし、ということかも知れませんが、CPAだって独立を確保した上で職業上の意見を述べるじゃあないですか。

 とは言え中味を読めば既存株主の利益が損なわれていること(この社債で資金繰り破綻を回避できれば株主の利益にもなるという極論は別として)、儲けすぎであること、は読み取れるようにはなっているんですがね。まあ、一読者としては不親切で責任回避的な書き方、と読めるんですな。もう少し書いている事象にコミットしてもらいたい、そう思うわけです。ロボットじゃないし、書いて何事かを訴えているんでしょうからな。

 さんざんくさした後で恐縮ながら、実は個人的には本書を評価しているわけでして(ただし一般書としてはお勧めしません)。 きちんとデータを拾っているんですね。そうやってここ数年の、つまり小泉政権時代の金融再生政策を追っておられます。誰それがああいった、誰それがこんなに困った、誰と誰がけんかして、みたいな本はいっくらでもありますが、本書はそういった枝葉末節でなく、ど真ん中を扱っています。

 政策の変更もあって金融支援、つまり債権売却や債権放棄を銀行が一斉に実行していったわけですが、金融支援する側、つまり銀行、支援される側、つまり債務者の事前事後のBS PLの動きを数年単位で追いかけて、どういう特質があったのか、を追いかけています。判明する事実は当たり前やろレベルかも知れませんが、やっぱりそうだったのね、とわかるわけですな。

 本書は労作なわけですが、一番印象的だったのは、実は前書きです。著者が内閣府に任用された2001年当初、不良債権を示す客観的資料がまったくなかったそうです。著者も驚いたそうですが、びっくりですな。マスコミが政府は不良債権の全体を開示していない、と批判していたと思いますが、政府もつかんでいなかったんでしょうかね。

 あり得ますよね。前回、前橋市のインフルエンザワクチンの話をご紹介しました。あのレポートの中でも、日本にはワクチンに関して学問水準を満たして調査したレポートがほとんど存在しない、とかかれています。その後をフォローしたレポートでも日本には取り上げるべき論文がなく海外の論文を調べて当時の認識、つまりワクチンに効果は薄いことを否定するだけの知見は見当たらないと書かれている。前橋レポート以外、日本では今も昔もこのワクチンに関してはちゃんと調査してないんですね。他もそんなもんだとしたら・・・。オーこわっ。

 最近、インフルワクチンを打ちましょう的なハナシをよく耳にするようになっていますが、データに基づいた根拠のある推奨なのか、かなり疑わしいわけです。

 政府には説明責任を果たせ、と吠えて見ても、政府には説明すべきことがない、ということかも知れません。反対しそうな利害関係者に根回しし、法的な手続きをクリアするだけでクタクタなんじゃあないですかね。

 こういうとこ、三流ですな。日本の基礎研究は進んでいるといわれますが、公的にかかわる部分ってめちゃ弱ってことですね。こらアカン。





シリコンバレーヘッジファンド運用記 情報が富を生む時代

2007-09-02 22:48:43 | 読書
 ご無沙汰です、と言ってしまいそうになるくらい久々です。この暑さに加えて、職場の設定温度が高く、しかも私の席が空調の関係で特に暑くて・・・。おまけに毎晩遅くなってしまい、と先月は、とほほ月だったんですな。

でも暑さはちょっと一息といったようで。テレビは新閣僚についての話題一色ですね。与謝野さんが官房長官じゃないですか。以前ご紹介した、竹中さんが論争した相手です。 

『ただ、竹中さんが総務大臣に横滑りして諮問会議の所管を外れてからは、従来の官僚主導に戻ったそうなので、結局誰がハンドリングするかによって変わってくるということですね。仕組みだけの問題ではないのです』と書かせていただきましたが、竹中さんが諮問会議の所管を外れて、その後任が与謝野さんだったわけでして、竹中さん的に見れば改革路線の後退人事といえるんでしょうね。

さて、世の空気がよろしくないようなので、こういう時は良い本でも読んで気持ちを維持しましょう。

シリコンバレー・ヘッジファンド運用記Amazonで購入livedoor BOOKS書評/ビジネス


 内幕モノか、とあまり期待せずに買ったのですが、これが実に良かったんですね。ウォール街のアナリストから独立してシリコンバレーで新興企業に投資するヘッジファンドを立ち上げて、金集めに苦労して、やがて成功して、911の前にうまくファンドも解散できていて・・・、という成功談がメインのストーリーです。ヘッジファンドと言っても基本的にはロングのみを扱い、急成長企業を見極めてじっくり投資するというまっとうスタイル。

 これはこれで面白いんですが、サブストーリーが素晴らしいんです。あるとき飛行機で乗り合わせたスイスの老投資家と会話している中でシリコンバレー企業の成長の秘密について説明するよう課題を与えられます。まあ、ファンド運用者なわけで、金を集めるには投資家を説得しなければならないわけですが、中々、うまく説明できない。サブストーリーはこの老投資家との会話をトリガーにして、ハナシを展開してゆきます。

 著者は結構、この本を書くにも野心的でして、英国の産業革命、蒸気機関技術がどう展開していったか、をたどって、現代のIT革命と比較します。著者はIT革命なんて言葉を使ってませんがね。しかも自分のエピソードを積み重ねて説明してくれます。

 89年に半導体会社のCEOから、我々は工場をもっていません、持ちたいとも思いませんと説明されて面食らった話。半導体を設計するだけで、あとは台湾に作ってもらいます。当時のAMDのCEOは『本物の男は工場を持つものだ』と言っていたそうで、今でこそ、クアルコムはファブレストップ、なんて当然のごとく言ってますが、当時は米国でもファブレス、という概念は一般的でなかったんですね。

 この辺から俄然本書は面白くなります。

 ある技術を開発した会社の話。シスコからその技術を買うというオファーが来て、20万ドルだといわれる。それでは儲からないので半導体に焼き付けてチップとして半導体一個何ドルでシスコに売ることになった。知的所有権の時代はどうパッケージするのかが大事な時代でもある、という具合です。一つ一つがしびれる話なんですな。収穫逓増の話もちょこっと触れていて(著者はこの言葉を使ってませんが)良いですな。

シリコンバレーの成長企業のポイントが実に良くわかります(といっても私がそう感じたというだけですが)。まあ、投資家の容赦ない視線でこの10年間のシリコンバレーの成長の特質を掘り出しているんですね。テクノロジーと製造とが昔は一体だったが、今は分離している、テクノロジー部分の知的所有権はまねができずに高マージン。いずれ価格が下がるが量が爆発的に増えて、限界コストは限りなく低いので、さらにもうかって成長してゆく・・・。

ただ、そこまでなら良いんですが、いつの間にかマクロ理論とごっちゃにしてしまい、結論として、

米国は知的なマージンの高い仕事をして、日本や台湾や韓国は、米国が生んだ知的所有権を活用してマージンの低い仕事をする。その役割分担は世界経済の発展に貢献する、米国民の仕事はますます人間的になり、日本や台湾や韓国も中産階級の育成、維持ができる、米国の貿易赤字はマージンの高い米国マーケットに資本収支として還流する形でカバーするので問題ない。

みたいなところに着地しています。最終的には帳尻が合う、といっているだけで理論的には無意味な意見でしょうな。この辺は余計な部分なんですが、著者がどう感じているかがマクロ理論に投影されている、という点では興味深いとこですけどね。著者はアメリカにはウォール街とシリコンバレーと投資家以外に米国人はいないと思っているみたいですな。米国の中産階級の没落ぶりについてどう考えてるんですかね。

昔、クリントン一期目の大統領選の時のブレーンでライシュさん<労務長官をされたと思いますが)、という方がいまして、諸国民の仕事という本があるんですが、似てますね。シンボリックアナリストとかいう言葉が、当時は話題になりましたっけ。知的な仕事を米国で開発することが大切だみたいな主張です。まあ、クリントン時代の政策が今、花開いているということなのでしょうが、マクロ政策との関連については批判されていたと思います。『経済政策を売り歩く人々』クルーグマンでしたっけ。あの竹中さんだってIT振興で成長をとぶち上げたことについては、その実効性を批判されていたはずですな。口の悪い人は経済学者のくせに、とか言われてましたが、当時は政治家でしたからねえ・・・。

 とまあ、このあたりの書きぶりはゆるいんですが、その分ユーモアたっぷりで読み物としてもグーです。


日の丸半導体は死なず

2007-08-14 00:07:45 | 読書
日本の半導体産業ってスゴかった、はずですな。

NHKが『電子立国日本の自叙伝』とかいう特集をやったりして、今でこそ日本の半導体は世界に冠たる状況だが、はじめの頃はこんなで・・・、とかいう番組。今、改めて観ると、ええっ、そんなに日本の半導体ってすごかったの、って感じですかね。NECの社長が大昔にテレビで、最先端の技術を台湾や韓国に移植する、とかしゃべっていて、技術の流出に心配はないのかと聞かれると、今の技術を移転することに心配はない、われわれはさらに進んでゆくので今の最先端を移しても大丈夫ってこたえていたのが、どうも心に引っかかっていたんですが。

 あの頃の判断って、昔過ぎて責任を問われることもないんでしょう。長期の戦略って当たっても外れても判断した当事者には影響が及ばないんですよね。リーダー選びなり意思決定なりの難しいところですな。

 さて,その半導体産業ですが、日本勢にかつての勢いはありません。一体どうなってんの、というときの一冊。いいのが出ました。

『日の丸半導体は死なず』 光文社 泉谷 渉著

足元の動きを鳥瞰しながら,日本の凋落と復活について個社の事例を上げながら解説してくれています。半導体メーカーから半導体製造装置メーカーに主導権が移っていたり、その半導体製造装置では日本はトップであることなんか、知りませんでしたな。日本勢では東芝が一人気を吐いていることも改めて認識。確か半導体売り上げ世界4位だったでしたかね。フラッシュメモリーに東芝はかけているんですね。ウェスティングハウスを買ったり、何かと話題です。もちろん東芝だけじゃないですよ。

いや、結構良い本でおすすめです。1000円しないで安いですしね。

さて、その東芝ですがウエスティングハウス株の10%をカザフスタン共和国の国有原子燃料会社であるカザトムプロム社に売ることにしたようですね。

ロイター8月13日

将来的にウラン供給を確保するためなんでしょうな。

これが、グリーンピース等環境保護団体から反対を受けているようです。
Greenpeace and other environmental groups have written to the U.S. Committee on Foreign Investment in the United States (CFIUS) asking them to reject the Kazatomprom bid.

The letter said the sale would undermine efforts to limit nuclear proliferation "and will give sensitive nuclear technology to a brutal, repressive and undemocratic regime, which may lack long-term legitimacy and stability".
まあ、カザフスタンのことをボロカスに言っているわけです。野蛮で抑圧的で非民主的で不安定な体制、良くぞここまで。


カザフスタンのその会社の社長がその反対について聞かれてます。
Asked at the signing ceremony about the environmentalists' letter to CFIUS, Kazatomprom President Mukhtar Dzhakhishev dismissed the challenge.

答えて曰く、
"I can only advise these people to watch Disney cartoons instead of movies like Borat," he told reporters.
ボラットなんか観てないでディズニーでも観てろ。

爆笑です。今日はこれが紹介したくてこの記事を選んだんですけどね。
ボラットて僕も知らなかったんですが、面白そうです。うーん見逃したのが残念。この映画知ったのがこの記事の最大の収穫だったりして。

ボラット wikiでの解説

さて、東芝は丸紅が離脱したのでウエスティングハウスへの投資額が当初計画より多くなっていて、どっかに売りたかったんですね。

The stake was much larger than initially planned after Japanese trading house Marubeni Corp (8002.T: Quote, Profile, Research) decided not to invest in the project. Toshiba has since been looking for new investors to share the financial burden.

その丸紅ですが、カザフスタンのこの会社に同じく首を突っ込んでいるんですな。

丸紅4月24日開示

中央アジアが熱いですね。


半導体のハナシのはずが、失礼いたしました。


『アメリカの日本空襲にモラルはあったか』その2

2007-07-10 22:44:56 | 読書
その2です。

新装版 アメリカの日本空襲にモラルはあったか―戦略爆撃の道義的問題
  • ロナルド シェイファー、深田 民生
  • 草思社
  • 1470円
Amazonで購入livedoor BOOKS書評/歴史・記録(NF)

前回、訳文のまずさを攻撃しましたが、そのことをもってのみ酷評するにはもったいない中身なんですな。

本書は極めて知的な関心の下に書かれた本で、沢山殺したからひどい、とか、謝罪しろ、とか、良心の呵責を感じるべきだ、とかの主張には一切関係ありません。

テーマは米空軍(正確には陸軍航空軍)内部で、戦略爆撃=無差別爆撃のことですがに関する道義的問題がどう取り扱われていたか、なんですな。

①そもそも、軍隊は命のやりとりをする集団であって、殺害そのものの善悪を問う道義的問題を取り扱うことに無理がある(国際法違反かどうか、等ならわかる)。
②同様に軍隊は自分の命を犠牲にして戦っており、当然ながら敵国民の命について配慮することの優先度は低くなる。

そんな中でも、道義的問題に関する議論は行われていた、という驚きから著者の調査が始まり、調べた結果、ある程度の議論が行われていたことは分かったが議論は不十分だった、というのが本書の結論です。テーマそのものはトライするに足るチャレンジングなものだし本書はそれに成功していると思います。

本書によると、当初は英空軍も独空軍も戦闘員と非戦闘員を区別していました。しかし、空軍基地等の軍事標的だけを空襲しても戦果が上がらない。

精密に標的を設定してもうまく爆弾があたらないし犠牲は大きい、という中で、次第に攻撃しやすく(なんせ広域無差別に居住地に爆弾を落とすので外す心配が無い)、抵抗も少ない(軍事基地よりはるかに守りは手薄)都市攻撃に重点が移っていったんですね。この辺、本書で読まないと分からないことですな。攻撃しやすく戦果を強調しやすいから無差別攻撃なんて、唖然としますが、現場の指揮官からすれば現実的な問題です。戦果がなければ更迭。部隊の士気も下がる。でどうするか、ってことですね。

米空軍は英空軍に同調せず、精密爆撃を実施していましたが、やがて同じ問題にぶつかります。派手に都市攻撃で暴れまわる英空軍に対し戦果いまひとつの米軍。やがてなし崩し的に無差別攻撃に加担してゆく。

その動きには、やはり抵抗勢力が軍内部に居まして、そもそも無差別攻撃に戦略的意味がない、という主張です。一般市民への攻撃が敵戦力を弱めることにはつながらず、返って憎悪を通じて士気を高めてしまう、と冷静に分析していました。そんな無駄なことに戦力を使うな。正論で、当初は米空軍内部でもこれが多数派だったんですな。ただし、抵抗勢力も同義的な問題から反対しているのではないんですがね。著者は表立って道義問題から反対していないことを再三指摘します。当時、米軍関係者は無差別爆撃に対し各人が後ろめたさを幾分感じたにせよ、正式に道義問題を理由に反対はできなかったんですね。

本書はこのあたりの米空軍内部での意見対立を丹念に追っています。ここが真骨頂なんですな。残念ながらこの翻訳では誰がどっちなのか、時々わからなくなるんですけどね。

ルーズベルトは『ドイツ国民全員がドイツはこのたびの戦争で敗北したと認識することがもっとも重要である』として、無差別爆撃を言外に容認し、ドイツ、日本での爆撃効果を分析する機関の設立を指示します。

政治リーダーとして敵国民にヤキを入れることを望んだわけですね。
政治と軍の関係は本書のテーマではありませんが、大統領と国防長官の発言、思考はきっちり追いかけています。スティムソン長官が最後まで無差別爆撃に否定的でしたが事実上見て見ぬ振りをしていたこと指摘しています。

戦争末期になると、無差別爆撃も先鋭化してゆきます。

東京空襲の際には消防機能も無力にして徹底的に都市を焼き尽くすのに必要な爆弾投下密度について、実際に日本住宅を建てて燃やす実験してまで試算したそうです。

そして原爆。

原爆をめぐっての意見対立についても触れています。原爆はさすがに開発者も含め道義問題が表に出てきて議論されることになりますが、それを追いかけています。本書は道義問題がどう取り扱われたかを網羅的に論じる歴史研究の本なのですよ。テーマからしてどっちが良い、悪いを論じているんじゃないんですな(本来は)。

核時代の道義的問題。軍の状況を踏まえた上でしっかり書かれてます。

そして、

『全体としてアメリカ人は戦争中に生じた同義的変化(無差別爆撃を容認するようになったこと)を軽視し散発的な関心しか示さなかった。しかしながら科学技術のなすままに任せてそうした変化を無視し続けたり慎重に思考すのことなくそのような変化を受け入れることが極めて危険であることは今や明らかである』

というのが本書の結論。

本書があまりに読みにくく、かつ扱うテーマから内容を誤解されやすいので、今回は筋を追ってみました。

読みにくいおかげで何度も何度も読み返すことになりました。

これ、本屋さんの深慮遠謀? だとしたらさすが!!

なんて、言うわけ無いだろっ。