会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

日本マクドナルド5

2007-03-18 19:04:33 | 飲食
先日の日経に、原田社長のインタビューが出てました。業績が上がっているので名経営者の仲間入りですかね。そういえば、著書もだされたようで。

インタビューはというと、ちょっと驚きましたが,これからはフランチャイズ店の比率を高めてゆくそうです。つまり直営店を減らすということで、既に高知県には直営店が一軒も無いそうです。いやはや、理屈から行けばそうするのが良いんでしょうね。

米国マクドナルドのフランチャイジーとして日本マクドナルドが存在しロイヤリティを払う。日本マクドナルドのフランチャイジーとして日本全国の店長がロイヤリティを払う。日本マクドナルドは直接の店舗経営を止めてゆき、フランチャイズ管理を行う形。そうしておけば、受け取るロイヤリティが収益の柱になって、そのロイヤリティは売上に連動するんですな。原田社長も,その方が利益が安定する、と明言なさってます。

これ、米国マクドナルドにやられていることを、そっくり日本でやるってことですね。こうしておけば、日本マクドナルドも値引き安売りによる売上の極大化をはかることが自らの利益につながるわけで、米国マクドナルドとの利益相反はなくなります。利益より売上,という選択に矛盾がなくなるんですね。

自らが置かれていた、生かさず殺さず状況から脱して、日本全国のフランチャイジーにその立場を移転できますね。これはうまい戦略です、というかこれしかないんでしょう。

本書では、フランチャイズ店長からも取材していて、客寄せのコーヒータダ券を大量にまかれて収益を圧迫、あちこちから悲鳴が聞こえている、のだそうです。利益より売上、という施策のひとつというわけですね。藤田時代は社員から独立する、という道が一つのキャリアパスとしてあったのが、今は希望者が減っているんだとか。

まあ、本書のテーマがテーマだけに、苦しい社員や苦しいフランチャイズオーナーを選んで取材しているわけで、儲かっているオーナーやいい目にあっている社員も当然いるわけで、その辺は割り引いて考えるべきですが。原田社長は下何割をのぞけばフランチャイズも順調だ、みたいなことをおっしゃってます。厳しい批判を意識して、無能なんだから仕方ない、と反撃しているような。本書は原田社長を米国の意向をそのまま実行する冷徹な経営者として描いているので、読んだあとではそういううがった見方をしてしまいます。

ただ、本書は告発本ではありません。これからの来るべきサラリーマン社会がどうなってゆくのか、マクドナルドを見てれば良く分かる、ということ。

管理職の報酬が減らされ、いやなら止めろ、残業手当てがつかず、退職金が出ない。本書は触れてませんがフランチャイズ化、というのはサラリーマンの自立化、という流れにつながるのかも知れません。自力で生きる、とその気になって採算ぎりぎりで踏ん張らされる、とか。

藤田時代の『会社は家族』主義から、『原田社長』という適材を得て米国流の市場主義に劇的に転換した日本マクドナルドに,日本サラリーマンの将来を見ているわけです。

ぞぞぞーっ。




日本マクドナルド4

2007-03-04 23:47:59 | 飲食
中々、サラリーマン社会の終焉という本書のテーマに到達しませんな。

いや、本書には看過できない事実が書かれていて、しかもさらっと触れているだけでして、どうしても突っ込みたくなるんですね。

『マクドナルド』というのは一大テーマなのですよ。かつて米国でミドルクラスの崩壊、生活水準の低下が叫ばれていた頃、随分前のことですが、『その代わりマクドナルドの店員のような職は増えている』とか、最後にコメントがついたわけです。

 米国社会の変動のかつての象徴,そして、日本においては外食チェーンの草分けであり、アメリカンウェイオブライフの象徴であり、計算されたマーケティングやオペレーションは業界のお手本であり・・・。

株式上場に関して本書で書かれているのは、

①藤田氏はもともと上場には反対であった
②藤田氏は、個人会社の藤田商店を持っていて、日本マクドナルドから売上の1%を経営指導料として取っていた。
③米マクドのロイヤリティも当初は1%だった
④米マクドとの契約更改交渉の結果、米マクドのロイヤリティは2.5%に値上がりした。
⑤藤田商店の指導料は0.5%に下げざるを得なくなった(でなければ経営が成り立たない)
⑥米マクドとの契約では2010年からロイヤリティは2.5%から3%にさはらに上がる
⑦藤田氏はその時点で藤田商店の経営指導料はあきらめざるを得なくなると判断、上場し創業者利益を得ることにした(のだろう)。

ということです。要するに、3%も米国に抜かれてしまうと、オーナーでいるうまみがなくなる、と藤田氏は判断したんだろうというわけです。

もともと米マクドと藤田商店とで2%抜いていたものが今は2.5%米国に抜かれています(一時期藤田商店の0.5%と合わせて3%抜かれていましたが、今は藤田商店との指導関係は解消しています)。2010年からはまた3%になるわけですね。

H13年の短信です。31pに前年と当期のロイヤリティについて説明があります。

※※※
(前年)
1.当社はマクドナルド・コーポレーションとライセンス契約を締結しており、その契約に基づきシステムワイドセールス(直営店舗とフランチャイズ店舗の合計売上高)の1%を支払ロイヤルティーとしております。
2.当社は㈱藤田商店と経営役務契約を締結しており、その契約に基づきシステムワイドセールス(直営店舗とフランチャイズ店舗の合計売上高)の1%を支払マネジメントフィーとしております

(当期)
1.当社はマクドナルド・コーポレーションとライセンス契約を締結しており、その契約に基づきシステムワイドセールス(直営店舗とフランチャイズ店舗の合計売上高)の2.5%を支払ロイヤルティーとしております。
2.当社は㈱藤田商店と経営役務契約を締結しており、その契約に基づきシステムワイドセールス(直営店舗とフランチャイズ店舗の合計売上高)の0.5%を支払マネジメントフィーとしております
※※※

 
ロイヤリティと上場問題に何故こだわるかと言いますと、これはいろんな問題を考える上で良いモデルになると思うからです。ブランド価値、資本の価値、労働者の提供するサービスの価値。

藤田氏は米ロイヤリティを値上げされたために、信念を曲げて上場に踏み切らざるを得なかったわけです。自分の取り分が無くなることになるので、自分が育てた会社に見切りをつけたのですね。ロイヤリティを取れないならオーナーで居てもしょうがない。これが結論。

米マクド関連以外の一般株主にとっては良いつらの皮ですね。

米マクドも日本マクドの株主ではないか、というご意見もあろうかと思いますが、ロイヤリティを取ってないなら一般株主と利益は共通ですがね。配当やキャピタルゲインで儲けるんなら良いですが,そんなもの最初からあてにしていないでしょうな。ロイヤリティ増やすことに一生懸命なわけですからね。

支配権を持っているのだからロイヤリティを下げて配当で利益還元を得るという選択肢が米マクドにあるでしょうか。多分ありません。配当に回る前に利益の半分近くが税金で持っていかれますからね。ロイヤリティが0円だとして今年の経常利益が150億円だったとしましょう。税引き後100億円行かないですよね。ロイヤリティで抜く方がはるかに額が大きいわけです。

こういう一般株主と支配株主との間で利益相反がある上場会社ってどうなんですかね


次回は本書のテーマたるサラリーマン社会の終焉についてをテーマにします。ようやく本題にたどり着いた感じですが・・・。

もう本題の方は良いかな、なんちゃって。




日本マクドナルド3

2007-03-02 01:00:52 | 飲食
さて、現在の日本マクドナルドは米国マクドナルドの支配下にあるわけです。支配下というのは米マクドナルドが大株主という意味ですな。で、ですが日本マクドナルドは米国マクドナルドにロイヤリティを支払っています。

幾らかって?

2.5%です。2.5%。何の2.5%か。売上です。そうかたった2.5%か、消費税が5%なのと比べると安い、と思ってはいけません。

06年に日本マクドナルドが米マクドに払ったロイヤリティは、110億円です。売上が3千億円以上あるので、2.5%とは言え巨額になるんですね。さて、この額が問題です。増収増益を達成した日本マクドナルドの06年経常利益が幾らだったか。

はい。57億円です。ごじゅうななおくえん。五公五民ならぬ十公五民ですな。民は生かさず殺さずってところですかね。それにしても・・・。

1年前、05年なんかもう笑ってしまいます。ロイヤリティが103億円。経常利益は、29億円でした。まあ、利益として認識される前に米国に流れてしまうのですね。日本の株主や税金に落ちる額は半分以下になってしまいます。まあ、株主といっても半分以上米国マクド関連なわけですがね。

ちなみに日本マクドナルドの労務費は売上の2.5%。マクドナルドの社員、パートにかかる費用と同じ額がロイヤリティで支払われるんですね。ただ、労務費は最大の費用項目ではなくて、広告宣伝費、販促費の方が大きいんですけどね。

06年の短信を上げておきます。

米マクドにとってこのロイヤリティはおいしいですね。本書でも触れていますが、ロイヤリティは日本マクドナルドの売上にかかるのであって、利益にではありません。日本マクドナルドの支配者たる米マクドがロイヤリティの極大化をはかろうとするならば、売上を極力伸ばす戦略を日本マクドにとらせることになります。日本マクドナルドの利益を少々犠牲にしても、売上げを伸ばせば良い。利益を削っても値段を下げて売上を増やしたい、そうしたインセンティブが働くわけです。

マクドナルドの極端な低価格戦略はそういう眼で見ると分かりやすいですね。本書の第一章は『低価格路線は藤田のオリジナル戦略ではなかった』という項目から始まります。では、誰の戦略か。明らかですね。

本書では上場までの出来事を時系列で追っていて、ここで書いているような主旨について整理して書かれているわけではありませんが。

上場に消極的だった藤田氏が、上場に決断する背景にこのロイヤリティの問題があるわけですが、それは次回にて。