会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

リーダーズダイジェスト リップルウッドが買収1

2006-11-20 23:38:34 | ターンアランド
リーダーズダイジェストと言えば、昔、英語の勉強のために定期購読していたことがあります。日本語版も時々は買ってました。本屋に行くと専用の棚があって。流行っている小難しい本の要約が載っていて、何となく知的な雰囲気を漂わせていました。突然日本語版が休刊になって従業員ともめていたんでしたっけ。

さて、そのリーダイがプライベイトエクイティに買われることになりました。最近こういう買収のニュースが多いですね。今日の日経夕刊にもこの件ではありませんが取上げられてましたな。

さて、問題の買収ですが、これですね

New York, Nov. 16 --Reader's Digest Association Inc., which publishes the namesake magazine, said Thursday it has accepted a takeover offer valued at 2.4 billion dollars, including assumption of debt, from a group led by private equity firm Ripplewood Holdings LLC.

あの長銀を買ったリップルウッドではないですか。24億ドル。ざっと2千8百億円ですか。負債込みですが大した金額ですね。

こっちの記事がまとまってていいですなあ

1.6billionで買う、と始めの方にありますが、後で負債額がでてます。合わせて2.4billionと言うことですね。

記事を細かに読むのは止めて、IRをのぞいてみましょうか。

PLの推移ですが、ここ数年売上は横這いです。いろいろ買収したり、新しい雑誌を出したりしていながらも苦戦しているわけですね。

なな、なんとここ2年赤字です。以下左から06年6月、05年,04年です。単位百万ドルです。

Income Before Taxes -86.60  -79.40  66.10

強いブランドを持っていて顧客の強く継続的な支持が期待でき、投資負担の小さい会社,例えば新聞社のような、といってたのはバフェットでしたが、リーダイなんてそれに当てはまりそうですが。何で赤字なんですかね。赤字会社をリップルはどうする積もりなんですかね。

gross profitは58%もあります。これって儲かる良い商売に見えますなあ。何かが負担になってるんですね。

06年6月期の10kから抜き出して見ますと、

Revenues $ 2,386.2
Product, distribution and editorial expenses (997.1)
Promotion, marketing and administrative expenses (1,240.0)
Goodwill charge (187.8)
Other operating items, net (6.8)
Operating (loss) profit (45.5)

ははあ、分かりました。Goodwill charge これですな。これはcash outを伴わない減損ですね。何を処理したんでしょうね。

37pにありました。

Goodwill Charge
We are required to assess the recoverability of goodwill and our indefinite-lived intangible assets at least annually.
Due to a shortfall in Books Are Fun’s operating performance relative to our expectations during its peak selling
season, we recorded a charge of $(188) in 2006 to write off its remaining goodwill. Similarly, in 2005 we recorded
a goodwill charge of $(129). The fair value of Books Are Fun was determined by a third-party appraiser using acombination of discounted future net cash flows and an assessment of comparable companies in the marketplace.

いろいろと勉強になりますな。いちいち第三者に評価させて減損させてるんですね。Books Are Fun って最近落ち目みたいですが、かつて買収したってことですかね。

というわけでcashflowを見ると黒字ですね。

Net change in cash due to operating activities 47.7

簡単に、ホントに簡単に計算して、この50百万㌦に金利と配当計60百万㌦を足すと110百万㌦。合理化で2年前の営業Cashflowまで改善できれば170百万㌦+60百万㌦で230百万㌦。買収額の10分の1には足りませんが、段々良い感じになりますね。

コストカット、不採算事業からの撤退、売却,これからどうやっていくのか分かりませんが、成算があるんでしょう。きれいにexitできるものか、興味津々ですね。






ジャックウェルチ わが経営

2005-06-05 02:48:34 | ターンアランド
『わが経営』上・下
日経ビジネス人文庫 ジャックウェルチ 

 最近、『わが経営』の文庫本が本屋で平積みに
 なっているのを良く見かけるので、買ってしまいました。

 ハードカバーのころから気にはなっていました。
 日経の『私の履歴書』にもウェルチは書いていて、
 これは読んでましたが、 成功したら、すぐに本を出す、
 それに飛びつく、というのが嫌で敬遠。

 さて、本書を読んで。
 ちょっと読みにくい本です。文意が取れない部分も多く、訳が悪いのか、
 もともとの文が悪いのか。内容的には、

 ①オーディターの役割強化
 
 この問題には軽く触れるだけで、詳しく書かれていません。
 以前紹介した本で、オーディターがコンサル的な動きをして
 経営改善をしてゆく話しがあり、ウェルチ流だと書かれていましたが、
 本書では本当に軽く触れられているだけです。

 ②人事
 
 ウェルチのこだわりの大部分を人事が締めている感じです。
 下位10%を必ずクビにする。これを毎年繰り返すことで、
 組織のレベルが維持されてゆく。これを徹底します。

 ウェルチは人を最優先事項においているようです。
 すなわち、事業は人で決まる。どんなに良い戦略や
 仕組みを用意しても、最後まで責任を持って取り組むリーダーが
 居なければ成績は上がらないからです。
 
 官僚制を廃し、現場のアイディアを取り上げ、実現してゆくことに
 ウェルチは情熱を注ぎます。

 現場主義、人を大切にする、という点では日本的でもあり、
 ダメ社員を容赦なくクビにする点では米国流です。

 有能な人でも失敗することはあると思いますが、それでもクビにするんでしょうか。
 
 ③ウェルチその人

 かなりエグイこともあったようで、
 わかいころ、幹部をしていた事業部のCEOにしてくれと
 何度も上司に電話したり、押しまくっています。
 
 大のゴルフ好き。
 日本の経営者はヒマがあればゴルフばかりしているとかつて
 批判されていましたが、ウェルチはゴルフ狂です。
 社内でもコンペがあるようで、日本の会社みたいです。

 ④その他
 
 CEO選抜方法がすごい。
 ウェルチが決まるときもそうですし、彼の後任を決めるときもそうです。

 厳しく、公正に、何を基準に選ぶかを吟味して、最終的にウェルチが決断しています。
 (勿論、ボードが投票して決めてますが、ウェルチの決断を追認した形です)。
 ウェルチ一人が考えるのではなく、人事担当と一緒に厳しく吟味。何度も面談を繰り返し、
 人の組み合わせ、政治の排除にも配慮します。

 かなり合理的な選抜方法だと思いました。日本の大企業とはかなり違いそうです。

 シックスシグマ

 これもウェルチのこだわりの一つです。
 最初は、社内の支持が得られず、各事業部が、
 研修に最優秀の人を出してきませんでした。

 ウェルチが怒り、ストックオプションもシックスシグマ
 の研修を受けている人だけに絞ったりしています。

 こうしたものに、最初は支持が集まらないのは洋の東西を
 問わないようで。しかし、これを跳ね返したウェルチのリーダーシップ
 は素晴らしいですね。

 シックスシグマについては薄い本を読んだことしかありません。
 もう少し研究したくなりました。

 ⑤もうイッチョ

 米国の一流大企業、がどのような改革を進めたのか。
 企業が再生し、ミドルクラスが没落してゆくという大きな
 流れの中で、どんなことが起きていたのか、という観点から
 読むこともできます。

 たとえば、ウェルチはインドの事業部の社内の位置づけを
 上げたことに言及しています。
 


 

マクドナルド 新価格体系

2005-05-04 10:28:34 | ターンアランド
 
 
 ゴールデンウィークでマスク2を観てきました。 ダメでしたね。お勧め度はかなり低い。

 映画を観にいくときは時間調整でよくマクドナルドに入ります。昨日は観る前、後と2回も入っちゃいました。コーヒーとマックチキン、コーヒーとホットアップルパイ。これが、各アイテム100円づつで、全部で400円。これは安いです。コーヒー一杯100円は業界最安値ですね。バーガーはチキンとチーズバーガーは100円。むかしの60円よりは高いがそれでも安い。プチパンケーキも100円です。ちょっと時間つぶしに入るにはいいですね。

 私が入ったときに、となりのにいちゃんもマックシェイクを頼んでました。シェイクも100円なんですね。都心のもともと多忙な店なので、新価格前から混んでました。客が増えているかどうかよくわかりません。しかしいい感じです。業績がもっと上がるかも。地方や郊外のがら空き店に客が戻ると良いのですが。

 もともと、マクドナルドの不振は、行き過ぎた値下げで原価率が上がってしまったことも原因の一つです。今回の安売りで従来より原価率アップは当然発生。これを補うだけの売り上げ増につながるかどうかですね。私のような、以前から100円アイテムだけを頼む客は赤字ですかね。

 マクドナルドにいる2時間で本をほとんど1冊読んでしまいました。

 『光の医学』という本で、光や色がいかに人にとって大切かを滔々と説いています。
人工光の弊害光治療の実績など。結構まじめな本なのですが、『人間も光合成をしている』という研究者の主張なども紹介しています。インドに居る『不食』の実践者が『自分は太陽光を食べて生きている』と主張しているという記事をネットで読んだことがありますが、あながちでまかせでもないということでしょうか。

 この本の著者は、『近視は治る~めがねをはずそう』という著書もあり、本書はもう少し大きなテーマを扱った本です。『近視は治る』

『不食~人は食べずに生きられるか』

稲盛和夫 高収益起業の作り方

2005-05-03 11:01:05 | ターンアランド
【実学・経営問答】高収益企業の作り方
稲盛和夫 日本経済新聞社05/04/01 1版3刷

 稲盛さん関連本は、『イナモリズム』、徳で導く、出家、熱烈な支持者、と何となくうざい感じが漂っていてずっと敬遠してきました。お説教臭い。大きなお世話、金儲けと倫理をつなげるな、という反発心は、若者なら共通して感じるでしょう(私は若者とは言えない年になってますが)。

 ところが、読んでみるとこれが実に良いのですね。

 私が最初に読んだ稲盛氏の本は『実学』です。
 稲盛さんが創業期に会計をいかにモノしていったかが詳しく書かれています。

 利益が出ているのに現金が無いのはなぜだ、という基本的な疑問から始まって、それはいかんから、会計を直す(耐用年数を税法ベースから京セラベースに変えたりします)、業務を直す、とフィードバックさせてゆきます。

 会計を応用し、材料をまとめて買って単価を落とすのではなく、単価は上がっても細切れに必要なだけ買う、というのはトヨタ式や、『ザ・ゴール』を彷彿とさせます。極めれば行き着くところは同じ、ということでしょうか。

 稲盛さんは『アメーバ経営』に行き着くのですが、業務を最小単位に分けて採算を出して行き、そのユニット毎に管理してゆきます。一つ一つのユニット=アメーバが経営体ということで、管理面だけでなくリーダー育成にもなりますね。やる気の無い一人にはつらい職場でしょう。

 成果主義に対して稲盛さんは否定的です。成果にはカネではなく名誉で報いるべし。利益がでれば皆で分け合えと。最近の流行に真っ向反対ですが、稲盛さんの言葉にはどこかホッとさせるものがあります。とはいえ、悪しき平等主義の弊害に稲盛さんはどう考えているのか聞いてみたい気もします。

 本書は、稲盛さんの短い文章に続けて、稲盛さんの成和塾の塾生との一問一答を載せています。

 いずれもいい感じ。

 稲盛さんは、社員とはコンパと称する飲み会で意思疎通をはかるんだそうです。

 ドンちゃん騒ぎをするんだとばかり思っていたら、そういう飲み方をしたら叱られてたたき出されるそうで、心静かにうまい食事と酒をいただきながら、稲盛さんの話を聞く会なようで。むしろ、社長主催の酒つきのお食事会という感じでしょうか。こういうガス抜きでない酒の飲み方は素敵だと思います。しかし、勘弁してくれという意見も半分以上ありそうですね。

 でも、これは稲盛さんのおごりだそうです。



 

『起業バカ』

2005-04-24 22:35:40 | ターンアランド
『起業バカ』
渡辺 仁 光文社ペーパーバック 05/04/30 初版一刷

 最近起業ブームです。
 
 『金持ち父さん貧乏父さん』から始まり、ホリエモンあたりに続く流れの中で、やってみたら簡単なのに、恐怖感やカネに対する罪悪感から行動に移せない、という指摘が多くの人に影響しているのではないでしょうか。

 で、本当に簡単なのか、現実はどうなんだ、という観点からまとめられたのがこの本。

 これは読まずには居られないと、早速買いました。

 失敗例がドシドシ紹介されています。そしてサラリーマン上がりで何の準備もなく起業なんて、なんて甘いんだ、となります。

 特に多い失敗例として、フランチャイズ契約をあげてます。素人は悪質なFCにひっかかりやすい、よく契約書も読まずに判を押してしまい、いざ脱退しようとしても解約料やすでに払った契約料が惜しくて撤退できず、赤字垂れ流し。本部への上納金が重くのしかかる。悪質FCはろくな指導もせず、FC契約料だけが目当てで、つぶれるのは各オーナーの責任に押し付ける。

 コンビにでも新規出店と廃店でスクラプアンドビルドをやって利益を継続させなければならないわけですが、廃店の陰には失敗したオーナーがいるというわけです。

 四季報にコンビニの廃店数などがのってますが、その陰で死ぬ思いをしている人たちが居ることを知りました。

 本書には起業ブームの陰で暗躍する詐欺師や、パートナーに食い物にされる例や、甘い見積もりのまま突っ走る例、パートナーとの内輪もめなど、躓きやすいポイントが例をあげて説明されています。

 読後感じたことは、素人が起業するとマーケティングが弱いこと。これは狭い意味での市場調査だけでなく価格設定や、原価の管理、商品性の追及等、商売そのものの設計、実現性とのバランスを含みます(テキトーな議論で申し訳ありません)。
 
 随分安易に虎の子のウン千万円を失う中高年が多いことを、著者は嘆いています。


日本航空のミス続発

2005-04-18 00:30:26 | ターンアランド
 今日も、日航のミスが報じられています。
 油圧系のトラブルとか。

油圧系トラブル

14日には、
ミスの原因についての報道があったばかりです。

 この『定時出発率』は米国のコンチネンタル航空がターンアラウンドの際に、一つのメルクマールとして使った指標で、この指標に関する目標を設定して、クリアしたら、全員にボーナスを配るとCEOが約束して従業員の奮起を促しました。

 コンチのターンアラウンド

コンチ建て直しに日本人活躍

 果たして、JALに定時出発率に必死になる必要があったかどうか。

 コンチはかなりひどかったわけで、これを改善する意味があったと思われますが、JALは遅れたり事後対応がいい加減だったりする評判はむしろ少なかったはずで…。

 JALは外資と違い、安全や、サービスの質が評判なわけだから、そっちに重点をおけばよかったのに、と思うのは私だけでしょうか。

 今回の一連のトラブルでJALはかなり評判を落としました。いわばJALだから安心、という売りを失ったわけで、ちょっと心配ですね。

 

不動産価格はさらに5割下がる?

2005-04-10 12:53:09 | ターンアランド
土地の値段はこう決まる
井上明義 朝日新聞社 05/02/25第一刷

 著者は三友システムアプレイザル社長。不動産鑑定の大手。

 不動産を売るべきなのか買うべきなのか。この辺は難しいところです。

 失われた10年の後、景気復活、インフレ、と連想してやがて資産価値も上がってゆくだろう、と考える人も多いようです。株価はゆっくりですが、着実にあがってきており、それなりに説得力があります。

 それが、著者は、次の5年で不動産価格はさらに半分になる、と予言。

 土地の価格はまだまだ下がる

 あな、恐ろしや。このリンク先で書かれている、高級マンションの値崩れや、銀座、青山などの本当に値が上がっている地域(これらは最近テレビでもやっていますね)が少ないこと以外に、本書ではさらに、人口減少、郊外から都心への回帰減少による郊外価格の下落(これは都心値下がりと矛盾しますね。都心の値下がり圧力とどっちが強いかですが、著者は都心も一部を除き値が下がると見ています)、地方の土地は下げ続けていること等にも触れています。

 著者は基本的に、今の不動産バブル(とまで著者は呼んでいませんが)を不安視しています。外資系がかつての邦銀のように過大評価で金を貸し込んでいるのではないか、とも。不動産は、単純に売買実績の価格だけでは決まらない(個別事情に左右されるので)、単純な利回り計算だけで決めてもいけない、日本の不動産は他の金融資産との利回り比で値がついたりするものではない、外資はそれがわかっていない、とか。

 とはいえ、REITやら、新しい手法によって、利回り比較による資金の流入にも触れており、著者としてはこのあたり、微妙な感じです。一概に否定できるわけありませんね。

 外資系といえば、テレビでも外資系のファンドが不動産を買いあさって、価値を高めて売り抜ける手法を紹介していました。話しは違いますが。

 著者の立場は、既存の不動産鑑定業界を破壊してきたというチャレンジャーであると同時に、20年以上不動産の鑑定に、しかも大手金融機関とともに関わってきたという権威者でもあります。丁度、この微妙な立場が、本書を面白くしています。
 
 本書では、他にも不動産鑑定業界の内情や、競売市場の分析等、中々面白いです。








ターン・オーバー/企業を再生させる逆転の経営システムIAC

2005-04-04 00:59:43 | ターンアランド

ターン・オーバー
フランシス河野 講談社 05/03/25第一刷

 企業再生本の一冊。

 『IAC』を著者は提唱していて、これはinternal audit and consultingの略です。

 社外にコンサルを求めるのではなく、自前の組織でやるわけですが、それを監査機能と融合させるというものです。監査で単に不備を指摘、改善するのではなく、その中で、業務の改善(そこにはオペレーション改善だけでなく、マーケティング分析や、そこから導かれる企業買収提案まで含まれる)を提言するというもの。ここまで範囲を広げると、単なる監査部門というより、経営直結のスタッフで、幹部養成部署でもある、とか。

 そういえば、citibank日本法人の建て直しに、グローバルオウディター出身者が就任したとの記事を以前紹介しましたが、オーディターが経営改善機能を持っている(そして、そこには幹部候補がいる)というのは、米国企業では一般的なのでしょうか。

 GEのウェルチもこの考え方で業務改善を進めたと本書には書かれています。

 もともと、IACは、日本企業が80年代に素晴らしいパフォーマンスをあげて、米国企業が太刀打ちできず自信をなくしていた状態から復活するために生まれた考え方とのこと。

 まあ、監査部門にその機能を持たせることが大事なのではなく、組織横断型で、かつ、徹底した分析、コミュニケーション、説明責任、を負いながら、改善そのものに責任を持つ部署を設けるという点がポイントでしょうか(実際にはCEOに報告し決断を仰ぐ)。

 本書では、日本企業の経営手法に鋭い批判が向けられています。というよりは、日本企業に無いのは経営能力だけ、と手厳しい表現。日本で出世するには、上司に脅威を与えずかわいいことが条件で、かつ、能力があることもそれとなく示すことが必要で、とか。

 ちょっと引用すると、

 日本の会社は、仕事を定義し、必要なスキルを明確にし、その値段をはっきりと示すことをしない。本来、経営者が気を入れて方針を出せば解決する問題を、現場同士が延々と議論して手間とコストをかけ、しまいには傷つけあって無気力になってゆくのを見て見ぬふり…。

 日本企業にはマネジメント力がないだけで、他はきわめて優秀とのことで、マネジメント力がつけば、また復活できるということでもあり、著者は日本でIACの普及活動をしている。最初は相手にされなかったが、徐々に支持者が増えているとか。

 著者は日本人で、渡米してMBAを取得後、TRWでIACの創設メンバーとなり、実績を上げた後、帰国した人。本書は読みものとしてもかなり面白いのでお勧めです。

 

降格人事・役職交代の進め方

2005-03-29 00:49:16 | ターンアランド
降格人事・役職交代の進め方
廣岡久生 パル出版04/05/7初版

 前回の『クビ論』に続く人事関連本。
 
 本書では、役職定年制、役職任期制などを解説。
 その他、日本の人事制度の問題点を指摘。
 人事部が力を持ちすぎている等、最近よく話題になる事柄にもページを割いています。

 ただ、概論や、問題指摘(こうしないとこうなりますレベル)なので、本書では考え方を整理する程度のところまでしか進めません。ただ、論点がどこにあるか、位はわかります。

  あらかじめ降格を考えて、社内では人を呼ぶときに○○部長と肩書きでよばずに、さん付けで呼ぶと良い、とか書かれているところは、中々生生しい感じです。概論が淡々と書かれている中に、時折こうした鋭いアドバイスが入っていると、ドキッとします。

 本書で勧めているのは、役職任期制。2年だとか3年に区切ってリーダーを決める。
 終わるとまたもとに戻るわけだが、手当ての固定化を防ぐことができます。
 (本書はケーススタディがないので、イメージがわかないが、アイディアとして面白い)

 おそらく、不調な日本企業で、人材の滞留、若手の不活性は深刻なはず。
 こうした制度はターンアラウンド手法の一つとして有効に違いないですね。

  

「クビ!」論

2005-03-27 12:36:35 | ターンアランド
「クビ!」論
梅森 浩一 (著)  朝日新聞社

 クビ、とかかれるとドキっとするのはサラリーマン根性が染み付いているからでしょうか。
 
 本書は、著者が外資系企業での人事体験(クビにする側)の経験談、ノウハウ、提言、をまとめた本です。

 『日本企業対外資系』での人事の考え方の違い(=人事リストラのやり方の違い)、『日本人対外人』のクビを言い渡されたときの反応の違い、をスパっと図式的に整理しています。

 日本企業は何でも一律にやってしまう(早期定年制度、報酬カット)が、それがもとで優秀人材が先に抜けてしまうという欠陥があるが、外資は人をまとめて考えることはなく、あくまで個人で、あくまでいらない個人を銛でつくようにやめさせる、という違いがある、

 ただ、外資の制度にも問題があり、ボス次第であること(気に入られなければ捨てられる)、そのボスが自分の地位を保全するために有能な№2を次々にクビにすることがある(取って代わられないように)こと、などを防げないことがあります。

 クビを言い渡されたとき、仕方がないとあきらめるのが日本人で、いろいろと条件をつけて少しでも有利にやめようとするのが外人。外資系に務めていて半分外人のように見えても、いざクビになるとはっきり日本人と外人では態度が別れるとか。

 著者の言う外資系とは米国系外資系です。

 欧州系はもう少し日本的で長期的人材育成も観点に入れていると聞いたことがあります。

 クビにするやり方(クビになり方)がどう変わるかを観てゆくことで、経営がどう変わって行くのかをはかることができるんだな、ということが本書で良くわかります。

 人事は経営そのもの、ですか。