会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

隠蔽か黙殺か ~封印された汚染マップ~

2015-01-18 07:47:31 | 政治
福島原発事故の直後に、60ミニッツが報じた米国の日本へのサボートについてアップしたことがありました。災害の悲惨さや、危機がどれほどひどいか、リスクはどこにあるか、よくまとまっていて、事故の直後にも関わらず、かなり正確に事態を報じていました。

米国の原発事故サポート

それに,日本側があまり事故の状況をつかんでいないことも、説明されていました。

で、この動画なんですが、

隠蔽か黙殺か ~封印された汚染マップ~


米国は専門家を派遣して状況を把握、そのデータは日本政府にも提供したこと。
そのデータが使われることがなかったこと、

等が報じられています。

米国政府の宣伝臭がしてしまうくらいな内容になっていますが、日本側に反論できる材料も無さそうです。

こういうドキュメンタリーが随分時間が経ってから、歴史として掘り起こされるしかない点が残念。直後だともっと意義のある番組になったんでしょうな。

ネタ元は全部米国発で、それを日本の関係者のインタビューで跡づけているんですが、直後でもできたんじゃなかろうか。60ミニッツの後追いもやれば良かったのに、と思うんですがね。








フィリピン高失業率について アキノ大統領

2013-06-17 00:11:10 | 政治


いや,もう2カ月も更新していないんで,
全く,よろしくないですな。

仕事がちょいと忙しくなったのと,
大学院で履修している講義が,めちゃハードで,全く更新する余力が・・・。

ただ,修士論文のテーマも決まって,分野,方法も固まってきたんで,ちょっと落ち着きますかね。
(本当はこれからが大変なんですが)。

さて,論文テーマが,フィリピン関係になったこともあって,今後,しばらくはフィリピン関連でこのブログをやっていくかも知れません。テキトーな運営でどうもすんません。

で,フィリピンですが,


Aquino on unemployment rate: Bad timing

Earlier that day, the National Statistics Office (NSO) reported the country's employment rate dropped to 7.5% in April, equivalent to 3.08 million Filipinos from 6.9% or 2.8 million in the same month of 2012.

フィリピンの失業率が7.5%に上がった,と言うんですな。

実はフィリピンは,Rising Starと呼ばれ,アジアの中では中国も抜いて,ひょっとして成長率トップかも,というくらいの勢いなんですが,どうも,失業率が高いってのがいろんな人が指摘してる問題でして。

高い,ってだけならまだしも,上がってどうすんねん,ってとこでしょうか。

アキノ大統領,

"My understanding is there is a net loss of something like 21,000 jobs―I was told it was just that few. The major issue there is the agriculture sector because of the delay in the planting season," Aquino said.


栽植時期を遅らせた農業セクターが主な原因だ。

Data show job losses in the agriculture sector offset the jobs generated in the industry and services sectors. Industry generated 224,000 jobs, while services added 380,000.

農業部門の失業は,産業部門224千人,サービス部門 388千人の雇用増加で相殺されている,とか。

確かに非農業部門はかなり強そうです。

失業率が高いことに加え,underemployedと言って,能力以下の仕事をしている人の数の多さも指摘されているわけですが,

まあ,4月の失業増加については,農業問題だった,ということで。






CIA長官の不倫スキャンダル

2012-11-22 00:05:38 | 政治
大統領選は予想通りオバマさんの勝ちで終わって,まあ,これまでのお祭り気分が終わって,ちょっと気が抜けた感じですかね。

まあ,メディアはネタに事欠かず,選挙が終わるのを待ってたかのように大事件が次々に起きてるようで。イスラエルもそうですが,CIA長官が辞任した,という事件に一番驚きました。この長官は,アフガンの現地司令官が,へまをやらかして辞任した後の後任として派遣されたときも,ああ,あのPetraeus将軍がみたいな報道で,軍人のヒーローって感じだったんで。


アフガン現地司令官解任 シビリアンコントロール

それが,不倫で辞任って,ちょっと考えにくいなあ,CIAの長官がFBIの捜査で不倫発覚,ってなんじゃいってなわけですが,不倫相手のPCから機密情報が発見されただの,将軍は機密を漏らしたことについては否定しているだのも同時に報じられていたんでした。

ニューズウィーク日本版には,こんなコラムも出てたりして。

「不倫でクビ」CIA長官スキャンダルの奇々怪々

このお相手の女性ですが,


ちなみに、このブロードウェルさんに関しては、一連の不倫疑惑が明るみに出る直前の10月26日にコロラド州のデンバー州立大学で講演した際に「ベンガジでの米大使館襲撃事件の真相は、CIAが捕縛した複数のリビア武装勢力メンバーの奪還作戦だった」という発言をしており、この点が「非公開情報であり機密漏洩に当たる」という批判がされています。


ということなそうなんですね。

デンバー講演については動画がアップされてました。一人目の質問に答える中に,大使館襲撃事件の背景についてボロッと話してます。

Paula Broadwell spilling secret CIA information


すごい腕で,かなり鍛えてますね。ハナシもスムーズで頭良さそう。士官学校出身の元軍人で,ただもんじゃありません。将軍が夢中になった理由もなんとなくわかりますかね。

不倫は目くらましで,本当は機密漏えい問題か,もっと別の何かが本筋かもですね。


こういうときは,ロシアトゥデイ

'CIA chief Petraeus' resignation not just about affair'


このおっちゃんの言う通り,ワシントンでバブリックに何が言われてたとしても,問題は全く別のところにある,ということなのかも。


さて,将軍や,この女性が,起訴されるようなことになるんでしょうか。

いよいよ投票日

2012-11-07 01:43:48 | 政治
いよいよですなあ。

予備選から含めて,長かった選挙報道も一段落することになりますね。

さて,いよいよ投票日。
シロートが予測してもなんの意味もないんですが,オバマさんで決まりですかね。

オバマ,恐るべし。

直前にハリケーンがやってきて,あきらかにオバマに有利に働いてますな。運もめちゃ強い。

ニュージャージー州の知事が,オバマをあっちこっちのインタビューでベタほめ。大統領として災害対応を良くやってくれてる,何度も電話くれて,みたいな。

Chris Christie PRAISES Obama on FOX NEWS


クリス・クリスティと言えば,デブで有名,というのもあるんですが,それ以上に,共和党のホープって感じで,今回の選挙でも,ロムニーを応援するのいやだから,知事,あんた出てー,みたいなことを支持者に言われてたりする場面を報道されたりもしてたんですな。いずれ本当に出馬するかも知れないような大物と言えるんでしょうが,これにはあたしもびっくりしました。彼は共和党でロムニーを支持してきているんですな。クリス・クリスティも,政治家なんで,きれいごとを言ってても,こういう発言をするにはちゃんとした計算があるはずですけどね。


New York Mayor Bloomberg Endorses Obama


ニューヨーク市長のプルンバーグも,オバマ支持。市長は,共和党だとばかり思ってましたが,インディベンデント,ってことになってるみたいですな。

Michael Bloomberg


Bloomberg switched his registration in 2001 and ran for mayor as a Republican, winning the election that year and a second term in 2005. Bloomberg left the Republican Party over policy and philosophical disagreements with national party leadership in 2007 and ran for his third term in 2009 as an Independent candidate on the Republican ballot line.

最初,共和党から出て市長になった後,政策と思想で折り合えなくなって,インディペンデントにスイッチして出馬したってことで。

いずれにせよ,ぎりぎりに,勝ち馬にのった,のかどうかわかりませんが,著名人二人の支持表明なり、べたほめは影響あるんでしょうな。

運も味方につけて,オバマ,恐るべし。

とか言ってて,負けたりしたら,面目ありませんけどね。


第一回 大統領選ディベート

2012-10-05 01:58:56 | 政治

いや,いよいよ,始まりました。
選挙戦の山場。テレビディベート。

Presidential Debate 2012 (Complete) Romney vs.Obama - 10/3/2012 - Elections 2012


この動画,完全版なんですが,最初の二分間は音声が途切れてるのでとばしてください。

うーん,今一つ盛り上がりに欠けますなあ。
笑いも,拍手もほとんどありません。

ロムニーの政権攻撃は紋切で,オバマは楽勝に反撃。
ロムニーも反論するが,自分はそんなこと言ってません,ミドルクラスは大切です,みたいな,とってつけたような内容。

論戦は,どうみてもオバマさんの勝ちって感じです。
世論調査の結果がどうなのか,知りませんがね。



ウーン最後まで,盛り上がりに欠ける選挙戦だなあ。

民間企業に原発はまかせられない 菅直人前首相会見

2012-08-13 00:01:28 | 政治
管さんの記者会見です。

去年の3月11日は,敗戦以来の国家的危機,というべきかも知れませんが,
当時の責任者,管さんの記者会見です。

こういうのを短い報道で読まされると,言葉尻を捕えて、自分の責任を転嫁した,みたいにテキトーに書かれたりして全くあてにならないことがあるんで,こういう全量アップされてると,観てみようかという気になりますね。

ストリーミングだと倍速できないのが難点ですがね。

民間企業に原発はまかせられない 菅直人前首相会見


福島原発事故で,東京三千万人が非難する事態にならなくて済んだのは,単にラッキーだった,とおっしゃってます。

そうなっててもおかしく無かった、

ということなんですな。


原発を止めると経済的な損失が大きい,とかいう経済界の意見もあるが,そういうことがわかってて言っているのか疑問だ,ともおっしゃってます。三千万人が逃げ出さざるを得ない事態,職場もろとも東京が失われる事態,その後いくら待っても二度と帰ってこれない,ということがどういうことなのかを踏まえて議論していない。

始まって30分あたりですが,ここはオススメです。

事故に直面して,チェリノブイリの時のように軍を動かして,つまり自衛隊に事故対応のために死地に赴いてくれと命じることができるだろうか,とそこまで考えた。幸い,そういう事態にまで行かなかったけれども,そうなりかねなかった。原発事故は,通常のプラント事故とは違い,しばらく逃げ出しておいておさまるまで待つという対応はできない。

場合によっては自衛隊出動まで検討する必要のあるシビアアキシデントに対応することは民間会社では無理だろう→だから原発部門は国有化が必要,というロジックなんですが,管さんの語り口は動画で聞いてみていただきたいですな。

管さんは終始穏やかに話されてて,イラ管口調は全くナシ。

首相時代にもっと反原発へのくさびを打つことができなかったのか,という質問に対して,

『アンタらがよってたかって辞めさせようとしたんじゃないんですか』

とは言わず,

『もっとやれなかったかというお話ですが,自分としては結構やれたと思ってます』


311のハナシとは別にして,

冒頭,民主党が政権を取った時のことを語られています。

管さん的には,日本は建前上は議院内閣制だが,実際は官僚内閣制になっていて,国会は政府の足を引っ張る場になっている。

与党も,自民党時代のことだが,やはり政府とは一体というよりは,族議員の実力者が仕切っている党が了承したことだけが閣議決定される,という形になっていて,政権と一体という形になっていなかった。

英国は,各議員が政権に組み込まれる形になっているので,民主党もそうするつもりで,鳩山内閣が発足したら,自分は国家戦略担当大臣と,党の政調会長を兼務することになっていた。

そしたら,組閣の前日に,小沢幹事長が,政調会はいらない,ということを鳩山さんに言って,鳩山さんが了承してしまい,民主党議員の大部分は政権にも入らず,党の議論にも参加しない,という宙ぶらりんな状態になって・・・。

小沢さんを,かなりトンデモな感じで見ておられるようですな。

政府をきちんと運営する力量のある改革派政治家というウォルフレン,
金権批判の主流メディア
そして,理念なき権力亡者,という反小沢政治家,例えばここでは管さん。

いろいろな見方があるわけで。


全体的に,重みと,内容を持った,良い会見だったと思います。


フォックスコン 中国アップル工場でひともめ

2012-06-14 00:35:05 | 政治
Chinese FoxConn Workers Riot at Apple Factory


この間、ABCのカメラが中国アップル工場、といっても台湾企業に製造委託している形ですが、そこにカメラが入って取材したというハナシを紹介したことがありましたが,

また,ひと騒動あったそうで。


China Foxconn workers riot at Chengdu restaurant
Scores of workers from Foxconn, Apple's main manufacturer in China, have rioted after a dispute at a restaurant.

レストランで口論があった後に,フォックスコンの労働者が反乱。

State media reported that the incident in Chengdu "was triggered by a conflict" between a group of workers and a restaurant owner.

レストランオーナーと,労働者のグループとの間の争いがトリガーになった。

Foxconn has been criticised for its treatment of workers, but officials said the dispute was not connected to working practices.

フォックスコンは,労働者の扱いについて批判されているが,当局者は,職場問題とは関係がないと言っている。


The police said that the seven Foxconn workers were apparently annoyed by an argument between a restaurant owner and his wife on Monday.

警察のハナシでは,フォックスコンの七人の労働者はあきらからに,レストランオーナー労働者とその妻との間の良い争いに腹を立てていた。

A fight broke out, and after the restaurant owner called the police, the workers ran back to their dormitory shouting: "They are beating us."

戦いが始まって,オーナーが警察を呼びに行って,労働者たちは寮に戻って,彼らはわれわれをやっつけに来ると叫んだ。

About 100 of their colleagues then joined the disturbance, throwing bottles, according to a statement published on the police's official microblog.

百人ほどの同僚たちがその混乱にくわわって,ボトルを投げた。



とかで,

まあ,戦後どさくさの日本のレベルって感じでしょうか。日本もナンデモあり,みたいな時代はあったんで。

とにかく,中国の労働者問題の難しさ,みたいなものがどんなことか,がよくわかるような気がしますよね。



FBIのスパイ活動 キング牧師を盗聴

2012-04-06 07:03:10 | 政治
アイ・ハブ・ア・ドリーム演説で知られるキング牧師に対してなんですが,

FBIがいたるところ盗聴網をしかけて徹底的にマークしていたってハナシです。

以前,間抜けなCIAの歴史について書かれた本についてご紹介したことがあり,

CIA工作員に有罪判決 前代未聞

その著者が,今度はFBIについて書いたってことで,デモクラシーナウでインタビューを受けているんですね。

J. Edgar Hoover vs. MLK: Book By Tim Weiner Exposes FBI's Targeting of Civil Rights Leader


FBIのスパイ情報で,モスクワが市民活動家に強い関心を持っていることがわかったことがきっかけみたいなんですが,

キング牧師が共産主義の手先になるのを恐れて,盗聴しまくって,浮気の現場もテープに取っちゃって,自殺しないとこれを公表するぞ,とほのめかす手紙を送りつけたとかで。

ヒドイ,ヒド過ぎる。

こうした,フーバー長官時代に敷かれたFBIのやり方が,現代まで続いている,とおっしゃっているようなんですが・・・。


J. Edgar Hoover vs. Martin Luther King, Jr.: Book Exposes FBI’s Targeting of the Civil Rights Leader

日本を追い込む5つの罠 TPP批判 ウォルフレン

2012-03-24 13:34:50 | 政治
ウォルフレンの新著が新書で出てまして,第一章はTPPなんですな。

菅さんが,平成の開国とかおっしゃってたわけですが,普通に考えたら民主党はTPPに反対しなきゃいけないんじゃないか,と反射的に思いましたがね。農家の方を向いていたはずだし,米国一辺倒の外交を改めるみたいなことも言ってたわけで。消費税引き上げも,てっきり反対しているもんだとばっかり思ってましたが,野田さんは政権をかけて戦うみたいな感じだし,流れがよくわからないんですな。政権とってみたら思ってたのと違いました,ってことなんでしたっけ。まさか,あり得ない。

増税で国論を二分している米国や,やはり政権交代の決め手なった英国を見て欲しいですな。あっち行ったりこっち行ったりするようなハナシじゃなくて,どんなパッケージで政策をやるかってことなんで,そもそも政党の存在意義にまで関わってて,周到な準備が前提なはずです。民主党ってどんなパッケージを出して政権を取ったのよって,私も詳しくみてたわけじゃないんで,この辺にしときますかね。少なくともクルーグマンが批判するような世界で流行の緊縮路線ではなさそうで,ただ増税にだけ乗っかりますってことなんでしょうか。まさか,あり得ない。

増税して支援者にばら撒きますってことだったりして。

まさか,もっとあり得ない。

で、ウォルフレンなんですが,

このTPPを彼がどう捉えているかと言いますと,反米国帝国主義,ないしは,反グローバリズム,反ワシントンコンセンサス,反多国籍企業(ロン・ポール風にアンチコーボラティズムでも良いかも)風なんですね。


日本を追い込む5つの罠 (角川oneテーマ)
クリエーター情報なし
角川書店(角川グループパブリッシング)


まあ,これまで何度もここで取り上げた,エコノミックヒットマン流に米国が途上国を経済支配してゆくやり方を批判する立場って感じですが,

このTPPを,既に決裂してにっちもさっちも行かなくなっているWTOのドーハラウンドの後継手段として捉えていて,なんとか米国多国籍企業が有利に入り込めるように,形を変えてTPPとして再登場させた,ってトコですね。

ウォルフレンは,遺伝子操作のモンサントが入ってくるんだぞと名指しで批判し(このネタもココで何度もやりましたが),カルフォルニア米も入ってきて,こんなんに参加したら,日本の農業はえらいことになると書いてます。

農業を改革したければ別のやり方でやるべき,TPPに参加する必然性なしとも。

そもそも,TPPはモノの自由な流れを促進するというよりは,(米国の)投資の促進や知的所有権の保護に重点が置かれていて,外国政府から自国への投資を制限したり規制する権限を剥奪する,つまり,権力を米国や米国の多国籍企業にシフトすることなのだ,と,ほぼ言い切っておられます。投資の自由化は,自由貿易論者がフツーに考えるような政策とは別物なのだ,とも書いていて,金融と実物経済,ウォールストリートとメインストリートを明確に区別して考えておられるわけですね。


この動画は,チョムスキーで,別にTPPを批判しているわけじゃなくてグローバリゼーションを批判しているわけですが,

おっしゃっていることは,ウォルフレンの書いてることと基本的には同じようです。




それにしても,わたしゃただ,新聞読んだり,ビールを飲みながらネットを読んだり見たりしているだけなんでエラソーに言えませんが,日本政府のことが一番良くわからなかったりして。

映画 マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

2012-03-20 12:12:57 | 政治
動画は,首相に選ばれて,首相官邸に入るサッチャーです。

対立あるところ調和を,絶望あるところに希望を・・・。

練りに練った,ステートメントを出していますな。

立派なステートメントに政治信条のすべてをかける政治家,
アホな質問をしない記者達

うらやましい。

Margaret Thatcher Arrives At Downing Street (1979)


映画ネタか続いて恐縮ながら,

マーガレットサッチャーを題材にした映画だったんで,ちょいと観て来ました。
メリルストリープが主演、と聞いて,ちょっと女性としての見た目のタイプが違いすぎてうまく行かないんじゃないか,と思ってましたが,

ナントナント,サッチャーそのものになりきってました。ポスターなんかの静止した絵を見せられると,なんでこれがサッチャーやねん,て感じでしたが,スクリーンで見る彼女は,そのしゃべり方,目線,姿勢,歩き方,メイク,ははん,こりゃサッチャーですわ。一流女優の実力がどんだけのもんか,が実感できます。

冒頭,老いてボケてしまったサッチャーが,近所の商店でミルクを買うシーンから始まるんですが,誰も彼女が,かつての偉大な首相であったことに気づくこともなく,必死で彼女は商店でのあわただしさに戸惑いながらレジでお金を払います。

英国を作り変えた,あるいは世界をと言っても良いかも知れませんが,この偉大な政治家も所詮は一人の女性であって、今や何者でもないただの人なんだ,という視点設定から始まるんですね。

この映画は,老いたサッチャーが過去を振り返る,あるいは過去の幻覚を見るという形式で進められてゆくんですが,サッチャーの偉大さにはほとんど関心を払われていませんな。ぎりぎりの決断で危機を切り抜けたり,決定的な大演説,思い切りの良い,大向うを唸らせるようなエピソードはほとんど出てこない。あくまでも,彼女の生活,人生,つまり,結婚や子供,テロに襲われて死にかけたことや,勝利,裏切り,国民の反発なんかに対する彼女の反応いう目線で展開されてゆくだけ,なんですな。彼女が成し遂げたことよりは,彼女が感じたこと,男社会,階級社会に,商店主の娘が女一人で乗り込んで行くことの困難さみたいなことに,重点が置かれる,みたいな。

死んだご主人が,幻覚に出てきて,サッチャーと掛け合いながら,シーンが展開してゆきますが,そうした演出でファンタジーっぽかったり,舞台劇っぽくもあり,歌のないミュージカルっぽかったりという印象の作品になってしまって,

サッチャー,という名前でやってきた観客にとっては,かなり期待はずれに仕上がってます。サッチャーの鮮やかな判断,政治的業績といったドラマチックな要素を極力廃して,人間サッチャーに絞って描いているわけで,

メランコリアと同じですね。日常の関係性をぶち壊しておいて,もう何も残っていない。弧絶した環境で外部のパニックとも無縁な状況に舞台を設定して,登場人物達に終末を迎えさせる。そうすることで,内面が浮かびあがり,凡庸さと超然さを対比させながら,本質を浮かび上がらせる,

知的なチャレンジであり,映画的にも腕を振るう余地が大きいわけで,クロート的にはわくわくするようなハナシなんでしょうが,

まあ,そんな観てて面白いわけがない。

毎日,仕事で疲れてて,いい加減ヤになってるのに,こんなん見せられましたって感じかもですが,

田中角栄の,晩年をこんな感じて映画にしたら,結構面白いし,こういう演出でも問題ないと思いますね。

角さんのエピソードは多かれ少なかれ,皆知ってるし,そういう角さんの人生を,脳溢血でボケたしまった角さんが振り返る,みたいなハナシは絶対面白い。

この映画も,英米人にとっては,そんな感じで受け止めれるんでしょうな。まだまだサッチャーは生々しく,十分強烈な存在で,改めてその凄みを映画で見せられるより,人間的な側面を観るほうが、ああ,あの強い女もこんなんなのか,と新鮮だったりして。


この映画は,もともとサッチャーのスゴサを十分に分かってて,改めて説明いらんという人むけであり,も少し違ったサッチャーを知りたい人向けなんですね。

メリルストリープの演技はスゴいし,映画としての水準も高いものがありますが,
テーマや演出は,メジャーな映画館にかかるようなヤツではなくて,渋谷のはずれにあるような映画でやるような種類です。これからご覧になる人は,そう覚悟して行ったほうが良いかも。


これ読んでから,行ったらずっと面白いかもです。

サッチャー回顧録―ダウニング街の日々〈上〉
クリエーター情報なし
日本経済新聞社