日経ビジネスオンラインに韓国から見た、日本企業の凋落、といったテーマのインタビュー記事がでてまして、
負けても悔しがらない国は、復活できない
韓国企業が危機意識を持ち、日本企業が持てない理由
問題の本質を象徴する事例があります。日本の携帯電話メーカーの世界シェアは過去10年間で激減し、20%以上から6%台になりました。日本人が衝撃を受けないわけがないと思っていましたが、現実は違った。本当にショックを感じている日本人に、全くと言っていいほど出会わないのです。携帯電話では10年で日本勢のシェアが3分の1以下になり、対照的に、サムスン電子やLGエレクトロニクスのシェアは2倍以上になった。明らかに事態は深刻です。にもかかわらず、負けても「仕方がない」とヘラヘラ笑っているようにさえ見える。本気になって悔しがって、必死で勝つために努力しているのか。答えはノーではないでしょうか。携帯はほんの一例で、ほかにも負ける分野が増えている。日本メーカーには技術力があり、マーケティング力が問題とも言われますが、もっと足りないものがある。「今のままでは日本の国も企業も滅びてしまう」という強い危機意識です。
こういう記事は面白いし、なるほど、と思わせてもくれるんですが、日本企業一般をひとくくりにして、えいっと論じるのはちょっと無理がありますな。まあ、面白いんですがね。
まあ、このインタビューは、日本の電機メーカーのことを言ってるようですが。
いずれにせよ、もう少し絞った話をしないと、居酒屋談義と同じで、ほとんど意味のないおしゃべりにすぎなくなります。
で、本書です。
この本は、かなりお勧めです。なぜ日本の半導体産業が不振に陥ったのか、説得力をもって説明しています。
技術優先で、過剰品質のチップを作り、ニーズにマッチせず、値段も高すぎて売れない。
日本の半導体製造ラインは、韓国や台湾、米国メーカーのものよりも長く、製造装置も特注品で設備負担が大きく、おまけに歩留まりも悪くて、スキルが属人的で・・・。
問題意識がないわけじゃなくて、同じように簡素に低コストで作ろうという試みもあるにはあるが、結局、これは削れない、この品質は譲れない、とか言い出して、結局同じやり方になってしまう。
ニーズありき、マーケットありき、コスト、利益から出発する韓国台湾米の常識的な考え方が日本の半導体メーカーにはないそうで。半導体黎明期の成功体験が忘れられず、十年間、品質の劣化しない過剰品質のチップを作り続ける。PCにのっけるのに、そんな品質はいらんっちゅーねん、ってとこですかね。
ある意味、保身優先で、今までのやり方を変えることができない、ともいえるかも知れませんな。本当に成長を志向するならば、大胆に正解を求めるはずが、今までと違うことをすることができない。ミスをしたら外れる。今までの枠のなかで、ペストを出すことが出世につながる。
まあ、お役人ですな。
大胆な主張をして足をひっぱられながら無理してがんばっても、失敗したらアウト、成功しても大してメリットもない。変な奴、と思われかねない。周囲のサポート抜きで変革は無理で、サポートが得られるかどうかはかなりあやしい、ってか普通は得られない。皆、今のやり方を変えるのはいやなんだから。
と、まあ、一度本書をお読みになることをお勧めします。
日本の成長が長期低迷しているのは、こんなところに原因があるんじゃないか、とまた、私も十把一絡げのテキトーなこと、言っちゃってますがねえ。
ただ、『日本では、市場主義改革の必要性も福祉改革の必要性も、欧米よりずっと大きい』ということと関係ある気がしますね。大企業を中心に、業界秩序が整理されまくっているので、日本でやってる分にはそんな、大胆な改革するより、横並びでうまいことやってる方が良い、みたいな感じが、ズーッと続いていて・・・。高い半導体を作り続けて、低収益に甘んじてても日本じゃ立派にやってける、みたいな。大企業とそれに近いとこのハナシですがね。
これ、市場主義改革の必要性が大きい、ってことなんですな。その中にどっぷりつかって、テキトーにやってる分には良いんですが、長期的には没落の道ですな。
こないだ紹介した、『日本の新たな第三の道』って本も、こんな観点から突っ込んで書いてくれれば、読む価値が出てくるんですがね。
おまけですが、
この本の著者が、自慢の徐電装置を売り出しに、あちこちらのメーカーを訪問した時のこと。台湾メーカーはさっそくテスト。日本のトヨタも試行してもらえた。
ところが、日本の半導体メーカーに行ったときのこと。
『私の目の黒いうちは絶対にうちの工場には入れさせない』
と言われたそうで。
クリーンルームの品質管理をする部署にセールスに行ったけですが、こんな効果のある徐電装置が入ってしまうと、自分たちのこれまでのノウハウが無意味になってしまう。そんなことはさせるマジ、とすさまじい敵意で迎えられたとか、云々。
まあ、著者の宣伝も入ってるんで、ハナシ半分としても、さっきの本で半導体業界の保守性を知った後では、十分あり得ることだろうな、って感じもするんですな。
あーコワ。
負けても悔しがらない国は、復活できない
韓国企業が危機意識を持ち、日本企業が持てない理由
問題の本質を象徴する事例があります。日本の携帯電話メーカーの世界シェアは過去10年間で激減し、20%以上から6%台になりました。日本人が衝撃を受けないわけがないと思っていましたが、現実は違った。本当にショックを感じている日本人に、全くと言っていいほど出会わないのです。携帯電話では10年で日本勢のシェアが3分の1以下になり、対照的に、サムスン電子やLGエレクトロニクスのシェアは2倍以上になった。明らかに事態は深刻です。にもかかわらず、負けても「仕方がない」とヘラヘラ笑っているようにさえ見える。本気になって悔しがって、必死で勝つために努力しているのか。答えはノーではないでしょうか。携帯はほんの一例で、ほかにも負ける分野が増えている。日本メーカーには技術力があり、マーケティング力が問題とも言われますが、もっと足りないものがある。「今のままでは日本の国も企業も滅びてしまう」という強い危機意識です。
こういう記事は面白いし、なるほど、と思わせてもくれるんですが、日本企業一般をひとくくりにして、えいっと論じるのはちょっと無理がありますな。まあ、面白いんですがね。
まあ、このインタビューは、日本の電機メーカーのことを言ってるようですが。
いずれにせよ、もう少し絞った話をしないと、居酒屋談義と同じで、ほとんど意味のないおしゃべりにすぎなくなります。
で、本書です。
日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)湯之上 隆光文社このアイテムの詳細を見る |
この本は、かなりお勧めです。なぜ日本の半導体産業が不振に陥ったのか、説得力をもって説明しています。
技術優先で、過剰品質のチップを作り、ニーズにマッチせず、値段も高すぎて売れない。
日本の半導体製造ラインは、韓国や台湾、米国メーカーのものよりも長く、製造装置も特注品で設備負担が大きく、おまけに歩留まりも悪くて、スキルが属人的で・・・。
問題意識がないわけじゃなくて、同じように簡素に低コストで作ろうという試みもあるにはあるが、結局、これは削れない、この品質は譲れない、とか言い出して、結局同じやり方になってしまう。
ニーズありき、マーケットありき、コスト、利益から出発する韓国台湾米の常識的な考え方が日本の半導体メーカーにはないそうで。半導体黎明期の成功体験が忘れられず、十年間、品質の劣化しない過剰品質のチップを作り続ける。PCにのっけるのに、そんな品質はいらんっちゅーねん、ってとこですかね。
ある意味、保身優先で、今までのやり方を変えることができない、ともいえるかも知れませんな。本当に成長を志向するならば、大胆に正解を求めるはずが、今までと違うことをすることができない。ミスをしたら外れる。今までの枠のなかで、ペストを出すことが出世につながる。
まあ、お役人ですな。
大胆な主張をして足をひっぱられながら無理してがんばっても、失敗したらアウト、成功しても大してメリットもない。変な奴、と思われかねない。周囲のサポート抜きで変革は無理で、サポートが得られるかどうかはかなりあやしい、ってか普通は得られない。皆、今のやり方を変えるのはいやなんだから。
と、まあ、一度本書をお読みになることをお勧めします。
日本の成長が長期低迷しているのは、こんなところに原因があるんじゃないか、とまた、私も十把一絡げのテキトーなこと、言っちゃってますがねえ。
ただ、『日本では、市場主義改革の必要性も福祉改革の必要性も、欧米よりずっと大きい』ということと関係ある気がしますね。大企業を中心に、業界秩序が整理されまくっているので、日本でやってる分にはそんな、大胆な改革するより、横並びでうまいことやってる方が良い、みたいな感じが、ズーッと続いていて・・・。高い半導体を作り続けて、低収益に甘んじてても日本じゃ立派にやってける、みたいな。大企業とそれに近いとこのハナシですがね。
これ、市場主義改革の必要性が大きい、ってことなんですな。その中にどっぷりつかって、テキトーにやってる分には良いんですが、長期的には没落の道ですな。
こないだ紹介した、『日本の新たな第三の道』って本も、こんな観点から突っ込んで書いてくれれば、読む価値が出てくるんですがね。
おまけですが、
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この本の著者が、自慢の徐電装置を売り出しに、あちこちらのメーカーを訪問した時のこと。台湾メーカーはさっそくテスト。日本のトヨタも試行してもらえた。
ところが、日本の半導体メーカーに行ったときのこと。
『私の目の黒いうちは絶対にうちの工場には入れさせない』
と言われたそうで。
クリーンルームの品質管理をする部署にセールスに行ったけですが、こんな効果のある徐電装置が入ってしまうと、自分たちのこれまでのノウハウが無意味になってしまう。そんなことはさせるマジ、とすさまじい敵意で迎えられたとか、云々。
まあ、著者の宣伝も入ってるんで、ハナシ半分としても、さっきの本で半導体業界の保守性を知った後では、十分あり得ることだろうな、って感じもするんですな。
あーコワ。