会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

97年の消費税引き上げと小売販売

2011-01-04 02:04:22 | 平成10年問題
98年からの日本の低迷や自殺の急増は,消費税引き上げをはじめとした橋本政権の緊縮財政のせいだ,というのは実は間違いかも知れなくて,生産年齢人口の縮小や,支出の波が過ぎ去って行ったこと、に起因するんじゃないか,

というのが,人口論からのアプローチなんでした。

で,いろいろ探してたら,97年の小売の売り上げをクローズアップしている経産省のサイトにレポートとグラフが出てたんで,貼っておきます。

1998年版我が国産業の現状

小売業は97年4月に実施された消費税率引き上げと所得税減税の終了等の影響を受けて4~6月期には前期比▲9.2%と大きく落ち込み、以来98年1~3月期まで低調に推移している。また、小売以外の対個人関連活動も、小売業ほど鮮明な影響は受けなかったが、97年秋以降は金融不安等を受けた消費マインドの低迷から急速に落ち込んだ。これら消費の低迷により鉱工業生産活動、エネルギー生産活動、運輸活動にも影響が及んでいった。

小売の低迷は消費税のせいだ,という理屈は,これを見る限り否定できませんね。引き上げ直前に急増した後に,急落しています。

きっかけが消費税にあった,というのは,間違いじゃなさそうなんですが,その後もずっと低いまま低迷していることが消費税や、緊縮財政だけでは説明がつかないんですね。

それにしても,消費税引き上げの影響は,かなりヒドかったわけですな。こんなにひどく落ちるもんなんですな。

ひょっとしたら,支出の波がピークを迎える中で,消費税の引き上げを同時に迎えて,引き上げの直前に一気に需要を吐き出してしまった,ということなのかもですがね。

引き上げ直前の伸び方は,異常な感じです。日常的に買うものをどんなに買ってもこんなには伸びないでしょうから,多分,住宅とか,自動車とか,高めのものを思い切って買った人たちが多かったんじゃないですかね。

で,あがった後は,少々ほしくなっても,もう買わない,みたいな。

結構怖い経済効果です。

で、問題は,消費税のシュリンク効果が一通り終わったあとも小売売り上げが回復しなかったことにあるんですが・・・。


支出の波についてはこちら

97年に何があったのか 平成10年問題

97年に何があったのか2  百貨店とスーパーの売上 

2010-12-17 07:29:06 | 平成10年問題
97年の日本の変調について、良いグラフがあったんで貼っておきます。



このグラフは百貨店の凋落具合を見るために作られたモノのようですが、ご注目は、百貨店とスーパーの売上合計の趨勢ですな。合計数値だと、97年~98年をピークに全体が下落して行っているのが良くわかります。

それぞれの業界だけ見ていると分からないし、前年比だけ見ててもわからない、

というのは、デフレの正体の著者の主張の通り。

小売業界は他にも大きなプレーヤーがいて、これだけで結論は出せないんですが、

それでもちょっと驚きです。

小売販売の総計のグラフをさがしてるんですが、ちょっと見つからなくて・・・。

97年関連のこれまでの議論は、カテゴリー『平成10年問題』にまとめて入れてるんで、そこをご参照ください。

97年に何があったのか 平成10年問題

2010-12-13 01:14:19 | 平成10年問題

こないだご紹介した『デフレの正体』ですが、この週末改めて読み返してみたんですな。

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)


よく読むとアラも目立つ本ですな。

ってか、後半に理論を一生懸命説明しているんですが、どうも間違ってるってか、著者の理論に対する理解が今一つで、自分でも何を説明しているのか分かってないんじゃないか、みたいな箇所が、いくつもあるようで。

まあ、あたしゃシロートなんで、とやかく言える立場じゃないんですがね。

アラについては後日、ヒマな時にネタとしてご案内するとしても、さすがにベストセラーになるだけあって、欠点を差し引いても価値ある本だ、ということも読み返してて良くわかりました。

その辺も別の機会にまとめてみようと思いますが、

今日は、平成10年問題の続きです。

平成10年になにがあって、それ以来、日本経済なり日本社会は何が変わってしまったのか、というテーマで、しばらくこのブログでやってたんでした。そう、平成10年から日本の自殺が急増して、3万人を超えてもとに戻らない。

よく見てみると、平成10年橋本政権時代に10兆円レベルの緊縮財政をやってて、それで経済が失速したから

という見方をここではとってたわけですが、

じゃあその後、小渕政権時代に緊縮をやめたし、小泉政権時代に経済も戻したはずなのに、

なぜ自殺が減らないのか、という問題にうまく答えられない。

って感じで、ずっと引っ掛かってたんですが、

デフレの正体の中で、

国内新車販売台数、全国小売販売額、雑誌書籍販売部数、国内貨物総輸送量、蛋白質や脂肪の摂取量、国内酒類販売量など、経済の対応をあらわすいろんな指標が96年~97年をピークに一斉に下がった、と書いてあって、

その理由は、人口動態で説明できる、

としているんですね。実はハシモッちゃんだけの責任ではないかも知れない。他にも問題があったのかも。

で、この辺はデフレの正体の藻谷ちゃんも、詳しい説明はしていなくて、そもそも97年が人口の異変以外でも注目されている、なんてことをご存じ無かった可能性もありますね。

とにかくもう少し詳しく、97年の転換点がどんな感じだったか知りたいわけですが、

探してみると、ありました。

人口構造の変化で未来は予測できるか?

この図、冒頭にも貼っときましたが、

よく見てください。97年に棒グラフのピークが来ていますね。

人のライフサイクルでもっとも多く支出する45歳~49歳人口の推移を表にしたものなんですな。

97年をピークにその後急激に落ちている・・・。

藻谷氏は、2000年代前半の好景気にも関わらず、一般の景況感がアンマシ良くなかった理由を、内需の減速がつづいたこと、その原因は人口動態にあること、を上げてまして、つまり、2000年代前半の好景気は輸出主導で、内需は悪いままだったから、好景気を実感できなかったということです。

確かにこのグラフを見れば、97年がピークに下がり続けていることが良くわかりますね。

外需主導の景気回復では、自殺率を改善しなかった、ということですね。

景況感の改善には、内需を改善しなければならないが、内需改善は人口減少下、とっても難しい、

ってことでもありますな。

とまあ、少しスッキリしました。自殺はGDP連動じゃなくて、内需連動だった(みたいね、証明は難しいかもしれないけど多分)。




さて、表だけ引っ張ってきている野口教授の連載ですが、ここでも人口を扱ってまして、まあ、今年は人口論が流行ってたってことなんですかね。

野口教授の連載についても、ちょっと突っ込みたいと思いますが、それもまた別の機会に。


『デフレの正体』 その2 米国の先行者 Harry s.Dent

2010-10-31 23:25:26 | 平成10年問題
あまりに面白いんで、もう少し続けます。

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)


著者の藻谷氏は、政策投資銀行で、コンサルティング業務を担当してて、あっちこっちに飛びまわっているそうなんですな。エキサイティングで、知的にも社会貢献という意味でもやりがいのある仕事だろうと思いますね。

この藻谷氏のほぼ同じ主張と仕事をやってる言わば先行者が米国にもおられまして、別に、著者が先行者のアイディアをパクッたと言ってるんじゃありません。まあ、人口と経済の分析は他にもあれこれあるんで。

その先行者なんですが、

昔、AOLでチャットにはまってたことがありまして、日本人がサインインしてると、アメリカの高校生あたりが、しきりに話しかけてくる。株の名人だという高校生が居て、なんかの番組でチャンピョンになったと自慢してくるので、私も米国株に興味があるわいな、と言ってみると、

本書を紹介してくれたんですな。

The Roaring 2000s: Building The Wealth And Lifestyle You Desire In The Greatest Boom In History
クリエーター情報なし
Simon & Schuster


せっかくだからとアマゾンで買ってみると、人口と株価の関係を分析してるみたいで、まあ、そんな悠長な、と思って読まずに本棚に突っ込んでたんですが、デフレの正体を読んでて思いだして、引っ張り出してちょいと読んでみると・・・、ガーン。目を疑ってしまった。

これ98年の出版なんですが、

chapter12 に今後の戦略としてフェーズ毎に投資アドバイスをしていて、そのフェーズというのが、

Phase 1 Late 1998 to Late2008 the roaring2000s
Phase2 Late 2008 to Late2020 or 2023:Next Depression

だって。これ、歴史の本じゃないんだよね、予測だよね、と確認してしまいました。
何年も前に買ったんで当たり前なんですがね。

2008年後半から不況。オー、マイゴッド、← 一応洋書なんで。
紹介してくれた、米国の高校生も実は怪物野郎だったってことですな。こんなの読んで投資戦略を練ってるなんて、今頃どうしてるんかな。

てっとり早くはこの動画がわかり良いですね。



ハーバードのビジネススクールを出て、コンサルタントになった。いろいろとマーケティングをやってた。マーケットは人口動態をみるのがてっとり早い。年寄りはポテトチップスは食べない。食べるのは何歳がピークなんで、その人口がどう動くかみてれば良い。クルマを買うのは何歳か、家を買うのは何歳か、という具合。ベビーブーマーの加齢でマーケットが変わってゆく。

ある時、いろんなチャートを並べて分析していると、人口動態と、SP500の動きが全くパラレルであることに気がついた。何十年かのタイムラグをもってぴったり重なる。ユーリカ。アーハッ。

で、コンサルタントをやめて、エコノミストになった。

人口動態の動きを見てて、日本のバブル崩壊も予測できたし、90年代、2000年代の米国の好調と、2008年からの大不況も予測した、ってことで。政府支出が激増してて、世間ではインフレが起きると言ってるが、そもそもベビーブーマーが引退して、需要が減ってるんでインフレにならない、基本デフレだ、と言ってて、この辺も藻谷ちゃんが日本について言ってるのと同じです。

日本と米国の経済が基本的には同調してて、たまに離れたりするってのは、人口動態がそうなってるからかいな。細かい分析で理屈つけてるのはアホかも。

ピーター・シフもすごいけど、こいつはもっとスゲーぜって感じです。

中国は一人っ子政策で、いずれやばくなる、という風にも言ってますが、これも藻谷ちゃんと同じですな。

彼は、最近また、新しい本を出してまして、

The Great Depression Ahead: How to Prosper in the Debt Crisis of 2010 - 2012
クリエーター情報なし
Free Press


これは是非読まねば。






『デフレの正体』 藻谷 浩介 その1

2010-10-31 09:01:45 | 平成10年問題

『デフレの正体』なる新書が売れているらしい、というのは耳にしていましたが、題名からしてもその辺のヘッポコ本の一種だろうと思って買わずにいたんですな。

相変わらず本屋に山積みになってるんで、改めて手にとって良くみると人口がどうのこうのと書いてある。ネットでの評判もなんとなく良いぞ、というわけで、買って読んでみました。


デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)


読んでみたところ、これはお値打ちモノですな。

経済学のシロートが、具体的に数字を読んで、ちまたのエコノミストや経済評論家の暴論に挑む、と図式では、三橋 貴明氏と同じ路線です。危機感をあおりまくりだけど、実際に調べてみたら、ハナシ違うじゃん、というやつで。

著者の主張は、

1.日本の産業の競争力自体は衰えていない
2.中国はお客様であって、経済からみれば脅威ではない。中国との緊張の高まりや中国自身の混乱は日本にマイナス。
3.日本の経済が弱いのは競争力の弱体化ではなく、人口動態で説明できる
4.ただし、全人口ではなく、生産年齢。現役世代が加齢で減ってしまい、引退したらお金を使わなくなるので内需が落ちている
5.輸出企業が儲けても現役引退と効率化で人件費率が低く、個人の給与所得が増えない
5.利益を出して配当しても受け取るのは年寄で、支出に回らずに内需が縮小してしまう
6.だから、生産性を向上させて日本の経済復活させろ、という主張は誤り。現役の給与所得が減って終わり
7.それよりも、現役世代の所得を増やすことを考えるべき
8.企業は、団塊の世代引退で浮く人件費を利益、配当に回さず、若い従業員も払ってやれ
9.また、効率化ばっかり考えずに、価値を上げることも考えろ
10.ブランド価値を上げれば、値下げ競争ばかりでなく、値上げができる。値下げ競争、人減らし競争から抜けられる
11.これからの日本はさらに悪化を続ける。団塊の世代の引退は数年で数百万人から一千万人規模
12.外国人移民を受け入れても全く間に合わない。少子化対策で今から子供を産んでも何年先のことやネン。
急に増えるもんでもないだろ
13.日本は女性の就業率が低く、これを活用して女性の所得を増やすべき。女は消費するんで彼女らに働いてもらおう
14.女性の経営者も増やそう。女性の消費力は圧倒的なのに、経営が男ばかりなのはおかしい。女に任せろ
15.金を持ってて使わない年寄りから若者への所得移転の方法を考えろ
16.外国人移民じゃなく、観光客を誘致して、金を使う外国人を呼んでこい。移民は稼いでも日本で使わず自国に送金する

って感じですかね。

実は地域間格差なんてないんだ、ということが冒頭で数字を使って説明されてて、実は地方が東京より大きく成長していたので、その反動も大きかった、で、こうした動きも人口動態で説明できる、ということなんですな。

本書は労作であって、実際のデータと、著者が仕事で全国を歩いて議論してきた実績を積み重ねて書かれてて、説得力もあります。ただ、面白く読ませることに力点が置かれてて、あれこれハナシが飛んで、ちょっとめんどくさい。面白いのは良いんですがね。

それと、著者が多分、頭にきているちまたのエコノミストや経済評論家の主張に一生懸命反論しているんですが、反論の仕方はグダグダです。多分相手に選んだエコノミストや評論家の暴論のレベルが低すぎて、反論が難しくなってしまっている。著者の分析を示したところで、すでに反論は終わってるんで、一刀両断で良いはずなんですがね。これ読んで納得できない人には何を言っても無駄でしょう。

で、ちょっと気になったところでは、

★生産性議論について

昔クルーグマンが、ITで盛り上がってた頃に、生産性が上がって経済が成長するというロジックを一刀両断しています。効率が上がると所得が減るんだという理屈でしたね。IT投資もそんなに大きくないんだって書いてたと思います。

人件費を削って生産性を上げることは個別の企業にとっては望ましいが、経済全体で見るとは状況を悪化させてしまう、というのは、ケインズの『合成の誤謬』と似てますな。まあ、マクロ経済的には、人件費が減って給与所得は減っても、その分、誰かの所得になるんで、全体の所得は減らない、として議論として無視されてしまいそうですが、著者は踏み込んで、給与所得が大事なんだ、という主張です。

★政治的側面

政治的には、ビンボー人に手厚く、というひだり系の主張と親和性があります。小金をもらったらビンボー人は支出する。金持ちの支出に影響しない。広く言えば、所得移転が必要だというハナシ。本書の場合は若モノ、お年寄り図式ですけどね。

★実数をみるということ

著者は、失業率や前年比という比率でモノを見ずに、実数でみろ、そうしないと全体がみえない、とも主張してます。米国でもオバマ大統領や民主党の幹部が、『失業率は9.6%と高いが、この9カ月プライベートセクターでは就労者が増え続けている』と政権の成果を主張してるんですな。

ウォール街流 米国景気予測の方法って本でも、も失業率は投資の指標としては見ないんですが、その理由を、遅行指標であるということ、それに、失業している人よりも、圧倒的に就労者の方が大きいんで、就労者の動きを見るべきだ、と説明しています。


とまあ、読んで面白いし、ヒントが一杯詰まっている感じの、とってもお買い得本です。

これ、ネタとして面白いんで、もう少し続けたいとおもいます。

平成10年問題  検証経済失政その2 クリントン政権下の財政再建 クルーグマン

2010-05-12 00:00:10 | 平成10年問題
橋本政権が、財政再建を政権の一つの目玉にしていたわけで、結果的にそれが日本経済のカタストロフィーを招いたわけでした。で、その橋本首相や、あるいは大蔵の主計局が財政再建を強く打ち出した理由なんですが、

将来へのつけを残したくない、だとか、
このままじゃ、いつかは国債消化ができなくなる、だとか

バブル崩壊で経済対策をバシバシやったんで、赤字が膨らんでゆくことにかなりの危機感があったわけですね。今と議論のレベルはほとんど同じですけどね。

検証経済失政―誰が、何を、なぜ間違えたか
軽部 謙介,西野 智彦
岩波書店


本書によれば、もう一つあるんですな。

それは、米国クリントン政権で、財政赤字削減がうまく行ってて、その対抗意識というのが行政当局の中に、あるいは橋本さんや自民党の有力政治家の中にあって、日本でも是非削減したい、という機運っていうのか、空気が盛り上がった。


まあ、それは良いんですが、問題は、なぜ米国はうまく行ったのかってことなんですな。

ルーピン回顧録によるとですな、

ルービン回顧録
ロバート・ルービン,ジェイコブ・ワイズバーグ,古賀林 幸,鈴木 淑美
日本経済新聞社


ルーピンは、後に財務長官になるんですが、政権発足時には国家経済会議を仕切る役をやってて、その会議で、どうやって財政赤字を縮小するかということを議論したことを本書で説明してます。クリントンは大統領選で、財政赤字の削減を選挙公約にしてたんですね。で、いろんな議論が出てくる。

1..財政圧縮は経済の縮小を招いて不況になるんじゃないか、ッてなケインジアンもいたが、
2.財政赤字の縮小が、国債価格の引き上げ=長期金利の引き下げを通じて消費や投資の増加をもたらし、
3.景気拡大効果をもたらす
4.日本やなんかの海外の投資家も財政規律をみせることで米国債を買いやすくなるに違いない、

ってことになったそうで。

米国は、レーガンが大統領になって以来、ばしばし政府の支出を増やして赤字を拡大して、その赤字をファイナンスするんで、米国は金利がバカ高くなってて、おかげでドルも強くなっちゃって、貿易赤字も拡大、いわゆる双子の赤字に陥っていたのでした。

強いドルは望ましい、なんてやせ我慢しながら、やってたわけですが、

クリントン政権はその逆をやったってことですね。

財政赤字が高金利をもたらして投資や消費を阻害している、つまり、クラウディングアウト状態であるとの認識があって、はじめて、財政支出の圧縮に踏み切ったってことですな。

単に、赤字がいかん、というモラル次元のハナシで議論しているわけじゃないっていうのがポイントで。

これは、クルーグマンが、08年のリーマン危機の直後に財政支出拡大を繰り返し訴えた時の議論にもつながってて、

クルーグマン最新コラム2


『財政赤字が長期的にはよろしくない、というのは、政府借り入れが膨らむと、金利アップにつながり、結果的に民間の投資が抑制されて、成長率が落っこちるというのが理由だが、それは、通常のハナシであって、

But circumstances right now are anything but normal.

今は違うやろ、ってことなんですね』




つまり、財政問題は、長期金利との兼ね合いでも考えろってことで、クリントン時代は、長期金利が高くて、財政支出の削減に合理性があった、ということでもあるんですな。

クルーグマンが、これに続けて、橋本政権下での緊縮財政について手厳しく批判しているんですが、


『財政再建派、緊縮財政派は、金利をもっと引き下げることもできる。どうやってかというと、緊縮財政が不景気を長引かせるとの予想から、民間の投資が意図に反して減ってしまうことを通じて金利が下がる。回りくどいんですが、緊縮財政は民間投資を冷やしてしまうということです。

これは単なる仮説じゃなくて、

The first took place in 1937, when Franklin Roosevelt mistakenly heeded the advice of his own era’s deficit worriers.

37年の米国と、

The second episode took place 60 years later, in Japan. In 1996-97 the Japanese government tried to balance its budget, cutting spending and raising taxes. And again the recession that followed led to a steep fall in private investment.

1996年~97年の日本で実際に発生したことだ』



もう、モロ、橋本政権の緊縮財政を批判してますな。

あたしゃ、バラマキや無駄は大嫌いで、公共投資を増やしても全然問題ない、みたいな主張は×だと思いますが、モラルや対抗心、恐怖感による緊縮はひどく無様で、それこそディザスタラスになるんだっていうことは言えるんじゃないですかな。

97年以降の日本の姿がそうで、

今のままだと大変なことになる、みたいな煽りがはやってますが、

そうじゃなくて、もう、今が大変なことになってるんで、
これ以上はそんなに心配いらないんじゃないかと思うわけですな、てか何とかしろよ!!




平成10年問題  検証経済失政その1

2010-05-09 23:53:16 | 平成10年問題
平成10年来、自殺する人が毎年3万人を超えて、それ以降3万人をきることが無い。

バブル崩壊以降、という言い方がなされることもありますが、日本の経済社会が変質したのは平成10年なんですな。

平成10年に何があったのか。
以前自殺大国、の項で、橋本政権で緊縮財政になって・・・みたいなハナシを書かせていただいたことがあったと思いますが、この予算を決めた平成7年の政策決定過程がどうなっていたのか、というのが本書なんですな。


検証経済失政―誰が、何を、なぜ間違えたか
軽部 謙介,西野 智彦
岩波書店

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この本も一部元にして、wikiでうまーくまとめているんで、貼っときます。

官製不況 1997年  wiki

『1997年の消費税率の引き上げをはじめ、特別減税の休止、さらに医療費の値上げ。景気はバブル崩壊から立ち直りつつあったが、力強さは見られなかった。しかし、福祉の充実や財政健全化を目的に税率を3%から5%に引き上げ、特別減税を停止、さらには医療費も値上げしたため、景気は一気に失速した。また、アジア通貨危機や総会屋事件、住専問題処理での公的資金投入に反対が多かったことからの対処の遅れもあいまって、同年の秋には山一證券、北海道拓殖銀行、三洋証券が破綻し、金融危機が発生した。失われた10年の原因の1つとも言われている。

橋本内閣は、金融危機の予兆に気づいていなかった。橋本内閣で官房長官であった梶山静六が文藝春秋1998年6月号によせた「日本興国論」によると、当時の大蔵省による「銀行は大丈夫です。金融は住専を処理すれば後は大丈夫です」との説明を鵜呑みにした結果、財政再建に優先的に取り込むことを決断したとのことである。
橋本首相をはじめ、政治家には11月の金融機関の破綻の連鎖まで正確な情報が上がっていなかった。その理由については、経済官庁が「財政再建」を企図していたことが挙げられる。金融システムの問題が明らかになると、財政再建が先送りになると懸念し、微妙に情報を修正したとのことである。翌98年に情報操作に気づいた橋本首相は激怒し、精査を指示した。正確な不良債権の額を知らされ、愕然としたとのことである。また、増税の影響についても、不良債権の規模についても、山一証券の簿外債務についても実態を橋本首相は知らなかった。
経済企画庁や日本銀行は「特別減税まで廃止して大丈夫か」と懸念する一方、「政治が財政再建に取り組むことはめったに無いから、水をさすような議論ははばかられた」とのことである[11]。
当時大蔵省で財務官の立場にあり、事態を離れたところから見ていた榊原英資は「日本には、経済全体、日本全体を見て政策決定をするメカニズムが決定的に欠けている」と評した。[12]』

官製不況の一事例としてとらえてるんですね。

本書を読んで驚いた、と言いますか、気がついた点としては、

その1.官僚機構の守備範囲の狭さ=責任範囲の狭さ=不況になっても気にしない→お役所主導の政策は怖い

・大蔵省の、銀行局なら銀行局、主計局なら主計局、それぞれ自分の所管範囲の政策の流れで政策を決めてゆく。経済全体がどうこう言う議論はほとんど省みられない。

まあ、これは当事者はそういうミッションで動いてるんで、しようがないですな。経済政策全体を取り仕切る、という役割を誰も担っていなかった。

経済企画庁では、結構反対論者もいたそうなんですが、そういう声は経企庁の中で封殺されてしまう。成長率予測も、ホントはかなり悪い数字になると分かってたのに、あれこれ省庁間の調整で高い水準に決められてしまった。しかも、医療費の値上げのハナシは途中まで経企庁も大蔵省も認識してなくて、あとになって、そんなに緊縮になるのか、と当事者達は驚いたそうで。

で、その後、その反省に立ってか立たずか、省庁再編で『経済財政諮問会議』ってのができて、

『経済財政諮問会議が予算編成に関与するようになってから、7月に当年度の「経済動向試算」(内閣府試算)によって当該年度のGDPなどの見直しが行われるようになった。これを前提に民間議員が次年度のマクロ経済の想定を経済財政諮問会議に提出するという形で、予算編成の前提となる経済成長率などの数字を決定するようになった』、

という流れなんですが、なるほど改善されてますな、というのは良かったんですが、

その後、竹中さんが担当大臣を辞めたあたりから、この会議がうまく機能しなくなってしまい、

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌

『ただ、竹中さんが総務大臣に横滑りして諮問会議の所管を外れてからは、従来の官僚主導に戻ったそうなので、結局誰がハンドリングするかによって変わってくるということですね。仕組みだけの問題ではないのです』

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌
竹中 平蔵
日本経済新聞社

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民主党政権になって、機能を停止したんでした。

ハハハのハ。

こらあかん。

平成10年問題は結構ネタとして面白いんでもう少し、今後、このカテゴリーでしばらく続けていきます。

(自殺増のことを考えると、国民にとってはセンソー並みのエライ災難で、面白いというのは不謹慎かもですな)

自殺大国日本3


自殺大国 日本

お休みをいただきます

2008-11-14 01:21:51 | 平成10年問題
今朝テレビを観ていると麻生さんが打ち上げている給付金問題をやってて、けしからんだの、効果がないだの、いつから始まるんだとか、地方に丸投げだとか、散々だ言われ方で。

ブッシュがやった給付金の時と比較してしまいますな。

さっさと決めてさっさと発表して、さっさと実行。数ヶ月後にはウォルマートの売上に何パーセント効果があったとか、そんなニュースが聞こえてきたんですがね。

日本だと、発表した後、ああでもない、こうでもない、それはけしからん、できるわけない、効果がない、と回りがあれこれケチをつけ、マスコミはどっちかにノッかって・・・。

3月までに決まるか、それも難しかったりして。

ウーン。3月までに効果が現れているか、じゃないんで。

麻生さんが発表したときには結構、スピード対応で印象が良かったんですが・・・。

さて、ようやく休みが取れることになりまして、出かけることにしました。で、10日ほど更新をお休みします。

夏以降、かなり忙しくて休みが取れなかったんですな。では10日後に。

金融危機 どうなる2

2008-10-06 00:23:33 | 平成10年問題
さて、下院で可決されたポールソンのベイルアウトプランなんですが、もうしのごの言っている場合じゃないということで、いやいや支持した議員も多数いたはずですね。それだけ状況が逼迫していて、金融が詰まって、日常の経済活動にも支障がでてきているからなんですな。

Will the bail-out work?

Speed is of the essence. Banks are Speed is of the essence. Banks are loth to lend to each other, except at record punitive rates and for the shortest of periods. Most want their money back within a day. Massive liquidity injections by the Federal Reserve and other central banks have done little to unclog the pipes.

銀行間の貸し出しレートが懲罰的に高くなって、しかも超短期でしか調達できなくなってしまっていて、中央銀行が資金を投入しても効果がなくなっている。

そういえば、Libor=ロンドンインターバンクレートがめちゃ高だという記事があちこち出てましたな。

Worse, the availability of short-term loans to companies is shrinking at an alarming rate. The market for commercial paper has shrunk by around $600 billion since last summer, with almost $100 billion of the reduction coming in the past week alone. This hurts companies large and small.

金融機関だけじゃなくて、一般の事業会社も借入れができなくなっていて、CP市場は60兆円も縮小。先週だけで10兆円減った。だれも引き受け手が居ないんでしょう。それにしても縮み方が半端じゃないかんじです。

General Electric has had to raise new capital partly because of funding concerns. Retailers report problems financing purchases of holiday-season inventories. The head of AutoNation, a car dealer, told CNBC that “banks were looking for every excuse to say no…We’ve gone from a credit crunch to a credit panic.”

GEも追い詰められて資本を増強せざるを得なくなった。そうですな。バフェットさんが金を出すんでした。小売業者はセール時期に向けた在庫資金の調達が難しくなっている。『銀行は融資を断るのにどんな言い訳でも探してくる』。クレジットクランチじゃなくてクレジットパニックだ。

これ、貸し渋りってヤツですかい。

The pain is reaching municipalities and states. Alabama’s Jefferson County is on the verge of bankruptcy. California’s governor, Arnold Schwarzenegger, has reportedly given warning, in a letter to the Treasury, that his state is running out of cash to fund day-to-day operations and may need an emergency loan of $7 billion from the federal government.

事業会社だけじゃなくて、地方政府にも問題が及んでいて、アラバマカウンティは破算しかけ。カルフォルニアのシュワ知事は州政府の運営費が不足していて連邦政府に70億ドルの緊急融資を要請した。

普段は金融機能が表に出てくることがなくて、傍目にはなにをやっているのかわからないんですが、こうなると大切さがよくわかりますな。普段は当たり前に感じていても停電になって電気のありがたさがわかるのと同じですな。

小売業者が資金調達できず、十分な在庫手当てができなければ、その分業績は落ち、消費も落ちますな。以前見たように小売業は普段赤字でクリスマスの四半期で黒字にしているところも結構あるんですね。ここを直撃すると結構痛い。米国の経済の足腰が弱くなれば、当然中国、日本にも影響がでますな。

雇用が弱いというのも気になりますよね。

小売というのは雇用にも影響が大きいはずですな。小売、サービス業というのは雇用の受け皿イメージなんですがね。いい加減消費の弱いところに金融でも痛むとさらに、雇用が痛んで、雇用が痛むと消費が・・・。

なんか昨年のロンドンエコノミスト誌の予言どおりになってきましたな


ロシアを止めて

2008-08-12 00:29:47 | 平成10年問題
夏休みをお楽しみの方も多いンでしょうな。
ウーンうらやましい。

私も休む予定が、なんやかやで、お流れに。まあ、予定も立ててなかったのでかまわないんですが、代わりに秋にでも休みますかな。オリンピック後の北京なんか安くいけそうですよね。

さて、オリンピックだと思っていたら、戦争じゃあないですか。
タイミング良く、と言いますかちょうどこの本を読んでいて、

ブッシュが壊したアメリカ―2008年民主党大統領誕生でアメリカは巻き返す (単行本)

例によって邦題はムチャクチャですな。原題はSecond Chance three President and the crisis of American Superpoweと言いまして、とってもまじめな題名で、ブッシュ、クリントン、ブッシュと冷戦後の3代の大統領の外交政策について整理した本です。

ブッシュはトンでもだ、というネタでテキトーに書いている本ではありません。こんなバカっぽい邦題は著者に対して失礼ですな。帯も日本をNATOに組み込み中国の独走をゆるすな、と書かれているんですが、ブレジンスキーさんが書いていることとは微妙に違うし・・・。日米同盟の強化より日本をNATOに関与させて行くほうが中国を刺激しない,安定につながる、という主張をされているだけなんですけど。

邦題といい帯といい、ちょっと・・・。

著者のブレジンスキーさんは、カーター政権で安全保障担当の大統領補佐官だった方ですね。

冷戦後,米国一国が圧倒的な大国になって、世界を安定させる枠組みを作るチャンスが来たのに、結局3代の大統領はチャンスを無駄にした。今度はセカンドチャンスだ、というのが本書のテーマ。


で、何のハナシでしたっけ。

ロシアとグルジアですよね。
それは明日。今日は文句だけ言って終わってしまいましたな。


ついでです。平和を願って。