会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

ダイエーの蹉跌

2005-01-31 00:51:29 | ターンアランド
ダイエーの蹉跌
田畑 俊明 日経BP出版 2005/01/11

 ダイエーの再生のために、呼び戻されたもとダイエー戦士の告発もの。

うまく行かず、退社。その反省の弁であり、高木前社長への批判でもあります。

読後の感想は、随分ひどかったんだ、に尽きます。

 まだ、追放される前の中内氏がテレビで、『会社が大きくなると官僚的な動きをする人が増えてしまう』と嘆いていました。また、『だんだん消費者の動きがわからなくなってきた。安いものが売れるのではなく、豆腐でも400円のものが売れたりする』とも。

 一方で、『対面販売など邪道であって、』と斬って捨ててました。高い豆腐が売れることと、対面販売は商品の個別性という点で一環しているように思えますが、中内氏の頭の中ではつながらなかったようです。ダイエーの悲惨な状況は、この中内氏の迷いが尾を引いているようです(本書でもその問題は少しだけ触れられています)。

 本書は、がんばる現場と、それをつぶす本部、黙認するトップという構図で書かれています。

 売り上げを上げるには地元銘柄を置く必要があり、実績も上がるのに、自社ブランドを優先させようとし、そうした成功例を他店に広げないようとまでする本部(商品統括部)。

 最近勢いのある『オオゼキ』などと比べて、こんなことをやっていて復活するとは到底思えない。戦う前から負けているという感じです。

 本書にはうんざりするほど、だめな例が出てきて、ホントはこうするべき、ああするべきと書いてあります。かなり頭にきているようで、積極的、消極的な抵抗に遭い、こんなんじゃあだめだとの結論。抵抗勢力は断固排除し、異質な文化を持ったトップを迎えろとも。

 普通は会社の危機だ、となれば一致団結して戦うとも思えますが、中内氏の言葉のとおり官僚的な保身に走ってしまう。中途半端な金融支援を実施したときに、先延ばしばしだと批判されましたが、この本を読めばその批判が正しかったんだろうとも思えます。 

 ターンアラウンドにはCFの安定化やステークホルダーとの理解が第一フェーズで必要だ、とのことですが、ダイエーはステークホルダーたる金融機関の引いたスケジュールの中で、それにあわせるべく四苦八苦して抜本改革にいたらなかったことがわかります。

 正しい方向にベクトルが向いていない中でずるずる時間が過ぎて行くのはむなしく、早期の対応が必要だ、との意味はこういうことをさすのだなあ、と納得。

 決算対策やら多額のキックバックやら、集中管理の弊害やら、ナショナルブランドの凋落やら、今、小売が変わろうとしている理由はどんなところにあるのかという観点から読むこともできます。すなわち、ダイエーのようにならないためにはどうすべきか、ということなんだ、と良く理解できます。

 本書の最終章は、『答えは今やっていることの逆にある』となっています。





 

 

Interpublic Groupその1

2005-01-19 01:11:18 | ターンアランド
 先日、Businessweek誌で取り上げられていたIPG.
ターンアラウンド途上で、リスクはあるが、もともと株価は高い位置にあったので、うまく行けばかなり…、という思惑。

 Yahoo USAでざっと調べるに、確かに株価は01年の1月に40ドル代だったものが、今は13ドル弱までまっさかさまに落ちている。
5年株価IPG
03年に10ドルも切り、その後10ドル代で低迷。どうやらまだ赤字らしい。

ここ4~5年が悪いということで、HEADLINEの目についた記事を適当に読んでみると、

More than the previous two picks, Interpublic is a turnaround story with lots of "ifs." If this New York firm can continue to cut costs, if the advertising spending upswing stays on course and if Interpublic can improve revenues and its operating margins, you will be handsomely rewarded with the 6.25% income stream.

The time will come again to invest in junk. That time is not now.

 何かクソミソ。今は金利も安く、JUNKにも結構人気があって価格が高い(=利回りは低い)ので買うのは止した方が良いとか(むしろ今は昔買ったJUNKを売る季節)。

 中でもIPGは…。もし○○がうまく行ったら、と、たくさんの『もしも』の世界の中で始めて利回りが確保できる状況=リスクが高すぎるとの判断。

ジャンクボンドにゃ手を出すな

 こうやって、特に名指しで否定されているところを見ると結構やばいみたいですね。

 やる気が無くなるのを我慢しつつ、次はProfile.

 広告だ。NYにオフィス。かっちょいい。43千人も従業員がいる。かなり巨大だ。というか、これは世界を代表する、という感じだな。何、45億ドルも売り上げがあるのか。スゲー。しかも5%伸びてるとな。
※ただしここの数字は9ヶ月。

モータースポーツ契約破棄、資産の劣化(減損会計のことか)で巨額の赤字。ターンアラウンドの一環でしょうね。これなら赤字は仕方ない。集中的な外科治療か。ゴーンさんみたいなヤツかな。


IPG プロフィール

財務に行く前にもう少し周辺を見てみますか。


ビジネスウィーク誌のお勧め投資銘柄/米国

2005-01-17 00:56:40 | 英語情報
 BUSINESSWEEK誌が2005年の投資についてレポートしています。

 今年は、企業収益が減少してゆく一方でFedの利上げが予測されており、
Dividendをしっかり出しているようなCash Richなところに投資するよう
アドヴァイスしています。

質を重視した投資

 ストラテジストとポートフォリオマネージャーを集めて
個別銘柄についてディスカッションしています。

印象に残った点を以下。

 ・WALLMARTやCITICORPがコンスタントに利益を増やしているが、株価にはねていないので買い
※CITIはdividendも高く、PERも低いので繰り返し推奨されている。
 ・Interpublicはターンアラウンド銘柄として買い(大きく株価落ちおり上げ余地大)
 ・United RentalsはIRSの調査を受けているが大きな影響ないと予想し買い(大きく株価落ちており上げ余地大)。
 ・ドルの減価によって PepsiCo は良いかも。
 ・ファイザーは今買いかも(この人は逆張りか)。

 リスクとしては、石油の値上がり、金利上昇、モーゲージローン悪化による負の資産効果が上がっています。米国の消費がいずれヤバイということは以前から指摘されているし、日曜日の読売でもサミュエルソンがいずれ調整必至と書いていました。

 他にもコメントがいろいろありますが、私が興味をひかれたのはInterpublicとUnited Rentalsの2社。

 調べてみますか。

キャッシュフローと借り入れ返済

2005-01-13 01:27:46 | 会計実務
自分で考えるわいというブログをもう一つ持っています。

 個人的な関心を中心にまとめていますが、金持ち父さん原理と貧乏父さん原理について継続して考えています。

 キャッシュフローと借り入れ返済についてうまく説明できたような気がするので。

 ※厳密には減価償却やらなにやら考えねばと思います。

Businessweek:2004年ベスト・ワースト経営者

2005-01-10 18:24:12 | 平成10年問題
 ビジネスウィークに昨年度の経営者のベストとワーストについて特集しています。昨年はバーバリーの女社長が取り上げられてましたが、さてことしは。


GEのイメルトが筆頭です。GEは以前からよい手を打っているので業績はよくなるだろうと言われてましたが、調子よさそうですね。規模が大きすぎて株を買う気になれませんでしたが、買っときゃよかったな。

 アジアからはヒュンダイの経営者が唯一ランクイン。ソナタってのは車のことですかね。売れてるそうです。品質にこだわったのと中国で売れているのが勝因とか。

ホームデポが伸びてるようですね。レジの自動化で効率が高まると言われてましたが成果が現れたようで。消費が落ちるかもしれないことがリスクだったのですが、昨年は問題なかったんですね。年取ったベビーブーマー世代が日曜大工に励むだろうことに賭ける。いいですね、チャレンジングな感じです。
 それにしても、購買の集中化で在庫不足に陥ったことがかかれてますが、これには創業者連中がさぞかし怒ったことでしょう。もともとこの会社は在庫がなければ他の店で買ってでも届けるような顧客重視のカルチャーが売りですからね。

カリスマ主婦マーサ・スチュワートの後継者の記事があります。これはネタとして面白いですね。雑誌編集者で実績がありますが、マーチャンダイジングには経験がないので…とのことです。

 もう一つネタを。これは笑えます。ドイツにある世界4位のセミコンダクターメイカーのCEOが何の説明も無く辞めたとか。いまだ説明がなく、投資家は怒りますわな。
実は、この会社ヨーロッパでは経営管理と透明性でお手本とみなされたとか、そのCEOはアメリカンスタイルで有名で、自分の部屋のステレオでジェームズブラウンを聞いていたとか。やりすぎ? いくらアメリカの経営者でもそこまでやるんだろうか? ヨーロッパには面白いネタが転がってそうです。

 他に、ペプシが中国、インドで伸びたのと、ヘルスコンシャスで調子良いことや、AMDがインテルを追い上げていることなど。AMDは積極的に工場投資してたことを読んだことがあります。

 年末にマーケットをお騒がせしたメルクの経営者がワースト経営者。鎮痛剤の副作用を否定し続けていながら結局認めざるを得なくなり大損。株価は3割落ち。製薬会社はこれがあるので怖いですね。ワーストにはディズニーのアイスナーやファニーメイの経営者名前もあります。

 
 ホント、面白いけど、今日はこの辺で。

事業再生と敗者復活

2005-01-09 17:42:08 | ターンアランド
事業再生と敗者復活
講談社現代新書 八木宏之 04/05/20 第一刷

 借りた金は返すな、の著者が少し前に出した新書です。
 大企業の話は新聞にも良く取り上げられていますが、中小となると実態は良くわかりません。
 この本はコンサルの立場から再生の現場を伝えています。

 経営が行き詰まって自殺する経営者が増えていることから本書は始まり、そんなことしないで、貸し手と対等に交渉せよと訴えています。

 サービサー法や商法改正で随分と状況が改善され、必ずしもつぶさずに事業を残したり、場合によっては経営者もそのままで(ただし私財は提供)いることも可能になりつつある現状の説明があります。

 著者が強調している点でなるほどと思ったのは、私財は提供しても自宅は残すべきこと。自宅を持ってかれるとさすがにがっくり来るそうです。今日のサンデープロジェクトで、阪神淡路大震災の特集をしていましたが、自分の家を回復してやっと元気が戻った被災者のことが紹介されてました。自分の城を確保していることはやる気に大いに関係するようです。
※ぼろやの借り屋住まいの私個人にはあまり関係ない感じがしますが、普通はそうなんですかね。

 著者が攻撃しているのは、世の中が再生に動いているのに、回収一本かつ横並びの考え方を捨てない金融機関と、不勉強な税理士、弁護士(士のつくさむらい商売と著者は呼んでいます)たちです。

 サービサー法も商法改正もここ数年の動きですが、ついてこれない人が居るほど大きな動きになっていることが良くわかります。

 再生スキームでは、取引金融機関を、不良債権処理を志向している銀行(体力あり)、債権を持ち続けざるを得ない銀行(体力なし)に分けて交渉する例が説明されています。体力ありの方には債権売却させて債務者は新債権者と返済交渉(返済額は劇的に下がります)、体力なしの方には、引き続き融資を(分割後の新会社=good companyに)してもらいます。


 経営者が奮起すれば、再生への道が開ける(最悪でも自分の生活は確保できる)ことが良くわかります。一旦会社が倒産してしまえば、やくざまがいのひどい取立てにあい、家屋敷は取り上げられ、娘はソープランドに売り飛ばされ、というようなイメージから、失敗を清算してその経験を生かして次のステップへという時代になりつつあるということでしょうか。

 市場原理を進めるには優勝劣敗の厳しい世界であると同時に、敗者復活(ないしは敗者も死なない)が可能な仕組みでもある必要があります。デフレで不況で法整備がなされ状況が変わった、という見方もできますが、経済社会が市場を志向しつつあり、それを受け入れつつあると見ることもできると思います。

中国のMA

2005-01-08 10:52:58 | 英語情報
エコノミスト誌に昨年度のMA動向が出ています。

2004年MA件数

 1位 米国
 2位 英国
 3位 日本
 ※target countryでカウント。

 1位から3位までは金額、件数とも同順位(米国がダントツですが)。
 中国は金額で9位ですが、件数で4位です。

 このマーケットでも中国がホットなことがわかります。

 中国のMA動向
この記事では金額が400億ドル台で紹介されていますが、エコノミストだと500億を越えています。金額も増えつつあるようです。

 一方、日経本紙では、胡錦涛政権がMAにブレーキとの記事も出てました。後先考えず買収してしまう例を嫌ってとのこと。意外に保守的だと見ることもできるし、慎重姿勢だと捉えることもできるのだと思います。

 中国は面白そうだけど、バランスはどうかな。海外の投資家からみれば人民元には増価への政治的圧力がかかっているわけだが、減価するリスクは考えてなくてもよいのだろうか。
当局はうまくコントロールできるだろうか。

※※※
その他中国関連の記事要約。利上げによる微調整について良く整理されていたので要約しました。
中国利上げ

                              以 上

ファイナンシャルレヴァレッジ

2005-01-07 00:43:37 | 会計実務
 英文簿記の手ほどき第二版を買いました。

 ざっと見た所、初版より活字が大きくなり、内容もとっつきやすくなってます。
 小島さんも丸くなったということでしょうか。

 勘所としてファイナンシャル・レヴァレッジが説明されています。

 定義は、

 負債÷資本

 説明が振るっていて、定期預金1000万円を担保に借りられるのは普通1000万円が上限でしょう。その何倍まで借りられるかが、ファイナンシャル・レヴァレッジ。

 こういう説明なら一度聞くと忘れませんね。

 私なら、つい(負債+資本)÷資本、と混乱しそうです。

 トレーディング オン エクイティーつまり、自己資本をネタにした取引、とも解説されており、うーんわかりやすいです。手ほどきと名前をつけておきながら、本質に触れて説明するという態度には、ただものでない感じがしてきます。

 新版にはキャッシュフローステートメントの説明が加えられており、作り方まで載ってます。

 気づいたポイントなどは今後更新してゆこうと思います。

ターンアラウンドマネジメントChap1

2005-01-05 01:12:58 | ターンアランド
ターンアラウンドマネジメント 【企業再生の理論と実践】
スチュアートスラッター+デービットロベット
ダイヤモンド社 03/09/04第一刷

 中々良さそうな本で、ざっと読み飛ばすには惜しい。
 ここで一章づつ読んで行くことにします。

1章ターンアラウンドマネジメント
(1)ターンアラウンド状況とは何か
 短期的に何らかの措置をとらない限り近い将来破綻することが明らかな危機的状況と定義。
 ※しばらくは持つかも知れないが、いずれ確実に倒産するので、低迷企業は再生にかけるべきだ、と本書は主張。だらだらしててもどうしようも無い会社はどうしようもないということ。

(2)持続可能な再生
 生き残れても投下資本に見合わない会社や後で破綻する企業と、持続可能な再生を成し遂げる企業は区別することが重要。持続可能な再生には競争優位の源泉が必要で次の3つがある。経済的要因、組織的要因、政治的法的要因。

(3)企業再生の手法
 再生には次の4つの目標がある。直面する危機を管理。ステークホルダーとの関係を再構築。事業を修復。資金問題を解決。再生は、分析フェーズ→応急措置フェーズ→戦略的変革フェーズ→成長と新生フェーズの4段階を経る。

(4)再生手法とその他の手法
 事業転換、ワークアウト、倒産などがあるが、いずれも再生とは異なる。

(5)高まる再生手法への需要
 競争のグローバル化、新技術の影響、変化の普遍性は敵対的な競争環境を助長した。だめな企業でも存続し得たかつてのような状況はどこにもない。結果として比較的良好な経済環境下でもあらゆる産業で再生手法を活用する機会が存在することになった。

(6)ターンアラウンド市場への資金と経営者の流入
 最近では不審企業のみをターゲットにする債権型および株式型ファンドが台頭している。

                                    以 上。


IFRS(国際会計基準)に関するロンドンエコノミスト記事

2005-01-03 12:26:19 | 英語情報
 インターネットでロンドンエコノミストの(国際会計基準)IFRSに関する記事を見つけました。

ロンドエコノミスト記事04/12/28

 私の英語力は今ひとつで正確でないかも知れませんが簡単に要約します(内容に責任持ちません)。

1.1月からEUの上場企業はIFRSに取り組まねばならない
EU諸国だけでなく、全体で90カ国の企業が求められるか(使用を)許されるかする。

2.結構影響がでかい
特に、、今回の新会計基準では当局と投資家に開示を求めているので、企業と銀行が密接な関係を持っている大陸ヨーロッパでの影響が大きい(Fundamental change).

3.単に財務諸表の作り方だけでなく、企業の運営、開示方法に関わるので大変だ
 
まだ多くの企業がシステムなどの準備が整っていない。
Insurance Companyでは影響が顕著で、従来UKのGAAPでは保険は保険として扱われてきたが、今後は 投資商品とみなされリスクがどれだかあるかによってRedefinceされる。投資家の行動は、金額をどれくらい出すか、ではなく、出すか出さないかという判断に変わるかも知れない。

企業合併に及ぼす影響も大きい。いわゆるMerger Accountingはできなくなる。Goodwillも20年でWright offするのではなく、減損会計として毎期テストされる(減損してなければ落とせない)。合併で得た無形固定資産も計上しなければならなくなる。

新会計基準は投資家には有利だが銀行は黙っていない。反対の動きがある。

Pension deficitもフルで計上せねばならない。Royal Dutch/Shell ではRetained Earningsに50億ドル近くの影響がある。他の企業でも同様なケースは多くでそうだ。

Share Optionに関するコストも費用計上しなければならなくなる。

4.米国基準との整合にも努力している

今後さらに厳しい基準改定を予定している。しかしIFRSに関する最大の課題は米国基準との相違点を解消することでその努力がなされている。

以上です。

※※※

ストックオプションの費用計上については、バフェットが主張してたんでしたっけ。費用計上しないなんて投資家から盗むようなもんだ、とその著書に書かれていたような気がします。IFRSではそれが認められてということでしょうか。

おっと、FASBでもStatementを出してました。
FASBのNEWS RELEASE

一方EUでは1月に欧州議会で正式に決まる模様です。
EUサイドの動き


企業と銀行、企業と投資家との関係が変わってくるのは日本だけでなく欧州も同じなのですね。米国寄せが欧州でも…。