会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

東京の未来 ロンドンの今

2012-12-16 13:15:48 | ロンドンエコノミスト

今週号のエコノミストに,ロンドンの人口調査結果がでてまして,


economist politics this week

New census data showed that London has become even more diverse. White Britons now account for less than half its 8.2m population (45%) for the first time and more than one in three residents is foreign-born. (Over 1.2m “other whites”, mainly of east European origin, also reside in the capital.)

英国生まれの白人はロンドン8.2百万人の人口のうち,半分を切ってしまったんだそうで(45%)。そして,3分の1は外国生まれ。つまり移民ってことですな。移民白人は1.2百万人居て,多くは東欧生まれなんだそうです。

数年前にロンドンに行って感じたのは,やはり白人の数の少なさですね。地下鉄に乗るとよくわかる。どうみても英国人に見えない白人も多くて,ずっと昔に訪問した時と印象がガラッと変わってました。

一番驚いたのは,外食しても結構おいしかったこと。
おそらく,まずいレストランはやって行けなくなったんじゃないでしょうか。
いろんな移民が入り,外食文化も発達していった,ということかもしれません。

昔,行った時は,スパゲティの麺にケチャップがそのままかかっているようなヤツが出てきて,ショックを受けたんですな。卒業旅行で,初めての外国。このまま旅行を続けられるだろうか,と心配になったくらいで。

日本も今後,激しい人口減少に見舞われることになりますが,一つは,移民を入れてゆく,ということもせざるを得なくなる可能性もありますが,

東京もロンドンのようになる,かもしれませんね。

安ホテルの受付は,有色移民か,学生のアルバイト。
活気があって,そんなに悪くない印象でしたがね。




重慶事件の行方は? 薄さんはどうなる

2012-08-12 18:48:32 | ロンドンエコノミスト

今年は政権交代ラッシュで,米国はもちろん,フランス大統領選があったし,韓国,台湾,他にも選挙日程が目白押しで・・・。

中国も政権移行が行われるんですが,あれやこれやで,重慶でえらいことになってたんでした。


中国の権力闘争

で,その後どうなったのか,について,動きがあったようで。

China's Gu is said to have confessed to killing business partner


奥さんの公判が行われて,どうも奥さんは英国人の殺人を認めている,ということのようですな。薄さんが捕まった時には,奥さんの英国人殺害事件に絡んで云々との指摘はありましたが,その通りだった,ということなんでしょうか。


Going quietly

Xinhua, an official news agency, had already declared “irrefutable” the evidence against Ms Gu and an employee of her household, Zhang Xiaojun, in the murder last November of Neil Heywood, a British businessman.

殺害に関して動かし難い証拠がある,と政府系報道機関が発表。

Analysts expect that this mitigating motive might help her avoid an immediate death penalty. Instead, she might receive a “suspended” death sentence and be locked away.

息子のためにやったという奥さんの殺害動機が,即時執行ではなく、執行猶予付きの死刑と身柄の拘束にとどめるとの予測がある。

The question then becomes what to do with Mr Bo. Some think that, having already seen his lofty political ambitions snuffed out he might get off relatively lightly, with only political punishment.

じゃあ,薄さん自身の方はどうなるのという疑問には,すでに彼の大きな政治野心はくじけているいることから,政治的な処罰という軽い負担だけでこの問題から逃れられると考える向きもある。

Party leaders have a good motive for containing the case against Mr Bo: they do not want to highlight the wealth amassed by his family. Many of them have rich friends and relatives of their own. This may explain why Ms Gu faces prosecution for murder but not, as yet, for economic crimes.

共産党の幹部たちにとって,薄氏事件を封じ込めることには十分な理由がある。薄一族による富の蓄積について焦点を当てたくは無いのだ。彼らも自身に金持ちの友人や一族が居るからである。このことは,奥さんが殺人についての罪に問われているが,経済犯罪については未だ告発されていないことの理由かも。

Yet Mr Bo does not seem the type to go gently into the night. Xi Jinping, like him the son of a revolutionary hero, is to take the reins of power in a once-in-a-decade leadership transition later this year. He might want to make sure Mr Bo’s political career really is over. Expulsion from the party followed by a criminal sentence would do the trick. For perverting the course of justice, perhaps? That would be another open-and-shut case.


薄氏は,だまって引き下がるタイプではなさそうで,習近平は薄氏の政治生命が完全に断たれることを望んでいるかも知れない。党からの除籍と,有罪判決はそれを実現させるだろう。罪状は司法妨害ってところか? そうなるとしたら,これまた簡単解決事件ということになる。


というわけで,この事件は,単なる派閥争い次元の問題ではなく,改革開放 vs 毛沢東路線,という政治的な路線対立をはらみ,また,権威主義 vs ポピュリズム,中国統治手法の問題でもあった、と思えたわけですが,

重慶NO.2の米大使館駆け込みという『世界が注目』という事態を経て,

結局,殺人事件とそれをかばおうとした夫,

みたいなことで終わるってことですかね。


いや,それにしても,こうして中国の権力争いがこうして事細かに分析付きで報じられてて、それが簡単に手に入るなんて,世の中変わりましたな。


温家宝首相 









英エコノミストは予測する

2012-08-11 10:41:11 | ロンドンエコノミスト
エコノミストが2050年を予測する,と銘打って出ている本で,翌年を予測する毎年出ているよやつより本格的に取り組まれているみたいですね。

ゆったり読んでるヒマはなさそうなんで,迷いましたが,誘惑に勝てずに買ってしまいました。

2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する
クリエーター情報なし
文藝春秋


テーマ毎に過去のトレンドについて解説があり,その分析,論点や,今後の可能性,なんかを踏まえて,2050年を予想するって感じですね。

エコノミストは,こういう特集と,週刊の紙面,しかもその毎号が,常に一貫した視点で書かれているとこがスゴイんですが,こうやって突っ込んだ,しかも何十年も先を予測するという大胆な試みは,各テーマの視点について包括的に説明してくれることでもあるんですな。

しょっぱな人口予測から入ってるトコも,なんかスゴイっす。

他の雑誌ならそんなジミテーマから入らず,怖がらせたり,あっと驚くような,目を引くテーマ,を持ってきますよね。しかし,国力,政治,経済,全てに効いてきて,しかもかなり正確に予測が可能な人口問題から入るのが,長期予測では正解なんでしょう。

中国のすぐそばまできている人口オーナス問題,逆に増え続けるインド,日本,ロシアはかなりヤバイこと,なんかは繰り返し触れられてきた問題ですが,簡潔な説明があり,

今後も人口が増加するが,その速度は緩やかになること,人口増の半分は,アフリカで生じること,

フランスの人口が,ドイツを上回りそうであること。ナヌ,ほんまデッカイな。


って感じですが,


各テーマごとに読み応えがありそうです。





プーチン終わりの始まり ロンドンエコノミスト

2012-03-08 07:56:23 | ロンドンエコノミスト
プーチンが大方の予想通り大統領選に勝ったようですな。

Video: Teary-eyed Putin addresses 110,000 crowd near Kremlin


右目から涙が出てますね。
でも,ナンデ左目からは出てナインでしょうな。

目が笑ってない,とかいうことがありますが,左目が泣いてない。
プーチン恐るべし。

さて,エコノミストの先週号は,選挙前にプーチンの勝利を予想しながらも,
このままの調子じゃ,あんたヤバイよ,という記事を出してます。

The beginning of the end of Putin
Vladimir Putin will once again become Russia’s president. Even so, his time is running out


ブーチン終わりの始まり。
プーチンは返り咲くだろうが,ブーチンの時代は終わろうとしている。





When Mr Putin came to power 12 years ago, many Russians were grateful for the stability and prosperity he brought with him. The political chaos and drop in incomes after the collapse of the Soviet Union had soured their belief in democratic politics and encouraged them to focus on making money. Mr Putin rode high in the polls. To the rest of the world, Russia looked like a cynical society where people were interested only in personal wealth and national muscle.

12年前に権力の座についた頃は,ロシア人達は彼がもたらした安定と繁栄に感謝していた。ソビエトが崩壊して政治が混乱,所得も現象して民主主義に幻滅,金を稼ぐことに焦点があたっていたのだ。

自分が居ないと90年代の混乱に戻るぞ,というのがプーチンのキメなわけですな。

But Russia is changing. A richer and more vocal middle class has sprung up, one that recognises Russia as an ill-governed kleptocracy. That became evident last September, when Mr Putin first announced his plan to return to the Kremlin by swapping jobs with Dmitry Medvedev, who was formally president even though Mr Putin retained ultimate control. Discontent began to rumble. The rigged parliamentary poll in early December was followed by street protests in Moscow and elsewhere.

しかし,ロシアは変化している。金持ちや声の大きいミドルクラスが登場。彼らはロシアを私物化されひどい統治の国家とみている。首相と大統領が職をスワップするとプーチンから9月に聞かされたとき,そのことが明らかになった。12月の議会選挙での不正は,モスクワや他の地区での抗議行動を招いた。

というわけですが,こんな記事も出てますな。

Putin’s Russia
Call back yesterday



The problem is not what Mr Putin says, but that he is the person saying it. People are tired of him. More fundamentally, they are fed up with the personalised system that he presides over. It looks not just corrupt but increasingly anachronistic. Ever more Russians want legitimate institutions. They want to know power can change hands. And because this is exactly what Mr Putin cannot offer, the conflict between him and them is irreconcilable.

問題はプーチンが何を言っているかではなく,誰がそれを言っているかなのだ。人々は彼にうんざりしている。もっと本質的な点を言えば,彼の支配する個人化されたシステムにうんざりなのである。腐敗しているだけでなく,ますます時代遅れなのだ。人々はかつてなく,法的な正統性ある制度を求めている。権力持ち主を変えることができることを知りたがっている。しかし,そのことこそがプーチンが提供できないものであり,彼と人々との間の溝が埋まらない理由なのだ。


ということですが,

時代遅れ,アナクロって書かれちゃってます。ハハ。


これはおまけです。



歌うプーチン
Singing PM: 'Fats' Putin over the top of 'Blueberry Hill' with piano solo

中国のキャピタルフライトリスク

2012-02-10 10:30:35 | ロンドンエコノミスト
中国のバブル崩壊、がどのようなリスクとなって現れるのか。
中国内の投資家がロスを被る、に留まらないとしたら、どんな問題があるんでしょうな。

で、最近、中国のキャピタルフライトに関する記事をよく見かけるんですが、

いよいよ本格化する中国富裕層の資本逃避

指導部の世代交代で資金流出に拍車

 中国からの資本逃避は、何年も前からよくある風景の一部だった。こうしたお金の持ち主は、共産党幹部や上場(特に中国国外での上場)を果たした国営企業の幸運な経営幹部、そして新たに富を手にした起業家などだ。しかし、政治の移行期には、中国からの資金流出がかつてないほど激しくなる。

 今年10月には第18回中国共産党大会が開かれ、最高指導部の一連の交代の始まりを告げる。従来守られてきた人が庇護者を失うことになる指導部交代が、どんな結果をもたらすかは誰にも分からないのだ。


中国の指導部交代を控えて、有力者のコネを失いかねない富裕層が一斉に資産を海外に退避させているという流れについて説明しているわけですね。

で、ロンドンエコノミストの方なんですが、海外資本も含めて、キャピタルフライトについて書いています。

Two twists in the dragon’s tail


China still runs a sizeable trade surplus. But its net exports fell in 2011 (in absolute terms) for only the third time since 2000, subtracting 0.5 percentage points from its growth. Thanks to home-grown spending, China’s economy still managed to expand by 9.2% in 2011, remaining surprisingly strong even in the fourth quarter. This growth owed an unusual amount to consumption (both public and private), which contributed over half for the first time since 2001. As a consequence, the share of consumption in China’s GDP edged up in 2011 after falling for ten years in a row.

中国にはまだ大きな貿易黒字があるが、純輸出は2011年に下落。2003年来たった3回しかなかったことで、経済成長に0.5%マイナス効果。

China this week reported that the price of new homes fell in 52 out of 70 cities across the country in December, compared with the month before. Households are struggling to obtain mortgages; developers are finding it almost impossible to obtain a loan. The drying up of foreign funds is particularly dramatic, points out North Square Blue Oak, a research firm based in London and Beijing. Foreign capital fell by 65% in December, compared with a year earlier.

今週、中国で報じられたところでは、12月新規住宅価格は70のうち52の都市で、前月比下落。家計は住宅ローンを得るために苦労し、開発業者には融資がほとんど難しくなっている。海外資本の干上がりはドラマチックなほどだ。

The flight of foreigners from property partly explains another unusual twist in the China story. Its foreign-exchange reserves fell in the fourth quarter for the first time since the height of the Asian financial crisis in 1998. The drop was small, from $3.2 trillion to $3.18 trillion, but also a little mysterious. China still exports more than it imports, and attracts more foreign direct investment than it undertakes. These two sources of foreign exchange must, then, have been offset by an unidentified drain.

海外資本が資産市場から退避しているという問題は、もうひとつの中国のひずみを物語る。第四4半期に、1998年来初めて外貨準備高が減少したのだ。減少幅は小さいがそれには謎がある。輸入より輸出の方が大きいし、直接投資もプラスだが、それをマイナスにするだけの特定されない流出があるということなのだ。

The worry is that China’s capital controls have sprung a leak. “Hot money”, attracted by the country’s growth, may be flowing out as the property market falters. Some even speculate that China’s rich may begin to smuggle their new-found wealth out of the country en masse.

心配なのは、中国の資本統制に漏れがあるという点だ。資産市場がふらついて、この国の成長をあてこんでいたホットマネーが海外に流出しているのかもしれない。

富裕層が最近獲得した富をこっそりと海外に大量に持ち出し始めている、とみている人達もいる。

Victor Shih of Northwestern University reckons that China’s richest 1% hold $2 trillion-5 trillion in liquid wealth and property. If they were ever to smuggle that money out, the outflow would dent even China’s reserves. That would be a disaster for China’s economic management, putting heavy downward pressure on the yuan. At least China’s critics could no longer trot out another familiar accusation―that it undervalues the exchange rate.

トップ1%が2兆ドルから5兆ドルの資産をもっていて、もし彼らが資金を海外にこっそりと持ち出したりしたら、中国の外貨準備を痛めることにさえなるかも知れない。そうなれば、中国の経済管理はひどいことになる。それは、人民元への大きな下方圧力になるのだ。

すくなくとも、中国批判者達は、人民元安について批判することかできなくなるだろう。

ハハ。

さて、この記事に出てきたVictor Shih 氏が少し詳しく説明している動画です。

Victor Shih - The Dangers of Capital Fleeing China


つまり、

1.富裕層のキャピタルフライトはあっても、1兆ドルのような巨額は考えにくい
2.基本的には問題にはならないはずだが、不安定となる要素はあって、
3.メカニズムとしては、
 ①富裕層が中国にある民間銀行の預金を引き出して海外に持ち出す
 ②民間銀行の預金が減るが、融資はほとんど減ることがない
 ③銀行は支払い準備金が不足することになるが、
 ④銀行の準備率が高いので、制度的に引き下げる余裕があり
 ⑤実際に下げ始めている
 ⑥それに、政府が、国債の買い上げを行って、資金を供給している
 ⑦海外への多額の資金流出が発生しても
 ⑧中国には十分な外貨準備があるので余裕がある
 ⑨しかし、持っている外貨準備の大半は、
  多分(海外で発行された)中国の民間銀行やその他の金融機関の株式と
  米国債で、
 ⑩もし、中国が株式や米国債を売るようなことになると、
 ⑪それが元で中国の民間銀行の株式が暴落して
 ⑫中国の外貨準備が傷んでしまうリスクがある
 ⑬だから、中国は外貨準備を全部使うなんてこともできない

とまあ、

中国の当局者はおっかなびっくりで、調整を行わざるをえないのだ、という感じになりますが、

もともと、中国は、人民元を安値誘導するために、中国で得られた外貨は、即座に買い上げて外貨準備として米国債や自国金融機関の株式を買い上げてきてて、結果として米国政府の財政も支えてきた、という経緯があって、

今の問題は、コントロール外の資金流出でそのメカニズムにほころびが生じた、ということですね。
人民元には下落リスクがちょいとありそうですな。

ついでに言えば、

中国の外貨準備が減ってゆくようになると、米国債保有シェアは上がって行かないし、
FRBも米国債の購入をストップしてやばいと思ったら、

日本が円高で大規模介入して、米国債を購入して埋めあわせる、

なんて。

中国が、ユーロ圏を支えます、みたいな大見得も切れましぇン。

中国との米国貿易赤字をどう見るか

2012-02-08 07:02:06 | ロンドンエコノミスト
さて、中国の経済の先行きに心配があるとかないとかは別として、米国の対中貿易赤字について。

あるいは人民元が過小評価されている、とか、いうハナシについて、実態がどうなのか。


米国の対中赤字だけを問題にしないで、多国間でみるべきだ、みたいなハナシは、胡錦濤自身が言ってたような気もしますなあ。

iPadded





AMERICA’S trade deficit with China hit another record last year. Estimated at almost $300 billion, it made up over 40% of America’s total deficit. Yet official data grossly overstate US imports from China.

昨年、米国の対中赤字はまた記録を塗り替えた。3千億ドルと見積もられているが赤字全体の40%。しかし、当局のデータはひどく過大に記録されている。

Take the iPad, which America imports from China even though it is entirely designed and owned by Apple, an American company. iPads are assembled in Chinese factories owned by Foxconn, a Taiwanese firm, largely from parts produced outside China.

iPadは中国から輸入されているが、米国でデザインされ、米国のアップル社のものだ。中国で生産されていても、工場は台湾のFoxconnのものだ。そのパーツも多くは中国の外から輸入されている。

According to a study by the Personal Computing Industry Centre, each iPad sold in America adds $275, the total production cost, to America’s trade deficit with China, yet the value of the actual work performed in China accounts for only $10.

米国で売られるiPadはそのコスト275$が中国との貿易赤字に加算されるが、中国内の作業で加えられる価値は10$に過ぎない。

Using these numbers, The Economist estimates that iPads accounted for around $4 billion of America’s reported trade deficit with China in 2011; but if China’s exports were measured on a value-added basis, the deficit was only $150m.

この数字を使って見積もれば、米国の対中赤字のうち40憶ドルがiPadによるものだが、もし、中国での付加価値ベースで計測すれば、対中赤字はたった1億5千万ドルに過ぎなくなる。


China’s small contribution to total costs suggests that a yuan appreciation would have little impact on its exports. A 20% rise in the yuan would add less than 1% to the import price of an iPad.

中国内の付加価値が小さいということは、人民元を高くしてもほとんど中国の輸出には影響しないということを示唆している。人民元が20%高くなっても、iPadの輸入価格は1%高くなるに過ぎない。

For imports such as clothing and toys the Chinese value added is much higher. But electrical machinery and equipment, with more complex cross-border supply chains, make up one-quarter of China’s exports to America.

衣料や玩具などだと中国の付加価値はずっと高くなるが、国をまたぐ複雑なサプライチェーンををもっている電気機器は、中国の対米輸出の4分の1を占めている。


Pascal Lamy, the head of the World Trade Organisation, has suggested that if trade statistics reflected true domestic content, America’s deficit with China might be more than halved.


もし貿易統計が、本当にその国の国内の生産額に限った内容を反映すれば、米国の対中貿易赤字は半分以下になるかも知れない。

というわけで、

この記事からは、いろんなことが読みとれますな。

米国の貿易赤字は、対中が多い、と言っても、実際には中国が輸入している中国以外の国からの赤字だと考えることもできるわけだし、中国の得ている利益は極めて小さい、とも言えますね。工場さえ、台湾の会社が経営しているので、中国に落ちる利益は労働者への分配分だけなんですな。

最終的に米国が得ている利益が圧倒的に多い、という話もありますな。
その利益はアップルのような多国籍企業の経営者や従業員や株主に分配される。利益は分厚くても製造部門は海外なので、売上規模からみた米国内での付加価値は、その分だけ減っているかもしれないが、それは製造部門の労働者が得たであろう報酬分であって、もともと製造部門でない人達にとっては影響が無い、てか、製造コストが安くなる分プラスの影響があるだけ。

米国国内経済が今一つでも株価が強いのは、何も金融緩和だけの影響じゃない、かもだし、格差拡大問題にも関連してきますね。多国籍企業に対する反感というのは、こういうのが背景にあるんでしょうな。

この記事では触れられてませんが、iPadは全世界で売られているわけですが、恐らく、その数字は米国の輸出として計上されるのではなく、中国からの輸出として計上されるんでしょう。

貿易赤字だけみて米国が弱った、みたいなハナシはしちゃいけないんで。


中国の輸出の勢いは、ゆるくなっているようではあるんですがね。
China's Export Sector Faces Headwinds in the New Year


それにしても、日本の名前は出てきませんなあ。

米国のヘルスケア

2012-02-05 23:47:10 | ロンドンエコノミスト

日本で税と社会保障なんて議論が盛んに行われているようなんですが、米国の状況についてロンドンエコノミスト。

Shopping around for surgery






米国では、ブッシュ時代に、いわゆる消費者主導の健保プランなるものが立法されているようでして、

Consumer-driven health care

ここ十年、ヘルスケアコストは、上昇を続けるものの、上昇幅がゆっくりになりつつあって、いろんな理由が考えられるものの、ひとつは、その、コンシューマードリブンヘルスプランによるのだ、ということなんですな。

Under “consumer-driven health plans”, workers must cough up part of the price of any treatment before their insurance coverage kicks in. Most have an untaxed account to spend on health; they think twice before depleting it. In 2006 only 10% of workers had to pay at least $1,000 before their insurer picked up the rest of the bill. By 2010 that share had more than tripled.

そのプランのもとでは、保険料がおりる前に、いくらか自分で払わないけいけないとか、

負担が目に見える形になっているわけですね。


コストを下げようと、そのプランを採用する企業が増えていて、

General Electric (GE) shifted its salaried employees into consumer-driven plans in 2010. It urged them to shop around for bargains, but they found this nearly impossible due to a lack of information. “People started saying: ‘If you want me to be an active consumer, I need to know prices,’” explains Virginia Proestakes, the head of GE’s benefits programme. When employees asked doctors for prices, the doctors were baffled. They had no clue how much different insurers paid for the same procedure, or what share a patient would pay. A recent study by the Government Accountability Office (GAO), a public watchdog, reported similar problems.


GEも2010年から採用。従業員は、どの病院で、どの治療をするか買い物をするように自分に適した治療を探すことになるが、問題は情報不足。ドクターに治療の値段を聞いてもわからない。

Barack Obama’s health reform requires hospitals to list standard prices each year, and more than 30 states have either proposed or passed laws to promote price transparency, according to the GAO. None of these measures has come close to solving the problem. Few provide enough data to allow people to shop around.

オバマケアでは、病院に毎年、標準的な治療の価格をリストするよう求めている。

So private firms are having a go. GE, for example, hired Thomson Reuters, an information firm, to show employees the cost of different services. Thomson Reuters analyses prices from prior purchases—by workers at GE and other firms—to show the cost of a given procedure at different hospitals and clinics.

GEでは、異なるサービスのコストを従業員に伝えるために、トムソンロイターズを雇った。

ヘルスケアコストは複雑だし、症状によって治療方法も異なったり、あるいは、保険会社もどこに、との治療でいくら払っているかを開示するのを嫌がって、価格情報開示というのは難しい問題があるが、


Despite this, greater transparency seems inevitable. Smart insurers are hawking their own tools. Cigna uses Thomson Reuters’s technology to support its “cost of care estimator”. Aetna, another insurer, offers a sophisticated web tool that patients use more than 67,000 times a month. Meg McCabe of Aetna hopes that consumers will soon be able to use their smartphones to enter symptoms, find doctors, compare prices and schedule an appointment.

それは避けられないようよみえる。賢い保健会社は、開示を売りにしているところがある。

Such experiments will serve insurers well. If Mr Obama’s health law stands, millions will soon shop for insurance on new exchanges. The easier the plan is to understand, the more people may pick it. A fully transparent market is years away. But a bit of sunlight is creeping in.

そうした保険会社の実験的な動きは、報われるだろう。オバマケアでは、数百万人が新しく保険会社を探すことになる。分かりやすいプランを多くの人達が選ぶことになる。全面的な情報開示による透明性は数年先になるが、兆しは見えてきている。


ということで、社会保障の分野でも、ブッシュ時代の立法で大きく変化があるということですね。
また、オバマケアには、いろんなしかけがしてあって、保険会社も対応していかざるを得ない。

オバマさんが、しきりに、オバマケアで、今後のヘルスケアコストは余計に増えるのでは無くて、上昇を減らすことができるのだ、と繰り返し強調するのは、こうした背景があるんでしょうな。

オバマ、恐るべし。

ザ・ワールド・イン2012 ロンドンエコノミスト

2012-01-06 07:29:03 | ロンドンエコノミスト

The World In 2012

毎年,エコノミスト誌が出している,予測本。

世界の政治,経済を概観していて,簡潔でポイントを押さえていて,かなりお勧めなんですが,

本屋に行くと,2500円もする。

二年前ロンドンの雑貨屋のレジで見つけたときは,6ボンドだったんで,こら高すぎる。1000円程度のものを,送料やら,為替やら考えても,それはないだろうって感じで,なんとかならないものか,

と,調べていると,

ナント,日本語版が出ているではないか。


ワールド・イン・2012 (講談社 Mook)
クリエーター情報なし
講談社


いや,気が付きませんでした。
早速本屋に直行して,購入。

冒頭,編集長が,

『日本語版の編集にあたっては,英語版が持つ雰囲気を可能な限り読者の皆様にお伝えできるよう編集は最小限にとどめた上で,原文に忠実に翻訳しています・・・,紙面デザインも英語版にならいました』

とお書きになっている。

すっばらしい。

おっしゃるとおり。

余計な編集いりません。日本の独自記事も不要。
昔,別の出版社から出ていた頃も買って読んでましたが,日本人評論家の記事の部分だけレベルが全く違ってて,違和感だけが残るような状態になってたんで,無い方が良い。

日本人評論家の記事は,たとえば,小泉政権は崩壊する,だの,多分政党の実力者に聞いて回ったネタを元に決め付けて書いてたりして,分析も根拠も全く不十分だったりする。その予想も見事外れた。

一方で,本家のエコノミストの記事で,論理だてのはっきりしない記事は,存在しないし,ソースもきちんと書いている。どんな問題についても読んですんなり納得できる,という驚異的な水準で記事が書かれている。

経済記事も日本独自記事は,データの解説だけだったり,一部分を細かく解説しているだけで,何が言いたいのかわからない,という印象が残って,読んでて面白くない。

まあ,一緒になっていると,日本の雑誌記事のレベルがどんなもんかよく分かって面白い,という面はあるものの,無くて良いですな。

本書は1300円。妥当な設定だし,是非お勧めです。水準は高くとも,別に難しく書いているわけじゃない。その辺の予測本を買うんなら,本書を読んだ方が良いんじゃないかと。その辺の予測本は,ネタ集であって,バラバラになってて読んでてもいまひとつ・・・。


本書の冒頭に,米国大統領選挙を予測する記事があって,共和党はロムニーとリックペリーの戦いになる,と書いてあるんですが,これは,外れ。共和党のアップダウンには,さすがのエコノミストも予想がつかないようで。

主な国家指導者の交代のリストに,なぜか韓国の大統領選挙について触れてませんな。台湾はあるのになぜかな。台湾ほど世界に対する影響が少ないとみているからですかね。

とあれこれ,楽しく読ませてもらってます。




プーチン帝国に綻び

2011-12-08 07:56:24 | ロンドンエコノミスト
ロシアの議会選挙があって、かろうじてプーチンのユナイテッドロシアが勝ったってことなんですが、
かなりの不正があったと報じられて、

モスクワでは、反対運動で盛り上がっていたようで。

Violence as Putin party suffers poll setback


当局に押さえられて逮捕者も髄分出たみたいですが、モスクワというのは、伝統的にユナイテッドロシアの支持が弱い地域でもあるんだそうなんですがね。

それにしても、アルジャズィーラはこのニュースでもアップされている動画の質、量ともにダントツです。私が検索した限りですが。

Losing their grip




プーチンの故郷ペテルスブルグでは無法ぶりを非難される状況にありながらユナイテッドは34%の得票にすぎなかった。

The absurdity of the rigging became clear as results came in. In some regions the sum of votes cast for all parties exceeded 140%. In Chechnya, ruled by Ramzan Kadyrov, a Kremlin-friendly strongman, United Russia’s result was 99.5%. A similar result was achieved in a Moscow psychiatric hospital.


不正は明らかで、ある地域では全政党の得票が140%を超えてしまった。チェチニアでは99.5%。

The ballot is likely to strengthen the image of United Russia as a party of "thieves and crooks", as it is known to many Russians. But it could also fan anti-Caucasus sentiment, to potentially explosive effect.

投票結果はユナイテッドロシアの、泥棒と詐欺師、というよく知られたイメージを強化しそうだ。

Why did United Russia perform so dismally? As Alexander Oslon, a pollster who advises the Kremlin, says, it is partly the result of the job swap announced in September between Mr Medvedev and Mr Putin, who will return to the presidency next March. “If a captain of your football team says there is someone stronger than him, your confidence in the team weakens,” he said.

メデベージェフとプーチンとの役職交換が今回の不人気に一役買っているとの指摘がある。

But many political observers say this is just a symptom of the regime's loss of legitimacy. “They cannot allow genuine competition because they are scared of losing power,” comments Dmitry Oreshkin, a political analyst. The next step could be purges within United Russia; Mr Gryzlov could be the first to go, according to Ekho Moskvy, a radio station.

しかし、体制が権威を失いつつある兆候にすぎないと多くは観ている。

『本当の政権競争を許容できないのだ。なぜならば権力を失うのが怖いからだ』

『次のステップは、ユナイテッドロシアの中で起きる追放劇かもしれない』『Mr Gryzlov その手始めとなるかも』


ということで。



選挙で報じられている不正行為はアフリカのどこやら国の独裁政権を思い出させますな。

それにしても、

アルジャズィーラ以外にも不正を告発するゲリラ動画が結構アップされていて、
場合によっては殺されかねないロシアで、

勇敢な人達が沢山いることもわかります。

マラリア退治

2011-10-20 07:51:24 | ロンドンエコノミスト
マラリアやエイズが途上国の発展を大きく阻害している、と強調しているのは、経済学者のジェフリーサックスが有名ですな。

Jeffrey Sachs - Malaria and AIDS - ND Forum (very poignant)


そう大きくないコストによって、予防できるんだから・・・。

ジェフリーサックスは、いろいろなトラップが貧困をもたらしている、と指摘しているんでしたが、マラリアもその一つなんですな。

ジェフリーサックス インタビュー



で、ジェフリーサックスの活動もあってか、
マラリアで死亡する人の数が、減りつつある、というハナシです。

Squashing mosquitoes with dollar bills






このエコノミスト誌はチャートにしてますが、ブログ記事冒頭に貼っておきました。グラフは、マラリア死亡数が減りつつあることと、マラリア対策に投入された資金とが関係していることを示しているんですね。

The death toll from malaria seems to have responded to a big injection of money

OF 108 COUNTRIES where malaria is endemic, ten are on track to eliminate the disease in the near future, according to a report by Roll Back Malaria published on October 18th. For many others getting to zero deaths from the parasite is a distant dream. But that should not stop a celebration of the progress that has been made over the past decade, during which time deaths from malaria have fallen by 20% (see chart).

ここ10年でマラリア死亡者は20%低下した。

The correlation between reduced deaths and money spent is fairly strong, much more so than the correlation between conventional aid and economic development. Given that improved health often comes before advances in GDP per capita, spending on malaria may eventually show an even greater return than it already has to date.

死亡者の低下と投入された資金との関係は極めて強い。その関係は伝統的な援助や経済開発との関係よりもずっと強い。保健改善がしばしばGDPの拡大に先駆けることを考えると、マラリアへ対策への支出はすでに今日までにあらわれているリターンよりも最終的には大きいかも知れない。

ということなんですな。

援助の効果が果してあるのか、というハナシは良く聞きますが、
マラリアについては効果があるんじゃないか、ということでして。

グラフを見る限り、世界の取り組み、という割には金額は大したことないんですがね。
もっと投入してもバチはあたりませんな。



Malaria Kills. Bed nets save lives.