会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

TAC社長

2007-05-30 00:40:00 | 読書
さて、TAC社長さんの書いた本です。

ビジネスの論理―私はいつも限界に向き合い、格闘し、限界を超えて生きてきた。Amazonで購入livedoor BOOKS書評/ルポルタージュ

 すごいおっさんでありまして体力10人前。普通のマラソンに飽き足らず100キロ以上を走るウルトラマラソンに参加。名古屋から金沢までの270キロを2日で走るレースにも参加するんだそうです。

 絵描きになる夢を断念して東北大学に入り、バイトで塾を経営して一儲け。美男講師を雇って母親の受けをよくした。座禅を組んで導師の公案に悩まされ、インドを旅し魅力にとりつかれる。新日鉄の内定をけって公認会計士試験にチャレンジ。受験生時代は東京で収入が無いので貧乏暮らし。キャベツがどうしても食べたくなって金が無くて夜中に畑から盗む。

 アイディアマンで、茶目っ気があって、行動的で。今の時代なら何でもありかも知れませんが当時を考えるとかなり好き勝手、どう見てもおもろいおっさん,まあ略してオモロッサンとでも呼びたい感じです。

決算説明会の動画です。社長さんを見ることができます。

動くオモロッサン

 社長自ら全部を説明していますね。人に任せません。自分で全部説明する社長なんてざらなのかも知れませんがね。30前にTACの社長を引き受けた後も講師を続け体力の限界までがんばってしまったそうです。講師は続けたかったが社長業との兼務はムリと感じて、ようやく講義に立つのをやめたんですね。

 本書を読んで感じるのは、そうした過剰感ですね。有り余る体力、有り余るこだわり、溢れる才覚、多情多恨。まあ、恨は無いですかね。

 ホリエモン的なスマートさを誇るような、お金もうけなんか簡単さ、のようなノリとは対照的で、どろくささの極北といった感じのオモロッサンでして、インド傾倒、座禅を組んでの瞑想、自分を追い詰めて何事かにいたらんとするスポ根と、マジで来られたら引いてしまうような話がバシバシ出てきます。

 ただ、これが社長だと思ったら間違いでしょうね。割り引いて考える必要があります。本書はもともと、TAC Newsに連載されたエッセーなんですね。読者に受講生を想定しているわけで、そりぁ気合の話になるし、精神論が必要で、とにかく気持ちを鼓舞することに主眼をおいて書かれたものなのでしょう。自分の体験を面白おかしくも書けるのでしょうが、もともと目的が決まった文章なんですね。

本のカバーも、題名も、副題もとても一般向けとはいえません。

 ちょっと勿体無い感じです。文章そのものは面白いんです。インドの描写から始まって子供との絵本にいたるまで内容は読ませます。ひたすらで、クセのあるモノローグですが力があります。

 本書は一般に言うビジネス書ではありませんが、たたき上げのオーナー経営者の苦闘がいかなるものかを伺えます。創業現場は戦場であって、自分の判断に社運をかけるという局面を何度も経験。どこに目をつけるか(社長は点を打つと表現しています。いい言葉です)、TACの場合は公認会計士の場合は学生で、学生に直接呼びかける形をとります。受験生をライバルと奪い合うのではなく、学生を啓蒙して受験を目指させるんですな。税理士の場合は社会人で、授業のテープを貸し出して時間の不自由な社会人の便宜をはかります。いずれも前例が無い。テープの貸し出しは社内で大反対があったとか。今じゃどこでもやってますがね。

 専修学校に進出しようとして認可を区にもらいに行くと、区の担当者は区の既存の専修学校の業界団体の事前了解をもらう必要があると言ったそうです。その団体の理事長に会いに行くと、マーケットの規模からしてこれ以上新規の学校を受け入れる余裕はないとして断られたそうです。業界内で申しあわせてTACの参入を阻んでいたそうです。ある種の談合ですね。

 前回ご紹介しましたが、会計大学院設置の件では未だに意地悪をされていて、一旦申請を取り下げさせられているようですね。

 社長がこういうむき出しの文章を書く理由はこんなところにもあるんでしょうね。実際に書いてしまうところはお人柄ですね。

 もちろんいい意味です。 
 
 

TACってどうよ

2007-05-29 00:08:47 | 銘柄研究
 実はTACの社長をされている方の自伝を読んでいます。

 TACさんにはUSCPA受験の時に少しお世話になりました。模擬試験を受けたんですね。予備校は別に通っていたんですけどね。直前の論文口座を受けたこともあります。結構分かりやすくて良かった記憶があります。とにかく、いくら勉強しても一向に出口が見えず、受かる気が全然しなくてつらかった日々です。時々、あの頃のことが夢に出てきたりするんですよね。

 TACのHPを眺めているとこんなのありました

ANJOインターナショナルが閉校と聞いたときは随分驚きました。USCPA予備校ではトップだったと思うんですけどね。もう少し受講料が安けりゃ僕も通ってたはずです。分かりやすいテキストや問題集、うらやましかったな。ネットで売買されてたりして。TACは早速流れてくる受講生に手を打ったわけで、抜かりないですな。

 こんなのもありました

 パンフレットに間違った単位数が書いてあって当局に指導を受けたんですね。法令違反といっても、間違った数の単位を授与したわけでなくて、そういうパンフレットを作って配った段階ですね。極めて不適切な行為、として指導されたんだそうですな。

 こう言うの、木っ端役人と言うんでしたっけ。手塚治虫のマンガに出てきそう。TACに大げさに社内処分をさせて、諮問委員会を作らせて・・・。わが国の教育行政というのは税金を使ってこういうことをやっているんですね。

 さてTACの会社そのものはというと、

 沿革です。東証一部上場。米国公認会計士は89年からで,意外に早くからやってたんですね。ベッカーとの提携が95年から。

 07年の決算短信です。 売上が200億円、営業利益が10億円と覚えておきましょうか。それにしても、営業利益は前年比178%の伸びです。すごいですね。期中に業績の上方修正をされています。どうやら、期初予想より会計士関係の売上が伸びたみたいです。日本版SOX法対応やらで監査法人が採用を延ばしていることに受講生が敏感に反応したんですね。一時は監査法人が採用を絞ってたみたいで、ここ2年ほどTACさんの利益も極端に落ち込んでました。落ち込んだのは職業訓練給付金制度が厳しくなったことも一因ではあるみたいですがね。まあ、回復して一安心というところでしょう。

 DVDによる通信教育制を選ぶ受講者も増えているようで、TACさんは通学生の減少を受けて教室のフロアを減らしていってもいます。賃料は減りますな。それよりもなによりも、DVDで済んでしまえば、一人当たり受講生の限界コストはどんどん減っていくわけでして、この流れが進めば結構良いですな。DVD一枚ダビングするのにそんなにコストがかからない一方、受講生は何十万円も取られるわけで。通信だからってあんまりお安くないんですよね。売上が増えてもコストが上がらない、この傾向は当社の期中の上方修正の理由で書かれていることでもあります。

 借金もあんまりないし、財務はいい感じですね。前受け金が異様にでかいんですが、これは受講生から前もってどん、と受講料をもらうからなんですね。授業が進んで売上として認識されるまでは負債勘定に上げておくってことです。

 USCPAはTACの中ではマイナー分野ですね。USCPA単独で数字が出ているわけではありませんが売上構成から言って10%もありません。

 さて、そんなTACの経営者がどんな人か、本は中々面白かったんですが、次回ご紹介します。

米マクドナルド 中国戦略

2007-05-24 00:29:48 | 飲食
 マクドナルドウォッチャーというわけではないんですが、何かと目についてしまうのですね。誰でも知っている世界のマクドですからね。

 創業者のレイ・クロックが功成り名を遂げて自伝を出版したのが1977年。亡くなったのが84年です。もう随分前の話ですよね。にも関わらずです。にも関わらずですよ、ここ5年の売上見てください。百万㌦単位です。左から2006年、2005年と5年間に渡る売上推移です。

Total revenues
$ 21,586 19,832 18,594 16,825 15,201
 
 うーん、どうですか。随分伸びてますよね。半端な伸びではありません。日本の外食でこれだけ伸びている会社がありますかね。まああるかも知れませんがこの規模を伴っての伸びですからね。これはスゴイですよね。

 じゃあこれはどう思いますか。

Operating income
$ 4,445  3,992 3,538 2,837 2,128

 営業利益です。伸び,どうですか。すごいじゃあないですか。売上の伸びよりはるかに上回ってますよね。この間、2倍以上になってます。何でか。

 多分これも大きな理由でしょうな。

Franchised and affiliated revenues
$ 5,503 5,106 4,839 4,344 3,905

 フランチャイズからのロイヤリティが伸びてますね。利益ほどではありませんが売上よりずっと伸びてます。ロイヤリティって利益を伸ばすには良いわけですな。なんせ勝手に集まってくるお金ですからね。別に人を雇うわけでなし、設備を買うわけでなし、そんなのはフランチャイズオーナーにやらせるわけですわ。前回のマネジメントディスカッションにそう書いてありましたな。しんどいところは他人にやらせて自分はその上前をはねる。悪く言いすぎですね。フランチャイズオーナーも儲かるなら、それはwin-winな関係ですね。

 さて、ロイターに米マクドのCEOの電話インタビュー記事がでてました。

 中国で朝食に力を入れるんだそうです。まだまだ伸びるとか。米国で朝食を伸ばしたように、中国でも伸ばす。今では、日本でも朝をマクドで食べることは普通になってますが、最初からそうだったわけじゃ無いですよね。朝メニューをそろえて、大々的にキャンペーンをして定着させたわけですな。

 中国でもそれをやるんでしょう。

ロイターMay 22, 2007

米マクドナルドの戦略 management's discussion

2007-05-22 23:27:16 | 飲食
 本業に戻りましょう。

 先日,米マクドナルドのニュースをご紹介しました。たしかロイターでしたね。

『マクドナルドは、中南米地域の約1600店舗について、元アルゼンチン法人社長が率いるフランチャイズ企業に売却することで合意したことを明らかにした。売却額は約7億ドルを見込んでおり、配当や自社株買い戻し資金に充てるとしている。売却に伴う費用は約16億ドルで、第2・四半期決算に計上する見通し。
 同社は現在保有している店舗をフランチャイズ企業に売却し、保有店舗数を30%以下に削減することを長期目標として掲げており、中南米のほか英国やカナダを対象地域として検討している』。

 これ,米マクドのIRのどこに出ているのか、気になっていました。

 探してみました。見つかりました。

アニュアルレポートの11ページ。ITEM 7. MANAGEMENT’S DISCUSSION AND ANALYSIS OF FINANCIAL CONDITION AND RESULTS OF OPERATIONS.

これ試験に出ませんでしたっけ? マネジメントディスカッションは何番目に出てるんだ、とか。勉強中は現物を見たこともなく何のことか良く分かりませんでした。まあ、とにかく丸暗記してたわけですな。

現物、みておきましょう。

最初に目次が出ています。長いので全部読むのは無理ですが目次でイメージはつかめますね。米Yahooのfinanceコーナーから、検索でMCDと入れれば米マクドナルドに行き着きます。このコードが分からなくて苦労するんですな。アニアルレポートはSEC Filing欄をクリックすると8kやら10Qやら、問題に出てきそうなものが一覧で出てきますが、その中にアニュアルレポートもありますな。


As part of this evaluation, in 2006, we established a target of having less than 30% Company-operated restaurants in each of our major consolidated markets and began working toward this goal, specifically in the U.K. and Canada.

これですね。30%以下に直営店を抑える。資本効率を良くするために、直営店は減らしてフランチャイズに切り替えるわけです。マリオットホテルがホテルを資産として持つことをやめて、オペレーションに特化することで業績を伸ばした話を読んだことがあります。資産を持つのは割りに合わないんですな。

For certain markets like China, we believe owning and operating the restaurants is prudent until the legal environment in these countries becomes more conducive to franchising.

中国はまだ早い、法的な整備がないと恐い。

In addition to our franchising efforts discussed above, we have identified markets with about 2,300 restaurants collectively, primarily Company-operated restaurants in Latin America and APMEA, that we intend to transition to a developmental license structure. Under a developmental license, a local entrepreneur owns the business, including controlling the real estate, and uses his/her capital and local knowledge to build the Brand and optimize sales and profitability over the long term. Under this arrangement, the Company collects a royalty, which varies by market, based on a percent of sales, but does not invest any capital. During 2006, this royalty averaged about five percent of sales.

どこをフランチャイズ化するかも決めてるんですね。それにしてもロイヤリティは平均5%ですか。日本は2.5%。米マクドは日本マクドの株を半分持っているのでロイヤリティも半分ってことなのかな。もうじき3%に上がるわけですがね。

5%のロイヤリティはいい商売です。売上のですからね。営業利益率5%で回っている商売はいくらでもあります。設備もオペレーションも全部フランチヤイジーにやらせ、5%抜くわけですから、笑いが止まらない。

ちなみに日本マクドナルドがどう書かれているかというと,

In APMEA, Systemwide sales and revenue growth were primarily driven by strong comparable sales in Japan and Australia and new restaurant expansion and positive comparable sales in China.

日本の売上の伸びが筆頭に上がってますね。comparable salesというのは、既存店のことですね。GAPを先日見たときにも出てきましたね。日本とは呼び方が違うんですな。

こういう書かれ方もしています。

and Australia, China and Japan (a 50%-owned affiliate accounted for under the equity method), collectively, account for nearly 50% of APMEA’s revenues.

日本マクドはエクイティーメソッドで連結されているんですな。いやー何回解いても、連結のことは最後まで良く分からなかったんですがね。まあ、なんちゃってCPAってところですかね。


今日はmanagement's discussionの項目で面白そうなところを拾ってみました。



癒しの島、沖縄の真実その3

2007-05-21 06:52:38 | 読書
 この2回で私の個人的な沖縄体験を書かせていただいたのは、この本を紹介するためでした。格調が落ちてしまいましたかね。


癒しの島、沖縄の真実
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livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ


 沖縄でおない年氏と飲み歩いた後も仕事で沖縄に出張することが何度もあって、地域のことを勉強しようと本屋に行っても、適当な本が見つからなくて困ったことがあります。

 観光本だったり、政治だったり、歴史だったり、それぞれの解説本は見つかるのですがもっと、沖縄の日常感覚、現代史が知りたいわけです。観光も、政治も、歴史も、地元で毎日生活している地平とは別の世界ですよね。

 内地・外地意識や本土をどう見ているか、基地問題を市民がどう受けとめているのか、沖縄サミットって地元にとってどうだったのか。そういう本を読みたかったのです。おない年氏が、私のことを東京から来た人、ではなく外地から来た人と捉えたことに、随分驚いたのですが、そういう感覚の基盤、背景を知りたいと思っておりました。

 本書はまさにぴったりでして、沖縄の人間関係、上下関係や結婚式、島の芸能等、扱いにくい問題もしっかり、うまーく紹介されてます。著者が沖縄出身者でないことも本書のいいところです。沖縄をライフワークとして選んで琉球新報社に入社,沖縄に住むことになるのですが、外地の人として微妙な立場で暮らすことになります。沖縄に対する距離感がべたべたでなく、突き放すでなく、良い感じです。


 沖縄が日本に返還される前の時代を第一章で扱っています。沖縄は返還前は米国に統治されていて、そう、丁度今のイラクのようになってたんですな。口では民主主義に基づいて統治されている、とアメリカは言っていたそうですが、実際は米軍がすべてを決めていた。イラクで指摘されていること、沖縄で過去行われていたこと,おんなじです。

 沖縄サミットに一章が割かれているのもうれしいですね。金を使いすぎだったとか、外務省スキャンダルのネタにもなって、個人的に何となくスっキリしない感じが残っているのは、地元でどうだったのか、という話が良く分からなかったからです。日本でサミットを開いて、しかも沖縄で。もっと話題になって良かったと思うんですがね。ワールドカップの時にどこのチームを誘致したとか、結構盛り上がってましたよね。沖縄でもどこの首脳をどこが招くか、結構盛り上がったそうです。沖縄は小渕さんが決めたが小渕さんが亡くなって、奥さんがいらしてましたよね。小渕さんには沖縄に特別な思い入れがあって、それは著者の人生にも影響しているんだそうです。

 著者はサミットに来日した米クリントン大統領の演説をそのまま引用しています。これが結構良いんですね。森首相の演説については触れてさえいませんな。小渕さんが生きて首脳として出席していればもっと・・・,みたいな書かれ方です。
 
 著者はもと新聞記者です。

 記者の書いた文章は、私の読書経験からすると、事実をもって語らしめる、という訓練が徹底しているせいか、そうか、これがこうなって、ああか。なるほど、と読んでいるうちは楽しいが、so what? だから何? と読む方に問題意識が無いと読んだあと何も残らないことが多いような気がします。歴史書もそうですね。歴史的出来事に圧倒されても、で、何だっけ。

 本書もサラッと書かれてまして、書かれている内容の重さ、著者の思い入れとバランスしないんじゃないかな、と思うくらいです。それとなく自分の意見をはさんでいますが、新聞じゃあないんだからもっとストレートに、あいつは悪人だ、位のことを書いてもいいんじゃないですかね。あいつって森さんのことじゃありません。念のため。

 とはいえ、事実として本書に盛り込まれた内容はかなりの量で、無駄がなく多岐に渡ります。新書のこの分量で沖縄全般を最後まで同じテンションで書き込まれていて読書の満足感は高いですね。これはベテラン記者だからこその手腕でしょう。今後沖縄の気になるニュースに接したら、本書にどう書かれていたかを参照したくなるでしょうね。

 終章で、沖縄の未来、可能性について書かれています。沖縄に対する深い愛情を感じます。また沖縄に行ってみたくなりました。

 




癒しの島沖縄2 知らない店で飲んでみる

2007-05-17 00:33:48 | 読書
 本題の沖縄ですね。

 もう少しつまらない話を。

 何年か前、沖縄に一人旅に出ました。

万座で泊まったのですがホテルの回りには何も無い。オフシーズンでもあってホテルはガラガラ。これでは寂しすぎるというのでバスに乗って名護に。

 ホテルの人に一番近い大きな町が名護だと聞いたのですね。

 適当なところでバスを降りて、その辺のソバ屋でソーキソバを食べ、泡盛の水割りを飲む。

 ソバ一杯だけ食べてまたホテルに戻るのはいやだ。

 その辺の飲み屋に入るとカウンターに座らされる。遠慮してテーブル席に座ったがバーテンさんに『こっちこっち』と呼ばれました。

 席が一杯なところに割り込む。きつい。隣と何か話でもすべきか、と迷っているうちに左隣さんが友達に話すように話しかけてきた。なんと私とおない年で、設計事務所をやっているとか。

 外地の人がどうとか自分は内地でとか何度も言う。意味が良く分からず,聴いてみると、沖縄のことを内地、本土のことを外地と呼ぶらしい。

 変だなと思ったが沖縄の自意識、か。

 バーテンさんが右の女性にも話しかけろと促してくる。え?っと右を向くと女性が『そうよ。待ってるのに』。

 何とも人と人との間の垣根が低い。本当に他人に対して話しかけることにためらいがない。都心から離れるとそういう土地は多い。四国に住んでいた私の祖母は、バスの中でよそのおばあさんと親しげに話していて、何だ友達かと思っていると実は初対面でびっくりしたことがありますな。でもそれは年寄りの話です。

 知らない若い者同士が気楽に話している。何の勇気も不安も無用です。

 なんて素敵なんだろう、と沖縄を大好きになりました。

 彼らとここで朝まで飲み明かそう、と思っていると左隣のおない年が、じゃあそろそろ行こう、と言って来る。どこに行くのか、せっかく仲良くなった右隣の女性はどうするのだ,とか酔い酔いの頭で考えながら勝手が分からず、女性にも、じゃあ行こうかと誘っていると、『そうじゃなくて』。

 男二人で他の飲み屋に繰り出すということらしい。

 私は名残惜しさ一杯で、女性とバーテンさんにさよならを行って、店から出たのです。

 それからはしごすること3件。東京から来たママがいて、東京と地元の女性が相手をしてくれるお店。週末にダイビングがどうでという話で盛り上がっている。なんかうらやましい。

 カラオケではみんなサザンを歌うンだな。私も適当に選んで歌ってみると良く知らない曲であることが判明。おない年氏がマイクをひきとって続きを歌ってくれた。

 安い。彼が泡盛ボトルを入れていたこともあって二人で3千円チョッと。ひとり2千円行かない。

 11月だったが風が穏やかで秋の気配などみじんも無く、女性が可愛くて、一歩踏み込めばもっと暖かい。飲み屋で時々背中がゾッとする感じ、ママの経営の苦労だったり、客ともてなすホステスの駆け引きだったり、の気配の全くないただ、集まって楽しく飲んでいる。

 これいいねえ、と朝まで飲み明かしたのでした。

 


 

癒しの島沖縄

2007-05-15 00:48:11 | 読書
 しばらく辛気臭い話が続いたので今日は楽しく行きましょう。

 私は一人旅に良く出ます。旅先では何故か良く、本当に良く声を掛けられます。

 韓国のプサンに行ったときは3回も道を聞かれました。駅構内の雑踏の中、おばさんが私にどっちにいけばいいのかを聞くんですね。並み居る韓国青年を差し置いて。韓国語が分からないし駅のこともわからず、ノー、ノーっと言って断りました。あの日以来、少しづつ韓国語を勉強してるんですけどね。

 別の日には、ビーチから駅に向かう途中で美少女の5人組に道を聞かれました。うーん残念。ますます韓国語に力が入るわけですね。この2例はまだ良いとして、プサンの空港で日本人に韓国語で道を聞かれたときはちょっとショックでしたな。ウーンなんでやねん。

 サイパンに行ったときは、日がな一日ビーチで泳いだ後、夜になってレストランでメシを食い、カウンターに移って進められるままカクテルを飲んでいると、隣に座っていたハワイの海軍に居るとかいうアメリカの白人青年が声を掛けてきました。英語もできるとは言いがたいのですが全然できない韓国語よりマシということで、適当に好きな映画の話などで盛り上がり、そう、スターシップトゥルーパーズだったかな、まあ戦争映画っぽいのがいいだろうと思って、あれは良かったなあとうなずき合っていたわけです。じゃぼちぼち私は、と金を払って店から出ると、彼もついて出てくる。どうも一緒にもう少し遊びたいらしい。といいつつも腹も一杯,酒も飲んだ。帰ろうや、と言いかけると、ガールがどうのこうの言っている・・・???。

 ナヌッと思うも、彼は私の帰りたい目線にも全く動じず、あくまで『行こうよ』と大きな澄んだ目でこちらを見下ろしている。彼はかなり背が高い。

 しょうがない、と観念してそれらしき通りに出て、そう、女性が客引きをしているような通り、飲み屋通りです。そのうちのひとりと料金交渉をして、ちょっと値切って、それ以上はビタ一文出さないと念を押して、米青年に金額は許容範囲か確認して、ようやくご入店。何でサイパン初めてで外国人のオレ様がこいつを案内しているんだろう、とかなり酔った頭で思いながら席に案内される。どうもフィリピンパブらしい。

 その時ちょっとしたハプニングが発生。ボーイさんが、といってもおっさんですが、女性を4,5人連れてきて、好きなのを選べと言って来た。スゴイシステムだな、と思いつつ、米青年に先に選べと言うと、ためらっている。

 えっえっえっー???。お主が行きたいと言ったのに、何を恥ずかしがっとんじゃ。

 助けて、という目をしたまま動かない。ウーン,お育ちが良いのですわ、っというかものすごくきちんと育てられている感じでした。ドラマや映画やニュースに出てくるアメリカ人典型とは随分違っているのですね。米国の保守性、厳格さ、立派な人はものすごく立派、ということを思うのですね。

 面倒臭いのでさっさと選ばせて、席に着いてフィリピーナとしゃべっていると、米青年も楽しそうにしている。彼ののぞみ通りになってんのかな、と思っていると、そのうち彼女らがカラオケをしようと言い始めた。尾崎豊のオーマイリトルガールを歌え、と言っている。彼女がしゃべっていたのが英語だったのか日本語だったのか思い出せません。日本語だったんじゃないかな。で、なんでサイパンでオーマイリトルガールやねんと思いつつ、尾崎を熱唱して、米青年にも何か歌ってもらい、ヘロヘロになる頃店を出た。彼は、次はマッサージに行こう,と誘ってきたが、さすがに断ってホテルに帰りました。彼は私よりもずっといいホテル、というか島で一番いいホテルに泊まってました。士官だったのかも知れませんな。そういえば太平洋に差し迫った脅威はない、とかマジ顔でしゃべってました。外人がしゃべると難しい話題でも自然なのが不思議ですな。

 で、表題の沖縄に行ったときの話しですよね。15日は沖縄返還35周年だそうで。沖縄が本題だったんですが、それは明日にしましょうか。

 


 

地域通貨とポジティブ経済

2007-05-13 10:19:32 | マクロ経済
 一般の関心が薄い話題を続けています。ゴールデンウィークは読む時間、考える時間がたっぷりあって、まだ引きずっておりまして。

 『地域通貨』って一体なんだろう、どういう意味があるんだろうという問題に、数年来悩まされていました。以前に地域通貨のセミナーなるものに知人に連れて行かれたのがそもそもの始まりです。

 セミナーでは、大学の先生が基調講演。地域通貨について一生懸命説明。代表的な例、性格、動向・・・。どうも良く分からない。特定の地域、コミュニティだけで使えるお金、という点は分かるし、どういう事例があるのかも分かるが、その意味合いが、何故、何のために、ということが分からない。 定義が不十分で、こんな感じ、レベルなのですね。

 質疑応答で、出席者から質問。どういうものかは分かったので、どういう使い方が考えられるか、そうするとどういう効能があるか教えてくれというものでした。

 先生回答するに

『どんな使い方も可能です。使い方によって効能も代わってきます。それは皆さんが考えてください、我々は機能や方法を紹介できるが使い方は皆さんが考えてください』とか。

 ずっこけですね。この先生は地域通貨について著書もある方だったのですが、日本での展開については半信半疑なのでは、と思わせる受け答えです。地域通貨を拡めるという熱意は無いんですね。それにしても、もう少しまともな答えがあってしかるべきですが、既存の地域通貨について分析するだけでそれ以上は考えないって何じゃそれ?

その後ずっと気になって、いろいろ調べてもみましたがどの本も似たり寄ったりで良く分からない。

こういうことなんですけどね

よくまとまっています

 メインの通貨がインフレになっても地域通貨はそこから遮断してくれる、だとか金利がつかないので退蔵、資本蓄積に回らないとか、どうもピンボケな説明が多い。そもそも日本はデフレだし、ゼロ金利政策真っ最中。何故、円ではだめなのか。セミナーを主催した知人に聞いても良くわからない。どういうメリットが具体的にあったかとさらにきくと、正規の取引ではないので規制を気にしなくても良い、とか。ウーン微妙。

 資本蓄積の手段とならないことが地域通貨の特質、特長だ、とか、イデオロギーがかった説明はハナから間違っているのが明らかでまともな説明と思えません。少なくともそのことが地域通貨が存在する理由ではないことは間違いありません。こじつけも良いとこですね。

 こういう批判,ごもっともです

 グラミン銀行の本を読んで、ようやく少し分かったような気がします。グラミン銀行は商売のタネ銭と教育を与えて、経済のプレーヤーを新規に育てる。既存の普通のルールにのっとって一人前の商売人に、せめて自分が食える程度まで持っていく。

 地域通貨は正規の、一人前の経済プレーヤーではなく、アマチュアを育てる道具だと考えると分かりやすい。お互い顔の分かった、気心の知れた身内だけで通用する通貨。そのコミュニティの中には高利貸はいない、というか金利はつけちゃいけないんですね。自分で作った商品やサービスを隣近所と交換する、これだけでも地域社会は豊かになります。自分達だけで消費する分以上にももらってくれる人がいるならば余計に作ろうか、となって生産が増えますな。地域全体のパイが増えるポジティブ経済観をベースにしているんですね。自分達の消費のために生産しているものを正規の商売ルートに乗せるほどではないが、隣近所と交換する。地域通貨での取引はアマチュア市場です。

 国内の通貨制度が崩壊してドルしか通用しなくなっている地域で、人々が非常に貧しくて人々にドルがわずかしか回ってこず、ドルで手に入る商品の価格が高すぎて手に入らない、という場合、もうどうしょうも無くなりますな。働いても食ってゆけない。地域通貨はこういう地域の経済を機能させるためにも有効でしょうな。

 みんなが失業者。働きたくても働けない。正規の経済メカニズムが機能していない場合,地域通貨で失業者同士が交換を始める。ぶらぶらするのをやめて他人の家を直すのを手伝ったり,それこそ鶏を飼って卵を産ませたり、地域内の仕事をする。正規の職業に就けない、あるいはついても食ってゆけないといって、じっとしているのではなく自分の消費するもの以上に、あるいは自分が消費しないものを作ったりサービス提供をする。これ、有効ですね。地域全体のパイを増やすのです。

 日本で言えば、正規の経済活動に参加していない人たち、家庭の主婦、引退した中高年や老人、学生、などに焦点を絞ることになるんでしょう。あるいは勤め人でも週末にも何かやりたいと考えている人たちですね。そうした人たちのパワーを交換の場に引っ張り出して活躍の場を作り出し、結果として全体のパイを増やす。一線でないサブマーケットで使用される通貨、これが地域通貨ということになりますな。 

 既存の通貨との違いを強調するから、あるいは対立するものだと捉えているから今までの説明は分かりにくい、ないしは混乱してしまっているのです。正規の通貨の機能と違っているのではなく、基本的には同じか限定されているだけ。正規の通貨機能の補足あるいは補助をするのだと捉えた方が分かりやすい。

 日本は市場が細かく組織されていてサービスの品揃えも充実しているので、何を交換するのか、という点は問題になるでしょう。正規のマーケットで簡単に安く手にはいるものをわざわざコミュニティで交換する意味はありません。実際にうまく回っている地域通貨はそうした問題をクリアしているのだと思います。

 地域通貨の本質が少し見えてきました。ちょっとスッキリ。以上、関心のない人には全くどうでも良い議論でした。







 

ポジティブ経済、ネガティブ経済

2007-05-10 01:07:55 | マクロ経済
 長い間不景気になじんでいると,経済の全体のパイは決まっていて人々はそれを取り合っているというゼロサム社会観にしっかり染まってしまいます。誰かが売上を伸ばしたということは誰かの売上が落ち込むことを意味し、誰かがポストにありつくということは誰か他の人が脱落していることも意味する。もう、いい加減うんざりして一抜けたしたい人もいるんじゃないでしょうか。

 これを仮にネガティブ経済観と呼んで置きましょうか。これ,物事の一面しか見てませんな。このことを動かしがたい前提だ,とするのはあまりに害が多い。

 グラミン銀行を思い出しましょう。もうグラミンはもう結構って感じですよね。分かってはおりますが、ここからが本題なんです。グラミン銀の発想は目からウロコの話であって、どうにも掘り下げずにはいられません。

 『物乞い』がお金を借りて商売を始める。借りたお金でにわとりのヒナを一匹購入。親鳥まで育てて、毎日卵を産ませて路上で売る。この例、どうですかね。物乞いにとっては経済的自立の可能性が生まれた。待ち行く人は卵を手に入れられた。それだけではありません。

 バングラデシュ経済が毎日卵一個分だけ豊かになった。全体のパイが増えたんですな。物乞いを続けていればこの卵,存在しませんでした。他の誰かがそのヒナを代わりに買って育てた? かも知れませんが、本来、他の誰かが買うはずであったヒナは売れずに残ってしまいますな。ここで問題なのは,ヒナを育てる人がひとり増えた,ということです。産まれる卵は売っても良い,自分で食べても良い。とにかくバングラデシュで卵を食べられる人がひとり増えたということ。

 これ、誰の売上も奪わず,誰の仕事も奪っていません。誰もが喜ぶ結果です。

 本来こうあって良いんですね。こうあらねばならないし、こうありたい。これポジティブ経済観。まあ、グラミン銀行が成功しているのはバングラデシュだから,ということもあるでしょう。卵は貴重品で作れば売れますな。作れば売れる。物乞いが一個余分に売ったがために他の卵が売れ残ることはない。こういうのを経済学ではセイ法則,っていうんでしたっけ。かなり強引に話を進めてます。厳密な議論でなくてすんません。

 日本ではそうはいかない。個人で小さな商売をするにしても大変だ。日本の小売業で最も事業所数の多いのはパパママショップと呼ばれる家族経営の商店ですが、数がどんどん減っています。こんな状況で素人が新規に参入して成功するのはかなり難しい。仮に成功したとしても、それこそ他の人の売上を奪うことになりかねない。マイクロクレジットは先進国にもあるそうですが、かなり趣きを変えたものでしょうな。

 経済社会が発達し、分業展開、人々の役割分担も複雑化。日本のように『社会人』という概念があって、誰もが経済社会の常識的ルールをわきまえている社会。
鶏を庭で放し飼いで育てても、割りにあわないほど経済社会が効率的になってる。卵も十分安く,どこでも手に入るので、別の仕事を、そうバイト君でも鶏を飼うより身入りが良いんです。一時間の時給で卵何パックも買えますからな。

 これ社会の豊さの本質だと思いますがね。

 あまりに発達し、完成度を高めてしまったためにネガティブ経済観になってしまっている面もありますね。

 

 

グラミン銀行 その2

2007-05-08 00:26:52 | マクロ経済
 もう少しグラミン銀行について。

 理念が素晴らしいことに加えて経済の基本事項が含まれているような気がします。

 いろんな側面を考えるにはグラミン銀行への批判を参照するのが良いですかね。ここから引っ張ってきます

『グラミン銀行というと、連帯保証人の仕組みをきつくしたような相互監視による取り立てや、日本の消費者金融並みの高金利から、日本における消費者金融や商工ローンのようなものとして解説されることもあります。また、グラミンは銀行ビジネスとして隆盛を誇っており、それに対して“違和感”を感じる方もいらっしゃるようです』。


 日本の消費者金融や商工ローンとどこが違うのか。

 消費者金融は使途が消費ですね。借りたお金は生活に必要な、あるいはお楽しみのためのモノやサービスの購入に使われます。費消されてしまうんですね。グラミン銀行は消費を助けるためのお金を貸すわけではありません。そもそも貧困女性に貸し出すわけで、お金を使ってしまえば返済できなくなります。グラミン銀はミシンを買ったり,卵を産ませるための鶏を買ったり、仕入れをするための資金を貸すのです。

 商売をするための資金を貸すと言う意味では商工ローンと同じなのか。

 これも違いますね。商工ローンは商売のプロに貸します。グラミン銀は商売に素人な貧困層に限定して貸し出しをするんですね。

 もっと決定的な違いは、

 グラミン銀行が独自の哲学を持っていることでしょう。これ、素晴らしいので全文紹介します。
①クレジットは基本的人権である
②人は誰でも機会さえ与えられればよりよい生活をしようとする能力と意欲を持っている。
③貧困は外から規定され、人工的・社会的に作り出されたものである
④人々が銀行に行くのではなく、銀行の方が人々のもとに行く
⑤グラミン銀行の原則、原理は極めて単純で,不変であるので私達は組織を柔軟に運営することができる。
⑥貧しい人々が信用に値しないのではなく、既存の銀行が人々に値しないのである。

 重要なのは(そして胸に迫るのは)③でしょうか。貧困は本人が怠けていたり能力が劣るから、ではなく作り出されたものだ→だから解消することも可能なのだ、だから解消するのだ、という流れです。この問題はもう少し奥が深いのですが、先に進みます。

『「あれは無尽講だよ」「かつての日本にもあった仕組みで、たいしたものじゃない」「回収率の高さは、つまり貧者からの搾取である」といった声を聞くことも、実際にこれまでに何度かありました。』
 
 無尽講は違いますよね。身内でお金を出し合って交代で費用の支払いにあてるのですが,やはり資金は費消されてしまいます。貧者からの搾取、これもピンボケですね。グラミン銀行はあくまで銀行なので貸したお金は回収します。グラミン銀行はまず借り手に、借りたお金はしっかり返済しなければならないことを教えるのだそうです。

 貧困から抜け出させるために、→経済活動の一プレーヤーとして活動させる、→だから経済規律を借り手に教え込む →グラミン銀行もあくまでビジネス主体として存在する(創業者は慈善が貧困対策に効果が無いと考えています。返済不要な資金は費消されてしまい単に慈善に依存するだけで貧困であることは変わらないんですね)。