会計スキル・USCPA

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ホンジュラスのチャーターシティ ポール・ローマー

2011-01-31 01:13:06 | マクロ経済
以前、チャータースクールについてご紹介したことがあったんですが、

ニューオリンズのチャータースクール ナオミ・クライン3

今度は、学校じゃなくて、都市についてです。

チャーターシティ。

まあ、自然に作られた都市は、自然に過去からの流れで出来上がったもんなんでしょうが、チャーターシティというのは、人口的に作られた、まあ、チャータースクールというぐらいなんで、チャーター、まあ、設立趣意書とでもいうんでしょうか、に基づく人工的な都市ってことになるんでしょうかね。

この動画、よくまとめられてます。

Paul Romer's radical idea: Charter cities


とってもプレゼンがうまいし、頭のカットや、シャベリ方からして、どっかの俳優か、と思いきや、ポール・ローマー。著名な経済学者なんだそうで。

アフリカのどっかの都市の、空港の近くで、若者たちが街灯の光の元で宿題をやっている。
電気さえないくらい貧しい。

いやちょっと待て、彼らは、ケータイ電話は持っている。
貧しくても、最新のテクノロジーの恩恵は受けられている。なのに、100年以上前のテクノロジーたる電灯が手に入らないのか。

ここからローマーの議論は出発するんですな。

いきなり飛んじゃって恐縮なんですが、このハナシ、本書にもでてきます。

国際協力専門員―技術と人々を結ぶファシリテータたちの軌跡
クリエーター情報なし
新評論


アフリカ、マラウィーの電化事業に協力するために日本から派遣された人のハナシがのってますが、マラウィでは電化が広がらない。なぜか。料金設定がうまく行っていない。

電化には非常にお金がかかるが、電気料金を払えるのはごく少数、しかも一般に電化の恩恵を拡げるとの建前から電気料金は安く設定されてて、結局、新しく電気を引く際に新規工事料金を取るしかない。これがバカ高くなってて、とても手が出せない価格。

本来は、既存の電気使用者からもっと高い料金を取るべきだが、政治的にできなくなっている、とかいうハナシが書いてあります。貧しい人にも電化をという建前が、逆に一部の特定の金持ちにしか電化が行きわたらない、という皮肉な結果になっている。電気料金を上げるという選択肢は、政治的にとれないんですね。

さて、ローマーの議論は、そっから進んで、だったらしがらみのない世界を別に作っちゃえ、ということなんですね。政治的に行き詰ってどうしようもないんなら、都市をいちから立ち上げて、既得権者に邪魔されない、チャーターに基づいて運営される都市を作り上げる。


まあ、かなりびっくりで、乱暴な議論のようでもありますが、しかし、シンガポールを見てよ、香港、深圳はどうよ、っなわけですね。

かれは、経済特区のようなものをイメージしているんですね。

中国は経済特区の市場化から始める漸進主義をとって成功。一方でロシアは一気に進めちゃったんで大失敗、みたいな議論もあるようですね。ローマーはそういう漸進主義の議論の流れでチャーターシティを考えているのではなさそうですがね。


本書164ページ。
開発経済学入門 第3版
渡辺 利夫
東洋経済新報社


正しいルールセットに基づいて、経済運営がなされれば、その都市は発展する、というんですが、どうなんでしょうか。アイディアはとっても面白いんですが。

今月に入り、CFRにも呼ばれてますが、

Romer at CFR: Developing Charter Cities


さっきの動画とはえらい違いで、学者ッポクなってますね。

ここで全体をチェックできます。

Charter Cities: New Options for the Bottom Billion (Video)


単なる夢物語じゃなくて、ホンジュラスで具体的な検討に入っているようでして、

Will the first Charter City be in Honduras?

A reader pointed us to the news that the Honduras is deliberating whether to pass legislation this month that would pave the way for the first “Charter City” to be created on Honduran soil by 2012.

2012年までに最初のチャーターシティに道を開く法案を今月通すべきかどうか、ホンジュラスで議論されている。


The radical brainchild of Stanford economist Paul Romer, the Charter Cities concept is based on the idea that good rules make good societies. Accordingly, poor countries should be able to galvanize their own development by building foreign-financed and foreign-run cities governed by a new, better set of rules.

チャーターシティのコンセプトは良いルールは良い社会をつくるということ。したがって、貧困国は、外国資本でファイナンスされ、外国人によって経営され、新しいずっと良いルールによって統治される都市をつくることによって、自身の発展を活性化できるということになる。

これ、植民地じゃないの、という指摘なり批判もあるようですな。

私は、ナオミクラインのショックドクトリンを思い出しちゃいました。フリードマンの時代は、米国は乱暴に、クーデターを起こさせて、言うコトを聞かないその国の大統領を排除し、コミュニストも一掃して、市場主義の導入実験をやった。

今は、そんな時代じゃないんで、合意の上で、市場の機能する都市を作りましょうよ、ってか、経営してやるから、こっちに場所を差し出せ、ってとこですかね。丸ごと政権をのっとるとか、拷問して殺しちゃうとか言うのよりは、はるかにマシですが。

かくして、米国のファイナンス資金や、投資が流れ込む。

エコノミックヒットマンの21世紀バージョンじゃ無ければ良いんですがね。

とか言いながら、私個人としては、自分自身もかかわりたいくらいの面白そうなプロジェクトなんですが。