会計スキル・USCPA

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『クラウド アトラス』 このスゴイ映画について

2013-03-24 11:06:02 | 生活
『クラウド アトラス』前代未聞 <5分41秒>長尺予告編


以前は毎週観にいっていて映画も,学校に通いだしてからめっきり観る機会が減っているんですが,この映画は,観とかなきゃって気がしたんで,ちょいと行ってきました。

また,スゴイ映画を作ったもんですな。

ここまで,来ましたか。

ウーン。

アイディアはとても単純です。

輪廻転生,とどっかに書いてありましたが,ちょっと違う。

登場人物に,死ぬということは別の人生への入り口に過ぎない,とハナシの構成上,言わせてますが,映画のテーマとはとても言えません。いわゆる転生物語,つまり一つの思い,一つの運命を引き受けながら別の生をまた生きるというハナシはほとんど入ってないんですね。

時代世代を経て,最後に結ばれる,という恋愛ストーリー,と観れなくもないですが,
そういう甘い味付けは,ほとんど感じ取れなくなってます。付けたしなんですな。魂が運命を引きずって再び同じ人を愛するというよりは,物語は繰り返される,というニュアンスの方が強いです。

生まれ変わって何度も別の似たような物語を生きる,

と言うよりは,むしろ,物語というもの,そのものがテーマになっていて,

物語が,どんなに多様ではあっても,例えばコメディーであったり,社会派ドラマであったり,SFであったりしても,実は同型なのであって,変奏に過ぎないのだ,

という,見切りというか,諦念というか,

物語とは何かを物語としてみせる,という入れ子構造になっているんですね。

バーチャルリアリティを生きる現実の自分も,実はバーチャルだった,という『マトリックス』と似ていなくもない。物語はどこまでも物語性、物語制約から逃げ出すことはできないという意味でですが。

ただ,人生はバーチャルなものだ,とか,相対化視線は完全に否定されていて,逆にストーリーの確固とした実在,永遠性が本作では強調されています。

未来のストーリーが,それ以前の時代のハナシに出てくる作曲家にインスピレーションを与える,とか,その曲をまた別の時代のストーリーの登場人物が聞いて,何かを思い出す,とか。時間まで超えて,相互確証的に,存在を保障しあう形を取っていて,単なる実在性という以上に,目に見える実在を超える実在性とでも呼ぶべき次元を表現しようとしているんですね。

ストーリーが過去にも,未来にも,共時的につながっていることを,時代の異なる各ストーリーを同時並行的に,しかも同じ俳優女優に、違う人物だけど同じキャラ,つまり強欲や時代を映しだす才能や正義の象徴,として演じさせる,という手法を使うことで,そうした実在以上の実在を表現しているのだと思います。

ちょっと抽象的な書き方をしてしまってますが,この映画,娯楽作としても第一級です。複雑な構造ではありますが,うまく作られていて観てて混乱することは無いし,並行するドラマがどれも面白くて,長い映画ですが全く飽きません。

冒頭,トム・ハンクスの語りで始まり,次々に語り手を変えて、違うように見えるけれども実は同じ物語を紡いでゆき,最後に,またトム・ハンクスの語りのシーンに戻ってくるという構成で,

語りの世界,物語とは一体何なのだろうか,という難しいテーマを,

大娯楽作としてまとめたって感じでしょうか。

うっかりしてると,この映画のスゴさに気付かない,位に洗練されてます。

娯楽作としての仕掛けも一杯で,基本的な作品のアイディアが控えめになっている,ということでもありますね。オムニバスを同時並行でみせられた映画として観ても、とても面白い。

この映画を観て,ほのかに感じる解放感,

というのは,我々が運命として引き受けているそれぞれの物語は,実は時代を超えて,あらゆる魂が同じように演じているもので,物語にとらわれて生きるのが人間の宿命である,

だから,気にしなさんな,


的な意味を,受け取れる仕掛けになっているから,かも知れませんね。













お笑い 手抜き除染

2013-03-21 01:18:02 | 政府 公的機関
随分更新がご無沙汰になってしまいました。
もうすこし頑張ろうと思ってるんですが・・・。

さて,少し前のニュースなんですが,
福島の除染が手抜きされている,というニュースがあったんですね。

福島のニュス 福島テレビ(1月15日放送) YouTube22





まあ、ひどいハナシなわけですが。ニューヨークタイムズがもうすこし詳しく報じてたんですな。

In Japan, a Painfully Slow Sweep


Local businesses that responded to a government call to research and develop decontamination methods have found themselves largely left out. American and other foreign companies with proven expertise in environmental remediation, invited to Japan in June to show off their technologies, have similarly found little scope to participate.

地域の業者が除染のための技術について政府に呼ばれたことに答えたのは良いが,ほとんど放置されたままになっている。環境復旧能力が証明されている米国や他の外国の会社も,6月に日本に呼ばれて技術を示すよう言われたが,除染に参加できる余地がほとんどない状態だ。

Recent reports in the local media of cleanup crews dumping contaminated soil and leaves into rivers have focused attention on the sloppiness of the cleanup.

最近,除染のクルーが汚染された土壌を川に捨てていたことを報じられ,除染のゆるさに注目が集まっている。

new system to trap, filter and recycle contaminated runoff, developed by the local machinery maker Fukushima Komatsu Forklift, was one of technologies. But since then, the company has not been called on to participate in the state-led cleanup.

汚染物質をフィルターで取り除いてリサイクルする技術をもつ,福島コマツは,お呼ばれした1社だが,国の除染作業に参加できないままだ。


“For the big general contractors, it’s all about the bottom line,” said Masao Sakai, an executive at the company. “New technology is available to prevent harmful runoff, but they stick to the same old methods.”

大企業が全てなんですよ。福島コマツの重役は言う。新技術は有害な汚染物質を取り除くことができます。でも,彼らは古い同じやり方に固執したままです。


The Japanese government also made an initial effort to contact foreign companies for decontamination support. It invited 32 companies from the United States that specialize in remediation technologies like strip-painting and waste minimization, to show off their expertise to Japanese government officials, experts and companies involved in the cleanup.

日本政府は,海外の業者も除染に加えようと最初は努力した。米国からは32社。

Opinions on the trip’s effectiveness vary among participants, but in the six months since, not a single foreign company has been employed in Japan’s cleanup, according to the trip’s participants and Japan’s Environment Ministry.

それから半年たっても,1社も参加できていない。


と,いうことなんですな。

つまり,いろいろヒアリングをして,形式上は最善の技術を使うための努力をしたことになっているわけですが,結局,大企業のゼネコンにマル投げ,ゼネコンは,下請にマル投げ,下請はピンハネでカツカツでコストが合わず,川に捨ててしまった,ってとこですかね。

これ,除染がどうこういうハナシとは別に,何が問題か。

こういう風に,技術の実質で選択がなされるのでなくなれば,新規の有用な技術が日の目を見ることがなくなる,ということですね。

日本の,この停滞感,閉塞感というのは,実はこういうところから来ているんじゃないか,とも感じています。知見が有効活用されない。有能な業者が邪魔されて入れない。有能な人物が活躍できない。既存の大手,単に既存であることを理由に幅を利かせている,というヤツなんですな。

こういう,一大危機にあって,世界中の知恵を集めるべき時にさえ,こういうことが起きているというのはとちょっとショックでもありますね。

業者選択にあたって,身を挺して踏み込んでことにあたった人が誰もいなかった,ということでもあります。大手に任せとけば,誰からも批判されない,という保身から,あるいは単に忙しかった,あるいは中小の業者をコーディネートするだけの能力が無いので,大手に,ということかも知れません。

スタッフ不足ですな。
こうした問題への著しい軽視と準備不足。

補給を軽視した旧日本軍と同じです。
ひょっとしたら,除染チームなんて,補給と同じように,お役所では低い位置付しか与えられていないんじゃないでしょうか。ああ,あんな部署に配置されちゃって,お気の毒,みたいな。

国民目線からみれば,国難にあたって,最も重要な施策だし,お役所の全力を投入していただくべき問題です。

世界中から,選定した業者を呼んでヒアリング。形式はきちんとしたことにして,はい,お終い。で,川に不法投棄されて,出てきた対策が罰則強化ということになるわけで,下請が責任を取らされて終わり。

これが,アフリカの独裁腐敗国家のハナシなら,まあ仕方ないか,って感じですが,

戦後最大の国難に対処する,経済大国の対応にしては,

ちょっと悲しい,力の抜けるニュースでした。