会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

Libor・スキャンダル 

2012-07-19 07:12:38 | 金融
イギリスのLiborについて連日,あーだこーだ言われているようですな。結構でたらめだったみたいな。むかし解説をどっかで聞いたような気がするんですが,具体的にどう決まるのか,についてはなんか良く分からなかった記憶がありますね。実は結構テキトーに決められていたとは・・・。

実は,Liborがでたらめだ,みたいなハナシはかなり前から報道されていたとかで,

Libor Scandal: Old Articles

First, from the NY Times today: New York Fed Was Aware of False Reporting on Rates
The Federal Reserve Bank of New York learned in April 2008, as the financial crisis was brewing, that at least one bank was reporting false interest rates.

ニューヨークタイムズ,08年4月。

At the time, a Barclays employee told a New York Fed official that “we know that we’re not posting um, an honest” rate, according to documents released by the regulator on Friday. The employee indicated that other big banks made similarly bogus reports, saying that the British institution wanted to “fit in with the rest of the crowd.”

バークレイズの従業員がニューヨークFedの担当者にハナシたところでは,正直にレートを申告していない・・・。

Oh my. Really? In April 2008?

08年じゃないかとブログ。

We were discussing this in 2007! Here are a few of the articles I linked to years ago ...

実は07年にも・・・。ファイナンシャルタイムズ。

From the Financial Times in September 2007:
“The Libor rates are a bit of a fiction. The number on the screen doesn’t always match what we see now,” complains the treasurer of one of the largest City banks.
...
The screen will say one thing but people are actually quoting a different level, if they are quoting at all,” says one senior banker.

Liborは作り物だ。スクリーンに出ているLiborの数字は,実際に今見えている数字とは違う・・・。


ウォールストリートジャーナル08年4月。ブルンバーグ08年5月も・・・。

From the WSJ in April 2008: Bankers Cast Doubt On Key Rate Amid Crisis
The concern: Some banks don't want to report the high rates they're paying for short-term loans because they don't want to tip off the market that they're desperate for cash. The Libor system depends on banks to tell the truth about their borrowing rates. Fibbing by banks could mean that millions of borrowers around the world are paying artificially low rates on their loans. That's good for borrowers, but could be very bad for the banks and other financial institutions that lend to them.
From Bloomberg in May 2008: Libor Set for Overhaul as Credibility Is Doubted
"The Libor numbers that banks reported to the BBA were a lie," said Tim Bond, head of global asset allocation at Barclays Capital in London. "They had been all the way along. The BBA has been trying to investigate them and that's why banks have started to report the right numbers."
The only new news is that the banks are finally paying fines ...


というわけで,

ほとんど,公然化していたと言っても良いんじゃないかと思うんですが,今回は事件化されて,ようやく当事者は罰金を払うことになったってことですが,

なんで,今頃になって,スキャンダル化したんでしょうかね。インボー論的に言うのもなんですが,なんか背景があるのかも知れませんな。


まあ,信頼していたのに,今更そんなこと言われましても・・・みたいな感じですが。



動画はおまけです。

ホントのこと,今話すわって,

竹内まりや 終楽章(歌詩つき)


今更そんなこと言われましても・・・。

日本銀行のインフレターゲット ロンドンエコノミスト

2012-02-25 09:35:40 | 金融
ロンドンエコノミストが日銀のインフレターゲットについてコメントしています。

The Bank of Japan
Time for action






CONSERVATIVE, cautious and cowardly: the Bank of Japan (BOJ) has endured all manner of insults over the years. Among the complaints from critics is the charge that the central bank could have boosted Japan’s economy if it had increased its balance-sheet more rapidly during the financial crisis.

保守的だ、ビビッてて臆病。日銀は何年も侮辱に耐えてきた。金融危機の時にもっとバランスシートを拡大して日本の経済をもっと刺激できていたはずだという批判である。

The BOJ believes there is only so much a central bank can do if businesses won’t borrow and banks won’t lend because growth prospects are meagre and firms are already stuffed with cash. But politicians are threatening to introduce laws to dilute the bank’s independence. And its counterparts are being embarrassingly dynamic. In January the Federal Reserve set an inflation target of 2% and promised near-zero interest rates until the end of 2014; the European Central Bank is lending money to euro-zone banks like there’s no tomorrow. Inaction is not an option.

日銀は企業が金を借りず,銀行も貸し出しをしないのは将来の見通しがいまいちで,企業は既に資金で満たされているからだと信じている。しかし,政治家達は,日銀の独立性を法を導入するぞと脅し,カウンターパーツは困ったことにダイノミックに動いているのだ。一月にはFRBがインフレターゲットを2%にセットし,金利をゼロ近辺に2014年まで維持すると約束した。欧州中央銀行は欧州の銀行に,際限なく金を貸している。何もしない,というわけにはいかない。


So on February 14th the BOJ tried to disprove its critics. First, it changed its wording on price stability. Instead of calling it an “understanding” among the nine individual policy-board members, it now refers to price stability as a “goal” of the institution.

というわけで,日銀は批判をかわすために,まず物価安定に関するワーディングを変えた。『理解する』と呼ぶ変わりに,物価安定については,日銀としての『ゴール』,と呼ぶのだ。


The stockmarket leapt to a six-month high following the BOJ’s announcement. Yet the economy still faces some severe headwinds: a declining population, sluggish global growth and a still-strong yen that eats into corporate profits. Fourth-quarter GDP figures released on February 13th show that the Japanese economy shrank by an annualised 2.3% from the previous quarter, the fourth decline in five quarters.

日銀の発表から株価はこの半年のピークをつけた。まだ経済はひどい逆風下にある。


So critics will again complain that the BOJ is doing too little. That charge will be less fair than it used to be. And, as the gentlemen of Nihonbashi subtly stated in their communiqué, it is up to banks, firms and the government to play a role in revitalising the Japanese economy, too.


したがって,批判者は,日銀が手ぬるいと再び批判を始めるだろうが、これまでほど妥当だとはいえなくなる。日本橋で発表されたコミュニケの言うとおり,経済を活性化させるには,銀行や企業や政府の果たす役割次第なのだ。


というわけですが,この記事では,日銀がインフレターゲットを明言して株価が上がったことを,はっきり書いています。どうも,どうも,日経を読んでいるかぎり,日銀のインフレターゲットと株価や為替を結びつける記事が見当たらないようなんですがね。

どうみても,最近の株高と円安は,日銀の発表に影響を受けているような気がするんですが,もし,それを認めちゃうと,長年の日銀批判者が正しかったと判定してしまうことになって,間接的に日銀を批判してしまうんで,

そんな記事は出ない,

ってことじゃないでしょうな。


ザ・ラストバンカー  西川善文回顧録

2011-12-25 04:26:16 | 金融
アマゾンの出版社からの紹介欄を読むと,

安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放劇、銀行大合併、UFJ争奪戦、小泉・竹中郵政改革......。現場にいたのは、いつもこの男・西川善文だった。「最後の頭取」=ザ・ラストバンカーと呼ばれた著者が綴った、あまりに率直な肉声!

とありますが,まさにその通りで,若い頃から,ずっと住友銀行の経営の近くにいて,中核課題を担ってきたお方なのですな。

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録
クリエーター情報なし
講談社


安宅産業の破綻問題が前半の山場になっていますが,
いかに住銀にとって,これが大きな問題だったかが良くわかります。

著者は,その解決の陣頭指揮にあたるわけですな。

安宅産業は,伊藤忠に引き取らて解決した,ってことになってますが,著者によればそうじゃない。伊藤忠がロスを被らない範囲で一部を引き取ってもらっただけで,残りは住銀が社長やなんかの人材を派遣しながら,直接再建させたり,処理していったということで,当時のノリがどのようなものだったかをしっかり書いておられます。

驚くのは,安宅問題を着地させるために,銀行が伊藤忠に引き取られなかった残りの関連会社を直接経営していた,と書かれていて,ご自身がそう認識していた,というところですね。もちろん異常事態との前提も置かれています。

実態がそうだとしても,普通はそうは書きにくいんでしょうが,銀行が経営していた,と書いちゃうとこがすごいんで。恐るべし。著者のスゴ味を感じます。

融資三部長時代に各社を自分の足で回り,銀行出身の経営者から,ムダをどうやって省いて利益を出すように工夫したかなどを聞いて回ったとか,書いてあります。


著者は,ご自身のスキルのベースを調査部時代の経験においておられるようで,お取引先に調査に入って,徹底的に帳簿を見て,問題点を把握してゆく中で培われたもの,と言う具合。

ただ,その後の調査部に対しては,著者も辛口で,ちょこっと財務分析をして,新聞や雑誌の記事なんかを引用してまとめているレボートが多くて,役にも立たない,と手厳しい。

安宅後,イトマン事件や,平和総合銀行合併問題,不良債権処理,のハナシなど当事者の視点から書いてあって,ウーンそういうことだったのか,とよくわかります。これまで,オドロオドロしく書かれたものばかり読まされて,よく理解ができなかったんですな。

磯田さんのお嬢さん問題,まで書かれてて,

これ,どっかで読んだことある話だな,とよく考えてみると,金融腐食列島,に同じようなエピソードがあったはずで,会長の娘が・・・。これ住銀がモデルになってたんですな。

銀行の自己資本比率を高めるために,ゴールドマンサックスの出資をしてもらうわけですが,当時のボールソン会長と差しで交渉した経緯等も書かれてます。ボールソンは後のブッシュ政権の財務長官になった人ですが,ゴールドマンの現役時代のハナシを聞くとちょいと驚きます。ああ,ホントにゴールドマンのトップだったんだとか。

日本人的な感覚だと,財務長官よりゴールドマンのトップの方がエライと感じたりするんで。日本の閣僚の権威がチョー軽いので,それに慣れちゃってるんですな。それはオカシイわけですがね。

TOO BIG TOO FAILで,日本の金融機関の判断の遅さについてボールソンがなじるシーンが出てきますが,ゴールドマン時代にいろいろと直接交渉した経験からなんですね。


さて,著者の職業人生の中では,たった三年ちょっとでしかない,郵政の社長時代に,結構なページが割かれています。バランス的に,ちょいと変な感じもするんですが,

まだ,お辞めになってからそれほど時間が経っていない,ということや,政治に持て遊ばれたり,それを告発せずに政治側に安直にノッてしまうメディアに,よほど腹を据えかねておられているんでしょうな。

当時の報道は確かに見ていて不気味なほどで,あんな不当ないちゃもん付けにさえ,メディアは乗っかって悪者扱い。いやあ,怖い怖い。ここはロシアか。

筆致は淡々としていて,品良く書かれていますが,お人柄によるものと思われます。

読んでいると,郵政時代にかなりの努力を払われたことがわかり,それだけ思いも強いということなのでしょうね。民営化に備えて,寄生虫のようなファミリー企業や隠れたOB福祉会社を整理していったり,と苦しくて地味で,しかし重要な作業にもきちんと取り組んでいることが説明されてて,ここには感動します。

金融人としての実力,誇り,そうしたものを読んでいて強く感じます。

民主党政権に変わり,亀井さんに辞任を促されて,お辞めになったわけですが,一国民として大変残念に思います。


韓国で証券取引取り締まり ドイツ銀行

2011-08-27 13:30:32 | 金融
ライブドアの時には、株価がいつも話題になっていました。
あの頃はブームで、主婦やらまでが株を貸ってたりして。

株価が下がると儲かるスキームを組んで、外資系の株屋さんがオーナーから株を株を借りて売りまくって、ドンでも無いとかかんとか、まあ、一般投資家食いものスキームみたいなのが大手を振って歩いてるって印象だったんですな。

で、ニューヨークタイムズに韓国のこんな記事がでてまして、

In Korea, the Game of Trading Has Rules


If the players are caught, the scheme is usually deemed too complicated and wrongdoing too hard to prove to justify any more than a civil case. That ends in a fine — sometimes a large one — but perhaps one that may be seen as a cost of doing business.

In South Korea, they seem to be adopting a different attitude.

This week prosecutors in Seoul announced indictments on market manipulation charges of a Korean affiliate of Deutsche Bank and of four Deutsche Bank employees who were blamed for intentionally causing a sudden collapse in Korean stock prices last November.

In a separate case in June, two former Credit Suisse employees were indicted by Korean prosecutors on charges of manipulating stock prices. The bank itself was not charged with a crime.

市場を操作して不正に利益を得る、という場合、取り締まったとしても中々刑務所にぶち込むというとこまではゆかず、せいぜい罰金までか、というところを、韓国当局が、今週、ドイツ銀行の現地法人の4人の従業員を刑事告発をしたというんですな。
6月にはクレディスイスの従業員が動揺に告発されているとか。

告発によれば、

Here’s what prosecutors claim took place. The Deutsche Bank traders established a huge index-arbitrage position, and placed a huge side bet on prices falling. Then they closed out the arbitrage position in a way designed to cause prices to collapse. They cleaned up.

ドイツ銀行は、どでかいインデックスアービトレイジポジション作りながら、同時に価格が下がる方向に掛けた。で、アービトレイジポジションを価格が崩落するようなやり方でクローズさせた。


In the more formal language that Korean market regulators used in their report, the traders “constructed speculative derivatives positions in advance through the combination of short synthetic futures and long put options.” Then in the final 10 minutes of trading on Nov. 11, they sold $2.2 billion worth of stocks, selling every stock in the Kospi 200 index, which includes all major Korean stocks.

告発状には、シンセティックフューチャーの売りと、売りオプションの買いを組み合わせた投機的なデリバティブポジションを事前に組んでおいて、11月11日の市場終了10分前に、22憶ドル相当の株を売りまくった。


That selling had a huge impact. The Kospi 200 index fell 2.8 percent in those 10 minutes, providing $40.5 million in what the Koreans called “illegal profits” on the derivatives position, which settled based on the closing prices.

その売りは効果てきめんで、Kopsi200インデックスはその10分間で2.8%も下落。彼らは4千50万ドルもの不正利益を得た。

Deutsche owned stock, and was short index futures — or a synthetic equivalent. At the end of trading on Nov. 11, the price of the futures would be determined by closing prices of the shares. So if it sold the stock at closing prices, it would get the small profit it presumably locked in when it established the arbitrage positions.

ドイツ銀行は株をもっていて、同時に売りのショートインデックスフューチャーも持っていた。11月11日の市場の終値でフューチャーは値が決まるので、その値段で持っている株を売れば、彼らは少しだが利益がでるような仕組みになっている。


But Deutsche then went ahead and also bought more index put options. Those puts would soar in value as prices plunged. That is where it presumably made most if not all of the $40.5 million.

しかし、ドイツ銀行はさらに、インデックス売りオプションも買い、そのオプションは株価が落ちると儲かる。もうかったほとんどはこの仕掛けから得ている。

まあ、この記事だけではよくわからないし、株の売り買いのしかけも知らないんですが、こういうことでしょうか。

1.終値の価格に連動する先物の売り予約を持っている
2.本来は、その予約を使って、持ち株をそれで売って、少しだけ利益が出る価格に設定されているわけだが(金利分でしょう)、
3.ドイツ銀行は持ち株をクローズ前に売って、しかも大量に売ったんで市場が下げた。
4.ドイツ銀行は先物売り予約を実行しなければならないが持ち株は売ってしまっている
5.だから、終値で現物を買って売り予約を実行、清算。

だとすると、これはタイミングが難しいんですな。

先に現物を売るわけですが、売り時は、持ち株の買値より高くないと損が出るんで売りにくいし、先物の清算を考えると先物予約値より終値が高いと損が出てしまう。高くてもだめ、低くてもだめ。

しかし、良く考えると、株価が上がっていた場合、現物売却の時に利益が出た分を、予約消化で損になるわけで、結局相殺。市場が動かなければ、のハナシですが。

もし、市場が動いて、現物売却時点よりも、終値が下がっていれば、この差額は儲けになりますな。

ってことで、されば、戦略としては、現物を高く売って、先物を安い時にクローズできればいいわけで、それを実行するために、

クローズ直前に大量売却することで市場にインパクトを与えて、この差額が儲かるという算段ですかね。よく考えましたなあ。

クローズ直前でないと、他の要因で値が戻してしまうので、とにかく、直前にやってしまえばリスクはほとんどないわけですな。いやすごい、ってかエライ簡単な商売でんな。

さらに儲けるために大量のオプションも絡めようっていうんで、なんてフテエ野郎どもで。

It is worth noting how skinny the profits were — 1.8 percent of the money involved. For anyone who had to put up margins and borrow money at normal rates, the profits would have been smaller, if there were any at all. But financial firms can borrow cheap and largely avoid margins because their positions are offsetting.

かかった資金総額からしたら利益幅は小さいとのことです。
ただ、この金余りで、安く資金が手にはいるんで、こういう大掛かりな仕掛けができるんですな。一般の中小事業会社には中々資金が回らないわけですが、金融セクターには資金が余っているってことですかね。


この記事では、米国ではこういうスキームはこれまで見逃されてきた、というか、市場内で読み合うことで、こういうスキームで利益がでないように発展してきたというようなことが書いてありますが、

ボルカールールで、今後はこういうこともできなくなるし、韓国や他の国もこういう不正な奴らをきちんと国外追放して始末して、本来金融機関が担うべき資源の効率配分という機能にもどるべきだ、云々。

まあ、投機取引事態を取り締まれば良い、とかいう意見は政策的な合意が得られないにしても、銀行が自身でやるべきか、というのはちょいと別のハナシで、しかも大量の資金を自身の信用力で調達して市場を荒らすというのは、ヤッパまずいですよね。

日本は、どうなんですかな。


多国籍企業 VS 草の根中小企業  バーナンキ

2010-10-18 13:00:16 | 金融
バーナンキが金曜日に講演をしてまして、ちょいと気になったんで、



このバーナンキ講演は、大概は、FRBがもう少し踏み込んだ金融緩和政策を実施する、インフレ目標にもっとこだわる、とか言った観点で報じられてます、ってかそうなんでしょう。

たとえば、ファイナンシャルタイムズも、そんな感じです。

Bernanke hints at further stimulus

The incremasing likelihood of hundreds of billions of dollars of further asset purchases by the Fed – a strategy known as quantitative easing – will heighten tensions in international currency markets by weakening the dollar further. That may prompt other central banks to follow suit with currency intervention or QE of their own.

FRBが何兆ドルもの追加資産購入政策の可能性が高まっている。それは、量的緩和戦略として知られているわけだが、それは国際通貨市場でさらに米ドルが弱くなるとのテンションを高めることになるだろう。そして、他国の中央銀行が通貨介入や、彼ら自身の量的緩和策を促すことになるかもしれない。

Mr Bernanke on Friday also marched the Fed another step closer to adopting a formal inflation target – a politically contentious goal he has pursued since becoming chairman – saying that most of the body’s officials think that price rises should be “2 per cent or a bit below”.

バーナンキは金曜日にFRBがさらにステップを進め、公式的にインフレターゲットを採用するのに近いところまで来た。政治的には、彼は着任来、この議論の多い目標を追い求めてきたが、今回、ほとんどの会議の職員は価格は2パーセントがそれより少し低い位でないといけないと考えていると語った。

It is the first time that Mr Bernanke has put that number in a speech and linked it to the central bank’s inflation objective so clearly, a strong signal that the Fed will tie any new stimulus to getting inflation back to the 2 per cent goal.

これは、バーナンキが政策目標として、はっきりと数字を上げたのは今回が初めて。

ってな具合です。とっても分かりやすい記事ですな。
インフレターゲットに遅まきながら、ようやく米国も辿り着いたという感じも出てます。

状況が厳しくなると、いっそう踏み込んで行かざるを得なくなるんで、金融政策はカンケーありません、とは言っても許されないんですな。民主主義なんで。

日銀はどうなんだ、ってハナシも今後は、また出てくるに違いないんでしょうな。


さて、それはそうと、このバーナンキ講演の中で、気になった点というのは、

Bernanke's Speech on the Fed's Policy Objectives


The availability of credit to finance investment and expand business operations remains quite uneven: Generally speaking, large firms in good financial condition can obtain credit in capital markets easily and on favorable terms. Larger firms also hold considerable amounts of cash on their balance sheets.

投資やビジネス拡張のためのファイナンスの得やすさが、平等になっていない。一般的に言って、大企業は資本市場で簡単に有利な条件で調達できている。また、大きな企業は、巨額の手元資金を蓄えている。


By contrast, surveys and anecdotes indicate that bank-dependent smaller firms continue to face significantly greater problems in obtaining credit, reflecting in part weaker balance sheets and income prospects that limit their ability to qualify for loans as well as tight lending standards and terms on the part of banks.

一方で、調査や聞いた話によると、銀行に依存する、より小さな企業は、借入するのに大変な苦労をしている状況が変わらず、それは、金融機関の基準や条件が厳しかったりするためであるとともに、企業のバランスシートや、利益見通しが弱いことにより、ローンを受けるために必要な資格を満たせないことを反映している。


The Federal Reserve and other banking regulators have been making significant efforts to improve the credit environment for small businesses, and we have seen some positive signs.

FRBや他の規制当局は中小企業に対する金融環境を改善するために、かなりの努力を払い、若干の改善の兆候が出てきている。

In particular, banks are no longer tightening lending standards and terms and are reportedly becoming more proactive in seeking out creditworthy borrowers.

特に、銀行は、これ以上の貸出基準や条件の引き締めは行っていないし、もっと、かせる先を積極的に探すようになっていると伝えられている。


とか言うトコですな。

株価の回復が早い、とかいうのは、大企業の回復が早いとかいうハナシと結びついているんであって、そうじゃない草の根中小企業は苦しいままなんですな。

米国の政治論争には、ねじれがあって、

中央政府 VS 地方政府
大きな政府 VS 小さな政府
介入主義  VS 放任主義
現職議員 VS 新人候補
ウォールストリート VS メインストリート
エスタブリッシュメント VS 草の根

とかで、左 VS 右として整理されてるんですが、ってか整理されてしまうと、ちょいとねじれが生じて、ホントなら、もう一つの軸、

草の根 VS 多国籍グローバル大企業

ってのがあるはずで、草の根は左にあったんじゃないかと。

ブッシュは、この構図で敗れたはずなんですな。ナオミクラインや、エコノミックヒットマンも、多国籍企業が、世界中で暴れまわり、米国内でも乱暴狼藉、政権を乗っ取って好き放題自分を有利にもって行っている、みたいな。

これが、ウォールストリート VS メインストリートや 大きな介入政府 VS 小さな放任政府、構図で、打ち消されてしまって、反モスリムの宗教論争までが加わって、旧態依然の共和党に人気が移っている、とかいう流れで、ホントなら、ティパーティは左派であってもおかしくないんですな。ミドルクラスを破壊するのは共和党じゃないの?

本来は、草の根に手厚いのは左派のハズですが、ビンボー人や、共和党政策で被害を被るような人達が共和党支持に回っている感じがあって、これ、ビンボー人を動員した小泉政権時代の選挙に似てるかもですね。

今、とっても苦しくて、大企業やウォールストリートはノウノウとしている、これは政府や現職議員のせいだ、というわけで、介入か放任かみたいなところに議論がいっちゃってるんですが、部外者としては、大企業優遇はそもそも共和党の政策やろ、と突っ込みを入れたくなるんですがね。

ティーパーティ候補のポロが出たり、さすがにちょっと変か、と人々が思い始めて、民主党も支持を詰めているみたいですが、こっからどこまで、いけるかって感じでしょうか。

とまあ、依然として中小企業のファイナンス環境は厳しくて、人々の怒りの原因の一つに違いないこと、怒りの矛先は政府や現職に向かっていること、苦しい自分達じゃなくて、他の連中にお金を回すのはけしからん、という単純な図式にノルのは、ちょいと違うかも、ってことで。


シティ  貸出残高

バンクオブアメリカ 第一Q


フィジーのマイクロファイナンス

2010-10-08 07:13:13 | 金融
グラミン銀行は理念もそのやり方も感動的なんですな。
今まで金融機関から見向きもされなかったビンボー人で、しかも差別されて弱い立場の女性に、信用で金を貸す。

ビンボー人に金を貸しても返済できないんじゃないか。

当然の心配ですが、ユヌスは、いやそうじゃない、と言って敢然と常識に立ち向かいます。

ビンボー人には補助金でお金を与えるんじゃなくて、ビンボー人が豊かになろうとする努力をするにあたっての障害を取り除くことが大事なんだってことなんですな。バングラデシュでは、ファイナンスの道が閉ざされていた。あっても物凄い利息を取られて利益が残らない。

グラミン銀はやり方も工夫していて、何人かの借手のグループを作らせて、事業計画の吟味を借手同士でやらせる、定期的に集会を行って発表させるとか。

とにかく、フツーにやってるだけじゃだめなはずで。その辺をウマーくやっている。

で、フィジーのニュースなんですが、

Microfinance faces major hurdles in Fiji

Microfinance institutions in Fiji are facing a real challenge with many their clients defaulting on their loans.

フィジーでマイクロファイナンスをやってる金融機関は、困ったことになってて、貸し倒れが増えてるみたいですな。

The loans are designed to provide people who would not normally be able to get a bank loan, access to funds.
The delinquency among microfinance borrowers in Fiji has been blamed on cultural and traditional ways of looking at borrowing.

貸し倒れが増えているのは、フィジーの文化や借入に対する伝統的な考え方に問題があるとされてきた。

But Dorinda Work, Operations Manager of Microfinance Unit West in Lautoka says its time the five microfinance institutions in Fiji reviewed the way they lend money.

しかし、マネージャーの一人は、5つの機関は、貸し出しのし方を見直す必要がある、と言っている。

"We need to be more stringent with the way we address the lending...the methodologies we use, the client selection," she said.

貸出審査方法をもっと厳格にしなければ・・・。


とかいうことなんですな。ビンボー人に貸したら返してもらえなかった、という間の抜けたハナシになってます。
じゃあ管理を強化するか、というのもちょっとマヌケです(日本じゃフツーの風景ですが)。

グラミン銀のやり方をどの程度取り入れているのか知りませんが、さっき書いたように、グラミン銀は結構ファイナンス教育に力を入れてるんですね。だからコストもかかってるし、貸し倒れ率がそんなに高くなくても金利は高くなる。





グラミン銀行 マイクロクレジット

グラミン銀行を知っていますか―貧困女性の開発と自立支援
坪井 ひろみ
東洋経済新報社



円売り介入 近隣窮乏化 ホントは富裕化政策

2010-09-18 10:11:57 | 金融
民主党の党首選挙を待ってから大規模介入、でっか。
なんというんですか、そんなんで良いんですかね。

大体、管さんは財務大臣になった時に、いまより円安の水準で、円は高すぎると発言して、前任との違いをしっかり打ち出したはずなんですが。選挙前だと誰も責任を取れず、という事情なんでしょうか。選挙のすぐ後に、なんてホントはもっと早くやりたかったということが丸見えで、なんかイヤーな感じです。

日銀が、円売りした資金を不胎化しなかったとかいうニュースも出てましたが、日銀は日銀批判が厳しくなっている空気を読んだってことなんでしょうか。

デフレ克服最優先、日銀法改正やインフレターゲットも視野=小沢氏

東京 14日 ロイター] 民主党の小沢一郎前幹事長は14日午後、同党代表選で国会議員投票前に最後の政見演説を行い、「景気対策とデフレ克服に最優先で取り組まなければならない」とし、「日銀法改正など制度改革やインフレターゲット政策も視野に入れ、金融政策と財政政策の両面からあらゆる手段を尽くす」と述べた。

小沢さんが勝ってたら日銀は、場合によってはみんなの党なんかまで連れてきて、あれこれ手を突っ込まれてた、みたいな、いまそこにある危機、だったんですな。不胎化してません、金融緩和してまっせ、よろしくゴカンベンってことなんでしょうか。

まあ、それは良いとして、最近介入なんてニュースは、あんまし聞かないわけですな。岩本さんも著書では、米国も、欧州も、政策的に、たとえば、欧州はギリシャ問題を爆発させてユーロ売りを誘うだとか、米国なら中国とけんかして、中国のドル売りを誘うだとか、自然に通貨安にもって行ってるんじゃないかということで、

なぜならば、世界的な不況で、通貨の切り下げ競争はどうしても避けるべきことであって、自国通貨売り介入なんて最悪って感じだからですね。

ところが、ですな、ロンドンエコノミストのブログには、こういう記事が出ています。


Beggar, then sneakily enrich, thy neighbour






近隣窮乏化策だけど本当は後でこっそり周りもリッチにすることなんだぞ、ということで、日本の介入政策を批判しているわけではなくて、こういう通貨切り下げ政策について分析したものです。金融緩和、通貨切り下げ策については結構ポジティブにみています。

A bit of inflation in Japan wouldn't just be a good thing. It would be a really, really great thing. And if other countries react to Japan's intervention by attempting to print and sell their own currencies in order to toss the deflationary potato to someone else, well then so much the better. As the chart at right indicates, its a rare rich economy that couldn't use a bit more inflation.

日本にとって、ちょっとばかしのインフレは、良いこと、どころかめちゃめちゃすごいことだ。もし他国が日本の介入策に反応して通貨刷って自国通貨の売りに出て、デフレを他国に移転しようとすることになれば、なおさら結構なことだ。

Not every country can simultaneously depreciate its currency. But everyone can nonetheless benefit from the attempt, if currency interventions lead to expanded money supplies and rising inflation expectations.

すべての国が同時に通貨を切り下げることはできないが、この試みに対してはすべての国に利益をもたらす。通貨介入策が通貨の追加供給を招き、インフレ期待をあおるからだ。

It's worth looking again at this important chart:

このチャートを見よ、というわけで、ここにも貼っておきましたが、


The departure from gold benefitted every country that tried it. The mechanism here wasn't competitive devaluation, but the freeing of monetary policy, which had previously had to respond to gold outflows through increased interest rates, which devastated domestic economies.

これ、30年代の大恐慌の時のグラフなんですが、金本位制から離脱を試みたすべての国が利益を得た。重商主義は通貨切り下げ競争ではなく、金融政策の自由化のことだった。金本位制のもとでは、金の流出に対して金利引き上げで対抗せざるを得ず国内経済をひどく痛めていた。

というわけで、これ、バーナンキのですね。バーナンキは大恐慌を研究してて、金本位制が恐慌を悪化させてしまったと主張してて、そこから離脱した順に経済が回復したと説明してたんでした。

この動画では、金融政策はサポーティブでなければならない、と言ってます。金本位制は不景気で弱ってるところに金利を引き上げて経済をメタメタにしてしまうわけで全然サポーティブじゃないんで。



とまあ、この記事は、日本の介入に好意的で、今はインフレ期待を盛りたてて行くべしって感じです。ちなみに、金融緩和、円安ポリシーは小泉、竹中時代にビシバシやってた政策なんですがね。介入したドルでイラク戦をファイナンスしたとして批判されたり、円安バブルで、根本的な改革とは関係ない景気回復だったと言われたりしてますが。


記事には関係ありませんが、このおっさんも介入を批判してません。


政府紙幣発行 高橋洋一 日本銀行の対応はどうよ

2010-06-27 22:55:29 | 金融
以前、ここで、政府紙幣発行政策についてのぞいてみたことがあったんですな。
それに、デフレ日銀悪玉論についても。

日銀が金融を十分に緩和しないからデフレが一向に改善しない。金融政策が厳しすぎる。
マネタリーベースを増やしても、マネーストックは増えないからデフレは解決しないという反論、反リフレ論もあるんですが、ちょいと面白い動画があったんで、貼っときます。

高橋洋一氏が、中盤以降、政府紙幣発行論を展開しています。



ここでは、日銀が金融市場を通じてマネーを供給するんじゃなくて、給付金を一人20万円出すという想定なんで、いくらかでも消費に回れば確かに景気対策にはなるでしょうな。銀行にお金がとどまってマネーストックが増えない、という議論はする必要がない。この辺は反論を意識してあえてそういう想定にしているのかも知れません。

こういうバラエティー番組も結構良いもんですね。高橋氏の本も基本的には、同じ内容で、ある意味、政府紙幣についてだと、著書を読むまでもなく、この番組で十分だったりして。

で、高橋氏が後半でおっしゃっている、日銀が他国の中央銀行に比べてチョー渋い、というハナシは、本当で、結構、目立つ存在になっているようでして。

本書なんですが、

エコノミスト増刊 米国経済白書2010 2010年 5/24号 [雑誌]
クリエーター情報なし
毎日新聞社


2010 Economic Report of the President

この第3章で原書95ページ、邦訳105ページにこうでてますな。脚注なんですが。

第3章


On December 1, 2009, the Bank of Japan announced a roughly $115 billion increase in lending,
equivalent to a nearly 10 percent increase in its balance sheet. This increase was significant but
still far below the actions taken by other major central banks.


09年12月1日、日銀はバランスシートの10%に相当する1150憶ドル相当の融資拡大を宣言した。この拡大は重要であるが、他の主要な先進国によって講じられた措置には、はるかに及ばない

リンクを開いていただければ、グラフもでてます。高橋氏がホワイトボードに書いたような、折れ線グラフではなくて、棒グラフで08年から09年の中央銀行の資産増減を表してるんですが、日銀だけほとんど動きが無い。ってか、減ってます。

なんじゃこら。

ああ、グラフだけならIMFにでてるんで、これを観ていただきましょう。

Figure 3.16. Changes in the Major Components of
Central Banks’ Balance Sheet


やる気の無さがかいま見えるグラフですな。

まあ、日本の場合は、リーマンショックの時に金融機関の資金繰りがチョーヤバという度合いは小さかったはずなんで、ちょいと事情はちがうのかも知れませんが。

経済の落ち込みで言えば、日本は負けてないんで、
日銀は関係ありませーん、ってどうなんですかね。






電子マネーで地域通貨 杉並区

2010-05-30 13:35:22 | 金融
また、地域通貨かいって感じですが、土曜日の日経記事にハッとする記事がでていたんですな。
夕張を電子マネーを活用した地域通貨で経済振興ができるだろうと書きましたが、

杉並区で実際にやるらしい、って言うんですね。


ソニーと東京・杉並区、地域電子マネー展開

ソニーは地方自治体と組み、地域で電子マネーを普及させる事業に乗り出す。第1弾として子会社の
フェリカポケットマーケティング(東京・品川)と東京都杉並区は共同で2011年度から、区が支給する
助成金や商店街の金券などのICカードによる管理を始める。利便性の高い電子マネーを活用することで
地域の消費活動の底上げにつなげ、行政コストの削減も目指す。

 杉並区が発行するカードはソニーが開発した電子マネー用の非接触IC技術、フェリカを搭載し、東日本旅客鉄道
(JR東日本)の「スイカ」やイオンの「ワオン」、セブン&アイ・ホールディングスの「ナナコ」といった複数の
電子マネーを1枚で使える。区の窓口などで希望者に数百円で配り、区役所や商店街の店舗などに設置した
専用端末にかざせば入金や買い物の支払いができる。

 杉並区では子どもを持つ世帯に配る区の独自の支援クーポンや、ボランティア活動参加のポイントなどを電子マネー化し、
カードにためられるようになる。電子マネーは区内の店舗だけで利用できるようにしたり、使用期限を自由に設定したりできる。
商店街で使う金券やポイントでも活用できるため、官民のサービスを一枚で利用できるようになる。


減価機能は付かない。しかし、

区の給付を電子マネーで行うこと、
地域の店舗で使えるようにする、

ってとこは実現するようで。

地域でしか使えない、という点は良いとして、ただ、

地域での還流という点ではどうですかね。

イサカアワーにもあったように、地域通貨の一つの目的は、富を地域に留める、というものですな。これを実現するには商店街で使われた地域通貨が、さらに、地域の卸業者ないし、生産者からの仕入れに使われなければならない。

そういう手当なしには、結局、商店街が受け入れた電子マネーは円に転換されて終わり。
現状では、『区の給付が、区の業者に支払われることは確保される』、というところまでですな。

それでも、区の業者振興という点では意味があるんですが、地域で流通する地域通貨、とまでは呼べません。企業間で取引ができるようにし、円への転換に制限を設ける必要があるんですな。

このニュースを読んで、あれこれネットを探ってみましたが、ドコもこの視点が欠けてます。
地域通貨の議論は、大きく二手に分かれているようで、

一つは、『うちわ通貨』を発行している主催者のような、どっちかと言えばひだり系の議論。
もう一つは、地公体をからめた上で、地域振興券や、こういう電子マネーを使って地域通貨を実現しようという議論。

ブームを作ったのは前者の方ですが、本筋は後者で、後者は前者を包含しながら、さらに先に進んで行ける議論の力、潜在力がある。前者はやってることと言ってることがマッチしていないし(利息がつかないことが重要なのか)、もともと閉じた世界を志向していて広がりようもない。

ただ、後者の、実際に地公体を巻き込んで考えられている電子マネーは、『電子マネー』を導入することに目を奪われてしまっていて、電子マネー業者のロジックの範囲にとどまってしまう。

商店街独自ではコストが高すぎるんで、地公体が支援して導入しましょうよ、ついでに、区の給付もこれでやれば、参加する業者しか使えず、区外に流出せず、区内で使われることになりますよ、バウチャー方式の給付は面倒でコストかかるがこれなら簡単安い、区長さんの政策に合致してますよ、みたいなセールストークの範囲にとどまっている感じなんですね。『便利になる』ことだけがウリなんですな。


ここまでやるんなら、もうちょっと手を加えて、還流できる仕組みにしちゃえば良いのにって感じなんですがね。

まあ、杉並区は農業や畜産があるわけじゃなく、卸業者を巻き込んでどうなるってのは難しいかもですな。つまり区だけでは経済が完結しにくくて、還流する流通ルートが作りにくい。人口はそれなりにあっても地産地消は難しい。そういう面で外部と組んで経済圏を作ってゆくことがないと、すぐには無理かも。

ただ、さっすが杉並区、というハナシがあって、

『子育て応援券』という給付が住民に出ていて、これも電子マネーに統合されることになるんでしょうが、

日本一!6万円の「杉並子育て応援券」とは

■おむつやミルクを買う時に、使えないの?
物品の購入には使えません。地域の子育て支援サービスの、「量と質の向上を目的としている」からだそうです(納得)。現金で6万円もらっていたら、きっと将来の教育費のための貯金か、いいお肉や、お刺し身に消えてたかも。それでは、地域の小売業は潤っても「子育て支援サービス」の量と質向上にはなりません(反省)。


物品の購入には使えない。ココ、さすがです。大手スーパーで、おむつを買われても地域に貢献しない。売上の一部は地域で雇用されている従業員の給与なんかで支払われますが、結局本社に吸い上げられて、杉並区にはとどまらない。

地域の、しかもサービス業なら、お金が出ていかない。そもそも仕入れるモノがないですからね。

よーく見てゆくとザルになってて、結局何にも変わらずに特定の人だけが得する政策、みたいなのに慣れさせられている身としては、こういう細かな配慮、良くみないと気がつかず、ぱっと見不便じゃん、だけどこうすることが区のためになる、みたいな工夫には関心させられますな。そういうのがホンモノの政策ってもんでしょう。

サービス業を重点に置いて、電子マネーの参加業者を募って、業者の給与も受け取った電子マネーを一部、そのまま電子マネーで支払う、みたいな形ならば杉並でも還流可能でしょう。サービス業はモノの仕入れがなくて、コストは地域に落ちやすい。

区長さん、もう一歩どうですかね。

おむすび通貨 その8  電子マネーでどうよ

エンデの遺言を読んでみた  地域通貨




エンデの遺言を読んでみた  地域通貨

2010-05-24 07:11:58 | 金融
丸一週間、ずっとおむすび通貨一色でどうもすんません。

なんせ、地域通貨のことはずっと頭の片隅で引っ掛かったままで、いつか整理したいと思っていたんで。それに、地域通貨を考えるということは、通貨一般を考えるということでもありやして、シロートが頭の体操をするには面白い素材なんですな。ギリシアもユーロを離脱しないで、地域通貨を並行して使うなんて、どうかな、とか。

そろそろ通常モードに復帰したいんですが、もういっちょだけ。

例の番組が書籍化されてるんで、この週末で読んでみました。

映像だけでは今一つわからない点まで、活字なら踏み込んでいるはずですよね。

エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」
河邑 厚徳,グループ現代
日本放送出版協会


先週、いろいろ書いてきたわけですが、大体のことは、本書にすでに書かれてますな。

先に読むべきであったか。

ただ、ちょっと気がついたことを書いときますと。

1.ウォルマートへの対抗

米国イサカのケースで、未来学者のなんとかさんが、富を地域に留める機能がある、っておっしゃってました。

本書によると、はっきり名指しされてはいませんが、大手安売りショッピングセンター、つまりウォルマートへの抵抗運動も背景にあったみたいです。ウォルマートが進出してくると、物価は安くなるが、地域の購買力は吸収されて、ウォルマート本社へ。そしてその先の中国なんかの生産地に行ってしまう。生産地では子供や女性がひどい労働環境で・・・というパターン。これまでここでも何回も見てきましたやつですね。

反東京、反全国チェーンと前に書いたと思うんですが、イサカじゃウォルマートがはっきりと意識されていたってことで。


2.大規模農場への対抗

イサカアワーで地元の土地を守るって番組で誰かが言ってました。大規模農場は土地が荒らしてしまうんでイサカアワーで地元の零細農家を支援するんだと。これも名指ししてませんが、モンサントなんかの遺伝子組み換え種子と、除草剤の組み合わせで手間いらずの大規模農業のことを言ってるんでしょう。

市場原則を突きつめると、とことん効率化を進めることになりまして、

一つは規模の経済。
一つは省人化。

これが極限まで進んで、結構グロテスクなことになってしまう。

地場の商店や、農家を支援することで、地域を保全する。
少々できるのが遅くなっても、形が整っていなくても、そこは消費者も許容する。

家族経営でやってるんで、給与を払う必要がなくて、つまり、奥さんと子供が無償労働で、作ったものが売れさえすれば儲かりはしなくても何とかやってゆける。地場の消費者が買うかどうかが問題なんで、イサカアワーが地域の提供者と消費者を結びつけるって感じですな。



3.理論、思想面

 (1)『悪貨は良貨を駆逐する』原理について

地域通貨が流通するのは、悪貨が良貨を駆逐する原理があるからだ、と私は書いたんですが、地域通貨は悪貨じゃないのか、という議論も、なんと本書にあって、

経済学者のフィッシャーが、米国で減価する地域通貨を広めようとしていた時に、

『悪貨は良貨を駆逐する。代用貨幣が現金にとってかわるなら、これは代用通貨が悪貨であることを証明している』

との批判されてまして、それに対し、

『そのような主張はインフレ時以外は間違っている。流通にある貨幣が流通していないとき、これを駆逐し本当に流通するどんな貨幣も悪貨ではなく良貨である』

と答えたそうです。まあ、流通にある貨幣が流通していないとき、なんて、訳はメタメタですけど、なんとなくわかりますな。インフレでなくて、ひどい不況にあって、貨幣が退蔵されて流通しないとき、減価する代用通貨なら流通するってだけで、それは悪貨にあたらない、という主張です。

フィッシャー大先生には申し訳ありませんが、私は、悪貨だから流通する、減価させて人為的に悪貨度を高める、と一般化した方が、すっきりして、一貫した説明ができると思いますがね。悪貨でいいじゃん。

まあ、呼び方が悪ければ、言い方を変えて、反保蔵需要を高める、とか、わけがわからなくしてしまって。専門書でみかけるような、アホ用語を使ってしのぎましょう。

(2)内輪通貨と本格通貨

地域通貨にも内輪でだけ通用する信任度が低いもの、世間一般に通用する信任度が高いものといろいろあって、低いものほどメンバー間の信頼関係による補完が必要だ、と私は書いたんでした。同じ地域通貨でも求める機能によって、性質が違ってくる
。内輪通貨に減価機能なんて、ほとんど関係ありませんな。そういうことを理論化するには通貨の信任度という概念がどうしても必要になるんですが、本書でこの問題がどう扱われているかと言いますと、

こうした、通貨間のレベルの違い、区別はなされておらず、金利をひたすら強調するのみです。今の貨幣の悪い点が金利に集約されている、という見方なんですな。金利があるから邪魔になって、貨幣が流通しない、てな具合で。

まあ、本書は理論書じゃないんで、そういうことはどうでもいいのかも知れませんが、私にすれば、地域通貨の主催者が金利のつかない通貨が世の中を変える、みたいなことを言うのが、どうも引っかかるんで。本書が発端だったのか。

ゲゼルは、減価する通貨が、経済を変える、と言っただけで、ゼロ金利ではだめでしょう。

地域通貨について考えていたわけでもない。国家レベルでの改革を考えていたんで、小さな町単位の成功であっても、十分ではなかったでしょうナ。

地域通貨は金利がつかないから良きものだ、というのは、ほとんど根拠も意味も不明です。

おむすび通貨が流通するのは、金利がつかないから?

アホか!!


内輪通貨も本格通貨も、一般化して説明するには、これまでやってきたように、『悪貨が良貨を駆逐する原理』と『通貨への信任とその補完論』が必要なんですな。内輪通貨は減価機能をつけなくても悪貨として流通する。信任度の高い本格通貨では減価機能を付けないと悪貨にならない、という風にですな。


(3)ゲゼル

ゲゼルは、労働者のために立ち上がろうとか、平等な社会を、とか考えていたんじゃなさそうですな。彼はビジネスで大成功した実業家であって、反ビジネスでもない。

ただ、反金融資本なんですな。

今、アメりカで議論になっている、

ウォールストリート VS メインストリートの戦いで、

ゲゼルはメインストリート側なんですな。

同時に、彼は土地改革も提唱していて、土地の政府による収用を主張。

つまり、お金は劣化せず放っておいて金利がつく、土地も劣化せず貸すと地代が稼げる。おんなじなんですな。

これが滞留の原因になっててイカンというわけで土地も収用しちゃう。

ゲゼルは市場がどん詰まるのをなんとか掃除しようとした不況の経済学を考えたに違いないんで、地域通貨の親分と呼ぶにはちょっと遠過ぎる感じなんですけど・・・。

ゲゼルの自由通貨運動の一環ってことで、自由に通貨を発行させろってこと ?



とまあ、考えは尽きないんで、ずっとこのまま、地域通貨ブログにしちゃっても良いくらいですけど、とりあえずこの辺で。イロイロととっかかりができたんで、またこのネタに戻ってくることもあるかもですね。

タンザニアのビクトリア湖のナイルパーチのハナシをやってる『ダーウィンの悪夢』って映画があって、あれ、地域通貨で考えると・・・、

ってもうやめときます。