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米国ベビーブーマーの政治パワー ロンドンエコノミスト

2011-01-01 21:28:15 | ロンドンエコノミスト





日本の生産年齢人口の減少が内需に大きく影響していることは『デフレの正体』,米国では,ベビーブーマーの消費が米国の90年代の繁栄を支え,2000年代のベビーブーマーのセカンドハウス需要、住宅バブルの背景にあった,というのはHSデント『最悪期まであと2年! 次なる大恐慌』にかかれていたんでした。

で、米国で,そのセカンドハウス需要も住宅バブルの崩壊でしぼみ,今度は,彼らの大量引退が始まるというんですな。日本は一足早く団塊の世代引退が始まっていますが,米国でも同じってわけで。

まず,ニューズウィーク。


ベビーブーマーという重荷

高齢者のための3大制度である社会保障制度とメディケア(高齢者医療保険制度)とメディケイド(低所得者医療保険制度)にかかる費用は、連邦政府の歳出総額の5分の2を占める。08年度は1兆3000億ドルだった(歳出総額は2兆9800億ドル。ちなみに防衛関係費は総額で6130億ドル)。

 近い将来、ベビーブーム世代が大量退職して3大制度のための支出が増えれば、連邦税の大幅な増税もありうる。政府のプロジェクトを減らすという手もあるが、コスト増に見合うだけのカネを捻出するには防衛費の大半か、その他の国内向けプロジェクトの大半を削らなければならない。

 職員の大量退職を控えた州や地方自治体も同じような問題をかかえている。将来のコスト増にそなえて毎年十分な額を積み立てればショックは緩和できるが、それは一部でしか実行されていない。

 もう一つ問題がある。オバマが公約した医療保険の財源がほとんど確保できていないことだ。今後、若者たちの稼ぎは高齢者に吸い取られることになる。社会保障やメディケアや年金などの給付額は法律で定められているから、法改正がないかぎり決まった金額が支出される。増税圧力が高まり、継続できないプロジェクトが出てくることは必至だ。



この議論は,引退による収入減→支出減というハナシではありません。まあ,デントも引退で年寄りがシブチンになるという議論を強調することはないんですね。藻谷氏は日本の年寄りが保守的で金を使わないということを強調しているんですが,米国でも年取って必要が減ることはあるんでしょうが,棺おけまで持っていくという発想はないかもですな。

で,この記事は,ベビーブーマーの引退による社会保障負担の増加がテーマになってて,これは日本の厚労省や一般のメディア議論と同じで,経済そのものというより政治的議論ですね。

まあ,こういう指摘をするのは簡単なんで,もう少し突っ込んだ分析がほしいところです。そこで,ロンドンエコノミスト。






Demography and the economy


In the next two decades people aged 65 and over will rise from 17% of the voting-age population to 26% (see chart 1). Since the old vote more readily, their actual share of the electorate will be some three percentage points higher, reckons Robert Binstock, a political scientist at Case Western Reserve University in Cleveland.

今後20年で65才以上の有権者人口は17%から26%まで増加。シニアは投票率か高くなるので,実際の有権者の比率はさらに3%高くなる。

In recent years the elderly have become a more distinctive voting block. People over 65 increasingly identify themselves as conservative and vote Republican, while young voters do the opposite, according to Andrew Kohut of the Pew Research Centre. The pattern was particularly striking in the last mid-term elections (see chart 2), when Republicans’ share of the over-65 vote exceeded the Democrats’ by a whopping 21 percentage points.

近年,老人達はよりまとまった方向で投票するようになっていて,自分達のことを保守的だと考え,共和党に投票する人が増えている。若者とは逆の動きをしていて,この間の中間選挙では65才以上の共和党への投票は21%も上回った。

記事のグラフは貼っておきました。

The president sought to insulate the elderly from any bad effects. While workers with employer-provided insurance will have their tax benefits curtailed and the affluent will pay Medicare tax on their investment income, the elderly got an immediate expansion of their Medicare drug coverage. In spite of that they remained, as they had begun, staunchly opposed to Mr Obama’s reform. “They already have national health care,” Ms Campbell explains, “and can’t imagine extending coverage to 16% of the population without a hit to their benefits.”

保険制度改革の中で,

オバマ大統領は,老人達を悪影響から守ろうとした。労働者は,雇用主が保険を提供している場合は,税金優遇が切り詰められ,金持ちは投資収入からメディケア税を払うことになるが,老人達はメディケアの拡大と適用される薬品のカバー範囲が広がった。

にもかかわらず,老人達は,オバマの改革に対しては反対の立場を変えることがなかった。『老人達はすでにヘルスケア保障を得ているのです。そして,人口の16%にあたる追加の保障を与えることが,老人達の利益を損なわないとは考えられないのです』


と,まあ前回の選挙では,共和党が,そこを突いて、老人達の支持を勝ち得たということなんですがね。ますます人数が増え、社会の負担にもなってゆく一方で、今後,政治における老人パワーは無視できない大きな勢力になってゆくって感じです。

老人が弱者で,当然,社会保障に手厚い民主党支持なんだ,という先入観は間違いで,実は,多数派で政治的に強くて,既得権者で,共和党支持だった、ということ。

日本も老人達の政治的な強さをいろんな人が指摘していたはずですが,日本の老人達もバラマキに反対で,『民主党はバラマキだ』という批判は,意外と老人達の耳に届いている可能性がありますね。財政に余裕もないのに、無駄遣いするとは何事か、って感じで。まあ、自分達は最後まで逃げ切れると思っておられるでしょうがね。

人口問題は世代間問題でもあり、当然政治問題である、ということがよく分かる記事ですね。


謹賀新年 

2011-01-01 09:59:00 | 政治
新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

このブログもスタートしたのが2005年正月なんで、7年目を迎えます。いやはや結構続いてますな。最近は、政治ネタが多くなっています。米国の政治記事や、政治番組の動画をチェックしているうちに、これが結構、面白おかしくできていることに気がついて、ついつい、引き込まれてしまっている感じです。ウォルフレンのように高度なレベルで楽しませてくれる論者も居れば、ジョン・スチュワートやスチーブン・コーベアのようにエンタメに徹して直球のお笑いで攻めている番組もあって、いや、観ていて飽きません。

スーパーな登場人物が多数を巡って知的なバトルを繰り広げるとっても、面白い世界、ということだけで十分なんですが、もう少し現実的な観点では、

政治をフォローしていると、

経済と政治、

これが連動するんじゃないか、ということが何となく、分かってきて、その点でも追いかける価値はあるかな、と感じています。政治体制のオープンさが経済が興隆するか停滞するかに直結するとかいうイデオロギー面から始まって、あるいは、同じ体制であっても政府支出、金融政策、為替政策をどうするかによってどうなるか、みたいな。

それぞれの政策に、得する人、損する人がいて、政治は、それらの利害を踏み越えてどっちかに決着してゆくわけですな。ウソ、ごまかしで、大衆を引っ張ることもあるし、誠実に取り組んで非難を浴びながら進むこともできる。


去年は、

人口論、にも触れて、大きく目を開かせられたんでした。

この地味で、辛気臭い人口論が、意外に決定打であって、その辺のエコノミストの説明よりはるかに説得力があるし、細かな議論がアホ臭くなるくらいに、経済をうまく説明できる。

リーマンショックで製造業の売り上げが一斉に落ち込んで、日本の成長率も悪化しましたが、日本の小売はもっと前から落ち込んでいるし、経済の成長率と売り上げ推移があまり連動していないことが、ずっと気にはなっていたんですね。

リーマンショック前、輸出で日本の経済が良くなっても、日本の小売業はアンマシよろしくなかった。何か別の要因があるんじゃないか、とずっと引っかかってて、それがデフレのせいだといわれても、納得できるわけありませんな。

小売業がよろしくないこととをデフレと呼んでいるにすぎず、

何も説明していない、

それが、人口の観点から、生産年齢の増減でかなりのことが説明できる。積年の疑問が氷解したような。

とまあ、このブログも、より幅広く、深みを増して、少しづつ成長して行ければいいと思ってるんですがね。

基本はネタとして面白いことが前提ですが。

今年もいい年になるといいですな。