さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】この世をば(下)

2024-05-20 23:14:18 | 読書録

永井路子/ゴマブックス

永井路子さんの書かれた藤原道長の物語を読んだ。

この本によれば、藤原道長はどちらかというと弱気で平凡な男であった。

なぜ頂点に登れたかというと、強運と、優れた平衡感覚のおかげだった。

やりすぎないこと。賢帝である一条天皇はそういう道長を信頼したのだった。

どちらかといえば平時のリーダーである。

「この世をば」の歌を詠んで後から、道長の運命は急降下。要するに病気に勝てなくなってきたのである。刀伊の入寇のような非常事態において、道長は病気で何もできなかった。つまり晩年近くまで、そう言う事件がなかったからトップでいられた・・とも言えるだろう。

驚くべきは、火事の多さである。内裏は焼けるは、道長の邸宅は焼けるわ・・・。

でも道長に取り入りたい受領層が争うように援助を申し出、再建してしまう。受領層は民を苦しめ、私服を肥やしているが、道長や帝のために気前よく援助することで、ずっと受領にしておいてもらえるというメリットがあるのだ。

こんなに家事ばかりで、当時の防災はどうなっていたのか。。。防災をしなくても、とりあえず火の粉から逃げ出せば再建してもらえるのであれば、防災意識は低くなるだろう。病んでいるな。

そしてその受領層の最たるものが源頼光。大江山の酒呑童子を倒した伝説の持ち主であり、頼光の兄弟の子孫は頼朝である。だが当時の頼光は武勇以前に大富豪だったのである。

本書に紫式部は若干登場するが、道長と何らかの男女関係があったことを匂わせている。また小右記の作者、藤原実資は、大河ドラマでは道長と仲が良いように見えるが、実際には道長と反りが会わず、祝いには絶対顔を出さないし、小右記にも皮肉ばかり書いているようだ。だが、「この世をば」の有名な歌が今に伝わっているのは実資のお陰だったりするんだそうだ。この歌は道長の作ではあるが、実資と道長が一緒に吟じて楽しんだようである。

と言うことで、「光る君へ」とは少し設定が違うし、道長のキャラも少し違うが、非常に細かく書かれており、史料を相当調べた上で書かれた作品らしく、大変面白かった。

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