
(【読書録】週刊古代文明31)
週刊古代文明のバックナンバー、31巻目で一番印象に残ったのは「アガメムノン」の話。
思えばアガメムノンって、名前は知ってるけど、どんな人だったのか、私の中では完璧に影薄いのであった。
ホメロスの「イリアス」の中に登場するアガメムノンはミケーネの王であり、ギリシャ側の総大将としてトロイ戦争に勝利するのだが、帰還するや否や、王妃クリュタイムネストラに殺されてしまう・・・という話以上のことは覚えていなかった。
ブラピの主演映画「トロイ」も見たし、アガメムノンも出てたはずなのだが、正直あの映画はブラピ(アキレス)とオーランド=ブルーム(パリス)だけが目立っていたので、他の人のことは全然記憶に残っていない。(アガメムノンがアキレスの愛人を奪うという大事なシーンがあったはずなのだが。)
むしろ記憶に残っているのは、シュリーマンがトロイ遺跡を発掘した時、トロイ戦争よりも古い時代の層から発掘された黄金マスクを「アガメムノンのマスク」だと騒いだこと。本人のものじゃないのに、黄金マスクの方が印象に残るなんてね。
週刊古代文明31巻で、「イリアス」の語るアガメムノンについてあらためて読んでみると、本人が極めて傲慢で嫌な人物であると共に、先祖も子孫も血に穢れ、呪われた一族として描かれていることがわかった。
どのように呪われているかというと、書くのがはばかられるような外道なことばかりで、流れとしては、
①アガメムノンの父は、王位を争った弟に妻を寝取られた報復として、弟の3人の息子を殺して肉料理にして弟に食わせた。
↓
②息子を食わされた弟は実の娘を犯し孕ませ、生まれてきたアイギストスに復讐を誓わせる。
↓
③アガメムノンはつまらない意地でアルテミスの怒りを買い、娘を犠牲にしなければならなくなるが、娘を殺したことで妃であるクリュタイムネストラに憎まれ、トロイ戦争勝利直後に彼女に殺される。(彼女の愛人に収まっていたアイギストスが彼女に加担。)
↓
④クリュタイムネストラも息子に「父の仇」として、アイギストスと共に殺される。
というような血で血を洗うような話が続くのだ。
とにかく、呪われた運命だけでなく、本人の人徳が無かったものだから、アガメムノンはギリシャ側の総大将だったにもかかわらず、アキレスをはじめとするギリシャ側の有力武将から大いに嫌われた・・というのだが、実は彼の実在を証明する史料はまだ見つかっていないそうだ。では、ホメロスはなぜこんな情けない王の姿を描いたのか?
それはおそらくホメロスが生きた時代、ギリシャの政治権力が王から貴族へと移行しつつあり、「王の理不尽が貴族出の英雄の行為を妨げる」という構図の話が聴衆にウケたからだろう、と週刊古代文明には書かれている。なるほど、伝説もこのような見方をすると面白い。
トロイ戦争の伝説は、神と人間の利害が入り乱れた混沌とした物語で、何となくすっきりしないところがあるのだが、一応トロイの遺跡の現地(こっちも混沌としてたが)を訪れたこともある人間として、そのうちホメロスの原典の日本語訳でも読んでみたいものだと思う次第である。
週刊古代文明のバックナンバー、31巻目で一番印象に残ったのは「アガメムノン」の話。
思えばアガメムノンって、名前は知ってるけど、どんな人だったのか、私の中では完璧に影薄いのであった。
ホメロスの「イリアス」の中に登場するアガメムノンはミケーネの王であり、ギリシャ側の総大将としてトロイ戦争に勝利するのだが、帰還するや否や、王妃クリュタイムネストラに殺されてしまう・・・という話以上のことは覚えていなかった。
ブラピの主演映画「トロイ」も見たし、アガメムノンも出てたはずなのだが、正直あの映画はブラピ(アキレス)とオーランド=ブルーム(パリス)だけが目立っていたので、他の人のことは全然記憶に残っていない。(アガメムノンがアキレスの愛人を奪うという大事なシーンがあったはずなのだが。)
むしろ記憶に残っているのは、シュリーマンがトロイ遺跡を発掘した時、トロイ戦争よりも古い時代の層から発掘された黄金マスクを「アガメムノンのマスク」だと騒いだこと。本人のものじゃないのに、黄金マスクの方が印象に残るなんてね。
週刊古代文明31巻で、「イリアス」の語るアガメムノンについてあらためて読んでみると、本人が極めて傲慢で嫌な人物であると共に、先祖も子孫も血に穢れ、呪われた一族として描かれていることがわかった。
どのように呪われているかというと、書くのがはばかられるような外道なことばかりで、流れとしては、
①アガメムノンの父は、王位を争った弟に妻を寝取られた報復として、弟の3人の息子を殺して肉料理にして弟に食わせた。
↓
②息子を食わされた弟は実の娘を犯し孕ませ、生まれてきたアイギストスに復讐を誓わせる。
↓
③アガメムノンはつまらない意地でアルテミスの怒りを買い、娘を犠牲にしなければならなくなるが、娘を殺したことで妃であるクリュタイムネストラに憎まれ、トロイ戦争勝利直後に彼女に殺される。(彼女の愛人に収まっていたアイギストスが彼女に加担。)
↓
④クリュタイムネストラも息子に「父の仇」として、アイギストスと共に殺される。
というような血で血を洗うような話が続くのだ。
とにかく、呪われた運命だけでなく、本人の人徳が無かったものだから、アガメムノンはギリシャ側の総大将だったにもかかわらず、アキレスをはじめとするギリシャ側の有力武将から大いに嫌われた・・というのだが、実は彼の実在を証明する史料はまだ見つかっていないそうだ。では、ホメロスはなぜこんな情けない王の姿を描いたのか?
それはおそらくホメロスが生きた時代、ギリシャの政治権力が王から貴族へと移行しつつあり、「王の理不尽が貴族出の英雄の行為を妨げる」という構図の話が聴衆にウケたからだろう、と週刊古代文明には書かれている。なるほど、伝説もこのような見方をすると面白い。
トロイ戦争の伝説は、神と人間の利害が入り乱れた混沌とした物語で、何となくすっきりしないところがあるのだが、一応トロイの遺跡の現地(こっちも混沌としてたが)を訪れたこともある人間として、そのうちホメロスの原典の日本語訳でも読んでみたいものだと思う次第である。
私は勉強不足ですが、リヒャルト・シュトラウスの歌劇「エレクトラ」だと、そういう復讐に狂ったエレクトラが出てくるようですね。
アガメムノンの嫡男オレステスとその姉エレクトラが父の仇としてクリュタイムネストラとアイギストスを打ち倒す部分だけを切り取ってしまうとそうなるのでしょうが、ホメロス上では祖先から連綿と続く、どっちが悪ともつかない親族同士の血にまみれた復讐劇となっています。
クリュタイムネストラはアガメムノンの前に相思相愛の夫がいたのに、アガメムノンの策略で前夫と引き裂かれ、前夫は死ぬことになるため、クリュタイムネストラももともとは悲劇キャラです。
もっとも一番かわいそうだったのはアガメムノンと一緒に殺されたトロイの王女カッサンドラでしょうが。
いずれにせよ、伝説&創作話なので、いろんな話があってよいと思います。