風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

脱・器用貧乏

2021年09月07日 | 出版
8月半ばに『同性愛と新約聖書』を刊行してから、9月初旬にかけ、雑誌を1冊、書籍を1冊、ミニコミ1部、「救援」という機関紙を1部、制作終了。我ながら、よく働いたものだ。ミニコミは制作費の請求が発生するわけではないので、正確にはマルクスのいう賃労働には当てはまらない。ボランティアというか遊びのようなものに該当するわけであるものの、しかし、決して手を抜いているわけでもない。
お次の仕事も控えているし、風塵社としての次のプロジェクトも始めたいし、そのミニコミに関わるプロジェクトもある。ミニコミ用のプロジェクトとは、小生がどなたかに話を聞いて記事にまとめるというもので、誌面の関係上9000字をマックスとしていた。しかし、いま踏み込みたいなあという企画に関しては字数制限を設けるつもりはない。そのくらい、ある世界においては重要な内容になるものと思い込んでいるけれど、充実した取材がどこまでできるのかはやってみないことにはわからない。
似たようでいて別の世界の話になってしまうが、例えば週刊文春とかの記者の場合、取材対象に接したとき、取材目的であるかをどの段階で対象者に告げるのだろうか。いつも疑問に思っている。某週刊誌が取材のため弊社に電話をしてきたときは、最初から記者であり、取材目的であることを述べていた。その案件が極秘に取材しないといけないような性格のものでもなかったので、それはそれで理解できたし、正当な取材方法だと感じた。ただし、その後の、小生の発言の扱いについては不快でしかなかった。
しかし、対象によっては取材目的であることを伏せて接近し、関係性を作ろうとする場合もあることだろう、と勝手に想像する。そういう取材を小生はしたことがないので、先ほど「別の世界」と記しておいた。そしてその場合、どこで取材目的なのかを相手に告げるのか、そのタイミングって難しいだろうなあとこれまた勝手な想像が続くわけである。そんなもんケース・バイ・ケースだと言われてしまえば、まさにそのとおりだろうけれども、新聞記者よりも雑誌記者の方がその術には長けているようにも見える。それとも新聞記者の場合は、最初から記者であると名乗るよう指導されているのかな。
それはともかく、小生の場合請け負う内容が、取材から、原稿整理から(テープ起こし含む)、編集・DTPから校正とそこそこの幅がある。それだけ能力が高いのだと自分を慰めておく一方、その能力を買っていただいた方がおられたおかげでこの10年をなんとか生き延びることもできた。しかしこの先、器用貧乏に満足するのではなく、本業における企画力を発揮したいと考慮中なのだ。器用貧乏のフル活用で会社のランニングコストをそこそこ叩きだし、企画力でマージンをあげるという形にすれば、弊社もしばらくは生きていられることだろう。
ところがそこに、困った問題が生じてしまった。「救援」の編集担当であるSさんの体調がすぐれないのだ。Sさんには死んじゃう前に半生記を書き上げてもらわないと困るのだけれども、それはさておき、今後の「救援」の制作において支障をきたしかねない。「Sさんが機能不全じゃ困っちゃいますねぇ」と、今号の制作中にQCのKさんと電話で話したものの、早急に新体制に移行していかないと小生の担当する制作作業にしわ寄せがきてしまう。
Sさんも早く元気なからだにもどりたいのだろうけれど、抱えている病魔が厄介だ。その病気に対する新薬の開発も盛んであるらしいが、決定打となるようなものはいまだ出ていないし、個々人の個体性との相性もあるらしい。医学的なことを小生はくわしくないが、Sさんにしてみたらもどかしいことだろう。そこを理解したつもりのうえで、さて「救援」の制作体制をどうしたらいいものだろうか、QCのほかの人にがんばってもらうしかないな、というのが小生の見立てだ。今月下旬に予定しているQCの編集会議で、その点を強調するしかないのかな。
それはともかく、請け負いの仕事ばかりをしていてもしょうがない。内田樹氏がなにかの本で述べていたが、日本語の労働を英語に訳すとふたつの言葉が生じ、ひとつはWorkでもうひとつはLabor、げな。そこでLaborとは手間賃仕事のこと、Workとは資本を投下し利潤をあげる仕事のこと、となるらしい。英単語の細かいニュアンスなんて小生にはわからないものの、前述のごとく、この先はWorkに力を入れていく必要がある。Sさんの本も出したいし、世に問いたい企画は別にもある。そこで思い出した。嗚呼、旧友のN氏の原稿も塩漬けにしたまま1年が経とうとしている。Nくん、ごめん。金欠ウツでほとんど進んでおりませんでした。
あれ~ぇ、いつのまにか企画だけは抱えている。ところがLaborには納期というものがあり、そのゆえにどうしてもLaborが優先されてしまいWorkが進んでいないのが現状だ。しかし、その言い訳に小生がいつまでも乗っかっていたら、会社が成り立つわけがない。金欠ウツなんて言ってられない状況なのだ。

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