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風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

『天皇暗殺』

2019年03月19日 | 出版
年末からの金欠鬱がズーッと続いている。困ったなあと思うたび、ため息しか出てこない。なにせ打開策がまったく浮かばないのだ。おかげで駄文など記す意欲も湧かず、労働意欲はさらに湧かず、アニメに現実逃避してばかりだ。ほんま、どげんしよ~。この資金繰りの行き詰まりからは、まったく展望が見えてこない。
そこでヤケクソとなり、T新聞に三八(さんやつ:一面下の3行分を8分割したスペース)広告を久しぶりに打ってみることにした。打つのはもちろん『反日革命宣言』である。まずは適当にコピーを書き、N広告社のH氏にメールしておく。以前は出稿用の原稿用紙に手書きで指定していたものだが、最近ではN広告社に組みまでお願いしている。新聞広告の場合、いろいろと制約があり(使用フォントやら、Q数やら)、こちらで組むのはかなりめんどうくさい。
送信すると、H氏からすぐに折り返しの電話がかかってきた。「メールありがとうございます。この著者名の東アジア反日武装戦線KF部隊(準)ってなんですか?」H氏には一応の事情説明をするものの、「例えば鈴木さんとか田中さんのような個人名にはならないんですか?」しかし、もともとがそうなのだから、復刊した小生にはどうしようもない。そこを勝手に変えたら、書誌情報としておかしくなってしまう。
したがって「ヘンだとは思うでしょうけれど、そういう本なんだから変えられないんです」ウーンと、電話の向こうでうなっているのがわかる。しばし悩んだH氏、「それじゃあ、一度、新聞社の方に前閲出しときましょうか。それで向こうの反応を見て対応を考えるということで」「それはいいですけど、めんどくさけりゃ、著者名はずすのはダメですか?」ウーンとまたしばし沈黙。「それもまずいでしょう」「実は最近ある出版社が広告を打ったんだけど、著者名を出し忘れちゃっていたんですよ。そのあと著者とはモメちゃったんだけど、新聞社とはモメていないですよ」「でもぅ、T新聞の場合審査するのはC新聞だから結構保守的なんです」「ああそうですか。まあいいです。とりあえず前閲出しておいてください」
そうしたら翌日、「東アジア反日武装戦線KF部隊(準)」であっさりOKとなった。なんだか心配して損した気分である。組んだもののファクスも送られてきた。そこで、コピーを推敲しなければならない。「ネット上で反日という言葉が氾濫している現在、本来、その語にこめられていた意義を復活させる。70年代、日本の都市ゲリラはなにを求めていたか。」がオリジナルではあるんだけど、読み直してみたら、なんのこっちゃという感じがする。しかしその一方で、『反日革命宣言』という書名自体がそれなりにインパクトのあるものなのだから、ウダウダ説明する必要もないだろうという気もする。要するに、書名だけ目立てばそれでいいのだという作戦である。
しかし、少し考えてから「ネット上で反日なる言葉が氾濫している現在、その語に本来こめられていた意義を復活させる。70年代の都市ゲリラの思想は、いまになにを伝えるか。」に修正してもらうよう朱を入れて、N広告社にファクスを送っておいた。ほどなくして修正版は届いたのだけれど、少し間を空けて見直すことにしようと、その日はアニメに明け暮れることとなる。
翌日、修正版を眺めつつ、「都市ゲリラ」なんていっても、いまどきだれにも通じないよなあと思い始める。そこで、「70年代に天皇暗殺を企図した都市ゲリラ」と補筆することにし、全体の文字のバランスを微調整する指示も記してN広告社に返信しておく。すると、速攻でH氏から電話がかかってきた。「腹巻さん、いやあ、天皇暗殺は言葉がきつすぎますよ」「ああそうですか。しかし、都市ゲリラなんていったって、なんのことかわからないでしょ」とは答えるものの、小生も新聞広告に使う語としては激しすぎるのはわかりきっている。また、H氏を困らせるために広告を打つわけでもないので、「天皇暗殺云々」は引っ込めることにした。
要は、それほどケンカするつもりはないということなのだけれど、しかし、過去には難波大助のことを記した『天皇暗殺』なる本が刊行されたこともある。仮に、その『天皇暗殺』を三八に打ちたいと出版社が希望したら、新聞社の対応はどうなるのだろうか。そうか、その『天皇暗殺』を弊社で復刊して、広告を打ってみたらいいのだ。
後日、見本紙を持ってH氏が来社される。そこで、小生の悪企みの相談にのってもらう。T新聞と同じ広告を、本年5月1日にA新聞に打てないかというのが、小生の依頼である。H氏、すぐに小生の害意に気がついたようだ。「5月のスケジュールまではまだうちに来てないんですけど、その日は大手の代理店が一面下を全部買い切っていると思うんですね」フーン、つまんねえの。「もしもその日、御社でA新聞の三八を扱えるなら、いまの話ぜひお願いしますよ」と、無理かもなあとは思いながらも頼んでおく。しかし考えてもみよう。新天皇即位という当日、A新聞一面下に『反日革命宣言』の広告である。こんなに愉快な話が実現できたら、それこそ出版社冥利に尽きるというものだ(しかしダメそうだなあ)。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ヒロヒト(顔面神経痛))
2019-04-11 17:05:39
それより荒木太郎『ハレンチ君主 いんびな休日』のシナリオを刊行したら面白いですよ。もっとも、それをやったら荒木と同じように腹巻さんも社会的に消されて風塵社は風と塵に消えることになるでしょうが。
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コメントありがとうございます (腹巻オヤジ)
2019-04-12 09:38:39
そうですか。
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