風塵社的業務日誌

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ブタ箱物語(13)

2017年02月07日 | ブタ箱物語
そこから就寝までのことはよく覚えていないのであるが、食事後に歯みがき、洗面タイムがあったのかな。そして就寝準備が始まり、各房ごとに収容者が廊下に出され、布団部屋から各自の番号の札が付いている布団を房内に運んで並べることになる。そして、入り口に対して90度直角にした向きに布団を四つ並べて、就寝準備は終わり。各房の準備が終わると、点呼が始まる。小生の番となった。「6番」と言われて、「うるせえぞ、バカ野郎!」と怒鳴ってもかまわないのだけれど、同囚に迷惑をかけるのは気が引けるので、素直に「はい」と答えておく。小生は社会協調性がきわめて高い人間なのだ。
しかしながら、ミシェル・フーコーは『監獄の誕生』(新潮社)の最後をこう締めた。「こうした人々のなかに戦いのとどろきを聞かなければならない」。「こうした人々」とは、なにかの犯罪をして逮捕されて監禁されているクズ野郎どものことを指す。そのフーコーの言に従えば、協調性の高いお利口ちゃんな態度は、革命家のものではないということとなる。確かにそうではあるだろうが、小生は革命家ではなく、ただのルンペン・ブルジョワジーという相対的過剰人口にすぎない。同囚のみなさんとはうまくやっておくにしくはないのである。
そして就寝時間となった。メガネをかけていた者は、全員メガネ没収となる。そして布団にくるまって寝ることとなる。21:00くらいだったかな。署内の冷房はガンガン効いているので、夏場だというのに綿布団をかぶって眠るのだ。しかも、スウェットの上下に靴下履きのままである。寝る時、その靴下をどうしたのかは覚えていないが、小生は靴下をはいていると眠れない。おそらくは、適当に脱ぎ散らかしたのではなかろうか。
前夜にほとんど寝ていなかったこともあり、就寝となって房内の照明が落とされると(廊下は少しついている)、ダクトの騒音を聞いているうちにすぐ寝入っちゃった。ところが夜半に悪夢にうなされ、小生がなにか大きな寝言を言ったようだ。ここは寝ぼけていて正確な記述ではないけれど、廊下で見張りに座っていた警官が「どうした!」と房に近寄ってきた。すると、隣りに寝ていたCさんが「ああ、寝言、寝言」とおっしゃられて一件落着。小生としても無意識下にフラストレーションがたまっており、それが寝ているときに発現したのだろう。Cさんのおかげで、朝まで熟睡することができた。
一方、妻は大変であったらしい。これはあとで聞かされた話になるのだけれど、仕事が終わったあと弊社まで来てみた。しかし、鍵はかかっているし、電気も消えている。しょうがないから、近くのF社に行って相談してみた。そこで、弊社の大家さんに掛け合って会社を開けてみることにした。しかし、小生がどこに行方不明となったのか、杳として知れない。小生がなんかの事故にでも巻き込まれたのか、それとも資金繰りに行き詰まって富士の樹海にでも出かけたのか、もしくはどこかの女と逃げ出したのかと心配が始まる。しょうがないから、本郷の警察署には捜索願を出しておいたらしい。そして妻が帰宅すると、そこでSさんからの留守番電話を聞いて、ようやくことの次第を理解したわけである。当然ながら怒り心頭、怒髪天を衝く。ところが怒ってみたところで、どうしようもない。こちらはM署でスヤスヤとお眠りの最中だ。だが、F社のみなさんにまでご迷惑をかけたことは申し訳ない話である。
翌朝、Sさんの用意した身元保証書(のようなもの、正式名称は別かもしれない)に署名捺印すべく永田町に向かい、そこでSさんと落ち合うことができたそうだ。Sさんはその足ですぐ検察庁に向かい、その用紙を提出し、小生には逃亡のおそれはありませんよと書類で示すことになる。こちらはそうした外の動きを知ることもないから、留置所で目覚めのいい朝を迎えていたのである。
6:00起床だったのだろうか。館内アナウンスかなにかがあって目が覚めたのだろうけれど、それは覚えていない。しかし、そこから先は一度小生も体験しているので、わりと慣れたものである。まずは全員が布団のうえに起き上がって、朝の点呼が始まる。点呼にもすっかり慣れちゃった。それからメガネを返してもらったのかな。
その日の朝飯がなんだったかは、もう忘れてしまった。布団を片付け、洗面歯みがきが終わると、検察庁と裁判所に行く者だけ番号が呼ばれ房から出される。6番も呼ばれたので、房の外に出ると、廊下に並ばされた。Cさんも呼ばれている。うろ覚えだが、総勢で3、4人だったように記憶している。
並んでから、全員に手錠がはめられる。その手錠と履いているサンダルには「M署6番」と入っている。そして、体を廊下の壁に沿って立ったまま、両手を左側(空いている方)に出すよう指示される。手錠の中央が丸い輪っかとなっており、そこに頑丈そうなロープが通された。つまり、先頭に立っている人から順に同じロープが通されて、これぞ文字通り数珠繋ぎというわけだ。そして、ロープの両端を誘導の警官2名が腰に巻きつけた(んだったかな)。

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