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風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

ブタ箱物語(28)

2017年02月25日 | ブタ箱物語
M駅でSさんと落ち合い、署に向かってプラプラ歩いていく。そこでじゃっかんのレクチャーを受けたが、任意の出頭だからといって取り調べに弁護士が立ち会える署とそうでない署があるそうだ。立ち会えない可能性の方が高いから、「そのときは担当の刑事にあいさつだけして僕はお先に帰ります」ということである。やることもないのに、忙しい人を拘束することはできない。
警察の建物に到着したのでその中に入る。制服の警察官が慌しく出入りしているものの、なんだかなあ、前に来たときとはずいぶんと雰囲気がちがうぞ。入り口の右側に部屋があるので、そこをのぞいたSさんが「受付はどこですか?」とたずねたら、なんとそこはM署ではないそうだ。警視庁の合同庁舎であって、M署は隣りげな。これにはSさんと顔を見合わせて大笑いしてしまった。「なんだよ、紛らわしいなあ」と思わざるをえない。こうして、ようやくにして懐かしのM署にたどり着いた。
1階の受付で、Sさんが知能犯係を呼び出してもらうと、2階からすぐにK刑事が降りてきた。Sさんの姿を見て、少し警戒している様子である。「こんにちは」と小生が頭を下げると、すぐに「取り調べに関しては弁護士さんの立ち会いはできないんですよ」と先制攻撃をかけてきた。「それはいいんだけど、取り調べの前に少しSさんから説明があるんだけど。どこかの部屋で話ができませんか?」と小生が述べると、「それはできないんですよ。取り調べが入っちゃっていて」。ウソつけと思いつつも「そこの待合室でもダメ?」とたずねたら、「それもできないんですよ」という返事。「それじゃあ、ここで立ち話的でいいんですけど」と、Sさんがまとめてきた報告書を取り出すと、「それはお預かりします。その前にちょっと待っていただけますか」とK刑事は2階に上がり、上司を呼びにいった。その上司の刑事さんはいささか珍しいお名前なんだったのに失念しちゃったから、以後A刑事とする。
片隅に移って、SさんがA刑事に、報告書を示しながらこの間の謝罪などの動きについて説明を始めた。「ああ、そうですか」と一通りの説明をA刑事が受けたところで、Sさんが「僕も次のところに行かないといけないので、取り調べにどのくらい時間がかかりますか?」とたずねられた。「1時間くらいですかね」とA刑事が答え、「じゃあ、待っていられたら待っていますし、そうでなければ次のところに行きます」と小生に告げた。
「じゃあ、これで」ということで、小生だけ2階のかって知ったる取調室に向かわされた。そして小部屋に入るなり、A刑事が「失礼なんですけど、所持品だけ検査したいんです」と言い始めた。それには「いやです」と断る。
「いやですと言われても、それじゃあ、うちの方でも困るので」
「どうしてですか? 任意の出頭でしょ。断ります」
「じゃ、じゃあ、ヘンなものは持っていませんか?」
「持っていません」と言いながら、持参していたトートバッグの中味を机のうえに広げてあげた。
「なにをするんですか?」
「あなたが疑うから、なかにあるものを外に出して見せてるだけでしょ」
「それはなんですか?」とクリアファイルにはさんだ書類について質問する。
「これはさっきSさんがあなたに渡した書類のコピーですよ」
と説明し、荷物をバッグにしまいながら着席する。こうして、ようやくA刑事の取り調べが始まった。
A刑事(以下Aとする):この前あなたが酔っ払っていて捕まったとき、そのときの担当者の取り調べに「言いたくありません。黙秘します」ということで、全然調べになっていないということで、再度同じ話を聞きたいということです。
腹巻:同じ話を聞きたいということは、私が酔っていたからですか?
A:酔っていたということじゃなくて、質問にまったく答えなかったら同じ話を聞くということです。
腹巻:基本的にはきょうも黙秘するつもりなんですが。
〈ここでA刑事がパソコンに向かって供述書を打ち始めたので〉
腹巻:あっ、もう始まっているんですか?
A:うん。
腹巻:じゃあ、その前に確教えてほしいんですが、酔っ払っていて覚えていないんですけど、逮捕されたんですか?
A:うん。
腹巻:いつ?
A:6月某日23時某分。交番の覚えはありますか?
腹巻:交番のなかにいるところはうっすら覚えているんだけど。
A:交番の前の通り、場所はわかりますか? ポスター貼ってあったところ。
腹巻:いやあ、逮捕されてから、そのへんは鬼門だと思って近寄ってないの。
A:あなたがね交番の向かいを歩いていたときに、交番にいた警察官があなたの動きを見てヤバイ、ヤバイと思ったら、あなたがポスターを破ったのね。それで慌ててあなたを追いかけていって、逮捕されたの。そうしたら、あなたがトイレに行きたいと言うから、トイレに案内したのかな。
腹巻:トイレからはちょっと記憶があるんですけど、途中から覚えてないですねえ。
A:ああ、それで。
〈A刑事は再びパソコンに向かう〉
腹巻:ああ、ちょっとちょっとその前に、2、3確認しておきたいんだけど、なので、逮捕されたという認識が自分のなかにいまだにないと。それで、ポスターを破ったというときに、現行犯で逮捕されたんだという理解でよろしいですか?
A:うん。
〈そうすると、M署内で留置所エリアのトイレを使用させられたのは、彼らにしてみれば正当な処置ということになるのかな〉

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