風塵社的業務日誌

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ブタ箱物語(14)

2017年02月08日 | ブタ箱物語
逃亡防止の厳重な支度が終わると、ようやく留置所エリアのドアが開けられた。すると、ドアの向こうにいた警官が大声でなにか叫んでいる。なにを言っているのか意味不明であるのと、朝っぱら大声を聞かされるのは不愉快だ。「これから連行する連中が署内を通るから、みなさん逃走に注意しましょう」旨の合図なんだろうけれど、あまりの大仰さにバカっぽく感じたものである。数珠繋ぎの一行は、2階の廊下をぬけて階段を下りていく。各所にM署の署員が立っていて、厳しい目で監視している。前にも述べたが、こういうときの警察官の目つきというのは本当に陰険な印象を与える。
階段から署の裏口に出されたんだっけな。そこには護送用のバスがお待ちかね。バスのなかにはすでに10名近い先客が乗っていた。みなさんブスったれた表情をし、その被疑者全員に一本のロープが通されている。我々に通されていたロープは一度はずされ、バスのステップを上がるときに、バスの乗客用のロープが再度通されていく。痛くならないよう、それなりに遊びをもって通してから、シートに座らされた。小生らは後方の座席である。乗った順に前の座席から埋めていくわけだ。全員の準備が終わったところで、バスは発進した。
護送バスが署内に入る時やドアを開ける時、そして準備が終わった時など、いちいちに警官が大声を出して確認するのである。最初は面白がって見ていたけど、すぐに飽きちゃってうるさく感じるようになる。一方では、こんな日常を送っている警察官ってのは本当に大変なんだなあと同情の気持ちもわく。しかしその反面、ロボットのようにも見えてくるので、警察官の犯罪率が高いのは、彼らの人間性を失われせるこの職場環境にあるのかもしれないとも考える。
うろ覚えでアバウトな数字だけど、全国の警察官の数が30万弱。そしてある年の警察官の犯罪件数が120件くらい。つまり、3日に1回はどこかで警官がパクられているわけだ。この件数はこれから増加の一途をたどることだろう。
さて、我々を乗せた護送バスは、T署の次はO署へ。それぞれでまた数人を乗せてから、首都高へと入る。乗客はだれも話そうともしないけれど、おそらくは話せば同乗の警察官の制止にあうことだろう。そしてそもそもが、険しい顔つきをしている隣りの見知らぬ乗客に、「あなた、なにやってパクられたんですか?」などと聞ける勇気もない。ポケーと、東京の土曜の朝の光景を眺め入ることとなる。
そこで、検察庁って、警視庁の隣りにある建物だとこれまで思い込んでいた。したがって、バスは警視庁の隣りに向かうものだとばかり予想していた。ところが外を見ていたら、法務省の裏口からなかに入っていくではないか。そこで初めて、検察庁が法務省のなかにあることを知ったわけである。世のなかは知らないことばかりだ。しかし、検察庁が法務省内にあったら、三権分立の原則が成り立たなくなるのではないかとも考える。日本国憲法でどういう規定となっているのかは知らないが、検察庁が法務省の管轄内となれば、まずは権力犯罪に対する摘発が弱くなるし、また、小沢一郎事件のように検察の政治介入も生じるのではないのか、というのが素人考えだ。
それはともかく、バスはその地下1階へとすべりこんでいく。大きな駐車場のような場所があり、十数名全員がそこで降ろされた。法務省の建物内に入るのは、実はこれで二度目である。一度目は大した用事ではないんだけど、あのレンガ造りの建物には、前を通るたびに興味をかきたてさせられていた。そして実際にそのなかに入ってみたら、本当の役所はその奥にそびえ立っている近代的なビルなんだとわかり、そりゃそうだよなあとおのれの認識の誤りを実感したものであった。
今回はさらにその地下である。しかも、普通の人にはなかなか入ることもできない場所であることだろう。これは興味津々となったのだけれど、結論を先取りしてしまえば、当たり前だが、どこも灰色のコンクリートとリノリウムの床に囲まれた施設内しか移動できるわけがなく、見学対象として面白いわけがない。どこに通されても、すべて一緒に見えてしまうのである。しかし、法務省の地下があんなに広いとは思ってもみなかった(その広さを数値化できるわけがない)。さすがは霞ヶ関ということだ。
駐車場のようなところで降ろされた我々一行は、数珠繋ぎのまま白線に沿って並ぶよう、警官に指示される。そしてそのまま大きなエレベーターの前まで誘導された。入り口が開くと、箱の壁に沿って並ぶよう言われる。要するに、中心に空間ができるように並べというわけだ。そこにどういう意味があるのかはわからない。
地下二階に着いて、エレベーターから出される。そして、長い廊下をまっすぐ進んでいく。そして、あるドアからなかに入らされた。護送バスに乗り込んだ順での数珠繋ぎがまだ続いているので、小生は列の後ろの方である。そこはなんとも不思議な空間であった。

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