風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

横浜へ

2016年03月02日 | 出版
とある日曜日の朝、遅い朝食を夫婦で食べていると、妻が突然「きょうはどこかに出かけたい」とのたまい始めた。「どこかってどこ?」「ウーン、ちょっと遠くて、でも日帰りで行けるところ」「自然系?都会系?」「あんまり歩くのはやだ」「じゃあ、横浜でも行くか?」「それいいねえ。横浜に行こう」と、話は決まったけれど、小生の内心としては「ゆっくり囲碁ぐらい観させろよ、このボケかすが!」というところだ。NHK杯も決勝が近づいてきて、目の離せない好カードが目白押しである。たまには一日家でゴロゴロしながら、ポケ~ッとテレビでも見ていたいという気分であったのだ。
しかし、そんなことを口にしたら妻の逆鱗に触れるので、しょうもないことで家庭内不和を引き起こすのはやめておく。そそくさと着替えて、横浜に向かうことにした。横浜に行くのも久しぶりだなあ。いつ以来行ってないのだろうか。ずいぶんと変わっていることだろう。その日に立ち寄る予定はないけれど、横浜駅のジョイナスも建て替わったと聞くし、どうなったのか見てみたいものだ。
その昔、小生がF社に勤めていたとき、小生は横浜の営業担当であった。そのため、昔のジョイナスに入っていたE書店やY書店各店には足繁く通っていたわけである。そこで仲良くなったY書店のかたとは、野毛の呑み屋でよく飲むことになった。しかも、接待なんて気分はこちらにもなかったから、割り勘である。商売抜きにして楽しかったなあ。先方も同じ感覚を共有してくれていたらうれしいものである。イギー先生に雰囲気の似たオヤジが、「こんなマグロ、東京じゃ食えないぞ」とマグロのブツを出すんだけど、「エー、これなら東京のスーパーでも普通に売ってるぞ」と思ったものだった。
こちらは現F社社長と連れ立って横浜に行き、関内あたりで書店さんと落ち合って呑み屋に向かっていた。あるとき盛り上がりすぎて我々の帰りの電車がなくなってしまった。どうしようかなあと酔っ払いながらも案じていたら、Yさんという女性の書店員さん(しかも美人で有名)のお宅に我々二人は転がり込ませてもらうことになったのである。Yさんは友人の女性とマンションをルームシェアしていたんだったけな。お宅に着いたら、感謝感激する間もなく、泥酔していた我々は爆酔してしまったのだ。その後しばらくしてYさんはY書店を辞めちゃうんだけど、元気にしているのかな。(久しぶりにこの話を思い出したので、このことは改めて記すかもしれない。)
それ以降、こちらも激動、激変、波瀾、転落、騒動と相次ぎ、横浜に行くこともあまりなくなってしまった。これもその当時の話になってしまうけれど、横浜駅の東口に出て、そごうには入らず郵便局のところを右折しそのまま直進すると、橋の手前に味わい深い定食屋があった。トタン屋根でコンクリートの土間にテーブルがいくつか並んでいる、いかにも昔ながらという風情のお店で、奥をのぞくといかにも頑固そうなオヤジさんが働いていたんだっけなあ(それとも、おかみさんだったっけなあ、忘れた)。確か、焼魚定食が500円くらいで、サンマを食べたらおいしかったという曖昧かつ美化された記憶がある。いまから十数年前、久しぶりに横浜に行ったことがあり、お昼時でもあったので、せっかくだからとそのお店に足を運んでみたらもう閉まっていた。なんとも残念なことよと感慨にふけったものである。
それに似た話を思い出した。以前は関西で駸々堂チェーンが元気で、各地に店舗展開をされていた(残念なことに過去完了形である)。その京都の駸々堂京宝店は京都宝塚会館の1階に、かなりのスペースでお店を構えられていた。弊社としても、かつてそこで宮内洋さんのサイン会を開催していただいたものであった。何百人くらい集まったんだっか忘れちゃったけれど、とにかく盛況であったことはよく覚えている。なにせ宮内さんのアテンド担当が小生であったのだ。
しかし話の方向はそこにはなく、河原町の駅からその京宝店に歩いて向かう途中、寺町通り(だったかな?)から右にそれたところに小さな広場があり、その角っ子(これまたいい加減な記憶)にこれまた小さな小さな定食屋さんがあった。カウンター席しかなく、定員10人弱というところだろうか。当時、関西にはまださほど馴染んでもなくウブであった小生は、恐る恐るその小さなお店の引き戸をガラガラと開けたもわけである。そして、壁に貼ってあるメニューの中から、食べられそうで安そうなものを注文することになった。
焼魚系を注文したに決まっているが、なにを頼んだかなんて覚えているわけがない。覚えているのは、小生が食べている途中、いかにもこの近くでブティックかなにかをやっていますよという感じの粋なニイチャンが入ってきて、おいしそうに定食を食べていた姿である。店主のオヤジさんとは顔馴染みなんだろうけれど、かといって馴れ合うような感じでもない。そして小生には、定食がおいしくて満足したという印象があり、京都に行くたびにそのお店に通うのが楽しみになった。しかし、駸々堂さんもなくなって久しいし、その定食屋さんも畳んでいることだろう。淋しい心持である。

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