風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

壱岐坂へ(1)

2019年07月09日 | 出版
ある土曜日、妻が帰ってくる予定となっていた。憂鬱な気分で6:00前には起き出してしまう。一服を兼ねて散歩に出た。近くの公園に向かうと、まだ低く痩せてはいるが向日葵が花を咲かせている。まだ紫陽花の季節というのに、ずいぶんと気の早い向日葵だ。公園内では犬の散歩をしているオバハンやら、体操をしているジイサマやらと、それぞれに思い思いのことをしている。その間を抜けていったら、野球のバッティングの練習をしている親子連れがいた。子どもの方は小3くらいだろうか。トーチャンの投げるものを子どもが一生懸命に打ち返しているものの、勢いよくはじき返せないでいる。ヘタな子やなあと思ってしまう。
ところが、トーチャンの投げ方が野球のボールの投げ方とはちがう。まず右手を鼻の先辺りで一度止め、それから腕をまっすぐに持ち上げては前に押し出すようにリリースする投げ方なのだ。この親子はなにをやっているんだろうと眺めていたら、トーチャンの投げているのはバドミントンのシャトルであった。ヘー、最近はこんな練習法が流行りなんだと感心した。それならば、バットの芯に当たっても遠くに飛ぶわけがない。そもそも、シャトルならばだれかに当たってもたいした危険もないことだろう。しかも、ゆれながら向かってくるシャトルを的確にミートしなければならないので、打ち返すのもなかなか大変だと思う。朝から熱心な父子鷹だなあと感心した。その子が成長してから、誠也の後釜としてカープの主軸となることを祈っておきたい。
コンビニに寄り、コーヒーを買ってから帰宅し、まずは朝飯を作ることにする。朝食が終われば、ゴミ出し、掃除、洗濯と終わらせておかないと、帰ってきた妻の怒声が茅屋内に轟きわたることになるだろう。天気予報によると、夕方から雨が強くなるかもとのことだ。洗い終えたものを近くのコインランドリーに持っていき、乾燥機にかけることにする。梅雨時である。乾燥機の取り合いになることは目に見えているから、早々に出かけた。
乾燥が終わった洗濯物を持ち帰って片付け、風呂やトイレの掃除が終わり、ようやく朝刊をポケーッと読んでいたら、もうお昼近い。そうめんを3束湯がいて昼飯とする。昼食の片付けも終えてから、さてどうしようかなと考えることになった。読み止しの本がバッグの中に入っているのでその続きでも読むか、それとも、映画にでも行くか。わずかな予算で妻のいない土曜の午後をどのように満喫したものかいなと思案するものの、名案はなかなか出てこない。我が家にはパソコンがないので、ネットで囲碁を打ったり、エロサイトに没頭したりができないということである。ネットが使えないとなると、本を読むか、酒を飲むかしかオツムに浮かんでこないのだ。意外に不器用な人間なのかもしれない。
そうはいっても、家のなかでゴロゴロしていても気が滅入ってくるので、散歩がてら会社まで歩いて向かうことにした。出勤しなければならない緊急性はないのだけれど、会社にいればなんやかんやと雑用はある。そのうえ、歩き疲れたら、ドトールにでも入って本を読みつつ疲れをいやそうという作戦である。
そこで立教通りを抜けて池袋の芸術劇場の前に通りかかると、Tシャツにジーパン姿でボサボサした髪をしている怪しげな風采の中年オヤジが、ボケーッと地面の鳩の動きを追っている。アレ~、こいつはもしかしてと近寄っていったら、やはり、関西在住のN氏であった。怪しげな風采どころか、変質者扱いされそうな放心っぷりである。小生がずいぶんと近づいたところで、N氏も小生のことに気がつき「あっあ~、腹巻さん」なんて間抜けな声をあげた。
そこで小生がN氏の肩をパタッとたたいて、「ボーッと生きてんじゃねえよ。こんなとこでなにやってんの?」とたずねたら、「いやあ、これから人と会う約束があって、待っているところ」「そのあと、すぐ帰っちゃうの?」「そうなんだよ。ここのところ、ずっと日帰りで東京に出張している」「それじゃあ、ちょっとお茶でもとはいかないねえ」「そうだねえ。腹巻さんこそどうしたの?」「どうしたって、会社に行くところだよ。きょうの夜かみさんが帰ってくるから、会社から東京駅まで迎えにいかないといけないし」
ということで、N氏とはそそくさと別れることになった。久しぶりに会ったけれど、いささか太ってきたようなというか、むくんできている感じがした。以前会ったとき、細君が必ず晩御飯の仕度をしてくれるものだから、外で酒を飲んできても帰ったら必ずそれを食べなきゃいけないとこぼしていた。できたかみさんをもつというのも一長一短があるというのか、贅沢な悩みを抱えることになるものだ。ボケーッとしていたのは、さほど心配することもないだろう。N氏の場合、悩みといっても人間関係に端を発するものがメインである。それか、単純に疲れているだけだ。小生のように金欠病なる死に至る病を抱えているわけではないのだから、俸給取りは気楽でいいよなあ。それにしても、旧友との奇遇には小生もいささか驚いた。

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