四国の
ターミナル駅とは思えぬ
鄙びた町で
旅慣れた彼は
タブレットを開き
今夜の食事処を探す
この町は二度目だ
二度とも日曜で
飲食店の休みが多い
前回の店はまあまあだったが
敢えてその店を外す
最近はネット上の情報だけで
その店のランクが
大まか分かるようになっている
割烹”田中”
屋号は文句ないが
料理はどうだろう
電話してみると
まだ注文できるという
時間も時間だし
多少の不安はあったが
予約した
カウンターが十席ほど
板の間の座席で十席ほど
共に80才前後の
板さんとおかみさんだけの
居酒屋風
先客への注文の取り方が
「えっ! えっ!」
何度も聞き返したあげく
銘柄が違う日本酒が出てきた
やっぱり=
不安が的中
一品料理は止めて
煮魚定職にした
「鯛のかぶと煮とオコゼがあります」
「オコゼでお願いします」
板さんとおかみさんが同時に
「ちょっと時間がかかります」
色艶のいい小ぶりの猫が
店内を横切って
すばやく 裏の窓から出て行った
自分が嫌われるなんて
きっと人生で一度も思ったことがないような
おかみさんが にこにこしながら
「これに時間がかかったんですよ」
指さされた大きな器の蓋を開けると
大きな鯛の頭(のみ)があった
客の注文は あい変わらず
聞き返しても間違えるおかみさん
黙って箸をつけたが
まずい!!
お新香も味噌汁もまずい!
白米だけは美味しかったので
ああ、定食にして良かった
志村けんの
あんだって?おばあさんを
思い出した
レトロな
旅の一夜の出来事でした
by 風呼
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