開演直前に 会場内は真っ暗になった。
観客は全員 俄か盲(めくら)に。
闇が煙のように眼球の奥まで 入り込んできた。
五尺一寸の白杖
親の因果が子に報い
ふた親の悪い所ばかり取って
生まれてきた
おまけに目まで見えていない
五才で座頭に預けられ
浄瑠璃語りを教えられ
習わなくても覚えた
女と盗み
しかし しかしして
当道座(とうどうざ 盲人の自治組織)にいるからは
検校にならねば意味がない
しかし しかしして
検校になるに必要は 719両
ひとり殺して 50両
ふたり殺して 30両
80両を懐に 塩釜から江戸へ出る
脅し ゆすりの 取り立て稼業
師 藪原検校(やぶはらけんぎょう)まで殺め
手にした二代目藪原検校の名
殺し五人目でとうとう足がつき
前代未聞の極刑は公開で
祭りのように 見せしめて
二代目藪原検校に 野村萬斎、 寝取った塩釜の座頭の妻に
秋山奈津子、 塙 保己市に 小日向文世、 検校の母に
熊谷真美、 他、 進行役の盲の 浅野和之、 津軽三味線
をなぞったギター奏者を含め 総勢11人で 20場を務めます。
悪の象徴の藪原検校に対して 塙保己一(役名は保己市)が
ストイックに描かれます。 最後の最後に 藪原検校に下す
刑罰三段切りは 田沼意次の乱れた時代を正す見せしめでした。
早物語という パロディ浄瑠璃を 野村萬斎が 鍛えられた
喉と身体で歌い踊ります。 演歌歌手の物真似も自在です。
救いのない物語を 滑稽に演じられました。
秋山奈津子さんの 程よい色っぽさ 熊谷真美さんの
そこにいるだけの存在感、 女優陣も達者です。
凄い舞台を見てしまいました。
1973年初演の 井上ひさし作。
フィクションと聞いて胸を撫で下ろした
風呼でした
気持ちわかります。 彼の作品は暗くないのに重い
造語がと思えば辞書にある・・・の連続ですから
2次元の本でさえドキドキしますから、3次元舞台で見た日には あせるでしようねぇ
でも 生で見れたなんてウラヤマシイです!
藪原検校は 井上ひさしさんが 直木賞をとられた
直後の 初期の戯曲だそうです。
こまつ座を主催されてからの物と比べると よりシリアスな気がします。
井上ひさしさんの戯曲番付で 堂堂の東の横綱です。
私は 観劇できて ラッキーでした。