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この時期のジョアン・ジルベルトが一体ブラジルのオデオン・レーベルに何曲くらい録音を残したのかは分かりませんが、ここに収録された38曲のほとんどがボサ・ノヴァ・スタンダードとして後生に残っているのは、ある意味驚きです。これまで何度も書いている通り、この後、ボサ・ノヴァはアメリカに渡って世界的なブームになる訳ですけど、そこで演奏される曲のほとんどがここで既に披露されているだけでなく、アレンジ・ネタもかなりのものがここにあるんですね。改めて聴いてみると、アメリカ人がやったことは単に洗練されたアレンジを施しただけ....という感すらするほどです。曲はどれも1分半から2分くらいの短く、アレンジもその後のものに比べれば簡素と言ってもいい素朴なアレンジですが、何の不足もないほど完成しています。ボサ・ノヴァって最初からこんなに「出来上がっていた音楽」だったんだなぁ....と思うことしきり。
その中心となるのは、もちろんジョアン・ジルベルトのちょいと鄙びていて、気怠い憂鬱さを滲ませつつも、決して軽みと微笑みを失わないヴォーカル。その感触はまさにワン・アンド・オンリーな世界というしかなく、加えて歌っているのがジョビンの名曲の数々なのですから、今から思えば永遠の名作となるべく作られたとしか思えない訳ですが、きっと当時はやっている方も聴いている方も、単に一過性の流行音楽と思っていたんじゃないですかね。ところがこうして音楽史に残るような作品になってしまうあたりに、音楽のおもしろさがありますよね。
あと、ここで聴ける音楽って、何年たっても古びないのと同時に、なんていうか1960年前後時代が見事に刻印されてます。高度成長期特有のオプティミズムとそれと裏腹な倦怠感みたいなものが、メビウスの帯のように表裏一体化しているというか、なんというか。とにかく、この音楽を聴くと決まって、フェリーニの「甘い生活」とかヌーベル・ヴァーグの諸作(特にシャブロルあたり)なんかを、思い出しちゃうんですよね。まっ、私だけかもしれないですけど....。
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