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藍又時(ラン・ヨウシー)/ 秘密

2010年02月18日 23時15分07秒 | 台湾のあれこれ
 先月に訪台した際に購入してきた唯一の台湾ポップスのアルバム。もう何度も書いているが、最近の台湾のポップ・シーンはひたすらエイベックス的なものに突き進んでいるようで、ショップに並んでいるものは、下品で刹那的なフェロモンをジャケ一杯にまき散らしたようなものが多く、をただけで画一的なダンサンブル・サウンドが聴こえてそうなばかりで(いや、聴いてみなければ分からないけれど)、あまり触手が動きそうなものを見かけなかった。で、それらとはちょっと違いそうな雰囲気をジャケットから漂わせていたのがこの作品という訳だ。ラン・ヨウシーはいわゆるシンガー・ソングライターらしいのだが、まずはTVドラマの主題曲を歌って大プレイク(本作のタイトル・チューンである「秘密」は、すでにダウンロード回数が50万を超えたらしい)、本作は満を持してのデビュー・アルバムということのようだ。

 さて、内容だが、本作の外ケースには「話題のシンガーソング・ライターのファースト・アルバム完成!。新世代への癒系ミュージック、彼女の深いヴィブレーションがあなたの心を震わす!」みたいななことが北京語で書いてある。私は北京語は全く分からないが、漢字の連なりからして多分そんな意味であろう。実際に聴こえてくるのもまさにそういう音楽である。賑々しいダンサンブル・サウンドはほぼ皆無で、歌はピアノかギターの弾き語りがベース、そこにけっこう隙間だらけのバンド系サウンドがのるという格好だ。また、時にアンビエント風なミステリアスな雰囲気になる部分が随所にあり、このあたりは彼女の個性なのかもしれない。彼女のボーカルは美しきハーフトーンというよりは、カレン・モクみたいな乾いたところに、フィッシュ・レオン風な親しみ易さをプラスしたみたいな個性で、ちと私の好みとはいえないが、こういう非歌い上げ+地声で歌っているみたいな、自然で何気ない佇まいが今的なのであろう。

 もっとも、曲の人懐っこさ、おおらかでウォームな佇まいといった伝統の台湾らしさは、彼女にもしっかり流れ込んでいて、例えば、大ヒットした「秘密」は、ピアノのバックに乗って、アンビエント風なシンセ、そして地声系のボーカルと今風な音で序盤は流れていきつつ、中盤から後半にかけてはパースペクティブの開けた雄大なバラードになるし、3曲目の「那天」や4曲目の「全世界分手」など、むしろ正統派の台湾バラードである。ギター・サウンド+アンビエントな2曲目「沈默劇」、脱色系ボサノバである8曲目「Singing」、典型的な癒し系ボーカルの10曲目の「詩篇91」のような今風な曲がある一方、彼女にはこうした台湾伝統のバラード系シンガーの今的展開という側面もあり、こうした正統派な側面がけっこう上手に組み合わさって、今回の大ヒットということになったのかもしれない。

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