透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「寂しさ」に惹かれて

2006-07-09 | A 読書日記

金子みすゞ「夕顔」は好きな詩。
**お空の星が  
  夕顔に、  
    さびしかないの、と  
  ききました。
  
    おちちのいろの  
  夕顔は、  
    さびしかないわ、と  
  いいました。
  
    お空の星は  
  それっきり、  
    すましてキラキラ  
  ひかります。
            

    さびしくなった  
  夕顔は、  
    だんだん下を  
  むきました。**

立原道造の「淺き春に寄せて」は好きな詩。
**今は 二月 たつたそれだけ  
    あたりには もう春がきこえてゐる  
    だけれども たつたそれだけ  
  
昔むかしの 約束はもうのこらない

  今は 二月 たつた一度だけ  
  夢のなかに ささやいて ひとはゐない  
  だけれども たつた一度だけ  
  その人は 私のために ほほゑんだ **
    (後略)
 
樋口一葉「たけくらべ」好きなラストシーン。
**或る霜の朝水仙の作り花を格子門の外よりさし入れ置きし者の
有けり、誰(た)れの仕業と知るよし無けれど、
美登利は何ゆゑと
なく懐かしき思ひにて(中略)聞くともなしに伝へ聞くその明けの
日は信如が何がしの学林に袖の色かへぬべき当日なりしとぞ。**

三人とも早世した、二十代半ばで。
けれどいつまでも親しまれる作品をのこした。
人生は長短ではないんだな、と思う。
私はここに挙げた作品に漂う「寂しさ」に惹かれる。

(注)**を引用範囲につけています。


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