tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業物価指数伸び率鈍化、物価は安定へ

2023年04月12日 16時05分40秒 | 経済
今日、日銀から3月の輸入物価指数、企業物価指数が発表になりました。
マスコミも、物価の沈静化を示唆していますが、消費者物価についてはまだ上昇もという見方も多いようです。

全体的にみれば、物価問題は、明らかに山を越えたと思われます。後は、政府の公共料金政策などで、消費者物価に多少の混乱はあるかと思いますが、次第に鎮静化に向かうのではないでしょうか。

下の図に見ますように、輸入物価はすでに昨年秋がピークで低下を続けています。企業物価も昨年末がピークでした。消費者物価もこの所がピークではないかと思われます。 

     主要3物価指数の推移(消費者物価の3月は東京都区部速報)
 
                  資料:日本銀行、総務省

何時も指摘していますように、消費者物価が4%を超える迄に上昇してきたのは、アベノミクスの中でじりじり値上がりする海外原材料価格や、最低賃金の大幅上昇によるコストアップを、商品値上げに転嫁できずにコスト圧力が鬱積していた反動での昨年からの一斉値上げの結果です。

この一斉値上げの波も、1次、2次、3次ぐらいあったようですが、そろそろ終わるでしょう。海外からの、エネルギー、小麦や大豆といった穀物、木材などの値上りがなくなれば、後は国内の賃金上昇が最大のコストアップが中心という事になります。

今春闘で3%台の賃上げがあっても1~2%の生産性向上で吸収される分もあり、アメリカやヨーロッパのような10%インフレといったことはあり得ません。日本は労使も家計も冷静で、インフレは嫌いなのです。

という事ですから、インフレが起きるとすれば、エネルギーも、穀物・飼料も、木材も、その他殆どの原材料を輸入に頼る日本ですから、インフレの原因は、まず輸入物価です。

輸入物価が上昇した時に、これは大変だ(チャンスだ)と言って便乗値上げをしたり、生活が立ち行かないと無闇に賃上げをしたりすると、アメリカやヨーロッパのようにインフレが激化します。

輸入原材料は、国際情勢などで値段が動きますが、値上がりしても国内ではどうする事もできません。その分価格転嫁をしてみんなで負担するしかないのです。

慌てなければ落ち着くところに落ち着くという事は、下のグラフを見ればわかります。

      主要3物価の対前年上昇率の推移

                   資料:上に同じ

あんなに上がった輸入物価、それに従って上昇した企業物価ですが、この所、急激に収斂しています。青い線の輸入物価はマイナスに下がる可能性も出て来るでしょう。企業物価はそれを追うでしょう。

日本がこうして、海外物価の変動に対して落ち着いているのは、第一次石油危機の時に、大慌てして、トイレットペーパー・洗剤パニックが起き、30%を超える賃上げをして20%を超えるインフレになり大きな社会的混乱を起こしたことから学んだからです。

アメリカやヨーロッパはその時の失敗を、また繰り返しているのです。学習能力の差でしょうか、それとも忘れっぽい人達・・・?

消費者態度指数も改善基調のようです

2023年04月11日 16時23分14秒 | 経済
昨日、内閣府から「消費動向調査」が発表になりました。
これは毎月調査で、2人以上世帯を中心に暮らし向きに関わる4つの要因、暮らし向き、収入、雇用、耐久消費財、それに物価の見通しについてのアンケート調査しているもので、調査の規模は小さい簡易な調査ですが、速報性もあるので、参考指標として見ておくと役に立つといったものです。

特に、この所のような、何か消費者の態度(ムード)に変化がありそうな感じの時期には、どんな変化があるかと見てみたくなる所です。

そんな感じを持ちながら発表された調査の一番基本的な、2人以上世帯「消費態度指数」のこの所の推移をグラフにしました。

     最近の消費者態度指数の推移

               資料:内閣府「消費動向調査」

このブログで毎月追いかけている基幹統計の「家計調査」で、2人以上勤労者世帯の平均消費性向が上昇を続けている点から、この所の消費者の態度にも明るさが増しているのではないかと見ていましたが、そのあたりの傾向はどちらの統計でも共通点がられるという事のようです。

消費者態度指数は、昨年11月までは下がっていて12月から上がっていますが、これは12月のボーナスがまあまあの水準だったからでしょうか、それに加えて雇用改善の影響も大きいようで、雇用改善の影響は3月の上昇にも大きく寄与しているようです。

3月はそれにくわえて、暮らし向き、収入の増えについての見方が改善していますが、これは今春闘の近年にない満額回答の多さなども心理的にに影響しているのではないかと思われます。

一寸気になったのは、物価の見通しについての回答で、1年後の物価見通しについて、低下すると変わらないがそれぞれ2.3%ですが、上昇するが94.1%(わからないの1.3%を加えて100%)で、大方の世帯は、物価上昇は続くと見ています。

それは確かで、ある程度の上昇は続くでしょうが、驚いたのは5%以上の上昇という回答が61.1%だという事です。

そうならないことを願いますが、その割に消費者の態度は元気とみていいのでしょうか。
でも、2月の調査ではこの数字が66.8%でしたから、これから状況を見ながら月々低めの回答が多くなるのではないかなと思っています。

アメリカは世界から愛される国になれるか

2023年04月10日 16時26分29秒 | 経済
ウクライナのゼレンスキー大統領は、世界の自由と民主主義を守るために我々は独裁国家ロシアと戦っている、負けるわけにはいかない、勝たなければならないのだ。と言っています。

これまさに真実でしょう。かつて、共産主義一党独裁のロシアに従属させられていたウクライナであれば、その言葉は重く響きます。
そして民主主義国は一様にウクライナを援助しようと本気で考えるのです。

21世紀の今、世界は民主主義と独裁主義という単純な色分けになりつつあるように見えます。
そして世界の多くの国は民主主義を是とし、覇権国アメリカとともに民主主義の世界を創ろうと考えているのでしょう。

アメリカは勿論ですがヨーロッパはEUにまとまり、アジアはアセアンを中心に民主主義を旗印に国造りに励んでいます。日本は民主主義と非戦を掲げています。

一方大国ロシアは、ゴルバチョフの民主化宣言で民主主義国になるかと思われましたが、プーチンの変身によって、典型的な独裁国に逆戻りしました。

共産党一党独裁の中国は、鄧小平の社会的市場経済の導入で、自由経済に舵を切るように見えましたが、政治は共産党一党独裁を続け、習近平の長期政権の中で、独裁色を強めているようです。

恐らく、中国の政治が独裁化する中で、市場経済の繁栄が続くとは思われませんが、当面大国中国の経済力は維持されるでしょう。

ロシアは暴力によって、世界経済社会に大きな被害を齎していますが、これはいずれ終わるものでしょう。当面この問題は世界の最重要課題ですが、長い目で見ると、これからも長く続く問題は、中国が、独裁国家として、いつまで世界の民主化に対抗を続けるかではないでしょうか。

最近の中ロの関係を見ても、プーチンの狂信的な独裁主義と、習近平のそれなりの常識(良識)を含んだ独裁的行動には、かなりの差があるわけで、ここで最も重要になって来るのは、現在の覇権国であるアメリカの態度でしょう。

「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ政権の時から米中関係はそれまでよりも対立的になって来ました。
対立の相手を作って、被害者意識で国民を纏めるのは、基本的には、独裁者の手法です。、トランプと習近平は関税合戦や制裁にしても独裁者同士のような関係が見られました。

結果、アメリカの輿論は分断され、最後には国会襲撃のような、独裁者にありがちなアジテーションと暴動に近い事も起きています。
世論分断の後遺症はそのごもバイデン政権を悩ましているようです。

アメリカ自体、寛容で、世界の事を考える余裕のあるアメリカから経済力の低下の中でニクソン・ンショック、変動相場制移行と質的に変化し、日本との関係でいえば、繊維交渉から、自動車交渉、半導体交渉、加えてプラザ合意での円高要請と、日本経済の成長抑制に熱心になり、同じことを中国に要請するなど、内向きに変わって来ています。

アメリカから言い出したTPPにおいても、結局は参加しなかったといったことも、アメリカの意識の変容を象徴的に示すのではないでしょうか。

こうしたことは、対日本だけではなく、あらゆる面で顕在化傾向を持ったのではないかと思われます。
その結果、中南米というお膝元でも、アメリカ嫌いの国が出るという状況もあることは否めない事実です。

中国の共産党一党独裁という政治体制が、今後どうなるかは予測の限りではありませんが、
民主主義を善しとする国々の中核であるべきアメリカが、中国を敵視するのではなく、経済活動は自由で、経済発展とともに民主主義化していく可能性のある国として、寛容に指導しつつ付き合う関係を構築しようと考えることは出来ないでしょうか。

これからの世界は、アメリカの考え方次第で、良くも悪くもなるのです。
アメリカが覇権国の責任において、企業にCSRが求められるように、覇権国の地球的責任に目覚めることを願うところです。

長期不況の脱出、黒田日銀の業績に思う(続)

2023年04月09日 09時55分39秒 | 経済
黒田さんは日銀総裁に就任と同時に、アメリカのFRBの政策を巧みに活用し、円高に苦しむ日本経済を、異次元金融緩和という手段で円安を実現、円レートの正常化を実現、その復活の条件を整備しました。

これで、アベノミクスの第1の矢、為替レートの正常化$1=120円は実現し、政府・日銀の政策目標「インフレターゲット2%」も3年程度で達成という予想でした。
しかし、その後は予想外の残念な展開で日本経済の低迷は続きました。

アベノミクスでは円安の成功を、第2の矢、積極的財政政策、政府主導で引っ張り、その後は規制改革でフロンティアを開くという事だったのでしょう。

しかし、政策態度は、「決める政治」で、総て政治主導でという姿勢が仇となって、思うように経済が動かな動かない事になってしまったようです。

円安は、日本経済の国際競争力を強くし、円安の分円建ての付加価値を増やすわけですが、同時に、付加価値の産業別の分配には大きな偏りを齎します。輸入部門には為替差損を、輸出部門には為替差益という事ですが、これは企業努力とは全く関係ありません。

この付加価値配分の産業別格差は、輸入サイドの円建てコスト増の価格転嫁が順調に行われて、輸出部門の差益で埋められるべきですが、価格転嫁についてのきちんとした政策がなく、産業別の富の偏在が残っていしまいました。

価格転嫁の不徹底は長期に残っていて、それによって円高によるインフレ効果は小さくなり、物価が上がらなければ賃金も上がらず、賃金が上がらなければ物価も上がらないという状況が長く続きました。この価格転嫁の遅れの集積(鬱積)が、昨年来の消費物資中心の一斉値上げの動きとなったのという事でしょう。

こうして、円安後も消費の伸びない状況が続き、消費不振は経済成長を遅らせる一方、差益の出た輸出部門は、不足していた自己資本の積み増しにそれを活用、投資は成長する海外諸国にという事になって、経済成長は消費・投資の両面から低迷となりました。

政府は成長しない経済を、なんとかして成長させようと、財政出動に走り、低成長で税収不振ですから、当然、国債発行への依存を強めました。

日銀の低金利政策、量的緩和容認は、政府の国債大量発行には大変好都合で、黒田日銀には、異次元金融緩和の出口検討の機会など全くないままに、無駄の多いバラマキ財政支出につきあわされて10年が過ぎたという事でしょう。

黒田日銀は、政府と「2%インフレターゲット」を共に定めたところから、見通しの3年が何年伸びても待つしかなかったという事だったと思われます。

そして昨年以来、価格転嫁自粛の我慢が限界に達し、一斉値上げで消費者物価突如が3~4%になり「インフレは2%を超えたぞ」と言われても、これは「インフレターゲットの2%」とは全く異質のインフレで、こんな時に金融引き締めなどしたら賃金も上がらなくなるという状況の中で、黒田さんは期限切れの退任となったのでしょう。

ご本人は「やるべきことはやった、政府が出口政策のチャンスを作ってくれなかっただけ」と淡々としておられるのではないでしょうか。だから新任の植田総裁も「当面現状通り」と言っているのです。

ことし大幅賃上げが出来て、一斉値上げの波も過ぎ、一方輸入物価が落ち着いて、日本のインフレが賃金インフレ2%になる可能性が見えてくれば、黒田さんでも、植田さんでも出口政策を開始するという事になると思っています。

長期不況の脱出、黒田日銀の業績に思う 

2023年04月08日 15時21分51秒 | 経済
日銀総裁が黒田さんから植田さんに変わりました。10年という任期は最長だったそうで、その間一貫して異次元金融緩和政策を続けました。

ご本人は長期に亘る金融緩和は誤りではなかったと述べ、マスコミは、「最後まで黒田節」などと多少批判的な揶揄もあったようです。

10年に亘る異次元金融緩和には批判の声も多いようですが、もっと早く金融緩和の出口にと思っていても、その条件が整わなかったので、結局伸び伸びになったという事でしょう。

その証拠には新任の植田さんにしても、当分今の政策を変えないと言わざるを得ないというのが現実だからです。

黒田日銀のスタートは華々しいものでした。2013年、14年と2回に金融緩和政策で、それまで$1=75~80円だった円レートは120円と大幅円安になりました。
意表を突く大幅金融緩和で円安実現可能という新しい為替政策を上手に使ったのです。

この大成功で、プラザ合意での$1=240円から120円への円高を、そっくり逆転するような日本経済の国際経済環境の大改善を黒田日銀が実現したことは周知のとおりです。

それまでコスト高に呻吟していた日本産業は、一挙に国際競争力を取り戻し日本製品は高くない、日本観光は安くて良質というインバウンド盛況などの基礎条件を作ったのです。

このブログでも、これで日本経済は円高に苦しまない、「プラザ合意」以前の正常な経済に復すると考え、そのために必要な、企業や政府の為すべきことなどを書いてきました。

円安実現で強調し成功した政府と日銀は、早速「2%インフレ目標」というスローガンを掲げ、日本経済の正常化に邁進しようと考えたようです。

「2%インフレ目標」は、アメリカが2012年に掲げた目標の踏襲で、目標としては経済学的に適切なものでしたが、日本では、これが上手く行かなかったのです。

それまで、20年以上、円高によるコスト高の中で、賃金と物価を下げる事だけが「命」と考えていた産業界には、常にインフレ体質のアメリカと同じ「2%インフレ目標」への道筋は理解不能だったのではないでしょうか。

当時総理の安倍さんのやった事は、労使代表を呼びつけて「賃上げをしてほしい」と言うだけですから、労使の方は事態の急変に戸惑うだけだったようです。

そうした中で、日銀の役割は、金融緩和を続けて、政府や民間企業が、経済活動を活発化する際の資金供給を潤沢にする事が最も重要だったのでしょう。黒田日銀は真面目に役割を果たしていました。

ところが、政府の政策の貧困もあり、経済環境正常化の中で日本経済そのものを建直すために産業界は何をすべきかの指針が不明確なため、成り行き任せになり、政府の政策は、財政のバラマキと見当違いの規制改革がモリカケ問題などを生んでいました。

折角環境が改善したのに、それを日本経済自体の活性化にいかに繋げるかに失敗し続けたのがアベノミクスだったようです。

その中で黒田日銀のやるべきことは限られることになりました。(以下、長くなるので次回にします)

2023年2月、消費支出の堅調続く

2023年04月07日 15時20分46秒 | 経済
今朝のテレビのニュースで実質所得はマイナスだが、消費支出は伸びていると言っていました。

今日は2月分の家計調査、家計収支編が発表予定の日ですから、どうなるだろうかと思っていましたが、このニュースを聞いて、「昨年来の消費支出の堅調は変わっていないなと
何となく安心しました。

早速ネットで見てみましたら、2人以上勤労者世帯の平均消費性向は、昨年2月の63.3%を1.1ポイント上回って64.4%でした。結果は下のグラフの通りで、左側からの緑の柱が2本になって、1月、2月はこの2年、平均消費性向は上昇傾向という事になります。

         平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯、%)

                     資料:総務省統計l局「家計調査」

ところで、2人以上全世帯の消費の動きを見てみますと(全世帯の場合は収入の調査はないので支出だけです)、2月の支出は前年2月に較べて5.6%伸び、家計消費に対応する物価上昇率4.0ポイントを上回って実質上昇率が1.6%になっています。

物価上の結果、その分消費支出が増えたというより、物価上昇にもめげず、消費行動が活発化したという感じのするところです。
この傾向が昨年来(一昨年までは消費不振)見えて来ていますので、それが順調に継続すれば、日本経済も元気になると見ているところです。

昨年2月比で消費(名目値)の増えた中身を10大費目で見ますと、最も増えたのは「被服・履物」で14.4%、ついで「光熱・水道」12.9%、教養娯楽が12.5%、家具家事用品7.2%、食料と、住居関係が同じ7.1%といった状況で、旅行や外出などが増え、日常の消費生活にも少し活況が戻ってきたといった感じがあります。

これまでは消費支出はコロナ次第と折に触れて書きましたが、昨年からの家計の消費支出の増加は、コロナ次第というより、家計のこれまでの緊縮ムードが、何となく変わって、消費生活に積極的な面が出て来たという感じを受けています。

支出減少は教育費(授業料・補習教育費など)-15.1%、その他の消費支出-2.8%で、教育費は制度的なものも大きいでしょう。

収入と支出の両方が調査されているのは勤労者世帯だけですが、一般的に2人以上勤労者世帯が代表的な指標という事になっていて、平均消費性向もその中の数字です。

という事で2人以上勤労者世帯についての数字を見ますと、物価上昇の影響で昨年の10月以来実質実収入は対前年同月比で一貫してマイナスです。それにもかかわらず、平均消費性向は対前年同月比で12月を除いて上昇しているのです。

2月について見ますと昨年2月比で名目実収入は+3.1%ですが実質は-0.8%、可処分所得は名目+2.9%で、実質-1.0%です。それにも拘らず、消費支出(名目)は+4.7%と増加です。
その結果、平均消費性向は、前述のように1.1%の上昇です。

一昨年までは 平均消費性向は下がり、その分貯蓄に回すというのが家計の状況でしたが、昨年から逆転して貯蓄に回す分を少し減らして消費を活発にするという形に家計の行動が変わってきたのです。

これが続けば消費の活発化で経済成長にはプラスです。グラフで見ますように、昨年の3月はその中で消費性向が下がった月(グラフ参照)ですが、今年の3月はどうでしょうか。
更に、満額回答の多かった今春闘の影響が、4月からどう出るかも重要な注目点です。
これからも毎月、皆さんと一緒に見ていきたいと思います。

新卒一括採用、入社式、新入社員講習・・・

2023年04月06日 15時03分42秒 | 労働問題
満開の桜の下を通って入学式というのは風物詩ですが、同じように季節を感じさせるのが4月に入るとテレビで放映される新入社員の入社式です。

新調の背広にネクタイ、女性はきっちりしたスーツ姿、大企業の場合には広い会場にびっしりと椅子を並べ、新入社員は皆緊張の面持ちで着席して社長の挨拶を神妙に聞くという画面が何度も見られます。

時には、晴れやかな顔で抱負を語る新入社員の顔も映し出され、そうだ自分にもこんな時があったのだ、などと思い出したり、こんなに新入社員を採るのは先行き好況を見込んでいるなと予想したり。これもサラリーマンにとっては風物詩でしょうか。

こうしてみんな揃って入社式をし、翌日からは、1週か2週の新入社員講習、そして配属、勤務場所が決まり、講習の終了とともに、それぞれの職場に着任、早速先輩の指導を受け、これが自分の社会人の出発点、働いて給与を受け取る立場になったと自覚をするのです。

この新卒一括採用方式という形での、学生から社会人への切り替えのシステムは日本特有のもので、欧米主要国では、企業は、それぞれの職場で、特定の仕事の人間が必要になった時、その都度、適任者を募集し、採用するのが一般的です。

これは「ジョブ型採用」という形で、採用は1人1人で、仕事に就く前から仕事も賃金も決まっています。

上記の日本の場合は、エントリーから筆記試験、面接試験があって、採用が決まりますが配属や仕事が決まるのは、企業に入ってからです。
自分の好きな仕事に就けるかどうかは、入社してからで、配属が決まって、その職場に行って初めて解るのです。

こんな形で社会人として出発し、多くは企業の中でいろいろな仕事を経験し、一専多能のベテラン、高度専門職、管理者、経営者などと自己実現の機会を伸ばし、何時かは職業生活を了え、それぞれの定年を迎えるのです。

ところで、今政府が推進している「働き方改革」では、仕事も決まらないで、採用するのはおかしい、学校を卒業して、何をしたいか何が出来るかもわからない人間を、纏めて採るなどというのは不合理だからやめて「ジョブ型」の必要に応じた採用にすべきだとしています。

「働きかた改革」についての企業の反応を見ますと、部分的には「ジョブ型」を取り入れ活用する動きもあります。
それは特定の職務(ジョブ)などで、また本人の都合や希望による場合や、定年再雇用者、定年以前の人でも、専門の業務が決まって来ている高度専門職、高度熟練者などの場合が多いようです。

小規模企業や、非正規従業員は別として、採用は「ジョブ型」ではなく、人物本位、必要に応じていろいろな仕事をしてもらうという形の採用方式が好んで選択されています。

政府が思いつきで欧米の合理性を見習えと言っても、日本社会の文化的背景に合わないものは普及しません。新卒一括採用が日本では合理的なのです。

例えて言えば、政府が、お辞儀ではなくて、握手かハグがいいと言っても、やはり日本人にとっての主流はお辞儀でしょう。お辞儀を辞めろと言っても通ることはないでしょう。

「働き方改革」も、こうした視点に立って、何でも欧米流がいいというのは見直す方がいいと思うのですが如何でしょうか。

「神の見えざる手」と「政府の見える手」

2023年04月05日 11時49分15秒 | 経済
「神の見えざる手」は、アダム・スミスの言葉としてあまりにも有名です。

悪徳商人が、自分の利益を求めて儲ける事に執心して頑張ると世の中は悪くなるようにいわれるが、そこに「神の見えざる手」が働いて、経済は調和がとれて繁栄し、社会は豊かになるというのがその意味する所でしょう。

個人の欲望の相互作用が、全体としては調和を齎すというので「予定調和説」とも言われます。

これは結構説得力があり、現実にその通り正しく働くことも十分実証されてきているのです。

何故かといえば、個人としての欲望はそれぞれの立場によって違います。売り手と買い手は利害相反で、売り手は高く、買い手は安くと考えます。
こうして数限りない個々の取引が行われれば、大数の法則として価格機構(プライス・メカニズム)が成立し、自由経済の長所が発揮されるのです。

しかし、何でも自由という事にしておくと問題も発生します。一部が大資本を蓄積し、独占的な立場になると、価格機構は働きません。

価格機構が働かない所には「神の見えざる手」も働きませんから、「独占禁止法」といったものが必要になります。

これは「政府の見える手」です。そうした意味では、「政府の見える手」も大変重要で、政府の見える手が確り働かないと「神の見えざる手」も働かないという事になります。

解り易く言ってしまえば、「政府の見える手」は「価格機構」が確り働くような状態を常に維持するために必要という事になるのでしょう。

勿論、「政府の見える手」はいろいろなことが出来ます。世界不況の時には、放っておけば需要が足りなくて価格機構が成立しませんから、政府が赤字財政で公共事業をやって、需要を増やし、価格機構がまともな状態になるように金を使います。

今は水道の普及で井戸は見られませんが、井戸のポンプが乾いた時、乾燥して働かなくなったパッキングの働きを取り戻すために「呼び水」を入れてやるという事になぞらえた「呼び水理論」です。

社会保障もそうです。所得のない高齢者、学校にいけない子供や若者に政府がカネを出し、需要を増やし、価格機構が社会全体で確り働くような状態を維持するのです。

そこから「政府の見える手」は重要だ、これさえ充実すれば、社会は良くなる、政府にどんどんやってもらおう、という政府依存が生まれて来るようです。

これが昂じると、企業でいえば「指示待ち族」ばかりのようになり、民間(企業や家庭、個々人)が自分の意志で、欲望を持って、一生懸命ビジネス(経済活動)をやるという意欲が薄れて来ることになるようです。

自分で努力するより、政府に頼んだ方がいい、沢山バラマキをしてくれる政党に投票しよう、という事になり、政党の方も、バラマキをすると言わないと得票が出来ないという事になります。

ミルトン・フリードマンは、みんなが欲望を持ってビジネスをすれば「神の見えざる手」で社会は豊かになるが、政府が「政府の見える手」で政府の仕事を増やせば増やすほど社会は貧しくなると言っています。

そういえば、「政府の見える手」でやる仕事は、自由な「価格機構」に乗らないものがほとんどなのではないでしょうか。
「神の見えざる手」とは「価格機構」だったのかもしれません。

<蛇足>
ここで「ビジネス」と書いているものの中にはマネーゲームは入らないようです。

小さな花壇、チューリップ満開

2023年04月04日 14時20分34秒 | 環境
東京都下国分寺では、桜は先週後半が満開でした。
国分寺から流れて、崖線沿いに狛江で多摩川にそそぐ野川には桜の花びらが流れ、我家の玄関先にも、何処からか桜の花びらがちらほら風に舞う春爛漫のきのう、きょうです。

朝から日光燦々の今日は、リュウキンカに占領されていた小さな花壇に、いよいよチューリップが満開を迎えています。

この花壇の様子については、今年はちょっとした異常事態で、その状況は第一報第二報と二度にわたり心配しながら報告して来ました。

そして今日は最終報告です。
結果は上々で心配は全くの杞憂という事になりました。下の写真でご覧頂くとおりです。



全盛だったリュウキンカンの黄色い花と、咲き始めたチュウリップの共存は一時で、春たけなわになるとリュウキンカの季節は終わり、先週末からは次々と開くチューリップの花の下で、別れを惜しむリュウキンカという事になりました。

開いた花を見て、昨年寒い中で、赤白の列、黄色の列、紫とピンクの列と一応3列に植えて、手前は赤と黄色のツートーンを横に二の字に植えていた事を思い出しました。

丈の高さは不揃いですが赤が圧倒的にせい高です。低かった紫も今日は随分伸びて来ています。
几帳面に、夕方になると花弁をすぼめ、翌日陽に当たると大きく開く動きを繰り返して今週中ぐらいは、毎日妍を競う姿を見せてくれるでしょう。まことに結構な季節です。

玄関の脇に毎年出て来る原種のチューリップが、何故か一輪右上の角に咲きました。トリミングの圏外になってしまったので、花のアップを付け加えておきます。


2023年3月日銀短観:製造業慎重、非製造業順調

2023年04月03日 13時53分21秒 | 経営
日本銀行は今日、3か月ごとの「全国企業短期経済観測」、いわゆる「日銀短観」を発表しました。マスコミの報道は、製造業は5四半期連続悪化などという見しもありますが、感じとしては内外情勢を見つつ慎重な判断を、といった状況でしょうか。

先ず、大企業の状況を見ますと、製造業はDI(良い-悪い)が1で、前回12月の7から6ポイントの悪化、非製造業は前回の19から1ポイント改善20で、製造業慎重、非製造業順調といった状況です。

中堅企業、中小企業はともに前期よりして悪化でマイナスになっています(「悪い」方が多い)製造業は大企業の状況が多少増幅されて中堅・中小に影響という状況は変わっていない様です。

一方非製造業は上に見ましたように大企業は順調、中堅企業は11から14に改善中小企業も6から9に改善という事で好況感が継続ようです。

長い間不振をかこっていた非製造業がコロナの鎮静化、平均消費性向の上昇などの結果、この所、漸く浮上してきたという所でしょうか。

日本経済としては、製造業が特に国際情勢の影響を受けて見通しの難しい一方で、非製造業の活況、これは内需の拡大が救いというところではないでしょうか。

問題は先行きですが、3か月ほどの先の見通しで、製造業大企業は多少の好転、中堅、中小は、マイナスは変わりませんが、マイナスが減るという形ですが、多少の好転です。

逆に非製造業の方は各規模ともに、プラスの幅が少し縮まるという形の多少慎重な見通しとなっています

ウクライナの問題に加えて、米中関係が、アメリカの中国敵視政策が多少露骨になって、日本にも半導体製造装置の輸出の制限などを言ってくることもあり、心配の種は尽きませんが、製造業にとっては、円安が130円台で当面定着しそうなことはプラスでしょう。

コロナの鎮静化がさらに進み、円安が続けば、インバウンドの需要も大きくなることが見通されますので、製造業、非製造業ともに、今後についての明るい面はあるのですが、そを帳消しにするような面倒な国際情勢、国際紛争、突然の金融危機など懸念されます。

状況が読みにくい中で、企業な慎重にならざるを得えないのでしょう。少し先の将来まで見通さなければならない設備投資、研究開発などについても、大企業の態度にも、調査していますが、何か慎重さが目立つような気がする「日銀短観」です。

平穏を望みながら国際関係に振り回されるのが各国経済ですが、なるべく平穏の中で、経済の安定発展を考えられるよう国際政治情勢を期待したいところです。

人間はAIを上手く活用できるか

2023年04月01日 12時21分58秒 | 経済
最近のAIの進歩は著しいものがあるようです。典型的なのは「チャットGPT」で、人間とスムーズな会話が出来るのだそうで、AIのいろいろな話もあります。

先ず、最近のAIは、言葉が不自然でないそうです。日本語が不自然だと、印象としては言葉もきちんと使えないのだから中身も大した事ないのだろうと受け取りますが、言葉がきちんとしていれば、中身も信用する気になるでしょう。

万葉集を覚えさせて短歌を作らせたり、ショートショートを覚えさせて、ショートショートを作らせたりすると、結構なものを作るようです。

先日、新聞記事で、AIに国会での総理への質問に答えさせた結果が出ていました。そのあとに本当の岸田総理の答弁が出ていましたが、両方見ると、国民としてはAIの答えの方がいいなと感じるようなものでした。

岸田総理は、色々な事情があって、通り一遍の答弁しかできなかったのでしょうが、AIには「いろいろな事情」は分からないからでしょう。
然しAIに「いろいろな事情」をインプットできれば、どうなるのでしょうか。

インタネットには、世界中のあらゆることが入っています。その中の必要なものをAIの学習させるのはクリック1つで可能です。

人間なら読むのに何日もかかるものでも、AIの学習は一瞬です。しかも、人間は読む端から忘れていきますが、AIは決して忘れません。

そして覚えたものは全部検索しますから、あのことは度忘れしていたなどという事もあり得ません。

国会での答弁の下書きを書かせることが考えられているようですが、国会のやり取りや審議会の記録、関連新聞記事などを全部入力して、AIに書かせれば、並みの官僚より余程確りしたものが出来そうです。

多分、こうしたことがみんな可能になると色々な問題が出て来るでしょうが、その一つは人間の仕事がなくなる、人間が要らなくなる、失業問題でしょう。

もう1つは、AIに頼ってしまって人間が怠惰になる。大事な仕事はAIで、人間はAIのための雑用係になり下がるといった可能性もあるでしょう。

更に、AIに対する信頼が、AI信仰に進んでいく可能性も、無きにしも非ずです。
確かにネット空間には、個人の知識を超えた世界のあらゆる情報が存在するのですから、そのメモリーをテーマを決めてインプットし「整理する方針・方法」(アルゴリズム)さえ決まれば、出て来る答えは通常の人智を超える事も有り得るでしょう。

最後にもう1つ付け加えますと、膨大な世界の衆知を、アルゴリズムをプーチン方式にするか、習近平方式にするか、バイデン方式にするか、岸田方式にするか、それともAIに決めてもらうか(アルゴリズムの選択)で、出て来る答えは大違いでしょう。

人間ですと顔を見れば何かわかりそうですが、AIには表情はありません どんなアルゴリズム、あるいは超アルゴリズムなのか解りません。

ただご託宣だけが画面か印刷で「おみくじ」のように出て来ます。
人間は結構こういうのに弱いですから、AIに関して、何か心配なことがいろいろいくて来るような気がします。
SFでは、この星の統治者は、巨大な人工頭脳(AI)です、などというのもあります

人間がAIを進歩させます。そのAIを人間・人間社会が上手く使いこなすのに、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。