tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

新卒一括採用、入社式、新入社員講習・・・

2023年04月06日 15時03分42秒 | 労働問題
満開の桜の下を通って入学式というのは風物詩ですが、同じように季節を感じさせるのが4月に入るとテレビで放映される新入社員の入社式です。

新調の背広にネクタイ、女性はきっちりしたスーツ姿、大企業の場合には広い会場にびっしりと椅子を並べ、新入社員は皆緊張の面持ちで着席して社長の挨拶を神妙に聞くという画面が何度も見られます。

時には、晴れやかな顔で抱負を語る新入社員の顔も映し出され、そうだ自分にもこんな時があったのだ、などと思い出したり、こんなに新入社員を採るのは先行き好況を見込んでいるなと予想したり。これもサラリーマンにとっては風物詩でしょうか。

こうしてみんな揃って入社式をし、翌日からは、1週か2週の新入社員講習、そして配属、勤務場所が決まり、講習の終了とともに、それぞれの職場に着任、早速先輩の指導を受け、これが自分の社会人の出発点、働いて給与を受け取る立場になったと自覚をするのです。

この新卒一括採用方式という形での、学生から社会人への切り替えのシステムは日本特有のもので、欧米主要国では、企業は、それぞれの職場で、特定の仕事の人間が必要になった時、その都度、適任者を募集し、採用するのが一般的です。

これは「ジョブ型採用」という形で、採用は1人1人で、仕事に就く前から仕事も賃金も決まっています。

上記の日本の場合は、エントリーから筆記試験、面接試験があって、採用が決まりますが配属や仕事が決まるのは、企業に入ってからです。
自分の好きな仕事に就けるかどうかは、入社してからで、配属が決まって、その職場に行って初めて解るのです。

こんな形で社会人として出発し、多くは企業の中でいろいろな仕事を経験し、一専多能のベテラン、高度専門職、管理者、経営者などと自己実現の機会を伸ばし、何時かは職業生活を了え、それぞれの定年を迎えるのです。

ところで、今政府が推進している「働き方改革」では、仕事も決まらないで、採用するのはおかしい、学校を卒業して、何をしたいか何が出来るかもわからない人間を、纏めて採るなどというのは不合理だからやめて「ジョブ型」の必要に応じた採用にすべきだとしています。

「働きかた改革」についての企業の反応を見ますと、部分的には「ジョブ型」を取り入れ活用する動きもあります。
それは特定の職務(ジョブ)などで、また本人の都合や希望による場合や、定年再雇用者、定年以前の人でも、専門の業務が決まって来ている高度専門職、高度熟練者などの場合が多いようです。

小規模企業や、非正規従業員は別として、採用は「ジョブ型」ではなく、人物本位、必要に応じていろいろな仕事をしてもらうという形の採用方式が好んで選択されています。

政府が思いつきで欧米の合理性を見習えと言っても、日本社会の文化的背景に合わないものは普及しません。新卒一括採用が日本では合理的なのです。

例えて言えば、政府が、お辞儀ではなくて、握手かハグがいいと言っても、やはり日本人にとっての主流はお辞儀でしょう。お辞儀を辞めろと言っても通ることはないでしょう。

「働き方改革」も、こうした視点に立って、何でも欧米流がいいというのは見直す方がいいと思うのですが如何でしょうか。