tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業物価指数伸び率鈍化、物価は安定へ

2023年04月12日 16時05分40秒 | 経済
今日、日銀から3月の輸入物価指数、企業物価指数が発表になりました。
マスコミも、物価の沈静化を示唆していますが、消費者物価についてはまだ上昇もという見方も多いようです。

全体的にみれば、物価問題は、明らかに山を越えたと思われます。後は、政府の公共料金政策などで、消費者物価に多少の混乱はあるかと思いますが、次第に鎮静化に向かうのではないでしょうか。

下の図に見ますように、輸入物価はすでに昨年秋がピークで低下を続けています。企業物価も昨年末がピークでした。消費者物価もこの所がピークではないかと思われます。 

     主要3物価指数の推移(消費者物価の3月は東京都区部速報)
 
                  資料:日本銀行、総務省

何時も指摘していますように、消費者物価が4%を超える迄に上昇してきたのは、アベノミクスの中でじりじり値上がりする海外原材料価格や、最低賃金の大幅上昇によるコストアップを、商品値上げに転嫁できずにコスト圧力が鬱積していた反動での昨年からの一斉値上げの結果です。

この一斉値上げの波も、1次、2次、3次ぐらいあったようですが、そろそろ終わるでしょう。海外からの、エネルギー、小麦や大豆といった穀物、木材などの値上りがなくなれば、後は国内の賃金上昇が最大のコストアップが中心という事になります。

今春闘で3%台の賃上げがあっても1~2%の生産性向上で吸収される分もあり、アメリカやヨーロッパのような10%インフレといったことはあり得ません。日本は労使も家計も冷静で、インフレは嫌いなのです。

という事ですから、インフレが起きるとすれば、エネルギーも、穀物・飼料も、木材も、その他殆どの原材料を輸入に頼る日本ですから、インフレの原因は、まず輸入物価です。

輸入物価が上昇した時に、これは大変だ(チャンスだ)と言って便乗値上げをしたり、生活が立ち行かないと無闇に賃上げをしたりすると、アメリカやヨーロッパのようにインフレが激化します。

輸入原材料は、国際情勢などで値段が動きますが、値上がりしても国内ではどうする事もできません。その分価格転嫁をしてみんなで負担するしかないのです。

慌てなければ落ち着くところに落ち着くという事は、下のグラフを見ればわかります。

      主要3物価の対前年上昇率の推移

                   資料:上に同じ

あんなに上がった輸入物価、それに従って上昇した企業物価ですが、この所、急激に収斂しています。青い線の輸入物価はマイナスに下がる可能性も出て来るでしょう。企業物価はそれを追うでしょう。

日本がこうして、海外物価の変動に対して落ち着いているのは、第一次石油危機の時に、大慌てして、トイレットペーパー・洗剤パニックが起き、30%を超える賃上げをして20%を超えるインフレになり大きな社会的混乱を起こしたことから学んだからです。

アメリカやヨーロッパはその時の失敗を、また繰り返しているのです。学習能力の差でしょうか、それとも忘れっぽい人達・・・?