tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2022年度の貿易収支は大幅赤字ですが

2023年04月20日 20時57分05秒 | 経済
今日、財務省から2023年3月と、2022年度の貿易収支が発表になりました。

企業の経常利益に当たる経常収支では黒字が維持されていますが、営業収支に当たる貿易収支はこの所赤字続きで、1月に発表された2020年(暦年)の貿易赤字19.9兆円をさらに上回る21.7兆円に膨らんで、1979年度の第二次オイルショックの時以来の大幅になっています。

しかし、マスコミでも、だから心配だといった声はあまり聞かれません。理由は、今回の貿易赤字は多分一過性で、ソ連のウクライナ侵攻をはじめ、国際情勢が安定しない中でのことなので、日本経済そのものに問題が生じているといった見方は余りないからです。

一時は、原油やLNGの輸入価格は2倍近くにまで上がったようですが、このところは上がり下がりはありますが、傾向的には下がる状態になっています。
国際投機資本の思惑で、150円までいった円レートも、今は130円台半ばです。

半導体などの重要部品をはじめ、希少鉱物資源などは軒並み値上りしていて、こうした希少資源の価格はデジタル化を支えるとか、再生可能エネルギー開発に必要といった性格のものなので、今後も値上がりが続く可能性はあるでしょう。

こうしたものの価格は、結局、世界中で同じように上がるので、世界共通であれば、日本だけ不利になるわけではないので、そうした資源の活用する技術開発で日本が先行すれば克服可能という見に方もあるでしょう。

一方で、日本は国内投資より海外投資に力を入れてきたので、国内経済はが不振続きでしたが、進出先の企業からの利子配当といった「第一次所得収支」が増加しており、これが貿易赤字を埋めて、経常収支は黒字になるといった状況にあります。ですから貿易赤字をそれほど心配する事はないという見方が多いのでしょう。

多少時間はかかるでしょうが、国際情勢が安定すれば、この辺の事情がどんなバランスで落ち着くかが次第に見えてくると思われます。現状ではあまり心配する必要なないという見方が大勢ではないでしょうか。

ただ、日本企業の考え方もこの所変わって来つつあるようです。国際情勢の不安が残る中では、国際的なサプライチェーンは不安定化するので、生産設備の国内回帰といった動きもあります。

これは、国内経済の活発化を齎す要因ですし、これからインバウンドの増加も見込まれていること、更には、国内の家計の消費行動が、当面の物価上昇に刺激され、今後はその沈静化の中で、コロナの終息、今春闘の影響もあり少しずつ動意を見せるのではといった変化もありそうです。

インバウンドの増加は貿易収支の黒字要因になりますが、国内の経済活動の活発化は貿易収支には赤字要因でしょう。影響は交錯しています。

もし、長らく低迷した日本経済が活性化を取り戻すとすれば、その方が大変望ましい事は明らかですから、貿易赤字が多少増えても当面国際収支の心配はしない方がいいのではないでしょうか。

これまでは、万年黒字で円高が心配という日本ですが、この所はアメリカの金利引き上げで、100円飛び台の円レートが130円台で安定しているようですし、日本が赤字国に転落すれば、変動相場制が円安にしてくれるという事のようですから。