tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「神の見えざる手」と「政府の見える手」

2023年04月05日 11時49分15秒 | 経済
「神の見えざる手」は、アダム・スミスの言葉としてあまりにも有名です。

悪徳商人が、自分の利益を求めて儲ける事に執心して頑張ると世の中は悪くなるようにいわれるが、そこに「神の見えざる手」が働いて、経済は調和がとれて繁栄し、社会は豊かになるというのがその意味する所でしょう。

個人の欲望の相互作用が、全体としては調和を齎すというので「予定調和説」とも言われます。

これは結構説得力があり、現実にその通り正しく働くことも十分実証されてきているのです。

何故かといえば、個人としての欲望はそれぞれの立場によって違います。売り手と買い手は利害相反で、売り手は高く、買い手は安くと考えます。
こうして数限りない個々の取引が行われれば、大数の法則として価格機構(プライス・メカニズム)が成立し、自由経済の長所が発揮されるのです。

しかし、何でも自由という事にしておくと問題も発生します。一部が大資本を蓄積し、独占的な立場になると、価格機構は働きません。

価格機構が働かない所には「神の見えざる手」も働きませんから、「独占禁止法」といったものが必要になります。

これは「政府の見える手」です。そうした意味では、「政府の見える手」も大変重要で、政府の見える手が確り働かないと「神の見えざる手」も働かないという事になります。

解り易く言ってしまえば、「政府の見える手」は「価格機構」が確り働くような状態を常に維持するために必要という事になるのでしょう。

勿論、「政府の見える手」はいろいろなことが出来ます。世界不況の時には、放っておけば需要が足りなくて価格機構が成立しませんから、政府が赤字財政で公共事業をやって、需要を増やし、価格機構がまともな状態になるように金を使います。

今は水道の普及で井戸は見られませんが、井戸のポンプが乾いた時、乾燥して働かなくなったパッキングの働きを取り戻すために「呼び水」を入れてやるという事になぞらえた「呼び水理論」です。

社会保障もそうです。所得のない高齢者、学校にいけない子供や若者に政府がカネを出し、需要を増やし、価格機構が社会全体で確り働くような状態を維持するのです。

そこから「政府の見える手」は重要だ、これさえ充実すれば、社会は良くなる、政府にどんどんやってもらおう、という政府依存が生まれて来るようです。

これが昂じると、企業でいえば「指示待ち族」ばかりのようになり、民間(企業や家庭、個々人)が自分の意志で、欲望を持って、一生懸命ビジネス(経済活動)をやるという意欲が薄れて来ることになるようです。

自分で努力するより、政府に頼んだ方がいい、沢山バラマキをしてくれる政党に投票しよう、という事になり、政党の方も、バラマキをすると言わないと得票が出来ないという事になります。

ミルトン・フリードマンは、みんなが欲望を持ってビジネスをすれば「神の見えざる手」で社会は豊かになるが、政府が「政府の見える手」で政府の仕事を増やせば増やすほど社会は貧しくなると言っています。

そういえば、「政府の見える手」でやる仕事は、自由な「価格機構」に乗らないものがほとんどなのではないでしょうか。
「神の見えざる手」とは「価格機構」だったのかもしれません。

<蛇足>
ここで「ビジネス」と書いているものの中にはマネーゲームは入らないようです。

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3 コメント

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神はサイコロ遊びをする (川の流れ)
2024-03-19 22:06:53
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズムは人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。このメガトレンドどこか多神教ななつかしさがある。
Unknown (tnlabo)
2024-03-19 22:44:27
コメントりがとうございます。これはAIが書いたのもでしょうか。最後の「多神教的な懐かしさ」は不思議ですね。
マルテンサイト千年 (グローバルサムライ)
2024-04-23 03:41:42
それにしても「材料物理数学再武装」が経済学の教科書としても最高傑作の部類にはいると思う。

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