tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

もう1つの「働き方改革」

2023年04月25日 14時11分25秒 | 労働問題
「働き方改革」については、随分書いてきたような気がしましたが、考えてみると、結局国民はこう働け、経営者はこうした人事制度、賃金制度を導入せよ、という事で、「実体は働かせ方改革」ではないかと思って来ました。

という事で、今日のテーマは「もう1つの働き方改革」ですが、こちらが本当の働き方改革だろうと思っています。

理由は、「働き方を改革する」というのは「働く人自身が考える」ことで、政府や企業が法律や制度で決めることは、「こういう様に働かなければいけない」という事ですから、つまりは働かせる側が、働き方を決めているという事であることは明らかです。

聖書の「働くことは原罪の償い」という考え方はさておくとして、日本人は働くことが好きです。貧しい時代には「働かざる者食うべからず」などと言う諺があって、多くの人はそれでいいのだとさえ思っていたようです。

今は豊かな社会になって、そんなことには誰も賛成しませんが、大抵の日本人は、何かいい仕事があれば働きたいと思っています。
これは、端的に収入が得られるという面もありますが、それよりも、働いている事は「他人の役に立っている」という意識があって、それを大事にしいているからでしょう。

「働き方改革」の根底には、この「働くことはいいこと」という意識があることが一番大事です。
出来れば遊んで暮らした方いいと思っている人に対しては、「働かせ方改革」はあっても「働き方改革」はあり得ないでしょう。

「世のため人のためになるのだから働きたい」と考える人が、如何なる「働き方改革」をすれば、より楽しく、効率的に働けるかと考えるところに、本当の「働き方改革」という考え方が生れて来るのでしょう。

そう考えていきますと、昨今の技術革新の中で、最も大事なのは、働く意欲を持っている人すべてが、それぞれに、これからの社会でどんな準備をし、どんな働き方をすれば、より社会のためになれるかを考える事こそが「本当の働き方改革」でしょう。

そして、政府や企業の仕事は、進展する技術革新の中で、個人個人の意思の発露である働き方が実現し易いような社会環境、職場環境の「整備」という事になるのでしょう。

特に、今の時点でこんな事を書いたのも、これまでの政府の「働き方改革」が、日本人の働き方の文化、「職務中心ではなく人間中心の働き方」という伝統文化に合わない現実、政府の政策と日本の伝統文化のミスマッチが見えて来ているからです。

そして、これからの「生成AI」「生成ロボット」の積極導入という技術革新による職務の大きな変化の中で、そのミスマッチが、日本経済の効率、生産性の向上の阻害要因になることを恐れるからです。

現状既に、欧米では「生成AI」、「チャットGPT」の使用反対とか、研究禁止はどの問題が起きたりしています。

逆に日本は、面白いから使ってみようといった態度が先ず前面に出ています。この辺りにも、働くことについては職務が中心ではなく人間が中心だという日本の文化が見えているのではないでしょうか。

政府も、従来の「職務の形を中心」にした「働き方改革」を「働くことは人間が中心」という形に全面的に見直して「誤って改めるに憚ること勿れ」を実践し、この機会に日本経済、日本産業の発展の加速に貢献する方向に向かってほしいと思います。