tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

財政政策と金融政策、政府と日銀の関係の行方

2023年04月18日 17時02分46秒 | 経済
日銀総裁が、黒田さんから植田さんに変わりました。

黒田さんは、プラザ合意、リーマンショックによる超円高が日本経済の正常な活動を妨げていることを明確に意識して、2発の黒田バズーカで円レートの正常化を実現し、政府と共に2%インフレターゲットを掲げて、金融政策だけでは不可能な日本経済の復活のための財政政策、構造開花鵜の金融面からの下支えをしてきました。

残念ながら、日銀の政策成功によって順調に進むかと思われた財政政策、構造改革は、掛け声は立派でしたが、現実の政策運営面で多くの齟齬があったようで、日本経済はゼロ近傍の経済成長を続けることになり、コロナがそれに拍車をかけて、日本経済の不振は目を覆う状態になりました。

3年間おコロナ禍の中で、活動の抑制を強いられた日本経済に対して焦る政府は、赤字財政をも顧みず、国債発行、財政支援で経済活動の維持を図り、日銀はその下支えの役割を強いられたという事でしょうか、巨大な国債発行残高の半分は日銀が保有し、ETFの購入で、株式会社「日本」の筆頭株主は日本銀行と言われる状態になりました。

折しもアメリカから広まったMMT理論の実態は、勤倹貯蓄精神の旺盛な日本人の、老後のための貯蓄が支えたことにも気づかずに国債残高を膨張させた日本政府を、結果的に徹底して支えたのが日銀の役割だったと理解されたという事でしょうか。

政府は、そうした条件を、如何に恵まれた条件であるかの認識もなく、当然のことのようにコロナ禍に対しても、その後の原油・LNGなど 国際商品の値上がりに対しても、際限のないバラマキ政策を続けています。

表面的な対症療法に気を取られ過ぎの、選挙の人気目当てのような財政政策が続いた結果は、輸入インフレの中で、価格転嫁の困難な産業や中小企業の経営の限界、更に、実質所得の低下する国民・家計の我慢・勤倹貯蓄意識の限界が露呈されてきたようです。

消費者物価はじりじりと上がり始め4%を越え5%に達しようという状況になり、家計はコロナの鎮静化とともに、貯蓄選好から「消費性向」を高め始め、その影響は、輸入物価の上昇に加えて、貿易収支の赤字化を促進、円安要因になるという不安定な状況を齎しています。

日本経済はこれまでと違う様相の時代に入るのではといった不安も感じられる所です。

これまでのこうした状況から、巷でも言われますように、政府は日銀を子会社の如く考え、意のままに御すことが出来ると思っているといった見方も在るようです。

こんな困った状況の中ですが、今日18日、衆議院の財務金融委員会に出席された植田総裁の発言が報道されています。
「国債の買い入れについては、2%の物価目標を達成するという金融政策の必要性から行っているもので政府の財政資金の調達を支援するためのものではないと強調」と報道されています。

これは公共工事に使われてきた建設国債を防衛費の財源に充てるということに関連した質問に答えたもので、それに続いて、「財政運営については、国会の責任において行われるものであり、具体的にコメントをすることは差し控えたい」といっているとのことです。

政府は財政政策に責任を持ち、日銀(中央銀行)は金融政策に責任を持ち、互いに独立した意思決定をするというのが、世界の常識でしょう。

共通の目的を持って協力する事は当然有り得るとして、さて防衛費の膨張が著しくなるこれから、政府と日銀の考え方、両者の関係はどうなっていくのでしょうか、何か目が離せないことになりそうな気もします。