tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

高齢者の就業をどう考える:4 定年制と年金問題

2022年12月19日 15時46分43秒 | 経済
前々回まで、3回にわたって見て来ました日本の高齢者、そして、その人たちが支える勤労者世帯の最大の問題の1つは、低迷の続く日本経済の中での老後不安、具体的な問題でいえば、定年制と年金の問題でしょう。

 政府は定年の延長、定年後の雇用の努力義務といった形で就労継続を企業に要請しています。それは2025年を境に65歳から70歳になるのでしょう。企業は対応を考えなかればなりません。

もともと定年制というのは、年功賃金制の企業が戦後の平均寿命、賃金制度、退職金制度などと一緒に従業員の福祉のためにと、成長経済の中で急速に普及したようで、どちらかというと大企業の雇用パターンに合わせたものでした。

政府が、社会保障政策に目覚め、1960年、戦前からあった厚生年金に加えて国民年金が始まり、いわゆる「あめ玉」福祉年金から次第に年金制度の充実が始まり、それは国民の老後の福祉向上に大きな役割を期待させるようになりました。

しかし、少子高齢化が視野に入りいつかは問題になりそうという時代になりました。金利の高いうちは未だよかったのですが、バブルが崩壊し、低金利、更にはゼロ金利時代に入ると年金財政の逼迫は、今のように大問題となりました。

こうして、年金財政の逼迫と、上記の法定化した定年問題は、切り離せない問題に発展したわけです。
高齢化の中で年金財政の破綻を防ぐためには、年金の支給開始年齢を遅らせ、年金の支給額を抑えるしかないのです。

そうなれば、当然、定年年齢と年金支給開始年齢のつながりという問題が出て来ます。定年が55歳で、年金が60歳支給開始の時は、55から60歳になる迄は、企業年金を厚くするなどという事が大企業で流行った事もありましたが、そんなことは法律ではできません。

結局は定年を伸ばせという法律改正になります。1986年の法改正で60歳未満の定年制は禁止と決め、その後65歳(2025年から)にし、さらに70歳に伸ばさなければならなくなりました。そこには、年金支給開始は70歳からという意図が明確です。

法律で定年を決めるという余計なお世話をしたために年金財政との関係で、法律の改定を繰りかえさなければならないというおかしな結果になったのです。

本当のことを言えば、政府は年金をキチンとすれば、それでいいのでしょう。定年は民間企業がそれなりに考えて決めます。定年を決めない企業もありますし。政府はそれも認めているのです。

いまの日本の社会にとって、本当に大事なことは、政府が年金について、はっきりした将来展望を国民に示すことです。
統計が示しますように、やるべきことが解れば、国民は確りやっていきます。現実の統計の数字がその可能性を示しています。

平均寿命が戦後の60歳で国民皆年金もない時代から、国民皆年金で、国民が老後は年金生活と考え、平均寿命が80歳に延びた(しかもゼロ成長の)現在、年金支給開始年齢は70歳にしなければ年金設計はとても不可能という事は国民はすでに解っているでしょう。

政府は定年制などは民間に任せ、今の日本経済が出来る限りの合理的な年金設計を国民に早急に示すべきでしょう。

老後不安の「不安」というのは解らないから発生するものでしょう。先行きが見えてくれば、日本人は勤勉に、誤りなく確り、それに対応するでしょう。
これについては企業の的確な対応も必要です。これは次回触れたいと思います。