tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

平均消費性向の長期推移をみる

2022年12月01日 20時17分35秒 | 経済
このブログの1つの大きなテーマとして、総務省が毎月発表する「家計調査」の平均消費性向(2人以上勤労者世帯)を追いかけるという作業があります。

理由は、アベノミクス以来、政府は「消費不振」による経済成長の制約を大変気にして、消費を増やして経済の活況を取り戻すことを目指して、いわゆる官製春闘を主導し、コロナの中では、これまたいわゆるGoTo○○などの諸政策、更にはインバウンド誘致まで一生懸命です。しかし、なかなか消費は伸びません。

そしてその背後には「平均消費性向の低迷」があるという事は明らかでが、状況はかなり深刻です。長期の推移を追ってみたのが下の図です。

      平均消費性向の長期推移(2人以上勤労者者世帯:%)

                  総務省「家計調査」

収入が少なく生活がぎりぎりなら貯金などできないから消費性向100%、収入が多くて使い切れなければその分は貯蓄となるので消費性向は下がります。
その中で、将来収入が減ったり無くなったりするときに備えて貯蓄するという場合も消費性向が低くなります。

今の日本の場合はそれに該当するようで、なかなか収入が増えず、減る危険も感じるので、各家庭は財布の紐を締めて出来るだけ貯蓄に回すようです。

図で消費性向が上がっている所に「%」の数字が入っていますが、高度成長期は先行きが明るいので消費性向は高く9割近くありました。1973年に石油危機が来て国民は心配になって消費を削って貯蓄したようです。

石油危機克服に成功した日本は「ジャパンアズナンバーワン」に向かって進み国民は安心して消費景気を謳歌しました。

しかし1985年、「プラザ合意」で急に円高になり、生活防衛が始まりました。その後バブル景気もありましたが、地価も上がり住宅ローン返済(これは貯蓄になります)負担もあって消費性向はあまり上がらず、その後はバブルの破裂(1990‐91年)と少子高齢化の心配で皆貯蓄に励むようになって消費性向は2000年まで下がりました。

その後リーマンショックまでは、日本経済も何とか一息ついて消費性向も持ち直したようですが(2002‐5年は手元に資料がなく空白で済みません)、リーマンショック(2008年)で日本経済は極端な円高で瀕死になりました。ここで消費性向が上がっているのは家計に貯蓄する余裕がなくなったこともあるようです。

そしてアベノミクスに入るのですが、円安になって企業業績は上がり賃金も少し上がりました。そこで各家庭は一斉に「将来のために、今のうちに貯蓄をしておこう」という事でしょうか消費性向は急激に下がったという事のようです。

「コロナのせいでお金の使い道がない」という面もありましたが、実は今年に入って消費性向は上がって来ています
余り節約をしてきたので、節約疲れなのかもしれません。

それならそれでもいいようです。企業の利益は順調ですから、来年の春闘では賃上げしてもいいと経団連がいい、連合も高めの賃上げ要求を出すようです。

ここで上手く家庭(家計)のムードが変われば、日本経済は順調な経済活動に入れる可能性が出て来ます。
消費が増えて、景気が良くなれば、みんなの心も明るくなるでしょう。その促進のためにも、コロナが早く収まって欲しいものです。

因みに、平均消費性向が2%上がれば。経済成長率が1%上がるぐらいの勘定ですから昔の平均消費性向に戻れば5%成長ぐらい楽に出来そうですね。