tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

政府と日銀、目指す所は同じでしょうが

2022年12月27日 21時40分07秒 | 経済
先月ですか、岸田首相と黒田日銀総裁の会談があって、「賃上げの重要性」で意見が一致したという報道がありました。

両者とも賃金決定とは直接関係ない立場の人ですが、政府と日本銀行の責任者が共に賃上げが重要という点で、同じ意見なんだということが解りました。

この所意見が何か食い違う事が多いようで気になっていたので、一致したという事はいい事かなとも思いましたが、日銀の本業の金融政策で一致してくれるともっと良いんだがなどと余計なことを考えてしましました。

黒田総裁は10年程前に、安倍総理が国会の承認を得て任命し、来年は2期目の5年が終わり後任人事などが取りざたされています。

振り返れば、安倍総理の時は黒田総裁になれば、円安が実現という予想があり、それは安倍総理のアベノミクスの3本の矢の第一番目だったです。

これが2013-4年の2発のいわゆる「黒田バズーカ」で大成功、円レートは$1=80円から120円になって、日本経済は円高の泥沼から脱出しました。

政府と日銀は蜜月で、2~3年で「インフレ目標2%」を達成し、アベノミクスは大成功というシナリオで、先ず円レートの正常化が実現したので、後は第2の矢「財政政策」、第3の矢「構造改革」へ邁進という予定だったのでしょう。

日銀はそれの完全支援体制で、異次元金融緩和を維持、円高に戻らない条件を堅持しました。

日銀の考え方は、異常な円高を是正してほぼ正常な円レートにしたから、後はこれを死守(当時の感覚)していけばそれで貫徹できる、アベノミクスの第二の矢、第3の矢で賃金水準も上がり、諸外国ほどではないが2%ほどの自家製インフレになるまで、この円レートを守る(円高にしない)事がベスト、というものだったのでしょう。

勿論そのためには2パーセントインフレ目標達成に必要な賃金水準の是正をし、消費を喚起して経済活動の活発化を経済政策の目標にするという政府の政策が必要ですが、賃金水準の引き上げや、財政政策による経済活動の活性化は日銀の仕事ではないのですから、日銀は政府の「アベノミクス」に期待して金利引き上げの日を待つというし姿勢になるわけです。

所がアベノミクスは掛け声だけで全く実績が上がらず、物価も上がらないので、次第に円高になって、110円から100円の方に近づいていくので、これは異次元緩和を続けるしかない、金利引き上げなどと言ったら、また100円を割って90円台の円レートになる恐れがあるというのは実感だったでしょう。

しかし結局、賃金水準は上がらず、物価も上がらず、政治は混乱、そこにコロナ襲来で日本経済は散々な状態になってしまったのです。

日銀は動きが取れませんから、政府の財政政策の援助です。国債を買い、それでも足りないというのでETFで株まで買って金融を緩め政府を金融面から支えます。

そんな中で、原油高が起き、ロシアのウクライナ侵攻で、LNG価格が上昇、アメリカでは輸入インフレが自家製インフレに転嫁、物価が急上昇、FRBは慌てて政策金利を大幅引き上げ、お蔭で日米金利差は急拡大、結果は大幅円安、これはマネーゲームのせいです。

日銀はこんなことは一時的だから半年か1年のうちには元に戻ると予想して金融緩和は継続の姿勢を崩しませんでした。(口先だけでも柔軟の方が良かったのかな)

アメリカの都合でとんだ円安になったのですが、日本では日銀の政策が悪いように言われています。

少し長い目で見れば、物価の上がらない日本は国際競争力が強くなり、いずれ円レートは120円になり、110円、100円の方に向かい、場合によってはG7で、少し円高にすべきではなどと言われる可能性もなきにしもあらずです。

日銀だけが責められていますが、日銀は金融政策しか手段はないのです。日銀が連合や経団連と賃金問題を話し合うわけにはいかないでしょう。

経済運営全権を握る政府が連合や経団連と会合を持つ「産労懇」は嘗ては頻繁でした。

政府と日銀が「賃上げが重要」で一致したらアクションを取るのは政府でしょう。
来春闘が日本経済の試金石とは最近多くの方が言うところですが、政府は全く違った困りごとに手を焼いて忙しいようです。