tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

定年再雇用者の処遇は「ジョブ型」で

2022年12月03日 11時33分16秒 | 経済
戦後日本の経営者は従業員の身分制度を廃止、従業員是認を「社員」として雇用する方式を選びました。「社員」は基本的に期間の定めのない(定年まで)雇用です。

戦後の混乱の中で、雇用の安定が社会の安定の基盤という日本の経営者の気概が感じられるところです。

しかし、経済成長とともに次第に人手不足になり、農村からの季節労働者、主婦、学生などのパートタイマーも生まれてきました。

1990年以降の円高長期不況の中で、企業はコストダウンに迫られ、「社員」、今の正規従業員を減らし、非正規を増やすという方法を進めました。

こうして、いま日本の労働市場は大きく二種類に分かれ、新卒一括採用中心の正規雇用と仕事別に必要な時に採用される非正規雇用が6対4の割合で存在しています。

そこに今、政府は日本の雇用を「ジョブ型」にしようという「働き方改革」を進めようとしています。
「働き方改革」とは、端的に言えば、雇用は、総ての雇用を今の「非正規雇用」方式にしようという考え方で、ご承知のように、欧米ではこれが一般的な雇用の在り方です。

ここで問題になるのは、従業員の教育訓練を誰がやるかという問題です。欧米では職業訓練は大学や職業訓練施設で行い、職業能力を身につけて、初めて企業でその職に採用されるというのが「就職」です。

日本では職業教育は企業で行われます。採用は人間本位で、「良い」人を採用して企業が仕事をさせながら、人間教育から職業訓練まで全てをやるのです。

という事ですから、日本では、はじめから職業能力を身に着けているのは「高専」の卒業生か、学校(一条校)を卒業してから各種学校に通った人ぐらいです。

そんなわけで、「ジョブ型」採用などと言ってもそんな人はごく少ないので、企業は新卒一括採用を続けています。

それでは、いくら政府が旗を振っても「ジョブ型採用」はせいぜい転職者ぐらいしかいないので、なかなか進みません。

しかし、今現在、「ジョブ型採用」を本気で考えなければならない最適の分野が拡大しつつあります。それは、旧定年年齢まで勤め上げた定年再雇用の社員達です。

この人たちの処遇は、はたして適切に行われているのでしょうか。
従来は、定年時の仕事から離れ、賃金は定年時の何%といったことで済ませる事も多かったかと思います。

しかし、この人たちはそれぞれの職務(ジョブ)において、高い専門性を持つ「即戦力」です。企業としても、随分教育訓練コストをかけてきたのです。

その人達の持てる能力を適切に評価し、最大限に活用するべき「ジョブ型再雇用」の対象以外の何物でもありません。

この定年再雇用グループを最大限に活用することは、日本企業にとって、中途採用や外国人労働力の採用に当たっての「ジョブ型採用、職務配置、賃金決定などの雇用条件の決め方に熟達するための、最も適切な経験の場ともなりうるのではないでしょうか。

定年再雇用者の処遇決定を、今後の「ジョブ型雇用」方式に熟達するためのji実験場として活用するというのは如何でしょうか。

<蛇足> 以前にも書きましたように、中国や韓国企業にスカウトされるのは、時に種々問題を生じることもあるようですから。