tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2023年度「政府経済見通し」を見る

2022年12月26日 20時44分07秒 | 経済
先週の22日に政府経済の通しが発表になりました。
政府経済見通しは、このところずっと、些か無理と思われるような高めのものが多かったのですが、岸田内閣になって方針が変わったのでしょうか。
2023年度の経済見通しは、実質経済成長率1.5%という控えめな数字です。

ロシアのウクライナ侵攻問題も、プーチンの発言など聞きますと何か長引きそうな気配で、世界経済も何となく落ち着かない状況が続きそうです。
中国のゼロコロナ政策が失敗し、感染急拡大などという噂も広まり、日本経済についての良い話も見つからないようです。
来年は少しは何とかなりそうな賃上げもある国内経済についてはどうなのでしょうか。

という事で、見通しの中身を見てみましょう。閣議了解の段階ですので主要項目しか出ていませんが、
            名目  実質 (同昨年度)
国内総生産(GDP)   2.1   1.5   (1.7)
民間最終消費支出    3.2   2.2   (2.8) 
民間住宅        1.9   1.1  (-4.0)
民間企業設備      6.2   5.0   (4.3)
内需寄与度       2.5   1.6
財貨サービスの純輸出 -0.4  -0.1(寄与度)
という事になっています。
  
通常、閣議了解の数字が閣議決定の数字が出るまでの間に変更される例はなく、より細目や関連数字が確定されて発表されるので、この数字も変更されることは無いと思いますが、ご覧いただきますと些か「気落ちする」様な数字ではないでしょうか。

ロシアのウクライナ侵攻問題の勃発、とエネルギー価格上昇問題、加えて、コロナ感染第6波、第7波、そして今の第8波、とコロナの猛威の下にあった2022年度は、日本の経済活動には相当マイナスの影響があったと思うところですが、来年度の実質経済見通しは、今年より低いという事になっています。

勿論経済見通しは、アベノミクス時代のように、見通しではなく希望的数値だなどと言われるものであってはならないのですが、可能性のある範囲ならば、頑張って達成しようと国民に呼びかけられるようなものであってほしいとも思うところです。

2023年度が、何故悪条件が重なった2022年度より低いのか、政府の説明の中では、官民連携で新しい資本主義の旗印の下、物価問題も克服して新しい持続な成長路線に乗せると意気込みながら、実質成長率が前年度に達しないのでは、国民も「え!なぜ?」ではないでしょうか。

統計を見れば、平均消費性向は今年に入って上向き傾向にあります。春闘では、すでに大幅賃上げを春闘を待たずに行っている企業も出て来ています。
連合は賃上げ要求の幅を広げ、経団連もある程度は理解を示している状況です。

そうした中で、民間最終消費支出が2.2%の見通しと今年度の2.8%を大きく割り込むというのでは、政府はどこまで本気かと疑われそうです。

上の見通しでは、日本経済を引っ張るのはやっぱり実質5.0%伸びる(今年度は4.3%)民間企業の設備投資で、これでは消費不振に苦しんだアベノミクス時代と同じパターンと思われてしまいます。

新しい資本主義、成長と分配の好循環と、国民の耳に心地よりスローガンでスタートして岸田政権ですもう少し何とかならなかったのかなと、残念でなりません。
その分、見通しではなく、結果で頑張るというのでしょうか。それならそう明示してほしいと思います。