tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済混乱の中の「短観」を見る(2022年12月)

2022年12月15日 17時08分42秒 | 経営

高齢者の就業問題を中断して、昨日発表の日銀「全国企業短期経済観測」を取り上げます。

マスコミでは4期連続の景況悪化、非製造業は順調などと出ています。まさにその通りですが、決して全国企業の景況が悪化を続けているというものではないようです。

最初に出ている全体的な業況判断のDI(良い-悪い:%ポイントと)を見ますと、業種別に大企業、中堅企業、中小企業です。
先ず製造業から見ますと大企業が前9月調査の8から7に低下、中堅企業は0から1に上昇、中小企業は-4から-2に改善です。そんなに悪くはありません。

悪くなっている製造業大企業の中を見ますと、紙・パルプが-22(前回-14)、石油・石炭製品-33(前回7)、自動車-14(前回-15)などで、ロシアの材木輸出停止、原油・LNG価格の高騰+円安、半導体・部品の供給不足といった特殊要因の影響が感じられます。

中堅・中小企業は、こうした大企業の影響を陰に陽に受けている気配はありますが、特に悪化しているわけではありません。
中堅企業の石油・石炭製品は-10から5に大幅改善しています。

非製造業大企業を見ますと、前回の9月の14から19に改善その中身では、情報サービスの40、対事業所サービスの35、不動産、物品賃貸、卸売りの27などが目立ちます。宿泊飲食サービスは0ですがこれは前回の-28からの大幅改善です。

という事でコロナに対する規制の緩和が大きく影響しているようです。
結果的に、国際関係で環境悪化の製造業、コロナへの規制緩和で回復するサービス業という、それぞれ特殊要因による変化がマイナス効果、プラス効果を生んでいる様子が明瞭です。

所で企業の収益状況の項を見ます。
売上高経常利益率という解り易い指標が2021年度と2022年度(上期、下期)という形で調査されています。

製造業大企業は2021年度が10.48%で、2022年度計画が10.20%で、おおきな低下は見込まれておりません。中堅企業は6.21%から5.65%に低下の計画、中小企業は4.87から4.13にという事で、収益支払能力大幅低下の計画ではないようです。

一方非製造業は大企業が6.31から6.70に計画引き上げ、中堅企業は3.73から3.75に、中小企業は3.70から3.48に計画引き下げという事ですが、それぞれ安定的の範囲でしょう。利益率に大きな変動が見られるような状況ではないようです。

次に設備投資につて見てみます。
設備投資は全産業で2022年度は前年度に比し大幅増額を計画しています。全産業規模計で、対前年度の伸び率が、2021年度の-0.8から2022年度は15.1%です。
大企業では、製造業も非製造業も20%前後増加の計画で、先行きを睨んでいます。

特筆すべきは、設備投資の海外と国内の比率ですがが、対前年の増額が、製造業で海外20.9%、国内26.7%と、従来の海外重視が逆転している事です。

国際情勢や円レートの乱高下で、企業が国内投資を見直してきている事をうかがわせる数字ではないでしょうか。