tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

高齢者の就業問題:5 企業に何が必要か

2022年12月20日 18時09分02秒 | 労働問題

前回は、高齢者の就業問題について政府がやるべきことは、基本的には1つだけで、日本経済の実力で支払うことが出来るベストの年金制度を早急に作る事だと書きました。

それが国民を納得させ得るものであれば、日本の高齢者は、必ずやそれに合わせた就業と退職の選択を誤りなくやっていくだろうと(これまでのデータから)考えているからです。

今回の問題は、そうした状況の中で、企業は何をすべきかという問題です。これからの日本の企業の役割は大変重要です。

今、日本の年金制度が行き詰まっている原因は少子高齢化と言われますが、それにもまして問題なのは、経済成長がない事、ゼロ金利が10年近くも続いていることがあります。ゼロ金利も経済成長がないからで、キチンと経済成長する日本になれば、金利の正常化し、年金もそれなりに安定するでしょう。

という事で、では経済成長しない原因はというと、大体は政府の政策が悪いと言いますが、実際に経済を動かすのは企業なのです。
政府の政策が多少下手でも企業が頑張っていれば、経済は成長するのです。

2013-14年に円レートが正常化した後も経済が殆ど成長しないという背景には、企業が経営政策の方向を誤ったという事も大変大きいと思います。

30年不況の原因の大幅円高になった時、日本企業は、雇用確保を優先し、賃下げと非正規労働者の増加で賃金水準を大幅に下げて乗り切った事は緊急避難としては適切だったでしょう。

ならば、円レートが、$1=80円→120円と円安になった時、雇用・賃金の復元、つまり非正規労働の正規化、賃金の引き上げは、経済全体の復元のために必須だったのです。
それがあって、初めて日本経済はGDPレベルの需給のバランスを回復し、順調な経済成長路線に乗ったでしょう。

しかし多くの日本企業は円安の差益、交易条件の改善を、国内経済の成長より海外展開に向け、GDPは海外で増え、日本経済の得たのは第一次資本収支の大幅黒字でした。
国内経済は、常に消費不振に悩まされ、国民は公的年金の不安を中心に老後不安に悩まされ平均消費性向は低下、消費不振に拍車をかけたのです。

こうして企業は、結果的に、国民生活重視、そのための経済成長重視政策ではなく、海外投資収益重視の利益中心経営の道を選んでしまったのです。

円レート正常化から10年近くなって、国際経済の急激な不安定に遭遇して初めて、日本経済そのものの安定が、企業にとって大切だった事に気づき、経営側から小声ながら、賃上げ容認の声が聞こえて来ましたが、非正規労働の正規化の声は聞こえません。

こう見てきますと、企業は、折角日銀が異次元金融緩和で、為替レートを正常化してくれたにも拘らず、その活用を投資収益確保に向け、日本経済の正常化活性化に向けての活用を怠ったという批判を免れないともいえましょう

日銀は、待てど暮らせど日本経済が正常化しないので、異次元金融緩和を続けざるを得なくなって今に至るという事でしょうか。

こうした日本経済、企業の経営行動が、ようやく見直され、企業の設備投資が国内回帰の記事などがマスコミに登場するのは、大変結構な変化で、今春闘の労使の話し合いに期待するところですが、問題はまだまだ残っています。

それは日本経済が落ちに落ちた生産性の国別ランキングを回復させるためには、生産性を大幅に上げていかなければならないという事です。
国内投資が活発化すれば、これは漸次回復するでしょうが、そのためには、国内の労働力一人一人の生産性を徹底した労働力の高度化によって、早急に引き上げていくことが必要だという側面です。そしてこれは、高齢化問題とも、直接関連する事です。

残念ながら、今、日本は労働力不足だと言いながら、恐ろしいほどの労働力の無駄遣いをしているのではないでしょうか。
次回はこの点を見ていきたいと思います。