tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

菅総理の施政方針演説:新自由主義とは別物

2020年10月27日 20時55分59秒 | 政治
菅総理の施政方針演説:新自由主義とは別物
 大変力の入った菅新総理の施政方針演説が昨日ありました。

 演説の内容を拝見しますと、生真面目なもので、コロナ対策と経済の両立、デジタル化の促進、グリーン社会とエネルギー、安心の社会保障、拉致問題、北方領土問題、イージスアショアを含む外交安全保障など、今の日本が取り組まなければならない問題を、克明に1つ1つ取り上げ、「それをやってまいります」と述べておられます。

 限られた時間の中でこれだけ網羅的に並べるのは大変と思いますし、勿論出来ることもできないこともあるだろうとは思います。それでも使命感をもってこれだけやり遂げると言われたことには敬意を表します。

 しかし同時に気になることも、率直に言って、あります。
先ず、何となく気になるのは、並べて見れば、どれもこれも、大変困難な問題ばかりです。そして、個別項目は網羅されていても、それらを「総合的、俯瞰的」に統括するビジョンが語られていない点です。
 総理大臣は個別項目を並べるから、国民はそれを総合的、俯瞰的にみて判断せよというのでしょうか、それではことがあべこべのようです。

 総理大臣は一国を治めるリーダーですから、リーダーとして、日本は世界の中でどのような国であるベきと考えておられるのか、それを示していただかないと、国民は何処に連れて行かれるのか解らず、不安ですし、政権の基本的在り方についての判断もできません。

 もしかしたら、最初にコロナ問題に触れられたので、そのままコロナ対策に入ってしまわれ、話すのをお忘れになったのかな、などと考えてしまいます。

 実は、本質的な問題に関しても、大変気になる点があります。それは、すべての項目について「やります」「やってまいります」といった趣旨の言葉の締め括りになっていることです。

 並んでいる問題は、拉致問題、社会保障(年金には直接触れていない)、外交など一部を除いて、実際にやるのは政府ではなく国民、民間部門(コロナ対策、値下げ、デジタル化、グリーン化、地域活力、災害復興etc)のはずです。

 政府の役割は、国民がそれを実行する際により合理的にできるように、法律、制度、解りやすい言葉でいえば「行動のルール」を整備することです。

 良いルールが出来れば国民は守りますし、やる気が出ます。政府の役割は、国民がルールに従ってよい仕事ができるようにレフェリー役を務めることでしょう。

 菅内閣は、新自由主義を掲げる内閣と言われています。新自由主義は、民間の社会・経済活動を最大限に重視し、政府はルール作りとレフェリーに徹するというが基本的な考え方でしょう。総理が、まず{自助}、そして「共助」、最後に「公助」と言われるのはその意味と理解しております。

 社会主義のように、政府が手を突っ込んで何でもやることになると、いかに政府が善意でやっても、それは、 「政府」の「見えざる手」によって、社会も経済も上手く動かなくなる、というのが新自由主義の主張するところではなかったでしょうか。

 新自由主義の理論を借りれば、菅総理の御熱心、善意のこもった「これをやります」という言葉の通り、全てをおやりになると、総理の御意志に反して、世の中はますます上手くいかなくなるという事になるのではないかと、これは大変危惧するところです。

 「これも、歴史の実験だから、やってみるのも良いではないか」というご意見もあるかもしれません。しかし、それでは犠牲が大きすぎる(アメリカのコロナ死者数ではありませんが)のではないかと大変心配するところです。

 新自由主義に精通しておられる学者先生も日本学術会議にはおられるはずです。よりよりご相談してみられるのもよろしいかと存ずる所です。