tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

何事も政府がやる、政府にやらせる「新自由主義」?

2020年10月17日 16時23分26秒 | 文化社会
社会経済思想と政治形態(試論):新自由主義と政治(4)
 白川さんに代わって日銀総裁になった黒田さんは、日銀の価値観を180度変えたようです。日銀は円高容認から円安指向に変わりました。

 円安実現のそのために採った手段が異次元金融緩和です。これはもともとFRB議長のバーナンキさんが、リーマンショックを金融恐慌に繋げないために考えたウルトラC 的な政策ですが、遅まきながらこれをまねて2013年と14年の2回にわたり大幅な金融緩和を行いデフレウィ脱出し2%インフレを目指すという方針です。

 金利はゼロ金利、徹底した量的緩和も同時です。リーマンショックの時アメリカはこれをやり、円レートは120円から80円と円高になりました(ドルはドル安に)。
 その後6~7年で日本が同じ事をやり円レートを120円に戻したわけです。

 この辺りから金融緩和は金融パニックを救うのと同時に、自国通貨を安くする手段として定着してきたようです。

 ただ、アメリカは万年赤字国ですから、金融を多少正常な(引き締める)方向に移しても(テーパーリング)ドル高には限度がありますが、日本は万円黒字国ですから、異次元緩和を止めるとどこまで円高になるか解らないという危惧が付きまといます。
 結果的に日本は円高を避けるために異次元緩和をやめられなくなっています。

 この円安政策は、アベノミクスの第1の矢に当たるのですが、円安→インフレ・2%と行くはずが全く宛が外れ、全くインフレにはなりませんでした。

 これが、アベノミクスがその後どうにも進まなくなった根本原因でしょう。
円レートが正常化すれば、経済成長も戻り、インフレ基調の経済になって、財政再建も順調にいくと思ったのでしょうが、そうならなかったのです。

これには、矢張り理由があります。大きくは、①日本産業を担う労使の意識変化、②消費者の意識変化、③マネー資本主義の活発化などといった要因があるようです。

 こうした状況の中で、安倍政権は、何とか看板のアベノミクスを成功させようと焦り、次第に「政権の力で」という権力集中、異論を封じる独裁的な行動に出ことになったようです。

 もともと「決める政治」を標榜し、その第1弾の円高の是正に成功、次は積極財政、そして構造改革とつなげていくつもりが、日本経済はどうにも思うように動きません。

 原因や症状は全く違いますが、1970年代からの欧米のスタグフレーションに至る停滞と同じような成長しない経済が、円高が是正されても続くという予期しない結果は、かつての欧米のように、政府の力技で脱出するほかないと考えたのでしょう。

 大変好都合なことに、偶々与党が絶対多数を占めるという国会の構成の中で、すべて力技、具体的には強行採決といった手法で政治を運営することが可能だったのです。

 これは、欧米の経験に似た、政権独裁の強硬手段であり、それが、政府権力で、経済合理性を追求する、政府がマーケットメカニズムを働かせる、自由経済の原則を実現させるのは政府の役割といった形で、すべて政府主導で新自由主義を実現するといった基本的に矛盾を内包した今日の政策になっているのではないでしょうか。

 問題は、政府の権力と国民の自由の矛盾が何故可能になっているのか、それが本当の「新自由主義」なのか、という事になるわけですが、今、日本の国民はそれを認めている形になっています。
 何故そんなおかしな事になってしまっているのでしょうか。