tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

労働分配率と経済成長率の基本的な関係を見る

2020年10月02日 21時20分44秒 | 経済

経済成長を可能にする付加価値の使い方-5
 前回は付加価値を創るという問題は、実体経済の問題で、最近アメリカから流行って来たマネー経済学は、付加価値は誰かが創ってくれるから、その付加価値を買う購買力としてのマネーを稼げば、結局、付加価値は自分のものになるという事でカネでカネを儲けるための方法論だという点を見て来ました。

 この点は、格差問題との関連でまた触れる機会があるかと思いますが、ここでは実体経済を基本に据え、付加価値を増やすという実体経済の価値の生産(創造)の問題を考えていきたいと思います。   

 ところで、GDPから減価償却を差し引いたものが国民所得です。御承知のように減価償却は固定資産などは何時かは買い替えなければならにならないので、そのために毎年付加価値の中から積み立てをしている分ですから、これを使ってしまう訳にはいきません。

 ですから人間と資本への分配の対象になるのは、減価償却を差し引いた国民所得の方です。その中で人間(労働)に分配された分の比率が労働分配率です。
 今回は、この労働分配率と経済成長率の関係を分析してみようという事です。

 計算(推計?)方法など詳しい事は解りませんが、例えば、ネット上ではアメリカの労働分配率は60%台、中国の労働分配率は50%を切るなどの数字があります。
 こうした数字を見ると、中国がGDPでアメリカを10年以内に追い越すというグラフは納得いく気がします。

 国際比較をしてもそうですし、日本の数字を歴史的に見てもそうですが、高成長の時は労働分配率は低く、労働分配率が高くなるころには、成長率は低い国になっているのです。

 因みに日本の数字を見ますと
・所得倍増計画の後半 労働分配率 53% 経済成長率9.4%(高度成長期)
・1980年代前半 労働分配率 68.5% 経済成長率4.3%(安定成長期)
・アベノミクス時代 労働分配率 68.9% 経済成長率0.8%(低成長期)
といったことになっています。

 これは経験的にもそうですが、理論的には、高度成長期には、政府も企業も国民も、先進国に追いつけ追い越せと頑張り、そのために技術導入や技術開発、新鋭機械の導入などにより多くの所得を割きます。
 そして成長の成果である、日本で言えば3C(モノクロTV、電気冷蔵庫、電気洗濯機)、新3C(カー、クーラー、カラーTV)などを先を争って購入、多額の投資による新商品開発が、国民の購入意欲を誘い、より良い生活を実現するという好循環が回っているからです。

 安定成長期には、日本は一億総中流と言われるような良き時代で、多少不満足なのは「ウサギ小屋」などといわれた住宅ぐらいになっています。

最近はどうかといいますと、所謂アベノミクスの中で、労働分配率は高止まりしたままですが、特に労働分配率が高まったわけではないのに経済成長率は0.8%という低迷状態です。

 上の3つの時代の比較を見ても労働分配率と経済成長率の関係はお分かりかと思いますが、国際比較をしてみても、労働分配率が低く、資本分配がが高い国の方が経済成長率は高いのが一般的です。

 それでは、労働分配率を下げて、資本分配率を上げれば経済成長率が高くなるかというと、必ずしもそうではなく、資本分配が高いことは経済成長率向上の必要条件ではありますが、十分条件ではないようです。

 アベノミクス時代の経済成長率が特に低い点については次回検討してみたいと思います。