tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

社会経済思想と政治形態(試論):新自由主義と政治(2)

2020年10月14日 20時26分26秒 | 文化社会
新自由主義は日本には不要だった
 前回指摘しましたように、新自由主義には「new」と「neo」があります。
 いま日本で使われている新自由主義は「neo」の方が一般的なので、このブログでも、「新自由主義」といえば「neo」の方であることにしたいと思います。
 社会保障重視、福祉社会指向、労働者の権利重視といった「new」の方の新自由主義は、またの名の「社会自由主義」(social liberalism)と言うようにしたいと思います。 

 さて、何事も世界の基準は欧米で、欧米の経験からすれば、社会自由主義が労働者の権利拡大、社会保障の負担増などで国家財政としても行き詰まった結果の、スタグフレーションという経済の最悪の状態を脱出するために欧米主要国の政治が新自由主義を利用・活用したという事になるのでしょう。

 一方、日本は労使関係が良好で、経済が健全であったため、スタグフレーションには無縁で、「ジャパンアズナンバーワン」と言われるほどでした。
 しかし同時に、三公社・五現業と言われた国営の企業体が、労使関係も悪く(特に日本国有鉄道=国鉄)赤字を垂れ流し、加えて少子高齢化が徐々に進み、年金、医療財政などの将来はの心配がありました。

 日本では、その克服のために、新自由主義などと言わず、民間ベースの土光臨調などの「行政改革」で対処し、国鉄、電電、専売はJR、NTT、JTに変身、健全企業として立派に再出発しています。新自由主義改革は要らなかったのです。

 残ったのは、年金制度、医療保険、そしてその後、医療保険改革の中で誕生した介護保険といった、政府の社会保障政策の将来不安対策というのが今日の問題です。

 こう見てきますと、欧米では、新自由主義を掲げ、政府がまさに力技でやってきた改革を日本は、労使関係や、民間の知恵を活用する土光臨調に象徴される様な方法で、すんなりと解決してきているという、まさに欧米とは別種のスマートな解決方法を取ってきているのです。はっきり言って日本には新自由主義に勝る知恵を持っていたのです。

 残された年金、医療、介護などの社会保障問題も、日本は日本流のスマートさで解決可能ではないかと考えられるのです。日本には、新自由しょぎなど要らないのです。
 それが今なぜ日本の政治でも、新自由主義が信奉されたりするのでしょうか。

 理由として考えられるのは、30年に亘る平成長期不況によって、日本社会における民間の力が著しく低下したことがあるようです。
 そして、それに加えて、自由主義の経済面の実態をなす資本主義が異常な発展(劣化?)現象を起こしてきたことが挙げられるように思います。

 その上に、政権の性格などもあるのでしょうが、まずは上の2つについて見ていったみたいと思います。