tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本のGDPが伸びなくなった2つの原因

2020年10月04日 22時07分49秒 | 経済
 本題に入る前に、今一番気になっている事に2-3行触れておきたいと思います。
 日本学術会議の推薦メンバーの内6人が任命されなかったという問題です。
 今回突然というより、以前からの政権の意思のようです。この種のものは放置すれば、政権は確実に腐敗し、それが次第に加速して、ひいては亡国につながるものでしょう。恐ろしいことです。止められるか否か、強い心配とともに見守っています。

 
 本題に入って、前回触れたこの所の日本を覆う経済不振の暗雲の原因2つ(コロナ問題は、ワクチン開発で時間が解決するでしょうから、ここでは触れません)、国内投資(特に研究開発投資)と消費需要がともに伸びないことについてです。

 先ず、消費需要が伸びない点について考えてみましょう。
 安倍内閣になって「官製春闘」という言葉が生まれました。年々の春闘で安倍さんは高い賃上げをと、労使に呼びかけました。そして多少の賃上げがあると、賃上げ奨励の効果があったと自画自賛したりしました。

 しかし、国民経済計算で家計最終消費支出の伸びを見ますと、雇用者報酬(日本経済の総額人件費)の伸びに追いつきません。つまり、GDPの分配として支払われる人件費が増えても、個人消費がその分増えるわけではないのです。

 安倍さんは賃金が増えれば消費は増えると単純に考えているのかも知れませんが、その間には「消費性向」という比率が入っているのです。賃金が上がっても消費性向が下がれば個人消費は増えません。

 その平均消費性向は、平成不況以来低迷を続けているのです。そしてこの低下の原因として指摘されているのが、年金不安に象徴されるように、膨張を重ねる国の借金、国家財政の将来不安、将来の増税懸念も含め、(株式投資に依存するような)老後を支える金財政の不安でしょう。

 つまりアベノミクスでは賃上げを奨励する一方で、消費性向を低下させるような状況を作り出すというちぐはぐな事の結果、将来不安がより強く、消費低迷で経済西方の減速を招いていたという事なのです。(預金に金利が付かないことも重要な要因です)

 2つ目の投資不振については、長期の円高不況で、国内の 技術開発力の衰え、従業員教育の手抜きもあり、国内投資の効率が低下したことが大きいようです。
 アベノミクスの時期に入り、異常な円高が解消しても、企業の多くは、国内投資より 海外投資に力を入れる状況は促進される傾向にあります。

 海外投資では、付加価値は海外で発生します。付加価値の6-7割は人件費で、これは投資先の国に落ちます。日本企業に入るのは人件費支払い後の利益の内、利子・配当の部分で、第一次所得収支の黒字ですが、これはGDP(国内総生産)には算入されません。

 国民総所得(日本人・日本企業の所得) GNIに算入されているのです。この金額は大きく増えて、日本の国際収支の黒字に大きく貢献していますが、海外展開する企業の場合、人件費は海外の人間に払われるのですから、国内投資の様にGDPを増やしてはくれません。

  こういう状況が続きますと、低成長とともに国内の 技術開発力や高度な製品の生産能力は次第に落ちてくることが懸念されます。
 今回の新型コロナのワクチンにしても、政府は海外のメーカーから買う事ばかりをいっていますが、これが政府の本音でしょうか。

 やはり日本経済は、岐路に立っているようです。政治の課題は、低迷する国民意識をいかにして戦後の昭和のような活気のあるものに出来るのかでしょう。
ちまちました産業政策ではなくて、大きな国づくりの思想、哲学が必要な時期なのではないでしょうか。