tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

度が過ぎる総理の春闘介入

2018年01月23日 11時47分57秒 | 労働
度が過ぎる総理の春闘介入
 通常国会が開幕し、安倍首相の施政方針演説がありました。
 決める政治を標榜する安倍総理ですが、どうも安倍さんの決めたいことと、日本が今やらなければならない事とは、必ずしも一致しないようで、このまま決める政治に無理をしていくと、昨年と同じように、またいろいろと困った問題が起きる可能性があるような気がして心配です。

 財政問題、防衛問題、憲法問題、いろいろあるようですが、このブログでずっと気にしているのは産業社会における人間に関わるの問題です。
 特にヒトとカネの問題の接点、企業では賃金問題ですが、そうした問題には素人の安倍総理が、ここまで春闘に介入していいものか、その辺りの認識のないままに、突き進んでいるように感じます。

 当面の話題の中心は、春闘賃上げ率ですが、早くから3%賃上げに固執し、経団連も3%という数字を「経労委報告」に書かなければならなくなったようです。

 安倍さんは、賃上げ率を高めれば、消費が増えて日本経済は良くなると信じているようですが、これまで毎年「賃上げ、賃上げ」と言っても効果がなかった理由を考えてみますと、種々の認識不足に原因があるようです。

 第一の認識不足は、賃金決定は労使の専管事項で、政府はあくまでも第三者でしかないことです。決める政治とっても安倍さんには決める権限はないのです。はっきり言えば、労使が迷惑がるだけです。

 第二の認識不足は、今の消費不振の最大の原因は、賃上げが少ないことではなく、消費性向が下がっていることの理解が不足していることです。そして、消費性向の低下の原因は将来不安、国民がこの国の将来、その中での自分の生活がどうなるに不安を持っているからです。
 こちらの改善は政府の責任です。しかし昨年からの国会の論議を見ても、国民が「こんな政府に将来を任せてもいいのかな」「税金は正しく使ってくれるのかな?」と感じることが多すぎます。

 第三の認識不足は、3%賃上げした企業には税金を負けるといった場合、3%の計算はどのようにするのかという点です。税金を使うのですから、不公平は許されないでしょう。何が3%増えたら対象になるのか、専門家でもその点は多分回答不能でしょう。

 さらに言えば、3%出せるのは一部の高収益企業でしょうから(トヨタが3%出してくれればいいそうですが)、賃上げの補助金は高収益企業に行くことになります。高収益企業は補助金が無くても自分で出すでしょう。

(その他、同一労働・同一賃金、成果給指向、賃上げとインフレの関係など、認識不足の問題はいろいろありますがここでは触れません)

 政府の仕事の本質である、国民の将来不安の解消には手つかずだったり、先送りだったり、トランプさんとともに、国民の不安を煽るようなことをやったり、今回の施政方針演説でも、よく考えれば、国民にとって不安なことが沢山あります。

 最後に一言付け加えれば、森友や加計の問題のように、国民の過半に疑惑を持たせるような、忖度行動も含めた政府不信の問題があります。
 3%賃上げ推奨ではなく国民の不安と不信を出来るだけ少なくすることが何よりも優先されなければならないのではないでしょうか。