tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

人間と資本:おカネに振り回されない人・社会

2018年01月20日 14時46分32秒 | 経済
人間と資本:おカネに振り回されない人・社会
 芥川賞や直木賞が発表になって、偶々どちらにも宮沢賢治が絡むようです。それで、顰に倣ってここでも宮沢賢治を引用しました。

 「ああせいせいした。どうも体に丁度合う程稼いでいるぐらい、いいことはありませんな。」
 これは『銀河鉄道の夜』で、鳥捕りの男が言うセリフです。ワークライフ・バランスの話が出ると、私はこのセリフを思い出すのですが、おカネと人間の関係でもストンと肚に落ちるような気がします。

 世の中、自分の必要とする程度を超えて「多々益々」式にお金を欲しがる人は多いようです。
 勿論江戸っ子のように「宵越しのカネは持たねえ。カネは腕に仕込んである」と粋がるのもいいですが、「大工殺すにゃ刃物は要らぬ、雨の三日も降ればいい」などと言われるので、それなりの貯蓄(資本蓄積)は必要でしょう。

 この貯蓄の必要性は、社会保障政策によって変わります。国が適切に資本を蓄積すれば社会保障は充実し、個人が心配する部分は減るでしょう。 今の日本はどうでしょうか。

 日本は世界でもかなり豊かな国ですが、国民は先行き不安が強く 個人貯蓄大国の典型のように言われます。日本人が心配症のせいなのか、社会保障の整備が不十分なのかですが、もう一つ、重要な問題があります。それは格差社会化という問題です。

 これは、ここ20余年の長期不況の中で進行してきた面が大きいようですが、経済社会が不安定になり、雇用の不安定など生活のリスクが大きくなる中で進行しました。
 加えて、少子高齢化に政府の対応が遅れていることも大きいようです。

 格差社会化というのは、通常、少数の平均以上の人と、多数の平均以下の人がいて、平均近辺の人がいなくなるという形で起きます。中間層の減少です。そして、 ピケティのいうように、資本主義の中では格差は拡大するものなのです。

 その理由は多分、人間の運や能力は多分に不公平ですし、本来の稼得能力の差に加えて、資本が多いほど資本を増やしやすくなるのが資本主義の性格だからでしょう。
 今の資本主義は、この欠点を、累進課税や相続税で是正して、福祉社会という概念を導入し、格差の拡大を防いできたから生き延びているのです。

 しかし一方で、 カネでカネを稼ぐというマネー資本主義が広範に普及するようになり、必要以上にゲームのようにおカネを稼ぐといった活動が、格差の拡大を進めてしまうという現実もあるようです。

 おカネに振り回される人が多くなるという事は、社会を不安定にする大きな要因(例えばリーマンショック)になります。
 個人の考え方はもちろん重要ですが、こうした大きな問題には、政府がどう対処するかが問われているところでしょう。